非常通信とアマチュア無線


本来、アマチュア無線は金銭上の利益のためでなく、専ら個人的に無線技術に興味をもち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術研究のための無線通信業務、すなわち「アマチュア業務」が目的であり、そのほかの目的での利用は認められていません。

しかし、例外があります。それが非常通信です。

画像の引用元 http://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-4_Hijou/index-manual.htm

電波法(昭和25年法律第131号)第52条第4号の規定に基づく非常通信(地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、有線通信の利用ができないか、又はこれを利用することが著しく困難であるときに人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために行われる無線通信をいいます。)を行う場合は、免許状の目的等にかかわらず、運用ができます。

携帯電話は近くに基地局がなければ通信ができませんが、アマチュア無線は基本的に相手の無線機と直接交信しますから、災害時において確実な通信手段として役立つのも、もう一つの顔です。

実際、戦後日本で発生した二つの大震災、95年の阪神大震災と 2011年3月に発生した東日本大震災。これら二つの震災ではアマチュア無線が被災地からの通信、人命救助に貢献しています。

総務省によれば、実際の非常時において、非常の事態が発生し又は発生するおそれがあるかどうか、有線通信を利用できないか又はこれを利用することが著しく困難であるかどうか、人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のためかどうかの判断は、アマチュア局の免許人が判断するものであり、非常通信は状況に応じてアマチュア局が柔軟に行えるものとしています。ただし、その際アマチュア局の免許人は、あくまでもボランティアという性格で行うものとしています。

緊急時の非常通信用にアマチュア無線機を使う場合でも、あらかじめ無線従事者資格と局の免許状を取得していなければ使用はできません。

非常通信については下記URLを参考にされてください。

総務省アマチュア局による非常通信の考え方
http://www.tele.soumu.go.jp/j/ref/material/amahijyo/JARL
アマチュア無線局の非常通信マニュアル
http://www.jarl.or.jp/Japanese/2_Joho/2-4_Hijou/index-manual.htm

http://www.cosmos.zaq.jp/cosmos/team7043/kanham2013_bou_jarloo.pdf

こちらのページはJARLの職員で元電波監理局職員の方の防災シンポジウムにおけるアマチュア局の非常通信訓練のあり方に関する発言録ですが、非常通信の実際の実施と実施後の総務省への対応などが事細かく記載されていて大変興味深いです。

この中で、実際の非常通信においては「”非常”は三回でなくてもいい」とか「非常通信を行ったからといって、総務省にあとで怒られることはありません。むしろ人命を救助すれば電波の日に表彰されます」など興味深いお話がいっぱいです。

このようにアマチュア無線は、人命の救助にも使用されています。このような非常通信でボランティアを行うため、全国各地にはアマチュア無線家で構成された協力団体がそれぞれ設置されています。

協力団体では、普段から災害などの非常時の通信を想定した訓練を自治体や消防などの行政と合同で行っています。訓練では、訓練であることを明示するため送信内容の前に「クンレン」と送信します。

2014年、熊本県で震災をきっかけにお坊さんグループが防災チーム結成

熊本県で2014年に編成された僧侶らの防災チーム「浄土真宗本願寺派熊本教区アマチュア無線リーグJKAL」では、アマチュア無線を使った災害時の情報収集と人命救助を活動目標としています。JKAL設立に携わったのは浄土真宗本願寺派熊本教区の10人の僧侶ならびに6人の門徒だそうです。中でも正元寺の寺添和南住職は若いころのエピソードとして、交通事故の現場に遭遇し、アマチュア無線による救助要請を行ったことでアマチュア無線は命綱であると認識されたそうです。寺添住職はメンバーとともに愛車に何本もアンテナを立てて車載無線機を積み込んで非常事態に備えています。

典拠元 https://www.asahi.com/articles/ASLBH3CGYLBCTLVB004.html

近年の非常通信による救助事例

2018年10月、北アルプス剣岳中仙人谷で起きた山岳遭難で、登山者からのアマチュア無線による救助要請を傍受し、速やかに警察へ通報したとしてアマチュア無線家の男性が表彰されました。

典拠元 http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/20181017/CK2018101702000215.html

遭難通信と非常通信の違い

実は前述した非常通信と似た通信に『遭難通信』があります。遭難通信は船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥った場合に行う無線通信と定められています。

『遭難』という言葉のイメージから、山岳での遭難事故を連想させますが、本来、遭難通信は船舶の海難ならびに航空機の重大な危機が発生した場合に行われる緊急の通信です。

したがって、山岳での遭難などは前述の『非常通信』を行うこととなります。

まとめ

  1. 電波法第52条に「非常通信」が定められている
  2. 地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生した場合、非常通信が認められている
  3. 非常の事態が発生し又は発生するおそれがあるかどうか、有線通信を利用できないか又はこれを利用することが著しく困難であるかどうか、人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のためかどうかの判断はアマチュア局の免許人の柔軟な判断に委ねられている
  4. 非常通信の際、アマチュア局の免許人はあくまでもボランティアで非常通信を行う
  5. 非常通信であっても、あらかじめ無線従事者資格と局の免許状を取得していなければ使用はできない

このようにまとまりました。

アマチュア無線はローテクですが、災害時に最も力強い通信手段であり、アマチュア無線家は被災時の通信確保に頼りになる存在です。

この信頼性の最も高い防災拠点が日本の全国いたるところにすでに広く点在するわけですから、アマチュア無線は我々が今後も後世に残していかなければならない文化ですし、減災技術であります。


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