アメリカ警察特集コラム第2回『テーザー銃は安全な銃か?』

アメリカの警察というと、すぐに被疑者制圧のためにけん銃を発砲するイメージがありますが、事実、日本とは比べ物にならないほど発砲に躊躇がありません。

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ただし、現在のアメリカの警官たちは通常の銃以外にも、火薬の力で電撃針を飛ばし、容疑者の皮膚に食い込ませた上で電流を流すテーザー銃、防犯用品としてお馴染みの催涙ガススプレー、さらには日本の警察も配備している「催涙コショウを詰めた模擬弾をCO2で発射するガス銃」なども装備し、状況を見極めて使い分けているのが実情です。

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上記のCO2で発射するガス銃を販売するメーカーでは「ノンリーサル(非致死性)」と明記しています。

テーザー銃とは?

現在、警察のさまざまな逮捕戦術が注目を浴びていますが、とくに全米どの警察でもスタンダードな装備といえば、テーザー(Taser)です。

ただ、テーザーに関しては死亡例があるため、「ノンリーサル(非致死性)」とするのは語弊もあります。

テーザー銃は引き金を引くと、細い銅線ワイヤーのついた電極針が発射され、被疑者の体に食い込むと同時に、放電による耐え難いほどの電気ショック(サイクル)を数秒間にわたって与えます。

被疑者は多くの場合、そのまま体が硬直し、昏倒します。

過去数十年に渡って護身用品として人気の「スタンガン」は、先端の電極を暴漢に直接押し当てることで5万ボルトの電気ショックを与え、一時的に動けなくすることができます。

テーザーはそれまでのスタンガンに飛び道具的な優位性を持たせたものです。

当初は火薬によって電極針を射出していましたが、現在の発射ソースは圧縮窒素になっています。

通常、テーザーの本体先端にカートリッジを装填し、発射のたびにカートリッジは交換されます。

警察が主に使う法執行機関専用モデルの「X26」では、市販品より飛距離が2倍長く、10メートルまで電極針が射出されます。

死亡例も

ニューヨークタイムズでは、以下のような記事が掲載されています。

テーザー銃の使用に対するより厳しい規制を支持するアムネスティ・インターナショナルの2012年の声明によると、米国では2001年以降、逮捕時や拘置中にスタンガンで感電して少なくとも500人が死亡している。

2012年にCirculation誌に掲載された研究によると、テーザー銃による胸部へのショックは心停止や突然死につながる可能性があるという。

この研究では、遠くからテーザーX26の電気ショックを受けて心停止に陥った8人の記録を調べた。そのうち7人が死亡した。

出典 https://www.nytimes.com/article/police-tasers.html

テーザーの使用により、被疑者が命を落とした事故が全米で発生しています。

しかし、X26テーザーの製造元であるアクソン社は「テーザー銃はリスクがないわけではありませんが、警棒、拳、テイクダウン、タックル、衝撃弾(ゴム弾やビーンバッグ弾)よりも安全であることが証明されています」としています。

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日本国内での規制

「針が飛ばないスタンガン」であれば、購入や自宅敷地内で所持することは合法です(それ以外の場所で隠し持つと罪に問われる場合があります)。

しかし、テーザーは火薬または圧縮ガスによる発射タイプ、いずれも発射される電極針が金属製であることから、日本国内では銃刀法による規制のため、輸入等での購入、所持もできません。

90年代、日本国内で女子高校生が男にテーザーを撃たれ、怪我を負ったことが大々的に報じられ、即座に取り締りが厳しくされています。

まとめ

アメリカの法執行機関では現在、銃とテーザーの両対応がスタンダードです。

しかし、電撃によるショック自体もときには被疑者に重大な後遺症を与えたり、死亡させるに至る例もあるほか、警官が被疑者と対峙した際、銃とテーザー銃を取り間違えて誤射する事故も度々発生しており、使用者の不適切な使用により必ずしも被疑者の身体に安全な器具ではないようです。

また、日本国内では違法になるため、海外から個人輸入等で購入しないように注意が必要です。