この記事では、本物の覆面パトカーから、その「モドキ」まで――世間を賑わせた覆面パトカー関連の事件の数々をご紹介します。
捜査車両による威嚇行為や、交通取り締まりに見せかけた不審な挙動、さらには一般車両を装った“モドキ”による騒動まで、覆面パトカーをめぐる事件は予想以上に珍妙です。
Contents
- 1 事件1:職務質問した私服警察官を暴力団員と誤認した事件
- 2 事件2:【偽覆面】自家用車を偽覆面にして通勤中に一般人を威嚇した本職警察官
- 3 事件3:【本物覆面】緊急走行中の覆面パトカーがまさかの速度違反で検挙!
- 4 事件4:【本物覆面】交通機動隊長、覆面で速度違反し取締り受け、事後に赤灯点灯させ違反隠匿はかる
- 5 事件5:【偽覆面】若者が“罰金”をその場で徴収される詐欺事件が発生!
- 6 事件6:【偽覆面】警備員が“ニセ覆面”で煽り車両を停止「警察本部だ、なに煽ってんだ」
- 7 事件7:【本物覆面】“オシャボリ・ラブ”に覆面パト出動!? 公務中に“特殊恋愛”
- 8 まとめ:覆面パトカーをめぐる事件は、なぜか“おかしな”話が多すぎます
事件1:職務質問した私服警察官を暴力団員と誤認した事件
中でも印象的なのが、2001年11月18日に群馬県高崎市で発生した、「職務質問した私服警察官を暴力団員と誤認し、自転車で逃走する際にクルマにはねられて死亡した少年の事件」。
事件の概要は以下の記事で引用した。
職務質問した私服警察官を暴力団員と誤認し、自転車で逃走する際にクルマにはねられて死亡した少年の遺族(両親)が、群馬県を相手に総額約2億4600万円の損害賠償を求めた国家賠償訴訟の口頭弁論が17日、前橋地裁で開かれた。
事件当時に覆面パトカーを運転していた元警察官が証言台に立っている。
問題となった事件は2001年11月18日に発生している。同日の午後9時ごろ、群馬県高崎市浜尻町付近で、無灯火状態で走行する自転車2台を同所付近で覆面パトカーに乗ってパトロールしていた群馬県警・高崎署の私服警官3人が発見。助手席にいた巡査長がクルマを降り、2人に対して「おい、兄ちゃん」などと声を掛けた。
引用元:一人でサイレンや赤色灯の操作はできない…元警官が証言 https://response.jp/article/2004/11/19/65746.html
この日、夜の街を無灯火で走行していた2台の自転車に、私服警察官3名が乗る覆面パトカーが接近。
助手席の巡査長が車を降り、「おい、兄ちゃん」と声をかけたところから事態は一変。
警察官たちは、当時の繁華街を、まるで反社会勢力のような風貌で巡回していたと報じられており、声をかけられた大学生たちは、それを“組員”と誤認してそのまま逃走します。
警察官は警察手帳を提示せず、さらに赤色灯やサイレンも使わずに覆面パトカーで追跡。逃げた大学生のひとりは、その直後に交通事故に遭い、命を落としました。
さらに問題を複雑にしたのが、その後の対応。事故現場に居合わせた警察官たちは、被害者の救護を行わず、現場から即座に立ち去った上、「事故は見ていない」とする虚偽の報告書を作成。この行為が虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われ、前橋地裁に起訴されました。
一方、検察は当初の追跡行為そのものについては不起訴とし、最終的に民事では警察側が遺族に5000万円を支払うかたちで和解が成立しています。
本物の覆面パトカーに乗った本職の警察官が、まさか“本職”と間違われる――それは、皮肉を通り越して哀しい現実と言えるかもしれません。
なお、当時使用されていた覆面車両の車種は報道されていませんが、当時のトレンドを踏まえると、リアウィンドウにフルスモークを施し、トランクリッドにTLアンテナを立てたセダンなどが想定されます。
ワックスで磨き上げられたこれらの車両は、当時の交通覆面にそっくりで、結果的にどっちの本職の車にも見えることがしばしばで、善良な市民には迷惑でした。
90年代から2000年代初頭にかけての“VIPカー”スタイルそのものが、このような誤認を助長したのかもしれません。
覆面パトカーは、正義の象徴であると同時に誤解や疑念の的にもなり得ます。だからこそ、運用には透明性と慎重さが求められるはずですが――。
事件2:【偽覆面】自家用車を偽覆面にして通勤中に一般人を威嚇した本職警察官
覆面“モドキ”が本職警察官とは、誰が想像しただろうか――“自家製”覆面パトカーで通勤中に威嚇。驚愕の煽り運転とその末路
2012年、愛知県警・運転免許課に所属していた現職の巡査部長が、自家用車を“偽覆面パトカー”に改造して通勤中に一般市民を煽り運転で威嚇していたという、前代未聞の事件が発覚しました。
しかも、車はアメリカ製のSUV。そこに取り付けられていたのは、海外の警察車両で使用されるような赤と青のLEDライト。
さらに、報道によればサイレンも「パトカーのサイレンと音色が似ていた」仕様だったといいます。
そんな車で、巡査部長は他車両を強引に停車させ、「警察だ」と名乗って威嚇。実際、本当に警察だったわけですが、通勤途中のため公務外。
被害者のドライバーは不審に思い、その場で「変な車に無理やり止められて威嚇された。警察だと名乗っている」と、110番通報。
やがてこの巡査部長は、脅迫容疑で逮捕されてしまいます。
報道の参照元:
1. 1万円札偽造の疑いで再逮捕 高速道で脅迫の元愛知県警警察官
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2104U_R21C12A1CC1000/
2. 愛知県警元巡査部長に懲役4年6月 名古屋地裁判決
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0104G_S3A300C1CC0000/
3. 相手にモデルガンを突きつけて脅迫、出勤途中の警官逮捕
https://response.jp/article/2012/07/10/177593.html
拳銃型スプレーに家宅捜査で本物の銃、偽札も作成?エスカレートする違法行為
さらなる驚きはその後に続きます。自宅を家宅捜索したところ、実銃まで発見されたのです。
この元・巡査部長、実は過去にフランスの日本大使館に勤務していたことがあり、その時に回転式拳銃と実弾を日本に持ち込んでいたことも判明。なんとそれを自家用車に保管していたというのです。
高速道路上で並走する車の運転手を拳銃型の催涙スプレーで脅したなどして、脅迫や銃刀法違反(加重所持)などの罪に問われた愛知県警運転免許課の元巡査部長、遠藤孝被告(50)=懲戒免職=の判決公判が1日、名古屋地裁であり、後藤真知子裁判長は懲役4年6月(求刑懲役6年)の実刑を言い渡した。後藤裁判長は判決理由で、「危険性は非常に高く、悪質」と指摘。「現職の警察官であったにもかかわらず著しく規範意識に欠けており、強い非難を免れない」と述べた。判決によると、遠藤被告は昨年7月、名古屋市内で運転していた車から並走する男性に、拳銃型のスプレーを向けて脅迫。また2007年に赴任先だったフランスから回転弾倉式拳銃1丁を持ち込み、弾丸といっしょに自家用車に保管するなどした。
出典 https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0104G_S3A300C1CC0000/
名古屋地裁はこの元警官に対し、懲役4年6カ月(求刑6年)の実刑判決を下しました。
この事件、これで終わりではありません。なんとその後、元巡査部長は偽札作りでも再逮捕されているのです。
自宅からは偽造された一万円札が見つかり、再び警察のお世話に。
一万円札を偽造したとして、愛知県警捜査2課などは21日、元同県警交通部運転免許課の巡査部長、遠藤孝被告(50)=脅迫や銃刀法違反などの罪で公判中=を通貨偽造の疑いで再逮捕した。
出典 https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2104U_R21C12A1CC1000/
もっとも、この件については不起訴処分となっていますが、異常なまでの行動ぶりに唖然とするばかり。
なぜ、彼は“エリート扱い”されていたのか?
ここでひとつの疑問が。この元巡査部長は2007年には県警から日本大使館への出向経験もあり、当時は上司からの信頼も厚く“エリート扱い”されていたといいますが、その後は県警の運転免許センター勤務になっています。
いずれにせよ、交通セクションに長く在籍していた元巡査部長は、当然ながら交通法規のプロ。おそらく法律の“抜け道”にも詳しかったことでしょう。
だからこそ、偽装した覆面パトカーで堂々と煽り運転を行い、法の網をすり抜けようとしたのかもしれません。結果的には諸々の犯罪がバレて、懲戒免職の上、実刑判決を受けることとなりましたが……。
いずれにせよ、覆面パトカーを装い、煽り運転に走る――それが一般人ではなく、現職の警察官だったというのだから言葉もありません。
ここでアニメオタクに思い起こさせるのが人気漫画「逮捕しちゃうぞ」のアニメ版。同作に『現状の生温い交通取り締まりを良しとしない警視庁の一部エリートが“偽覆面パトカー”を夜な夜な走らせて過激な交通取り締まりを行う…』というものがありました。
事件3:【本物覆面】緊急走行中の覆面パトカーがまさかの速度違反で検挙!
2014年6月、信じがたいニュースが全国を駆け巡りました。なんと、緊急走行中の本物の覆面パトカーが、速度違反で摘発されたのです。
摘発されたのは、岡山県警笠岡警察署交通課に所属する交通取締用の覆面パトカー。運転していたのは30代の巡査長で、岡山市内の裁判所へ交通事件に関する逮捕状を取りに向かう途中でした。
山陽自動車道を時速140キロで緊急走行中だったその車両を撮影したのは、自動速度取締装置(いわゆるオービス)。
結果、巡査長は速度超過容疑で書類送検というまさかの展開に。
実は、パトカーが“緊急走行”していれば、いつでも速度違反が許されるというわけではありません。高速道路での速度超過が認められるのは、交通違反の現行取締や、凶悪犯の追跡といった緊急性の高い場面のみ。
今回のように「逮捕状を請求しに行く」という目的では、たとえ公務中であっても140キロの走行は“違反”と見なされたようです。
覆面パトカーが“取り締まられる側”に回るという、極めてレアなケースとなりました。
情報参照元:http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20140703-1328015.html
事件4:【本物覆面】交通機動隊長、覆面で速度違反し取締り受け、事後に赤灯点灯させ違反隠匿はかる
こちらも現職警察官の交通機動隊長(警視)による覆面パトカーでの非違行為という点でかなり珍しいケースです。
緊急走行中ではない覆面パトカーでスピード違反を起こし摘発される→見逃してもらうため、その場で赤色回転灯を点灯させて「交通取り締まり中」を偽装したとのことです。
県警によると、警視は9月27日午前、甲州市内の国道20号を公用車(覆面パトカー)で、法定速度を25キロ上回る85キロで走行。速度超過違反で停止を求められた際、違反を見逃してもらうため助手席の30代の警部補に指示し、赤色回転灯を点灯させて「交通取り締まり中」と説明させた。
出典:朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASPD9357VPD8UZOB007.html
警視の行為は犯人隠避教唆の容疑、警部補は犯人隠避の容疑にあたるとして、それぞれ書類送検されたとのことです。
事件5:【偽覆面】若者が“罰金”をその場で徴収される詐欺事件が発生!
偽の覆面パトカーに停車させられた若者が、「違反金」と称して現金を騙し取られるという悪質な詐欺事件でした。
2011年3月、舞台は北海道岩見沢市。被害に遭ったのは滝川市在住の20代男性。
男性が車を運転していたところ、着脱式の赤色灯をつけた車両にパッシングで停車を促されました。停車後、その車に乗っていた2人組の男たちは「警察です」と名乗り、「スピード違反。罰金は1万3,000円」として現金をその場で“徴収”。
男性はそれを信じて現金を手渡してしまいました。しかしコレ、実は真っ赤な回転灯を付けた真っ赤な偽物。
男たちはともに紺色の作業着を着用しており、冬の取締り時に交通機動隊が着る黒色ブルゾンに似た服装だったとのこと。現場の偽装は周到だったようです。
道警岩見沢署は「警察官がその場で違反金を現金で徴収することは絶対にない」と注意喚起を行いましたが、犯人逮捕の報道はありません。
ちなみに、交通取締を担当する交通部には、所轄交通課・交通機動隊・高速隊などが存在し、それぞれに覆面パトカーが配備されています。乗務員は原則として制服着用。また、赤色灯についても本来は反転式(自動起立式)のものを搭載するのが基本です。
着脱式赤色灯を使用するのは、主に機動捜査隊や所轄の刑事課の車両で、交通取締においては珍しい仕様。その点からも、今回の“偽覆面”の正体が偽者であったことは明らかです。
2016年2月には青森県で偽の覆面パトカーで女性から現金をだまし取った男が逮捕される事件も。
赤色灯がついているからといって、覆面パトカーと信じてしまうのは早計です。
事件6:【偽覆面】警備員が“ニセ覆面”で煽り車両を停止「警察本部だ、なに煽ってんだ」
2006年、世間をザワつかせたのは、本物そっくりの覆面パトカーで一般車両を威嚇・停止させたという前代未聞の事件。しかも運転していたのは、まさかの「警察官でもなんでもない」警備員でした。
この警備員の男、なんと交通取締用覆面パトカーをほぼ完璧に自作。反転式の赤色灯を搭載した日産セドリックに身を包み、まるで本物の交通機動隊のような出で立ち。さらに制服風の服に身を包み、手にはニセの警察手帳まで用意。
煽ってきた一般車両を見つけるやいなや、赤灯を点灯しサイレンを鳴らして停止させ、窓越しにこう一言――
「警察本部だ。なに煽ってんだ」
警備員とは思えぬ堂々たる“職質”に、止められた側も驚いたはず。ですが、これは完全な偽装警察官による不法行為。もはや悪質という言葉では足りないレベルです。
この男、後の供述で「警察官の試験に落ちた」と語っており、その執念(方向は間違っているが)はある意味でリアル。犯行に使ったセドリックの再現度は非常に高く、一部のマニアすら唸るレベルだったとか……。
“偽覆面”事件、京都でも発生。こちらも犯人は警備員!
2009年には、京都でも似たような“偽パト事件”が発生しています。今度の車両はなんとトヨタ・ヴィッツ。こちらはダッシュボードに赤色灯を設置し、サイレンを鳴らしながら走行。
しかし、運悪く(いや当然の報いか)本物のパトカーに追跡され、そのまま事故という結末に。
なんとこの事件の犯人もまた警備員。なぜこうも、警備員と偽覆面パトカーが結びついてしまうのか……。共通しているのは、“やりすぎた正義感”と、限界突破した“なりきり魂”でしょうか。
ちなみに補足すると、ダッシュボードに赤色灯を置いて点灯させる方式は、本物の覆面パトカーでも実際に行われている手法です。特に機動捜査隊などがこのタイプを使っています。
だからこそ見分けがつきにくく、今回のような事件は非常に悪質かつ厄介なのです。
http://response.jp/article/2009/01/05/118530.html
事件7:【本物覆面】“オシャボリ・ラブ”に覆面パト出動!? 公務中に“特殊恋愛”
「それ、なんの業務ですか?」思わずそうツッコミたくなるような仰天事件が2014年秋、発生。
2014年秋、大阪府警にて、驚くべき不祥事が発覚。なんと現職の警察官同士が、勤務中に覆面パトカーを使って“私的な恋愛行為”に及んでいたというのです。
恋愛そのものは個人の自由ですが、その舞台に使われたのが公用車である覆面パトカーだったため、大きな問題となりました。
シンママの父の覆面パトカーにバットを振り下ろすボスママ(上級国民)が『スカッと動画』に登場するもコメント欄が大炎上した理由
勤務中の“出車”は、恋のはじまり?
この事件の当事者は、男性警部と30代の女性巡査長。男性警部はある宿直勤務の日、「巡視に行く」と申告して覆面パトカーで出動。
ところがその足で向かったのは、女性巡査長がいる飲食店だったそうです。その後、女性を自宅に送り届け、なんとそのまま1時間ほど自宅に滞在。
詳細な内容は明かされていませんが、一部のマニアはこの妖しい行為を「オシャボリ」と婉曲的に表現していたとのことです。
問題視されたのは、勤務時間中に公用車を私的目的で使用したという点。大阪府警本部はこの行為を、地方公務員法に違反する「非違行為」と認定し、二人を処分しました。
もっとも、発覚した時点で二人はすでに依願退職していたため、厳密な懲戒処分までは至らなかったようです。
実はこのような「覆面パトカーを用いた私的恋愛行為」は、過去にも例があります。
2012年には、長崎県警の46歳の男性警部が宿直勤務中に署を抜け出し、覆面パトカーで女性に会いに行くという事案が発生しました。
この件でも、男性警部は懲戒処分ののち、依願退職しています。
ここで少し裏話を。所轄署に配備されている覆面パトカーには、カーロケーション(=車両の動態情報発信システム)が搭載されていないケースも多いとされています。
そのため、いったん出動してしまえば、どこへ行っていたかを正確に把握することは難しく、今回のような“寄り道”ができてしまったのかもしれません。
しかし、いかにバレにくくとも、公用車の私的利用は厳格に禁じられています。ましてや、警察官は常に相互監視の世界。同僚からのチクリが待っています。
典拠元:朝日新聞 http://www.asahi.com/articles/ASH932W0RH93PTIL002.html
まとめ:覆面パトカーをめぐる事件は、なぜか“おかしな”話が多すぎます
覆面パトカーと聞くと、一般には違反や犯罪を見逃さない「正義の車両」というイメージがありますが、現実は必ずしもそうとは限らないようです。
本物の覆面パトカーが私的な目的や不適切な行為に利用されたケースもあれば、反対に市民が被害を受けた事件も数多く報告されています。
さらには、ニセの覆面パトカーを製作・使用して悪事を働く人物まで現れる始末。
実際に動作する赤色警光灯などを密かに車に取り付け、公道で本物の緊急車両のように振る舞うことは、道路交通法違反などに該当する重大な違法行為です。
もしこうした装備を実際に使用して他人を威圧・停止させるような行為に及んだ場合は、非常に重い処分を受けることになる可能性があります。
一応、下記の著名な事件は個別の記事として深掘りしていますのでご確認ください。
【衝撃】覆面パトが緊急走行!?→交差点で一般車と事故→運転手ら車内篭城→周囲『警察官の前に人としておかしいやろ!』→本物警察さん『あれは偽ものです…』
いずれにせよ、しょうもない事件ですね。
警察マニアが“重要参考人”に?――覆面仕様の私有車が招く思わぬ訪問
地域で警察官を名乗る詐欺事件などが発生した際、「警察マニア」と呼ばれる趣味人たちが思わぬ形で注目を集めることがあります。彼らの中には、実際の覆面パトカーに酷似した仕様の車両を所有・運転している人もおり、事件が近隣で発生した場合に、警察から事情を聴かれるケースが報告されています。
ある警察マニアの自宅付近で「警察官を名乗る不審者」が出没した事件では、本人が不在中に捜査員が自宅を訪れた例がありました。玄関先には「○○さんのお車の件でお尋ねしたいことがございます。ご連絡をお願いいたします」と記された刑事の名刺が残されていたといいます。
こうした事例は、警察が事件の捜査過程で関係情報を洗い出す中、過去に見かけた覆面風車両の情報をもとにマニア宅を訪問するケースとみられます。所轄署が以前から警察風の私有車両の存在を把握していた場合、「重要参考人」に準じた形で非公式に事情聴取を行うこともあるようです。
もちろん、大半の警察マニアは法令の範囲内で対象を研究したりなど、その趣味を合法的に楽しんでおり、犯罪とは無関係です。ただ、捜査員にとっては、「警察に興味のある人間」「警察車両のような私有車両」を保有する個人の存在も確認する要素の一つと考えるのは、そう不自然なことでもないようです。
いずれにせよ、警察風の車両を所有・運用する行為が、現実の捜査活動と接点を持つ可能性は否定できません。趣味の領域と本物の境界が近づきすぎたとき、このような訪問が「不利益」と感じられるのか、あるいは「思わぬご利益」と受け止められるのかは、当人の捉え方によって分かれるところです。もっとも、たとえ捜査の過程で不本意な対応を受けたとしても、こんな行為は許されません。