【聴ける!】デジタル・タクシー無線の受信方法

現在、タクシー無線や公共交通機関ではデジタル無線の採用が増えつつあり、タクシー無線では周波数割り当てが450MHz帯、電波モードは4値FSK方式の『STD-T102』ならびにQPSK方式の『STD-T61』の2種が使用されています。これらのデジタル方式を活かしたデータ通信による文字情報のやり取りが増加しており、音声による配車指令はアナログ時代より減少しています。

2023年に登場した『DJ-X100 受信改造済み』でより容易に受信が可能に

4値FSK方式の『STD-T102』であれば、2015年にAORから発売された『AR-DV10』にて以前から復調(音声化)が可能でしたが、長時間かかる場合もありました。しかし、2023年にアルインコが発売した『DJ-X100』では標準で『STD-T102』対応のほか、機能拡張の裏コマンド入力でQPSK方式の『STD-T61』にも市販のデジタル対応受信機として初めて対応。タクシー無線の受信が、より容易となりました。

この記事では『DJ-X100(受信改造済み)』にてデジタル・タクシー無線を受信する方法を解説します。

DJ-X100で受信する方法

『DJ-X100(受信改造済み)』にて『STD-T102』ならびに『STD-T61』の2種のタクシー無線を受信したい場合は以下のものが必要です。

デジタル・タクシー無線を受信するために必要なもの
  1. 『受信改造済みのDJ-X100』
    • 適切に受信改造されたアルインコDJ-X100
  2. 拡張機能を解放させるためのコマンド入力
    • T61モードや虫めがね機能などの拡張機能を解放するためのコマンド(いよいよ兄さんゴムつけた)をキーロック後に入力
  3. 誓約と同意
    • 拡張機能を使うにあたって『第三者の権利を侵害するために使わない』という誓約
    • 拡張機能を使うにあたって『電波法に反する使い方をした場合、刑事責任が課されることを理解している』という同意

筆者は以下のショップで受信改造バージョンを購入して受信できました。

コマンド入力で出現するデジタル変調方式『STD-T61(T61)』の各TYPE(1から4まで)を受信できます。現時点のノーマル機の仕様では周波数歯抜け、デジタル変調方式一部制限、アナログ10番A解読なしとなっており、ほとんど何もできないので、ノーマルのIC-R6以上に買う理由がないですよ。

DJ-X100(受信改造済み)によるタクシー無線(STD-T102)受信方法

『T102/B54』モードに合わせて受信します。復調にはホワイトニングコード(WC)の合致が前提です。DJ-X100(受信改造済み)のデフォルト状態では『WC』が『228』に設定されているので、そのままでは解析が発動せず、ケロケロの音すら出ません。受信の前に必ず『228』から『AUTO』に変更し、ユーザーコード(UC)も何らかの数値が入っていれば『OFF』に変更してください。WCもUCも通信ごと(車両ごと)に異なります。

DJ-X100(受信改造済み)ではWCの自動解析が可能で比較的容易に音声に復調することができますが、数分から数10分の放置でやっと音声として復調してくれることも多いようです。これは端的に配車指示を送るタクシー無線特有の短い交信時間が原因と推測されます。

ケロケロした復調前の音から突然音声が聞こえてくることがあるので、音量の扱いに注意してください。

DJ-X100(受信改造済み)によるタクシー無線(STD-T61)受信方法

『T61』モードに合わせて受信します。『STD-T61』の規格自体は業界で基本方式ですが、各社ごとに細かな改修を加えて運用されているのが特徴です。これに対応するため、DJ-X100(受信改造済み)では『T61』にTYPE1からTYPE4までの4つのコーデックを用意しています。

『T61』モードでも簡単に復調できるタイプもあれば、受信した状態でしばらく自動で解析させる、いわゆる「放置」したまま長時間待つタイプもあります。これは先に挙げたようにSTD-T61でも各社によって複数のタイプがあるためです。

あくまでコーデックが対応している場合にのみ音声が復調されるので、上記の4種類のいずれかに合致しない場合は残念ながら復調できません。

とはいえ、T61モードに対応する受信機は2024年現在、DJ-X100(受信改造済み)のみ。まさにT61モードの解析は最新デジタル対応機である本機の真骨頂と言えます。

タクシー無線の周波数を調べる方法

総務省の無線局情報検索を利用して、地元のタクシー・ハイヤー会社の周波数を調べることができます。

無線局等情報検索 – 総務省 電波利用ホームページ

『都道府県で検索』で自分の地域を指定し、『免許人名称』に目当ての会社名を入れて検索してください。もし、地元のタクシー会社が出てこない場合、IP無線を使用しているかもしれません。

また、電子書籍にも各地のタクシー会社の周波数が掲載されています。

ラジオライフ手帳電子版 ジャンル別データ編 2024 ~消防・航空・鉄道など~

ラジオライフ 手帳2024(電子版)はジャンル別データになっており、使いやすいです。

DJ-X100(受信改造済み)では電源投入後に『誓約』画面が表示される

なお、受信改造を施して裏コマンドを入力したDJ-X100では電源投入後の起動画面にて以下の文章が表示されます。

筆者の知る限り、受信機を使うにあたってこのような『同意』や『誓約』に準じた画面が用意された機種は過去になかったと思う。

 

『私は、電波法上、受信した通信の存在・内容を漏洩したり窃用したりすると刑事罰が課されることを理解しています。』

上記の選択画面で『はい』または『いいえ』を選択しますが、実はこの画面で『いいえ』を選び、同意しなかった場合でも本機をすぐに使用できます。ただし、せっかく広がった各種拡張機能は使えません。つまり、そのためにアルインコが用意した同意と誓約と言えるでしょう。

ここで『はい』を選んで同意した場合に限り、さらに『私が拡張機能を使う目的は窃用ではありません。そのようなことは絶対にしないと誓約します』さらに『拡張機能を使うにあたり第三者の権利を侵害しない範囲でのみ使用することを誓約します』との内容の2つの誓約確認画面が表示されます。まさに法的な『誓約書』にも似た文面です。

これら1つの同意と2つの誓約に電源投入のたびに毎回従わなければ、タクシー無線のT61モード復調、コード解析など拡張機能が使えないというわけです。同意も誓約もせずに使ってたら、この前まであったデジタルモード一覧からT61モードなどがごっそり消えたり、”虫めがね”も機能せず、大慌てした筆者です。

POCSAG方式のメッセージを受信

実は上記の制約画面に最も関係がありそうだと考えられるのが、タクシー会社が個別のタクシーへ配信するPOCSAG方式のメッセージです。実は受信改造後のDJ-X100ではT61復調のほか、POCSAG方式のメッセージを受信し、DJ-X100の画面上で閲覧することができます。端末上での保持データは最大3件ですが、このデータ通信(メッセージ)に含まれる内容は客の個人情報といった大変センシティブな場合も。まさにこのような情報にまで接することのできる受信機がDJ-X100というわけです。

 

しかし、このメッセージ受信については賛否両論、様々な憶測があるようです。発売当初からDJ-X100の徹底解説を行なっている『ラジオライフ』誌面でも厳密な取り扱いをすべきとしているほか、同誌編集長もXで『誓約画面が3回も出ることを理解してください』と注意喚起しています。

DJ-X100の秘話解析についてはラジオライフ2023年7月号で紹介されています。

なお、上に挙げた書籍はAmazonの『キンドル・アンリミテッド』に入会すれば、月額980円で読み放題・無料で読むことができます。

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いずれにせよ、DJ-X100の裏機能(拡張機能)を使うユーザー側はアルインコ側に『法を守ったうえで製品を使います』と誓ったことを忘れてはならないと言えるでしょう。私たちの趣味は電波法が深く関わっているのは言うまでもありませんが、この法に拠れば、その内容はもちろん、通信があった日時、場所、”通信の存在”そのものも漏らしてはなりません(したがって、このサイトに書いている”受信内容”の例は存在しないフィクションです)。

そうしなければ、例の『ICDU』と『TYPX』モードみたいにアップデートで塞がれてしまう可能性も。

DJ-X100に『ICDU』モードと表示されています。恐ろしい自衛隊の450MHzのデジタルIC-DUと推測されます。

https://twitter.com/jm3lgf/status/1668929796347428864

DJ-X100に『TYPX』モードと表示されています。

デジタル・タクシー無線の受信方法のまとめ

上記のように、デジタル・タクシー無線の受信復調にはアルインコのDJ-X100(受信改造済み)またはAORのAR-DV10などが必要で、受信にはややクセがあり、手軽に受信できるジャンルではありませんが、興味があれば無線技術の探究にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。もちろん、誓約等を守った上で刑事罰を受けないようにお願いいたします。

タクシー業界はここ数年、IP無線(携帯電話のデータ回線を用いて行う無線通信)や配車アプリの導入が相次いでいます。いつまでこのデジタル・タクシー無線が受信できるか不透明な部分もありますので、今のうちに研究しておくことをお勧めします。

かつての逸話ですが、タクシー無線の『名物』といえば、事件が発生した際に警察からタクシー会社の無線に警察無線が割り込んでくることがありました。指名手配犯捜査の協力要請等で、株式会社エニーなどが販売していた緊急通信システムを使って、警察通信指令センターから直接、タクシー無線に協力要請を出せたのです。無論、犯人が客として乗っていた場合のため「警察」とは名乗らずに「無線センター」などの通常使用しない名称を用い、運転手も指令側も「連絡A」や「連絡B」といった暗語や「忘れ物」「大きな落とし物」などといった暗号でやり取りをしていました。

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