同じ無線従事者でもアマチュア業務とプロの業務ではどう違う?

現在、アマチュア無線で行うことが許されているのは「アマチュア業務」です。電波法(第1条第78項)に明記されているその「アマチュア業務」の内容とは、金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務となります。つまり、あくまでも個人的な無線技術の探求です。

※2021年に『アマチュア業務』の拡大が行われ、地域のボランティア活動や対価を得ない狩猟などでアマチュア無線の使用が許可されました。

現代ではFAX電送からはじまり、パソコン通信、インターネット、携帯電話などの通信、それに人工衛星による宇宙通信の発達は私たちの生活をより豊かにしました。

これらのライフラインによって現代の私たちは遠く離れていても、簡単に通信が行えます。しかし昔は今と比べ、通信手段は限られていました。そんな昔でも、便利で多彩な今の通信手段ができるずっと前から、離れた人とのコミュニケーションをとる通信手段がアマチュア無線でした。

電話回線が現代より発達する以前から、世界中を電波で結びコミュニケーションを成立させていたのも、アマチュア無線家たちです。国を越え年齢・性別を超え世界の人と語り合うアマチュア無線は、まさにインターネットの始祖。無線でパケット通信を行っていたのもアマチュア無線。

何よりアマチュア無線が魅力的なのは、日本国内はもちろん、海外のアマチュア無線愛好家とも交信ができる点です。

しかし、アマチュア無線に興味を持たれた方は、ふと疑問に思うことがあるかもしれません。アマチュア無線があるのなら、プロ無線はあるのだろうかと。

電波法では、”アマチュア無線”は定義されていても”プロ無線”という言葉自体はありません。

ただ、アマチュア無線の国家試験を執り行う『公益財団法人 日本無線協会』では全部で23ある無線従事者国家資格のうち、アマチュア無線の4級から1級の4つを除く19の資格を”プロ”と呼称しています。これら19の”プロ”の無線従事者資格には、頂点である総合無線通信士をはじめ、陸上無線技術士や海空の無線通信士、陸海空の特殊無線技士などさまざまです。

そのなかでも第一級陸上特殊無線技士、通称「1陸特」が陸海空特殊無線技士の中では最高峰です。この資格の所持者を求めるのは通信会社および、通信設備の工事会社などです。特殊無線技士の上にはさらに陸上無線技術士や海上無線通信士、航空無線通信士、そして最も難易度が高いとされる総合無線通信士などの資格があります。

これら上位の資格は初級(3,4級)アマチュア無線技士の試験のように、暗記だけでの勉強でどうにかなると思っていたら大間違いですから、基礎からの学習と、計算問題を捨て問とせずにきっちりと解答するなどしなければ、とても合格は難しく、難易度もやはり”プロ級”です。

これらの従事者資格を持つ人は、一般に私たちアマチュア無線家が利益を目的としない、もっぱら個人的な興味に基づく技術的、実験的な交信が基本であるのに対して、利益追求のための商業活動における各種企業の業務無線や、警察無線などに代表される犯罪の予防など治安の維持に関する無線、消防無線などに代表される人命の救助のために活動する非営利の公的機関が使う無線の運用に従事しています。

ですから、非営利目的の技術実験的通信のみと限定されているアマチュア無線に対して、間違いが許されない一般の商用利用や公務で使用される無線という点からも、やはり「プロ無線」と呼んで差支えないでしょう。

プロが使う周波数の一部もアマチュア無線局が使用してもよい

アマチュア局に認められている周波数帯はアマチュアバンドと呼ばれますが、一部帯域ではアマチュア以外の業務用無線の周波数と重なっています。

この場合はアマチュア局も同じ周波数を使用できますが、アマチュア業務は二次業務ですので、万が一、業務局と混信した場合は、業務局の交信が優先され、アマチュア局はすみやかに電波の発射を停止する必要があります。