日本警察が現在配備している拳銃は、「回転式拳銃(リボルバー)」と「自動式拳銃(オートマチック)」に分類されますが、その中でも、全国の地域警察官に広く配備されている主力は、現在でも回転式拳銃です。
これは、日本警察が重視してきた「安全性」「信頼性」「整備性」に理由があります。

回転式拳銃は構造が比較的単純で、作動不良が少なく、誤操作による暴発リスクも低いとされており、長年にわたり、日本警察では標準の小型火器として採用されてきました。
もっとも、近年では警察装備全体の近代化に伴い、一部では自動式拳銃への更新や用途別配備も進んでいます。
■ 日本警察拳銃の変遷
戦後から長らく、日本警察の標準拳銃として広く配備されていたのが、新中央工業(後のミネベア)によって開発・製造された国産回転式拳銃「ニューナンブM60」です。
1960年の制式化以降、全国警察で事実上の標準拳銃として運用されました。
38口径弾を使用する5連発リボルバーであり、小型軽量かつ構造が堅牢で、主として外勤の制服警察官に貸与されました。
しかし、1990年代に製造終了となり、老朽化や部品供給問題、耐用年数の限界などから、2000年代以降は後継機種への更新が段階的に進められています。
その後継として導入されたのが、アメリカ・Smith & Wesson製の2種類の回転式拳銃です。
まず導入されたのが「M37 Airweight」で、その後、さらに改良型として採用されたのが「M360J SAKURA」です。
M360Jは、日本警察向け仕様として調整が施された38口径リボルバーで、軽量化と携行性向上が図られているのが特徴です。
現在、主に外勤警察官や私服勤務員では、
・ニューナンブM60
・S&W M37 Airweight
・M360J SAKURA
の3系統が主力回転式拳銃として運用されているとみられています。
■ 自動式拳銃の配備
一方、日本警察では従来から一部部門に自動式拳銃も配備されています。
自動式拳銃は装弾数が多く、再装填速度にも優れるため、対テロ・対組織犯罪・機動捜査隊による初動捜査など、高危険度任務向け装備として使用されてきました。
過去には、自治体警察時代から引き継がれたアメリカ軍供与装備として、45口径のコルト・ガバメント系拳銃が一部警察で使用されていた例も知られています。
近年では、限定的な運用事例と考えられていますが、東京オリンピック・パラリンピック警備強化を背景に、警視庁警備部の一部へSFP9、同自動車警ら隊にGlock 45が配備されたことが報じられました。

現在、自動式拳銃は主として、
・機動捜査隊
・SIT(特殊犯捜査係)
・組織犯罪対策部門
・機動隊 / 銃器対策部隊など各機能別部隊
・特殊部隊SAT
など、より危険な事案へ対応する部門を中心に配備されています。
配備拳銃として知られているのが、
・SIG SAUER P230(32口径)
・Smith & Wesson M3913(9mm口径)
などです。

特にM3913は、9mm拳銃弾を使用する自動式拳銃であり、対武装犯事案やテロ対処などを想定した装備とされています。
このように、日本警察の拳銃装備は、長らく回転式拳銃を中心に発展してきました。しかし近年では、治安環境や対テロ対策の変化に伴い、任務内容に応じた自動式拳銃の運用も徐々に拡大しているところです。
詳しく見ていきましょう。

ミネベアミツミ株式会社(旧・ミネベア株式会社)
ベアリングや電子部品のメーカーとして知られている『ミネベア(当時の日本ミネチュアベアリング)』は1981年10月、新中央工業、東京螺子製作所、新興通信工業、大阪車輪製造の4社を吸収合併し、同時に社名を「ミネベア株式会社」へ変更しました。現在のミネベアミツミ公式サイトの情報によると、沿革にもこの事実が記載されています。
新中央工業では、戦後日本の小火器製造を担った企業の一つであり。警察や防衛庁向け装備品(自衛隊向けでは1982年に採用されたSIG SAUER P220のライセンス)の生産を行っており、ミネベアは同社を吸収したことで銃器製造技術と生産設備を引き継いでいます。
日本で戦後、拳銃の設計・製造実績を持つ企業としては、少なくともミネベアのほか、国内ナンバーワンの猟銃メーカーである株式会社ミロク製作所があります。ミロクは1961年に火器の製造許可を受け、国産拳銃『リバティチーフ』『スペシャルポリス』の製造を開始。翌年、主に米国へ輸出されました。リバティチーフについては、警察庁の拳銃トライアルとの関連を指摘する推察もあります(ただし、同社の参加を裏付ける一次資料は確認されていません)。
以後、ミネベアは日本では数少ない小火器メーカーの一社となり、国産拳銃の開発・製造で培われた技術基盤を受け継ぐことになります。
ニューナンブM60

旧・新中央工業が開発・製造した国産の官用回転式けん銃です。装弾数5発、使用弾薬は.38スペシャル弾で、1960年に警察庁で制式化されました。

画像は市販の遊戯銃
以降、各都道府県警察へ広く配備されたほか、皇宮護衛官、海上保安官、法務省、麻薬取締官などにも配備され、日本の法執行機関における標準的拳銃の一つとなりました。
設計はアメリカ・Smith & Wesson社の「M36 チーフスペシャル」の影響を受けていますが、ニューナンブM60は単純コピーではなく、日本人向けに大型化や各部再設計が行われています。
モデルには外勤用とされる3インチ銃身型と、私服用とされる2インチ短銃身型の2種があります。
90年代に保持性向上のため、グリップ形状改良が行われ、ベークライト製グリップ下部の『ランヤード・リング』と小指が干渉する問題を改善しました。
使用される.38スペシャル弾は、反動制御性と実用威力のバランスに優れ、20世紀後半には世界各国警察でも広く採用された警察用拳銃弾でした。
新中央工業では競技射撃用途などを意識した「ニューナンブ・サクラ」と呼ばれる試作モデルも試作しました。これは長銃身化、大型木製グリップ、可変照準器などを備えた競技向け仕様として、海外輸出も視野に入れられましたが、製造には至りませんでした。
後年、日本警察向け回転式拳銃として採用された「M360J SAKURA」にも同じ“SAKURA”名称が用いられている点は興味深いところです。
ニューナンブ関連情報
- 自衛隊の中の司法警察である警務隊では過去、ニューナンブではなくコルト・ディテクティブ・スペシャルを配備。
- 防衛庁の新拳銃トライアルに新中央工業では自動式の『ニューナンブM57』を試作。
- アームズマガジンに「リバティチーフがニューナンブになった可能性も…」という記事がある。
“ニューナンブ”が登場する作品
社会正義の象徴、そして“日本警察そのもの”を体現する装備として、ニューナンブM60は数多くの警察小説や映画作品にも登場しています。
高倉健主演の「駅 STATION」は実銃のニューナンブが登場した映画作品です。警察当局の撮影協力を得ているとされています。

出典:東宝 「駅 Station」1981年

特に有名なのが、大沢在昌による警察小説シリーズ『新宿鮫』です。作中では、主人公・鮫島警部が携行するニューナンブM60に対し、密造銃製造者である木津要が、
「コピーするならちゃんとコピーすりゃいいものを。できそこないだよ。このニューナンブってやつは」
と評する場面があります。これは、ニューナンブM60の源流が『チーフスペシャル』であることを踏まえた台詞でもあります。
一方で、作品の題名にもなっている鳴海章の小説『ニューナンブ』では、こんな印象的な一文があります。
「アメリカ製の拳銃なんてイモだよ。ニューナンブこそ、ニッポンのお巡りさんの象徴だと思わないか。」
引用元 鳴海章:著『ニューナンブ』
こちらはニューナンブを肯定的に捉える描写が登場。単なる性能比較ではなく、「日本の警察官としての矜持」や「職業のアイデンティティ」としての意味合いを込めた台詞となっています。
長年、日本警察の標準拳銃として運用されてきたニューナンブM60は、実用品としてだけでなく、日本の警察文化や創作世界においても独特の存在感を残しているのです。
では―その“イモ”を詳しく見ていきましょう。
Smith & Wesson(スミス&ウェッソン)
Smith & Wesson は、19世紀から続くアメリカの老舗銃器メーカーです。
特に回転式けん銃(リボルバー)の分野では世界的に知られており、20世紀のアメリカ警察を象徴するメーカーの一つでもあります。
同社の小型回転式けん銃「M36 Chiefs Special」は、私服警官や刑事向け拳銃として広く普及しました。
さらに、その軽量型である「M37 Airweight」は、アルミ合金フレームを採用することで携行性を向上。私服勤務時や非番時の携行拳銃(off-duty weapon)としても人気を集めました。
現在のアメリカ警察では、グロック系など小型自動式拳銃への移行が進んでいるものの、S&W製小型リボルバーは依然としてバックアップガンや私物携行拳銃として根強い支持があります。
また、日本警察でもM37 AirweightやM360J SAKURAなど、Smith & Wesson系統の回転式拳銃が採用されており、日本の警察装備史とも深い関わりを持っています。
M37 Airweight(エアウェイト)
M37 Airweightは、Smith & Wessonの小型回転式拳銃「M36 Chiefs Special」をベースに開発された軽量モデルです。
M36がスチールフレームを採用していたのに対し、M37ではフレームをアルミ合金化することで大幅な軽量化を実現。「Airweight(エアウェイト)」の名称も、この軽量構造に由来しています。
装弾数は5発、使用弾薬は.38スペシャル弾。小型・軽量で携行性に優れることから、アメリカでは長年にわたり私服警官、刑事、非番時携行(off-duty carry)用拳銃、バックアップガンとして広く使用されてきました。
1990年代以降、アメリカ警察ではグロックをはじめとする高容量9mm自動拳銃への移行が進み、リボルバーは主力拳銃の座から後退したものの、Jフレーム系小型リボルバーは、現在でも一部警察官や民間市場において、携帯性・信頼性を重視する用途で一定の支持を維持しています。
日本警察向け仕様では、ランヤードリング追加、管理番号刻印など独自仕様が施されていることで知られています。Uncle Mike’s製ラバーグリップが標準装備されています。Airweightの文字が白ヌキで刻印されます。
また、日本警察では2000年代以降、ニューナンブM60更新用としてM37 Airweightの導入が進められました。
以後、制服警察官向け回転式拳銃の標準仕様は短銃身化が進みました。
M38 ボディーガード エアウェイト
ここでひとつ、興味深い情報があります。トイガンメーカーのタナカ社によりますと「一部限定的に存在が確認されている」とのことです。

画像は市販の遊戯銃
『M38 ボディーガード エアウェイト』は、S&W社のJフレームシリーズに属する小型回転式けん銃で、M37と同じく軽量なアルミフレームを採用。
ただし、M37と異なる最大の特徴は、ハンマー部分がフレームの一部に覆われた「ハンマーシュラウド」構造になっている点です。
この独特な形状は、銃を素早く抜く際にハンマーが衣服に引っかかることを防ぐ設計となっています。
すなわち、抜き打ち射撃を前提に開発されたモデルです。
当然ながら、制服の上から新型樹脂製アンモナイト・ホルスター」を装着して警らを行う地域警察官に、このM38が配備されている可能性は極めて低いと考えられます。
この銃の特徴から判断すれば、むしろ私服の下にホルスターを隠し持ち、秘匿して任務にあたる警察官が使用している可能性が高いといえるでしょう。
さらに「抜き打ち」「咄嗟の射撃」といった状況が想定される任務を考えるとすれば、おそらく警視庁警備部の警護課(いわゆるSP)や、道府県警察本部の警護員、あるいは重要要人警護を担当するPO(Protection Officer)などの部門が浮かび上がってきます。
このような銃が「一部限定的に存在が確認されている」というタナカ社の表現は、具体的な配備先を明らかにしない含みを持たせたものとなっており、聞く側の想像力を刺激します。
つまり、拳銃の構造から任務の輪郭がうっすらと浮かび上がるM38のような銃は、警察の“内部構造”に思わず思索を誘う存在でもあるのです。

いずれにせよ、日本警察が一部で配備しているというM38 ボディーガード エアウエイトについての詳細は不明ゆえに妄想は受け手の自由です。
M360J SAKURA
現在、日本向けM37系調達は終了したとみられており、警察庁では後継としてM360J SAKURAへの更新が進められています。
同じくスミス&ウェッソン社(Smith & Wesson)が開発した次世代型リボルバー M360。
このモデルをベースに、日本の警察庁の特別な要望に応じてカスタマイズされた特注モデルが、「M360J SAKURA(サクラ)」です。
前述のM37エアウェイトが本国において製造中止となったことを受け、日本警察が次期制式拳銃を選定。
そして最終的に、M37の後継・発展モデルであるM360を基に、日本独自仕様に再設計されたのが、このM360J SAKURA(サクラ)です。
2006年から調達が開始され、例によって随意契約によりミネベアミツミが国内の代理店として納入を担当しました。

画像は国土交通省外局の警備救難機関が配備する『海サクラ』画像の出典 海上保安庁第9管区海上保安本部公式サイト[/caption]
海上保安庁も配備。
都道府県警察官に貸与されるサクラけん銃にはニューナンブM60やM37と同様、カールコードを装着するためのランヤードリングが備わる。通常、鉄芯入りのカールコードを介して帯革と連結される。[/caption]
2006年以降、各都道府県警察本部に広く配備が進み、2011年時点ではおよそ25,000丁が配備済みとされており、これは日本警察全体の拳銃配備数の約1割を占めていました。

画像は実銃(画像の出典 海上保安庁第9管区海上保安本部公式サイト)
海上保安庁版のSAKURAも警察庁のものとほぼ同じだが、側面の微妙な箇所に同庁のシンボルマークが入る。
全国の警察本部で地域警察官に貸与されている現行けん銃『M360J”SAKURA”』は現在も配備数が増加傾向にあり、法務省入国警備官への配備も確認されています。
特徴と改良点
M360J SAKURAは、オリジナルモデルM360と以下の点で異なります。
グリップの延長:
小指までしっかりとかかる長めのグリップに変更。これは、ニューナンブM60の改良型でも見られた変更で、特にランヤード・リング部分に小指が干渉しないようにするための改良です。フィンガーチャンネル付きグリップ:
グリップに指のかかりを確実にするためのフィンガーチャンネルが設けられており、銃の保持感が格段に向上したと評価されています。この種の機能は全ての射手に対応するものではないため、逆に嫌う向きもあります。グロックの例においては最新モデルでフィンガーチャンネルが廃止され、原点回帰しています。刻印とロゴ:
側面には 「SAKURA M360J NMB」 の刻印が施されており、さらに一部の個体では銃身側面にMinebeaのロゴも確認できます。キーによるロックシステム:
S&W社が開発したセーフティロック機構を搭載。鍵を使って内部機構をロックできる安全装備が備わっています。ランヤードリング:
グリップ底部には、ニューナンブやM37と同様、ランヤード・リングを装備。日本警察ではこのリングに鉄芯入りのカールコードを連結し、拳銃の紛失や強奪防止に用いています。
警察庁以外への配備

M360J SAKURAの配備は警察庁にとどまりません。実際には、
出入国在留管理庁(法務省外局)
国土交通省の外局(例:海上保安庁)
といった政府機関においても、公用けん銃として配備されています。
M360J SAKURAに構造不具合の発覚
一見、信頼性の高い新型けん銃として高評価を得ていたM360J SAKURA(サクラ)。しかし、2009年に問題が発覚。
当時の報道によると、銃内部や銃身の付け根部分にクラック(ヒビ)が入った個体が全国でおよそ200丁確認され、警察庁が緊急回収を実施しました。
この問題は、以下のメディアによって報じられました。
警察拳銃に不具合=200丁、全国に回収指示-納入業者に原因究明要請・警察当局
全国の警察官が使用する米国製の拳銃約200丁に小さな亀裂が入る不具合が相次いで見つかったことが13日、警察関係者への取材で分かった。
(中略)
不具合は09年1月、県警の拳銃担当者から「ひびが入った」との報告があり発覚。この際は新品に交換したが、昨年春から夏にかけ、他の複数の県警からも同様の報告が寄せられた。購入から2~3年の新しい拳銃だったことから経年劣化の可能性は低く、警察庁は昨年9月、不具合の実態を調べるため、全国の警察本部にサクラの一斉点検を指示。11月までに銃内部に亀裂のある拳銃約200丁が見つかったという。(2011/01/13-20:28)
引用元 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011011300888
不具合の内容
- 銃身の基部や銃内部にヒビが発生
- 耐久試験における想定を下回る結果
- 経年劣化ではなく、設計段階や製造工程上の問題が疑われました
安全性と信頼性が最も重視されるべき警察装備において、全国規模で不具合が発生したという事実は深刻です。
重大事故(暴発、破裂など)は報告されておらず、幸い人的被害には至りませんでした。
警察庁は、スミス&ウェッソン社および輸入代理のミネベア社に対し、原因の究明を正式に申し入れたとされています。
「サクラ」は、既存のモデルの製造中止を受けて導入されたものであり、小型・軽量化を目的にアルミ合金を採用している点が注目されますが、銃器において軽量化は持ち運びやすさや操作性の向上を目的とする一方で、強度や耐久性とのバランスを欠くと、今回のように長期間の使用に耐えられないリスクが生じてしまいます。
さらに、問題発覚からの対応がやや後手に回った印象も否めません。
県警から警察庁への初報告は2009年とのことですが、一斉点検は2010年の秋となると、「全国点検」への判断に1年近くを要しており、警察庁内部で問題の重大性についての認識共有や意思決定に遅れがあったと見られます。
仮にその間にも配備された不具合品が現場で使用されていたとすれば、安全リスクは現実のものだった可能性があります。
この問題に関して、その後の公式な続報や詳細な調査結果は報じられていませんが、2020年代においてもなおSAKURAは調達・配備が継続されていることから、何らかの対策・改良が施されたと考えるのが妥当です。
銃身側面の「Minebea」ロゴが特徴的
銃のディティール面で注目すべきは、「Minebea」刻印の存在感です。
特に、「ストライクアンドタクティカルマガジン」2016年5月号の表紙に登場したM360J SAKURAの個体では、以下の点が確認されています:
フレーム右側面に「SAKURA M360J NMB」の刻印
銃身左側面に、白ヌキでデザインされた「Minebea」のロゴ
このロゴは、無骨なけん銃のデザインにあって、どこかスポーツ用品的でモダンな印象を与えており、日本の製品らしい繊細な意匠とも言えます。
「銃器全般に対するイメージのよくない日本の国柄云々」などとウィキペディアの「新中央工業」の項目に誰かが個人の感想を書いていましたが、銃器全般に対するイメージのよくない国柄でありながら、ミネベアミツミでは自社のブランドを誇らしげに押し出しているところが好印象と言えます。
S&W M360J SAKURA はアメリカ製か?日本製か?
この点には複数の説が存在しており、おおむね以下の2つに大別されます:
アメリカ・スミス&ウェッソン社の本国製造
日本・ミネベア社によるライセンス生産
実際、これほどまでに銃身に「Minebea」の名を刻み、国内仕様に適合するカスタムが徹底されている状況を見る限り、後者の「国内ライセンス生産」の可能性も十分に考えられます。
しかしながら、2009年に発覚した「クラック問題」に関する時事通信の報道では、明確に「アメリカ製」と記載されていますので、実際はアメリカ製です。
警察拳銃に不具合200丁、全国に回収指示-納入業者に原因究明要請・警察当局
全国の警察官が使用する米国製の拳銃約200丁に小さな亀裂が入る不具合が相次いで見つかったことが13日、警察関係者への取材で分かった。警察庁は全国の警察本部に不具合の見つかった拳銃の回収を指示。国内の納入業者に対しては、原因究明をするように要請した。関係者によると、不具合が見つかったのは米メーカーの回転式拳銃で通称「サクラ」。
典拠元 時事通信 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011011300888
また『Gun Professionals』の2015年9月号でも、開発・製造のほぼすべてをS&W社で行っており、ミネベア社ではグリップやランヤードリングの追加といった極細かな”改修”にとどまるのみという記述があります。
これらのソースから、銃自体の製造はアメリカで、日本警察仕様として銃の左側面に『SAKURA』の文字や管理番号の刻印、それにグリップの換装、ランヤードリングの装着といった細かな改修は日本国内のミネベアミツミ社で行われ、同社経由で警察庁に納入されていると見られます。
また、同モデルは若干数がアメリカ合衆国の民間市場で流通しているという指摘もあります。
いずれにせよ、SAKURAという製品は、日本警察における運用実態やニーズに即して独自に改修され、国内での取り扱い・整備・調達が完結している点で、事実上の“日本仕様銃”であることに変わりはありません。
ただし、ニューナンブと同じく、警察もS&W社もミネベアミツミも本製品について詳しい仕様などを公表しておらず、不明です。
P230
90年代半ばから、全国の警察本部で私服警察官、SP / 要人警護員に配備されています。

安全を求める日本警察の要求で、シグ・ザウアー社が搭載したある秘策は、実際に撃ったことがある射手によって、「最悪」との評価が出ています。その理由とは……。

M3913
スミス&ウェッソンのM3913は同社のセミ・オートマチック「M39」を基本とした9mm口径の第三世代型自動けん銃です。

オリジナルのM3913と日本警察仕様との違いは、外見から見る限りではトリガーが黒色、グリップ下部にランヤードリング追加の独自改修といった点です。

Heckler & Koch
ドイツの銃器メーカーとして知られるHeckler & Koch(H&K)は、日本警察とも意外に縁が深いメーカーです。
同社と聞くと、多くの方は特殊部隊や対テロ部隊が使用するサブマシンガン「MP5」を思い浮かべるでしょう。
実際にMP5は特殊銃として警察のSATや海上保安庁特殊警備隊(SST)、海上自衛隊特別警備隊(SBU)などで運用されてきた実績があり、日本の法執行機関においても広く知られた存在です。


しかし、日本警察とH&Kの関わりは特殊銃だけではありません。
同社は拳銃分野でも早くから日本警察に採用された実績を持っています。とくに有名なのがP9Sシリーズです。

また、H&K製拳銃は特殊部隊向け装備としても採用例が確認されています。
詳細な配備状況は公表されていませんが、報道映像や公開訓練などから、特殊部隊員がH&K製拳銃を使用している様子が確認されたこともあります。
近年は、P2000やSFP9など、H&K製オートピストルの配備がめざましいでしょう。
SFP9
陸上自衛隊ではすでに2020年、それまでのP220(9mm拳銃)の後継として300丁あまりの新型9mm拳銃・SFP9が制式配備されており、将来的には12,000丁の調達が予定されています。
一方、警察庁での採用も複数のオープンソースから答え合わせ済みです。

ドイツの日刊紙『ブラックフォレストメッセンジャー』では、2020年に日本がSFP9を新規に取得したと報じており、これは2021年に開催された東京オリンピック警備向けの装備の一つと見られています。
『彼ら(HK社)はまた、成功したSFP9モデルのけん銃2,000丁を日本の警察に納入したことを誇りに思っています。これらは来夏のオリンピックの安全確保のために特別に使用されます』
出典 https://www.schwarzwaelder-bote.de/inhalt.oberndorf-a-n-paukenschlag-bundeswehr-kehrt-hk-ruecken.c5a94795-95ca-4022-a606-0605256b5c74.html
すでに47都道府県警察に2,000丁のSFP9が配分されていても不思議ではありません。
分野外ですが、初めてじっくり拳銃を見た気がする。 聞くところによると新しいモデルとのこと。 pic.twitter.com/AlWSNu5GYr
— エスハイ (@esuhai1991p) June 16, 2021
SFP9は、H&Kが現代の法執行機関や軍向けに開発したストライカー式自動拳銃です。
フレームには軽量なポリマー素材を採用し、アクセサリー装着用のピカティニー・レールを標準装備。
さらにバックストラップやサイドパネルを交換できるモジュラー構造となっており、射手の手の大きさに合わせてグリップ形状を調整できます。
作動方式はストライカー式で、トリガーセイフティを備えるなど、安全機構や基本設計はグロックに代表される現代のポリマーフレーム拳銃と共通する思想でまとめられています。
そのため、現在の軍・警察向け拳銃としては比較的オーソドックスな構成といえるでしょう。
一方で、SFP9は優れたトリガーフィーリングでも知られています。トリガープルは比較的軽く、リセットも明確であることから、射撃競技の分野でも高評価です。
また、SFP9(ドイツ軍・警察向け仕様ではVP9/P30系統を含む関連モデル)は欧米の警察機関で広く採用されていますが、2019年にはドイツ連邦警察でマガジンキャッチ周辺に関する不具合が指摘され、一部拳銃の改修が実施されました。
報道によれば、装備品との干渉などによって意図せずマガジンが外れる事例が確認され、メーカーと関係当局による対策が行われています。
こうした問題はその後に改修措置が講じられたとされており、現在もSFP9はドイツをはじめ各国の軍・警察機関で運用が続けられています。
そういえば、どこかの国のお巡りさんがパトカーに乗った時に、グロックのマガジンがスポーンと……。
USP
ドイツの銃器メーカーであるH&K(Heckler & Koch)が1990年代初頭に開発した自動式けん銃がUSP(Universal Self-loading Pistol)です。

USPは、冷戦終結後の新しい軍・法執行機関向け拳銃市場を見据えて開発され、1993年に発表されました。作動方式は一般的なショートリコイル方式で、ティルトバレル機構を採用。ダブルアクション/シングルアクション方式を基本とし、高い耐久性と信頼性を特徴としています。

H&K製品ならではの堅牢性や品質の高さは優秀なものの、構造そのものはオーソドックスです。ただし、当時急速に普及していたポリマーフレーム・ハンドガンの需要増にも適応したことで、世界各国の軍や警察機関で採用されました。
日本では、警視庁や愛知県警察、神奈川県警察などの特殊急襲部隊(SAT)で運用されていることが公開資料や報道写真などから確認されています。また、警視庁警備部警護課(SP)でも配備されている可能性が指摘されています。
![ストライクアンドタクティカルマガジン 2021年 11 月号 [雑誌]](https://m.media-amazon.com/images/I/51gFpAb7LAL._SL500_.jpg)
SATで運用されるUSPには、ウェポンライトが装着された個体も確認されています。公開された写真では、ITI(Insight Technology)社製M2ウェポンライトを装着した例が見られ、暗所での作戦能力向上を目的としていたと考えられます。
ウェポンライトは対テロ特殊部隊にとって必須の装備品で、薄暗い建物内のクリアリングのほか、強力な照度で被疑者の視界を奪い、制圧の補助にも使用されます。
また、陸上自衛隊の特殊作戦群では、2004年の創設当初からUSP Tacticalを特殊作戦用拳銃として運用していたことが知られています。USP Tacticalはネジ切り銃身や照準器の改良などが施された派生型で、サプレッサー(消音器)の装着を前提とした設計が特徴です。
P2000

USPをベースに改良・小型化を図ったモデルが、H&KのP2000です。
また、2018年に実施された東京オリンピック・パラリンピック警備訓練でも、P2000を携行するSPの姿が報道で確認済みです。

P2000は、交換式バックストラップを採用しており、射手の手の大きさに合わせてグリップサイズを調整できるのが特徴です。さらに、日本警察で運用される個体にはランヤード装着用リングが備えられており、拳銃の脱落や紛失防止にも配慮されています。
トリガー機構には、H&K独自のCDA(Combat Defence Action)システムを採用したモデルが確認されており、ダブルアクションの安全性と比較的軽快なトリガープルを両立しています。
日本では、2010年5月6日に放送された日本テレビ系特集番組「密着!警視庁SP 要人警護の舞台裏」において、警視庁SPが実弾射撃訓練で使用する様子が紹介され、その存在が広く知られるようになりました。
詳しくは不明ですが、日本警察で確認されるP2000は、CDA(Combat Defence Action)と呼ばれるトリガーシステムを採用したモデルの可能性があります。もっとも、警察が採用した個体の詳細仕様は公表されておらず、確証はありません。
少なくとも2018年以降、後継モデルへの更新が行われていなければ、2026年現在でも警視庁警備部警護課(SP)のほか、埼玉県警察銃器対策部隊(RATS)、高知県警察、岡山県警察の銃器対策部隊などで運用されている可能性があります。
P2000は日本警察における代表的なH&K製拳銃の一つであり、専門誌でも特殊部隊や警護部門を中心に配備されていると分析しています。
余談ですが、警視庁SPを題材とした映画『藁の楯』では、SP隊員の装備としてP2000を模したプロップガンが使用されていました。警察装備に馴染みのない方にとっては、SPがP2000を使用していることを知るきっかけの一つになった作品といえるかもしれません。
SIG
すでに解説したP230のほかにも各種SIGのオートマチックが配備されています。
P226

P226
日本の公的機関におけるSIG製拳銃といえば、自衛隊が採用したP220(9mm拳銃)が有名です。1982年には、それまで使用されていたコルト・ガバメントに代わる新制式拳銃として採用され、国内ライセンス生産が行われました。
一方、前述の通り警察では1990年代にP230の採用が確認されていますが、その後、特殊急襲部隊(SAT)の公開訓練映像などでP226とみられる拳銃の存在も確認されています。

P226はP220をベースに開発された複列弾倉採用モデルで、装弾数の増加を実現したのが特徴です。アメリカ海軍特殊部隊SEALsをはじめ、世界各国の軍・警察特殊部隊で採用されており、高い信頼性で知られています。
近年、頻繁に公開されるようになったSATの訓練映像では、隊員がウェポンライトを搭載したP226Rを携行している様子が確認されており、日本警察においては主にSAT向け拳銃として運用されている可能性があります。

なお、海上保安庁や自衛隊の特殊部隊も配備しています。


自衛隊のP220では単列弾倉(シングルカラムマガジン)を採用しているため装弾数は9発ですが、P226では複列弾倉(ダブルカラムマガジン)の採用により15+1発へと大幅に増加しました(.40S&W弾仕様および.357SIG弾仕様は12+1発)。
また、SIGシリーズの特徴であるマニュアルセフティを持たない設計はP226にも受け継がれています。その代わり、撃発状態のハンマーを安全に戻すためのデコッキングレバーを備えており、安全性と即応性の両立を図っています。
一方、SIG Sauer P230の日本警察仕様では、運用上の安全管理要件に対応するため、手動式のセーフティ機構が追加されています。これは日本の警察の要求にメーカー側が応じて設計を調整したものです。
日本警察で確認されているP226が興味深いのは、一般の警察官が使用するニューナンブM60やSAKURA、自衛隊のP220とは異なる「特殊部隊向け拳銃」である点です。
なぜSATが、従来の警察拳銃とは異なる大容量弾倉を備えたハイキャパシティ・オートマチック拳銃を選択したのか。その背景を探ると、対テロ作戦や人質救出といった特殊部隊特有の任務内容が見えてきます。

P228

P228は、P226をベースに開発されたコンパクトモデルとして1989年に登場しました。
アメリカ軍では「M11」として採用され、各種法執行機関でも運用例が知られています。
フルサイズのP226と比較すると、スライドやグリップが短縮されており、全体的なコンシールメント性が向上。
コンパクト化によりP226より装弾数は減少したものの、13+1発という十分なキャパシティを確保。現在では、9mm仕様のP229系統が事実上の後継ポジションとなっています。
国内では、P226系と並んで海上保安庁などで運用例が確認されています。また、SAT関連では、警察庁の初期公開映像でP228とみられる個体の確認例があります。
近年公開されているSAT装備例では、レール付きP226系の確認頻度が高く、2026年現在、警察の公開訓練でP228は登場しておらず、実際の運用状況の詳細は不明です。
Glock
現在の日本警察において、グロックは最も広く知られた海外製自動拳銃のひとつです。

公開されている配備例を見ると、初期の警視庁特殊急襲部隊(SAT)ではコンパクトモデルのグロック19、2010年ごろには警視庁警備部警護課(SP)の公開訓練において、フルサイズのグロック17系とみられる拳銃を携行した隊員の姿も確認されています。
そして、2021年の警視庁自動車警ら隊、2025年の大阪府警での地域警察官へのグロック45の配備まで、着々とその歴史を歩んできました。
Beretta
80年代、米軍のサービスピストル受注競争にBeretta92が勝利し、M9として採用され一躍名を馳せたイタリアに本社を置く大手メーカーのベレッタ。ベレッタ・シリーズについては以下の記事で詳しく解説しています。

Beretta92は現在まで各国の多くの機関で採用されていますが、米国ではすでに法執行機関の3分の2がグロック。米軍の次世代けん銃もSIGに奪われ、苦戦中です。あ、でも日本の自衛隊さんがグレネードランチャー買ってくれました。
意外なことに日本警察では、ベレッタ92シリーズのバーテック、センチュリオン、90-Twoの3種類を配備していると考えられています。
また、日本国内におけるベレッタ社製拳銃の公的機関配備例としては警察のほか、厚生労働省麻薬取締部でもM85が確認されています。

警察官はけん銃の予備弾を持つ?
現在では制服警察官、私服勤務員ともに予備弾の携行はなし。けん銃に装填されている弾丸が携行弾のすべて。サクラやエアウェイトであれば5発。
ただし、昭和31年ごろまでは制服巡査がベルトに予備弾納めを着用し、10発あるいはそれ以上の予備弾を携行していた例も。それはなぜ?携帯無線機がすべての外勤員に行き渡らない時代、迅速な応援を見込めないことが背景にあったと考えられます。

現在の刑事部の特殊班SITや警備部の特殊部隊SATにおいては、わざわざ多弾数のベレッタやグロックを採用するほどですから、おそらくは装填可能の上限、さらに予備マガジンも携行しているものと推測できます。
なお、上述した警視庁の「グロック45」の一時的な配備の際は自動車警ら隊員一人につき、弾丸10発が支給されたそうです。一方、大阪府警でもG45の配備が確認されていますが、制服の腰回りからは予備マガジンは確認できません。
警察官に貸与されているけん銃のまとめ
警察官に貸与されるけん銃は、携帯性、操作性、整備性、安定供給体制、さらには調達コストなど、複数の要素を総合的に考慮したうえで選定されています。
こうした選定基準を満たした拳銃が、警察庁による調達を経て、各都道府県警察へ配備されています。
これらの拳銃は、国内商社が輸入代理店として取り扱っており、警察庁はそれらの事業者を通じて調達を実施しています。調達方式には随意契約が用いられる例も確認されています。

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