デジ簡の交信距離はモービルアンテナで大幅アップ!

デジタル簡易無線(登録局)の送信電力は最大5w。これは国家資格を必要としない無線局の中では最大の出力かつ、十分に実用的なパワーです。とはいえ、付属のヘリカルアンテナを装着したデジ簡の1w機同士が交信した場合、交信距離は市街地で2~3km程度が良いところ。

もっとも、無線の交信距離はアマチュア無線でもそうであるように、自分がローパワーのハンディ機であっても相手局の無線設備が固定局か移動局か、標高、アンテナなどによって如何様にも変わります。逆に相手局からの波は自局に届いても、自局の波は相手に届かない場合もあります。

デジ簡の交信距離もアンテナ次第

しかし、アンテナメーカー製のロングアンテナで10~20キロ、さらに利得の高いモービルアンテナなら50キロ、高い山に登れば300km以上もの交信も可能です。高い5w機を買う前に、まずは意外とよく飛ぶ1w機+社外アンテナを試す価値は充分にあり!

ではどんなアンテナに付け替えると、デジ簡の送受信環境の効率が上がるのでしょうか。

筆者が試したところ、自分が1wハンディ機およびダイヤモンドのSRH350Dで畑の真ん中、相手局が高速道路を移動中の5w局のモービルアンテナで、見通しが開けている場合、12キロ程度までは交信ができました。相手が離れていくたびに途切れていき、最後はぱったりと受信できなくなりました。

電波がわずかに受信できていれば、雑音交じりでも音声が音声としてなんとか聞きとれるアナログ変調のアマチュア無線に対して、デジタル無線は電波が弱くなると音声として全く復調できないのが、災害時などではやや不安とも言えます。このデジタル無線特有のシビアな変調はデジタル消防無線でも指摘されています。

デジタル消防無線は聞けないが聞けるアナログ消防無線もある!

デジタル簡易無線で『ケロる』という言葉の意味は?

デジ簡には弱い変調状態で時折現れる『ケロケロ』という不完全な変調状態を『ケロる』と呼びます。断続的な変調音がカエルのケロケロに似ているためです。

正常な変調時でさえ、人の声が甲高く変調されてしまうデジタル簡易無線では、高度なデジタル技術を使っていながらも、その音質はアナログのアマチュア無線のFMに比べると低品質で、慣れないうちは聞き取るのに一苦労。

また、アマチュア無線等のアナログFMでは遠距離でもデジ簡のように変調が断続して”ケロる”ことなく、スムーズに変調され、聴き取りが容易です。

ところがデジタル変調方式では音声が途切れはじめると、復調された音声はケロケロしてしまいます。ケロ解決策はロケのよい場所に移動する、相手との距離を縮める、利得の良いアンテナに交換、また次回のいずれかになるかと思います。

NG!これでは電波が飛ばず、受信感度も最悪!

このようにデジタル簡易無線はそのシビアなデジタル変調方式の性質から、アナログ変調の無線に比べると、市街地では交信距離の低下が顕著です。また、その使い方次第でも電波の到達距離を縮めてしまいがちです。

例えば、ハンディ機を付属アンテナのままで車内から送受信するケース。

車の中は電波を吸収してしまう鉄の箱の中と同じ。電波はほとんど車外へ飛ばず、相手の電波もよく受信できないと思ったほうがよいでしょう。それ自体はアマチュア無線のハンディ機の場合と同様ですが、デジタル簡易無線ではもっと厳しくなるのは前述の通りです。

電波が弱くてもなんとか雑音交じりに聞こえるアマチュア無線のようなFMアナログ無線と違って、デジ簡は電界強度が弱いと正常にデジタル復調されず、良くて断続しながら受信ができる先述のケロヨン状態、最悪の場合はスパッ!と一切聞こえないのですから。

クルマの中で頑張ってCQを発しても、半径1キロしか飛んでいなかった……なんてこともあり得るのでモービル運用では注意したいポイントです。

付属の短縮ヘリカルアンテナしかないのなら、車から降りて見晴らしの良い場所に立ち、ハンディ機を手に持って、思いっきり相手の方角に向かって送信するのがベスト。

また、どうせなら1w機よりも、ちょっと高いけど5w機を……と安易に考えがちですが、まずは以下の改善策を試してください。

デジタル簡易無線もモービルアンテナを使えば飛距離アップ!

もし車での運用なら、モービルアンテナを使うのが最良の選択です。とくに寒い秋や冬などは車から降りたくないものです。そんなとき、車内でヌクヌク快適に送受信できる車外アンテナ『モービルアンテナ』を使ってみましょう。

やはり、ハンディ機用のヘリカルアンテナと車用のモービルアンテナを比べると『飛びは別物』と言えますよ。

デジ簡にアマチュア無線用アンテナを使うことは認められていませんが、アマチュア無線用の一般的なM-P接栓の基台、ケーブルなどの流用は可能なので、すでにアマチュア無線用の基台やケーブルを持っていて車に設置している人なら、デジ簡用アンテナのみ買えば、すぐに運用可能です。

Comet PDM351-055 コメット 351MHz帯 簡易デジタル無線(登録局)用モービルアンテナ

Comet PDM351-055

そして、最初からマグネットベースがセットになったお得なアンテナ・シリーズがこちらの全長20センチ弱のMR350Sと80センチ弱のMR350の二種。

第一電波工業 ダイヤモンド 351MHzデジタル簡易無線用アンテナ 車載用 22cm MR350S

第一電波工業(ダイヤモンド) 351MHzデジタル簡易無線用アンテナ(車載用) MR350S

マグネット基台タイプのアンテナは車以外でも、自宅のベランダの金属サッシ部分などにペタリと置いて貼り付ければ、クルマでデジ簡をモビホで使った時と同様に交信距離をグングン稼ぐことも可能。

第一電波工業 ダイヤモンド 351MHzデジタル簡易無線用アンテナ(車載用・マグネットマウント式)83cm MR350

第一電波工業(ダイヤモンド) 351MHzデジタル簡易無線用アンテナ(車載用) MR350

なお、この2種のアンテナはアンテナと基台のネジ口が専用設計になっており、MP接栓やSMJ接栓のほかのデジ簡用アンテナを取り付けることはできないのでご注意を。

しかし、安くても性能は抜群。短いMR350Sでもモービル同士で50キロ以上離れて交信できます。

なお、デジ簡専用アンテナにてアマチュア無線機で送信はしないでください。専用設計されていませんので、送信した電波が無線機の内部回路を損傷させる可能性があります。ただ、送信をしない広帯域受信機用のアンテナとして利用することは性能上、全く問題ありません。短いMR350Sでも27、118、120、130、140、150、240、365、466、各帯域にわたって受信感度はたいへん良好でした。

デジ簡のアンテナを目立たせたくない場合のアンテナは?

前述のとおり、デジタル簡易無線(登録局)では技適許可されたアンテナのみが使用できます。アマチュア無線のように自分で研究して作ったアンテナなどは使用できません。また、アマチュア無線用の市販アンテナを使うことも許されていません。

しかし、さまざまな理由から、無線用アンテナを秘匿したい考えの人もいるでしょう。351Mhzではアンテナを比較的短くできるので、車載用アンテナもあまり目立たせないで運用できます。また、偽装させて目立たないようにしたい、という方向けにはシャークフィンアンテナや、ユーロアンテナも発売されています。

コメットのシャークフィン型アンテナは各色があります。

Comet ASF-351W(ホワイト・白) フィンアンテナ 351MHz簡易デジタル用

ASF-351W

Z350Sはダイヤモンドのユーロアンテナ・タイプです。両面テープでルーフに貼り付けるタイプで、全長は50センチ弱。面白いことに航空無線もばっちり受信感度が良いようで、ラジオライフ誌上で詳しく解説されているので以下の記事を読んでみてください。

VHF帯エアーバンドにデジ簡登録局用アンテナ

ただ、覆面パトカー用のユーロ偽装タイプに比べると、日本車で主流の純正ユーロアンテナとはかけ離れた外観で、欧州車本来のユーロアンテナに近いものと言え、目立つといえば目立ちます。シャークフィンアンテナも軽自動車では大きくて不釣合いかもしれません。

このように現在市販されているデジ簡用のアンテナは複数ありますが、アマチュア無線用のアンテナに比べると大変数が少ないでしょう。今後、アンテナメーカー各社からさらに多くのアンテナが発売されることを期待したいところです。

車外アンテナ、モービルアンテナのまとめ

筆者は最近、1W機でもモービルアンテナを利用すると、驚きの50キロ交信が実現できました。さらにその後、相手が300メートル級の山頂移動、こちらが平地の場合でも80キロの距離で交信ができました。

モービルアンテナを使うことで、アマチュア無線のハンディ機でもそうであったように、1W機のデジ簡機でも十分に実用の範囲で使えることが体験できるはずなので、皆様も、高い5W機を買う前にぜひ一度、モービルアンテナを使ってみてください。

管理人オススメのデジ簡ハンディ機をご紹介!コレを買えば間違いなし!