450MHz帯域でPSK,FSK各種変調方式が使用されています。2023年にアルインコから登場した『DJ-X100 受信改造済み』にて受信がより容易となりました。
無線の『モービル運用』で業務を効率化している業種といえば、警察のほかにタクシー・ハイヤーがあります。タクシー無線とは配車の指令のためにもっぱら使用される業務無線で、周波数は450MHz帯です。
2023年現在、デジタル完全移行済みで、音声による配車指示はアナログ時代より激減した一方、データ通信による文字情報のやり取りが増えています。
ただ、最近のタクシー業界ではスマホを使用して配車指示をするシステムも併せて普及が進んでいます。
デジタル・タクシー無線は受信できる?できない?
タクシー無線は各社によって導入されている方式はさまざま。このうち4値FSK方式であれば、2015年にAORから発売された「AR-DV10」にて以前から受信復調が可能でしたが、2023年現在、アルインコのDJ-X100(受信改造済み)によって、安価に受信が可能となっています。
ただし、DJ-X100で受信する場合はT102のほか、受信改造ならびに裏コマンド入力で出現するデジタル変調方式『T61』の各TYPE(1から4まで)を受信できること、ホワイトニングコード(WC)の合致が前提です。DJ-X100(受信改造済み)ではWCの自動解析が可能で比較的簡易です。
ただ、いずれの機種でもタクシー無線の受信はひと手間かかるのが現状です。簡単に復調できるタイプもあれば、受信した状態でしばらく自動で解析させる、いわゆる「放置」したまま長時間待つタイプもあります。これは先に挙げたように4値FSK方式でも複数のタイプがあるためです。うまくタイプが合致しないと音声が『モガモガ』として、正常に復調できません。また、電波の強度やスケルチも深く関係しているようです。
先述の通り、DJ-X100でタクシー無線を受信したい場合は受信改造済みの固体が必要です。現時点のノーマル機の仕様では周波数歯抜け、デジタル変調方式一部制限、アナログ10番A解読なしとなっており、ほとんど何もできないので買わない方がいいですよ。
また受信改造後はT61復調のほか、POCSAG方式のメッセージを受信し、DJ-X100の画面上で閲覧することができます。このデータ通信(メッセージ)に含まれる内容は客の個人情報といった大変センシティブな場合も。
なお、これが理由なのか定かではありませんが、裏コマンドを入力したDJ-X100では、電源投入後の起動画面にて『私は電波法に反して情報漏洩した場合、刑事罰を受けることを理解しています』といった内容の選択画面が表示されます。

何やら例のワクチンの同意書のごとく、ものものしい文言が……。あなたは『いいえ』を選ぶか『はい』を選ぶか・・・?
実際、このメッセージ受信については賛否両論あるようで、一部では『アルインコの社内法務と開発は鬩ぎ合ったのでは』という憶測があるほか、DJ-X100の徹底解説を行なっている『ラジオライフ』誌面でも厳密な取り扱いをすべきとしています。
かつての逸話ですが、タクシー無線の『名物』といえば、事件が発生した際に警察からタクシー会社の無線に警察無線が割り込んでくることがありました。指名手配犯捜査の協力要請等で、株式会社エニーなどが販売していた緊急通信システムを使って、警察通信指令センターから直接、タクシー無線に協力要請を出せたのです。無論、犯人が客として乗っていた場合のため「警察」とは名乗らずに「無線センター」などの通常使用しない名称を用い、運転手も指令側も「連絡A」や「連絡B」といった暗語や「忘れ物」「大きな落とし物」などといった暗号でやり取りをしていました。