アメリカ警察特集コラム第4回『なぜアメリカの警官たちはトンファーを捨てたのか』

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U.S Police column

ドーナツと並び、アメリカの警察官のイメージとして語られることが多いのが、警棒を器用に回転させる姿です。映画やテレビドラマでは、取っ手付きの警棒を片手でくるくると回す警官の姿が頻繁に描かれてきました。

しかし、その光景も現在ではやや過去のものとなりつつあります。

かつてのロス市警のオフィサーたち。(写真:Chris Yarzab)

かつてアメリカの警察装備を象徴する存在だったのが、取っ手付きの「サイドハンドル・バトン」です。

これは、琉球古武術のトンファーに着想を得て開発された警棒で、日本では「トンファー型警棒」と呼ばれることもあります。ハリウッド映画などにも数多く登場したため、アメリカ警察装備の象徴として強い印象を残しました。

アメリカの警察では警棒を一般的に「Baton(バトン)」と呼び、特に取っ手付きのものを「Side-Handle Baton(サイドハンドル・バトン)」と分類しています。その中でも特に広く知られたモデルが、Monadnock PR-24です。1980年代から1990年代にかけて、多くの警察機関で採用されました。

もともとアメリカの警察官は、木製のストレート警棒を使用していました。これらの警棒は単なる護身用装備ではなく、一部を白く塗装して交通整理に利用したり、遠距離の警官同士で合図を送る用途に使用された例も知られています。

その後、防御動作や制圧技術への応用が可能なサイドハンドル・バトンが普及しました。取っ手部分を利用して相手の動きを制御しやすいことから、従来のストレート警棒とは異なる運用が期待されていました。一方で、外観上の威圧感が強いと指摘されることもありました。

近年では、アメリカの警察でも装備の軽量化や携行性の向上が重視されるようになり、ストレート型警棒や伸縮式警棒への移行が進んでいます。

そのため、かつてほどサイドハンドル・バトンを日常装備として携行する警察機関は多くなくなったとみられています。

一方、日本の制服警察官が使用する警棒は、主に金属製の伸縮式特殊警棒です。携帯性に優れる反面、使用時には展開操作が必要になります。対してサイドハンドル・バトンは、常に使用可能な状態で携行できるという特徴がありました。

1994年の警察制服・装備品改正以降、日本の警察では木製警棒に代わって金属製の特殊警棒が本格的に導入され、現在に至るまで配備が続いています。こうした警棒の変化には、携帯性、防護性、強度、そして現場での運用性など、さまざまな要素が関係しています。以下の記事で解説しています。

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現在、ボルチモア、デンバー、サクラメント、ロングビーチ、サンタアナ、フィラデルフィアといった主要都市の警察では、ストレートバトンが積極的に採用されています。

トンファーは、その凛々しさゆえに権力の象徴として市民に威圧的な印象を与えることもありました。しかし、ストレート警棒と比べて防御にも使用できるため、むしろ穏やかなイメージを持たれることもありました。

警備中のロサンゼルス市警察機動隊の対ライオット装備ではストレートバトンを携行。 Photo by Jonathan McIntosh

かつてのサイドハンドル・バトンは、単なる警察装備としてだけでなく、アメリカ社会における警察権力の象徴として語られることもあります。

その象徴的な出来事として知られるのが、1991年に発生した「ロドニー・キング事件」です。

この事件では、アフリカ系アメリカ人のロドニー・キング氏が、警察による停止命令を無視して逃走した末、ロサンゼルス市警(LAPD)の警官らによって激しく制圧されました。その際、警官らがサイドハンドル・バトンや、大型の金属製懐中電灯を用いて繰り返し打撃を加える様子が市民によって撮影され、全米に報道されました。

映像は大きな衝撃を与え、警察による過剰な実力行使ではないかとの批判が高まりました。しかし、1992年に行われた裁判で警官らの多くが無罪評決を受けると、ロサンゼルスでは大規模な抗議活動と暴動が発生します。

いわゆる「ロサンゼルス暴動(ロス暴動)」では、市内各地で放火や略奪が相次ぎ、警察施設だけでなく一般店舗も被害を受けました。特に韓国系商店への襲撃は大きく報道され、武装した店主たちが自衛にあたる姿も世界的に知られることとなりました。

暴動の拡大を受け、州兵や連邦部隊が投入され、最終的には数千人規模の治安部隊が出動する事態となりました。この一連の騒乱では多数の死傷者が発生し、建物被害も広範囲に及んだとされています。

こうした事件以降、アメリカでは警察装備や実力行使のあり方が改めて議論されるようになりました。

現在でもサイドハンドル・バトンを採用する警察機関は存在しますが、近年のパトロール警官装備では、より携帯性に優れたストレートバトンや伸縮式警棒が主流になりつつあります。

たとえば、New York City Police Department(NYPD)やLos Angeles Police Department(LAPD)の近年のパトロール装備を見ると、かつて映画などで印象的だった大型のサイドハンドル・バトンを常時携行する警官は少数派になっています。

現在のアメリカ警察では、木製またはポリカーボネート製のストレートバトン、あるいはASP製の伸縮式警棒などが広く使用されており、装備全体も軽量化・簡素化が進む傾向にあります。

ただし、場合によっては伸縮式警棒特有のアクションが市民に無用な威圧感を与えることもあります。

ショットガンの薬室に弾丸を装填する『ポンプアクション』と同じく、伸縮式警棒を伸ばすことは攻撃の宣告でもあるためです。

また、トンファーとともにかつてアメリカの警官が頻繁に携行していた「マグライト」も、近年では姿を消しつつあります。マグライトは長い金属製の懐中電灯であり、ストレート警棒の代用品としても使用されていました。さらに、サイドハンドル・パーツを取り付けることで、簡易的なトンファーとしても利用できました。

しかし、ロドニー・キング事件ではトンファーだけでなくマグライトも使用されていました。そのほかの市警察でも、被疑者を警官が過剰に加害する例が多発し、訴訟事案が多く起きました。

ロサンゼルス市警では、警官によるこのような過剰制圧防止のため、現在では殴れないようにペリカン製の小型LEDライトに更新し「金属製懐中電灯」の携行および使用は許可のない限り、その使用を制限しています。

ただし、デモの鎮圧に当たる際には、ロサンゼルス市警では2016年時点でもトンファーを使用しており、完全に撤廃されたわけではありません。

つまり、かつてのアメリカ警察では、警棒による直接的な制圧が重視される傾向がありましたが、近年では催涙スプレーやテイザーなど、より多様な低致死性装備を組み合わせて対処する運用へと変化しています。

その結果、かつて映画などで象徴的に描かれた大型のサイドハンドル・バトンは、現在のパトロール装備では以前ほど目立つ存在ではなくなりました。

こうして、禁止令の制定、安全な法執行器具の普及、伸縮式警棒の導入などによって、かつて警官の象徴であったトンファーは徐々に姿を消しつつあるのが、現代アメリカ警察の実情です。

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現代警察バトン(警棒)の簡単な歴史と題されたページ。
https://www.policeone.com/police-products/less-lethal/batons/articles/244481006-A-brief-history-of-modern-police-batons/

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