出入国在留管理庁に所属する入国警備官と入国審査官とは

入国警備官は、法務省出入国在留管理庁に所属する公安職の国家公務員です。不法入国者・不法滞在者の調査や摘発、収容した場合の処遇や送還などを任務としています。

一言で言えば、日本に悪意を持つ外国人を入国させない「水際の番人」と言えます。

入国警備官の使命
入国警備官は、法律に違反する外国人に対して厳正に対処し、日本の安全と国民生活を守ることを使命としています。

また、すでに入国し、入管法に違反している疑いのある外国人に対しても調査を行い、摘発や収容を実施し、退去強制令書が発付された場合には国外へ強制送還する業務も担っています。

入国警備官は、強制退去の命令を受けた外国人を空港まで護送し、直ちに送還できない場合には、茨城県牛久市および長崎県大村市にある収容施設へ収容します。

主な勤務地は出入国在留管理庁本庁や空港、港湾施設ですが、これらの施設が近隣にない地域では、入国警備官の存在があまり知られていないかもしれません。しかし、彼らは不法滞在の外国人を内偵調査するため、全国各地で私服を着用しながら任務を遂行しています。

入国警備官の主な任務と役割

入国警備官の主な任務と役割
入国警備官は主に以下の4つの任務を遂行します。

違反調査 入管法に違反している疑いのある外国人について、入国警備官自身が得た情報や一般の方からの通報を基に調査を行います。調査の際には、外国人本人や関係者に出頭を求め、取り調べを行うこともあります。

摘発 違反調査の過程で必要がある場合、入国警備官は裁判所の許可を得て強制的な捜索を行う権限を有しています。また、入管法に違反している外国人を発見した場合には、その身柄を拘束することが可能です。

収容 摘発された外国人の一部は、地方入国管理局に設置された収容施設に「収容」されます。入国警備官は、収容施設の警備や収容手続きを行い、収容中の外国人の処遇にも対応します。

送還 収容された外国人は、入国審査官による違反審査を受けた後、退去強制の決定が下された場合、速やかに国籍国などへ送還されます。

参照元:法務省公式サイト http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan06.html

入国警備官の制服と装備品

入国警備官は通常の警備業務ではスーツタイプの紺色の制服と制帽を着用します。一方、港湾施設で密入国の警戒を行う際には、紺色の活動服に「IMMIGRATION」のロゴ入りベストを着用します。

また、入国警備官はその職務の遂行において、特殊警棒やけん銃の携帯が認められています。

第六十一条の四 入国審査官及び入国警備官は、その職務を行うに当たり、武器を携帯することができる。 2 入国審査官及び入国警備官は、その職務の執行に関し、事態に応じて合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。

出典:「入国管理及び難民認定法」(昭和二十六年政令第三百十九号)

スーツタイプの制服を着用する際には、制服警察官とは異なり、けん銃は上着の下にヒップホルスターで秘匿携帯します。

使用銃器はこれまで長らく日本の官用けん銃『ニューナンブM60』でしたが、Strike And Tactical(ストライクアンドタクティカルマガジン) 2017年3月号にて、M360Jサクラ短銃を配備していることが明らかになっています。

都道府県警察では3種類の回転式および、2種類の自動式けん銃が主流

 

また、出入国在留管理庁は緊急車両を独自に配備しているほか、水際での密入国対策は警察の水上警察隊とも連携を行っています。

入国審査官と入国警備官の違い

出入国在留管理庁には、入国警備官とは別に入国審査官が配置されています。どちらも国家公務員ですが、入国審査官は行政職、入国警備官は公安職です。

制服の違いは胸の徽章のみですが、入国審査官には階級制度がありません。入国審査官は、国家公務員採用一般職試験に合格し、各地方出入国在留管理局の面接を経て採用されます。その後、一定のキャリアを積むことで入国審査官となります。

入国審査官の主な業務は、外国人の出入国審査や在留審査、難民認定業務などです。

入国警備官に求められる資質

入国警備官は正式な司法警察員ではありませんが、国家公務員法上は公安職に分類されています。不法滞在者の摘発業務では、早朝や深夜の執行、工場など危険な場所への立ち入りが必要となるため、高い身体能力と瞬時の判断力が求められます。

税関職員、入国審査官、入国警備官の違い

入国審査官、入国警備官、税関職員はいずれも出入国に関する業務を担当しますが、それぞれの所属省庁が異なります。

そして、税関職員もけん銃の携帯が認められています。

  • 入国審査官・入国警備官:法務省 出入国在留管理庁に所属し、外国人の出入国管理を担当
  • 税関職員:財務省に所属し、貨物の密輸や禁制品の取り締まりを担当

税関職員は、違法薬物や銃器の摘発など治安維持の最前線を担っているため、入国警備官や警察とも密接に連携しています。

日本国内に輸入できない禁制品とは大麻やアヘンなどの禁止薬物、銃器などが挙げられますが、入国の際の手荷物検査で、現地で買った無修正の雑誌をあざとく見つけると別室に連れ込み、所有権放棄を制服とポーカーフェイスの威圧感で迫るのも彼ら税関職員です。

また、国内へ輸入される各種の嗜好品などにしっかりと高い関税をかけるのも彼ら税関職員です。

税関(CUSTOMS)の武装は諸外国を見ても珍しいことではありませんが、日本の財務省職員の一部もけん銃で武装していると思うと感慨深いものがあります。税金滞納や無修正雑誌の持込などをしてはなりません。

まとめ

入国警備官は、日本の安全と国民生活を守る重要な役割を果たしています。密入国や不法滞在を防ぎ、違法行為を行う外国人を摘発・収容し、適正な手続きを経て送還する業務は、日本の治安維持に欠かせません。また、入国審査官や税関職員とも連携しながら、国境を越えた犯罪の防止に努めています。