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シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

暴走族対策車のサンルーフ仕様は何のため?

今やほぼ絶滅危惧種となった暴走族に対して、各都道府県警察ではさまざまな複合的対策が講じられています。

見ていきましょう。

中でも、暴走族に対する機動的な取り締まりを行う専用車両として、「暴走族対策車」と呼ばれる交通用覆面パトカーが配備されています。

その見た目はというと、一見するとただのレガシィ・ツーリングワゴン。

せいぜいピーポくんのステッカーや無線用アンテナがついているくらいで、牧歌的でのどかな印象を受けるかもしれません。

【見破り術】覆面パトカーのアンテナの種類と進化論──ユーロ偽装から車内秘匿化への進化論…アンテナの歴史を追え!

……しかし、いざ緊急走行ともなれば豹変します。ルーフに赤色灯を2個同時に載せて圧をかけてくる上に……

フラットビーム風のLED警光灯が車内の前後左右に複数個仕込まれており、「ちょっとやりすぎでは?」というくらいの威圧感を放ちます。

光りスギィ!

覆面パトカーが着脱式赤色灯を『二個載せ』する理由は?

暴走族対策車に備わったサンルーフは何のため?

ところで、この暴走族対策車にはもうひとつ、非常に特徴的な装備があります。

それが、車体上部にあるサンルーフ。

「え、サンルーフ? 何のために?」と思われるかもしれませんが、これは景色を楽しむためのものではありません。

警察官が身を乗り出して動画を撮影したり、証拠採取のための撮影活動を行うためのものです。

さらには、暴走族に対して“エアガン”を使用するためのハッチでもあるのです。

……と言っても、ここで言う“エアガン”とは、一般的に売られている「エアソフトガン」とは別物です。

警察が使用しているのは、和歌山県のメーカー「PDI」が納入している、特殊塗料入りのペイント弾を発射する専用装備。

この「PDI」という会社は、エアガン改造パーツの製造で知られるメーカーであり、陸上自衛隊向けのペイントガンや、海上自衛隊の特殊部隊向け訓練用MP5型ガス銃なども手がけています。要するに、東京マルイと同じように、おもちゃ会社の顔をした官公庁向け訓練用品製造メーカーです。

警察がこのように、空気圧やガスを用いて非致死性の弾丸を発射する装備を導入しているのは、暴走族対策に限った話ではありません。

たとえば、警視庁のSIT(特殊犯捜査係)など刑事部門でも、アメリカ製のVKSペッパーボールライフルといった非致死性の発射機が配備されており、昨今の警察装備はじわじわとアップデートされ続けているのです。

捜査一課特殊班(SIT)が配備しているHK416そっくりの『Pepperball VKS』の機能とは

なお、アメリカの警察はさらに進化したGPS発射装置を使っており、粘着弾がドピュッと飛んでいきます。

ランチャー式GPS発信器投射機材「Starchase」とは

近年、新たに配備される暴走族対策車のラインナップには、エルグランドなど、いわゆるマイルドヤンキーや半グレといった層に人気の“威圧系”車種も登場。

見た目の威嚇力もさることながら、暴走族対策という任務において、存在感のあるフォルムが選ばれていることは明らかです。

ただし、車種が変わっても、その装備に垣間見える“任務の本質”は変わりません。

やはりサンルーフはしっかりと搭載されています。

どうやら、暴走族対策車におけるサンルーフは、ただの飾りではなく、採証活動などにおいて実用性抜群の極めて重要な役割を果たしていると言えそうです。

なお、暴走族への対策として、一部の県警では「黒バイ」――黒塗りの白バイ、というちょっとややこしくて実に強そうなバイク――も配備されています。

夜の闇にまぎれ、さながら公道のステルス兵器と化した黒バイは、暴走族たちにとってまさに“忍び寄る恐怖”そのものかもしれません。

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