HF帯SSBモードの洋上管制や海上自衛隊アツギオーシャニック、7MHzもみんな聴けちゃうウワサの格安ラジオは高性能!

 

実は当サイトで”最強の航空無線受信機”としてオススメしている『IC-R6(受信改造済み )』は残念ながら洋上管制に非対応。その理由は下記記事にて詳しく解説しています。

『洋上管制』の解説・・受信改造済みのIC-R6でも航空無線の洋上管制が聞けない2つの理由

それならばと、お高いHF対応の受信機やHFアマチュア無線機で聞こうとお考えになるかもしれません。でも、実は予算1万円ほどで確実にSSBの上下各モードが受信できる人気の受信機材があります。

この記事の要点

  1. IC-R6ではできないHF帯のSSBを受信できる低価格で高性能な『SSB対応短波ラジオ』
  2. 人気のアマチュアバンド7MHz、洋上管制、その他各種HF通信を受信可能
  3. VHF帯エアバンドも受信可能、大口径スピーカーで聞きやすい
  4. HF用アンテナの設置は不要、付属ワイヤーアンテナで極めて優秀な受信感度
  5. HF無線およびエアバンド受信のための入門機として最適

この記事は長文になりますので、結論を先に申し上げますが、オススメです。

『SSB対応BCLラジオ』なら広帯域受信機やHFアマ機よりも安くSSB受信が可能

それが中国メーカー製の『SSB対応BCLラジオ』です。そもそも『BCLラジオ』とはAMの短波放送が聞ける『短波ラジオ』のこと。

家電量販店でも売られている数千円台の安価な短波ラジオではAM/FMモードしか受信できないものの、やや高価な『SSB対応BCLラジオ』ならば、SSBモードが受信できるのです。

ご注意

Amazonで『SSB ラジオ』と検索すると、1万円程度の機種が多数出ますが、中にはSSB対応ではない安い機種も検索結果に反映されているので、商品名に『SSB』と明記されているか要チェックです。なお『SW』は短波(Short Wave)帯を意味する表記で、『SSB(Single Side Band)変調の意味ではないため、ご注意を。

これらSSB対応BCLラジオはレビュー件数が多く、実に高評価ですが、広帯域受信機同様の使い勝手といった場合は今ひとつ。

とはいえ、その価格差だけみれば、日本製のSSB対応受信機上位機種やHF機の実に5分の1から10分の1とコスパは抜群。

今回、筆者は数あるSSB対応BCLラジオの中からベストセラー機を購入し、その実力を検証。そして、その性能に驚きました。

XHDATA D-808

SSB対応BCLラジオ数あれど、大ヒットしたモデルが『XHDATA D-808』です。AM・FM放送のほか、HF帯の1711-29999kHzはSSBモード、さらにVHF帯の118-137MHzのAM航空無線まで対応します。

ほぼ同一筐体・同一性能・同一型番でメーカー名が違うケースが中華製品にありがちですが、この『XHDATA D-808』にも『SIHUADUON D-808』というそっくりな製品があり、両モデルを使った複数の人のレビューでは、XHDATAのほうが感度や反応が上との評価です。

XHDATA D-808 ポータブルラジオ FM AM SW LW ワイドFM エアバンド SSB BCL DSP RDS ポケットラジオ 高感度 小型 電池式 充電式 スリープ機能付き 目覚まし時計 日本語説明書付き

XHDATA D-808。価格も手ごろで洋上管制、人気の7MHz帯アマチュアバンドも対応。日本語説明書付き

そして、このD-808は『7MHzや洋上管制も受信感度が良い』との評価がありましたが、本当でしょうか?はい、事実に相違ありません。

D-808は最小ステップ幅が1KHz(ファインチューニングダイヤルでさらに細かい調整が可能)で問題なくHF帯域をチューニング出来ますし、SSBモードではUSBとLSBの2種類を切り替え可能です。CWモードはないものの、LSBモードでモールス音をキレイに受信できます。FM放送、LW/MW、SW、そしてエアバンドそれぞれのおおよその帯域の呼び出しはそれぞれのバンドキーを短押しで可能、周波数の直接入力&メモリーも可能と、”広帯域受信機”としては最低限必要な機能を持っています。

『D-808』はHF帯の感度チェック!まずは7MHzの受信から

HFアマチュアバンドはクセモノシグナリィ。その奥深さは一言では言い表せません。季節にもよるものの、一般にHF帯のベストコンディションは日中より夕方から夜間、早朝です。

しかし、日中も比較的安定している7MHz(40mバンド)はHF帯のメインストリート。日本全国でモービル運用する局も多く、週末や祝日の昼間は国内局で賑わいます。7MHzの解説は以下のページで行っています。

短波 HF (High Frequency)と電離層を利用すれば外国との交信も可能!

というわけで、まずは7MHzの受信から。『SSB』キーを押して電波形式を『normal(AM)』からLSBに切り替え、7.130kHzにチューニング。すでに筆者の地元8エリア管内のローカル局はもちろん、1エリア局同士の交信が明瞭入感。さらにダイヤルを回して下に降りていくと関西弁、博多弁など全国津々浦々のアマチュア局が多数オンエア中です。夜が更けてフェージングによる雑音がやや強くなる中、今度はヨボセヨ、ポニョ、ハムスキニダ?などの韓国語(!?)、さらにロシア語による交信が入感し、国際色豊かなDXバンドの様相を魅せ始めました。

ひとまずは外部アンテナなしでのワッチでしたが、予想以上の感度に驚きです。7.000kHzから7.045kHzはCW帯ですが、モールスも心地よい音色で強く入感!

今度は3.5MHz帯を受信。HFは低くなるとフェージングが強くなり、慣れないと雑音の中から信号を聞き分けるのに苦労します。

その場合は3mサイズの付属ワイヤーアンテナを活用することをお勧めします。天井から下に垂らす、D-808本体を机に置いてワイヤーを床に垂らす、窓辺にワイヤーを貼りつけるなど、いろいろ試すとベストな感度がきっと見つかります。

メインのチューニングダイヤルで合わせただけでは変調が聞きにくいなら、正面右側面にあるチューニングダイヤルとは別に設けられた『ファインチューニング』用ダイヤルを回して、さらに1KHz以下を細かく調整してゼロインすれば、より明瞭に復調されます。

HFの細かな割り当てを知るにはJARDが公表しているバンドプラン一覧でHFの周波数割り当て表が便利です。※PDFファイルです。

https://jard.or.jp/info/leaflet/bandplan_20150105.pdf

お次は洋上管制(USBモード)の受信。LSBからUSBへの切り替えは『INFO』ボタン短押しでOK。

通常、洋上管制の周波数は複数で運用されており、電離層の状態や時刻でコンディションの良い周波数へ適時変更されます。

筆者が普段、HFのコンディションチェックを兼ねて受信している『東京レディオ』の北太平洋エリア(NP)5.628kHzでは航空機側、地上局側の女性通信官の声も驚くほど明瞭に受信できました。10.048kHzも感度良好。しかし、彼女が各機に促すセカンダリーの8.951kHzは当方の環境では受信不可。

さらに、海上自衛隊厚木基地(神奈川県綾瀬市)から6.727kHzで洋上飛行の自衛隊機へ送信される『厚木オーシャニック』は、上述の洋上管制より交信頻度が少ないため受信チャンスは低いのですが、翌日の昼ごろには太平洋上を警戒活動中のP-3Cと地上局側が受信できました。

D-808のHF帯受信性能はすこぶる高いと言えるでしょう。

HF無線の世界はアングラだった・・・やべえ通信まとめ(傍受の際は当該工作機関から十分に適切な社会的距離を保つ必要あり)

『D-808』のポップノイズは?

評価の低いレビューを見ると、複数台購入者数名による『ポップノイズが気になる』『個体によって感度にばらつきがある』というものがありました。ポップノイズといえば、筆者も過去にアルインコのDJ-X8とDJ-X11の大きい『ポッ・・ポッ』音にひどく悩まされましたが、D-808にはあのような酷いものはほぼありません。

『D-808』のVHFエアバンド受信感度や音質も最高です

では、D-808のもう一つの機能、118〜137MHzのVHF帯エアバンド受信機能はどうでしょうか?良い点、悪い点があります。

感度について

VHFの受信感度は搭載のロッドアンテナを目一杯伸ばして受信する限り、IC-R6と同等とはいきませんが、決して悪くありません(理論上、アンテナの長さは周波数の波長ごとに合わせたほうが感度が良いとされますが、体感的にはVHFはアンテナが長いほど感度が良いです)。あとは外部アンテナ次第と言えます。現時点で1台しか購入していない筆者には検証の術がありませんが、感度について筆者の手元の個体はすこぶる良好です。

スキャンについて

しかし、D-808のエアバンド受信時の「使い勝手」は決して良いとは言えません。遅いながらもバンドスキャン機能はありますが、広帯域受信機の持つ「メモリースキャン機能」はありません。D-808でエアバンドの個別の周波数を次々に聞きたいのなら、事前にメモリーした個別の周波数をメモリーごとに割り当てたナンバーキーを短押しし、その都度呼び出す『人力スキャン』が基本。

メモリーは10チャンネル×10バンク(各バンド)。ただ、メモリーした任意の周波数を表示してる時にダイヤルまたは上下方向キーで、その周辺周波数にシフトできるため、近い周波数なら即座にチューニングが可能で楽です。

とはいえ、やはりメモリースキャンがないので、ひとつの周波数を専念して聴く方以外や、もちろん航空自衛隊のGCIまで受信したいなら、やはりD-808との価格差2倍ですが、IC-R6(受信改造済)をお勧めします。

音質について

DJ-X100でエアバンドを聴くと「サー」という耳障りなバックノイズでとても耐えられませんが、IC-R6での受信同様、耳が楽です。しかもIC-R6よりスピーカーが大きいので迫力のある交信が楽しめます。交信量の多い一波に固定してBGM的な使い方をするという場合でも、プロの受信機材としてもD-808のエアバンド受信機能は確実に優秀です。

上記の部分、声を大にしておすすめです。しかし、慣れとは恐ろしいものです。エアバンドの音質に関してはIC-R6と比べると音のこもりがやや気になってはいたものの、今ではIC-R6よりも聴きやすいのですから。なお、HFでLSBモードで聴くCW(モールス)の受信音も心地良いです。

『D-808』のAM、FMラジオ放送受信感度とその他バンドの音質は?

ラジオ放送ではAM,FM共に受信感度に不満はありません。音質ではやや『サー』という音が気になりますが、2万円のIC-R6でAM放送を受信したときより遥かにマシで、実用上まったく問題ないものと思います。

音質に関しては、8万円のIC-R30でNHKのFM放送を聞いていていつも筆者が感じる『わざわざNHKのアナウンサーが部屋まで出張してきてくれて部屋でニュース読んでくれてるような不気味な申し訳ないほどの臨場感』のようなものは、さすがにD-808にはありません。

『D-808』のうるさいビープ音は設定でオフに

D-808が届いた直後、開封して軽く使ってみると、操作のたびに大きなビープ音が鳴って驚く方が多いはず。でも、電源OFF 状態で「5」キーを長押しすればオフにでき、深夜も安心して使えます。

『D-808』のバッテリー持ちは?

D-808は付属の『18650型リチウムイオン充電池』一本を使用します。2時間ほどのUSB充電で25時間以上の連続駆動と、驚異的でした。

『D-808』の外部アンテナ接続方法は?

D-808は3.5mmイヤホンジャックに3.5mmイヤホンプラグ型のSMA(メス)接栓変換ケーブルを接続すると、一般的なSMA接栓のアンテナのほか、さらにMP変換コネクターもあれば、モービルホイップなど外部アンテナを使用できます。

このように外部アンテナを接続でき、アンテナ次第ですが、エアバンドに対しては非常に効果があります。筆者が使用している製品は以下の変換ケーブルおよびMP変換プラグです。

3.5mm L型 モノラルミニプラグ(オス) - SMA(メス)変換ケーブル 0.1m FNT-LH-3SMA10

3.5mm L型 モノラルミニプラグ(オス) – SMA(メス)変換ケーブル 0.1m FNT-LH-3SMA10

 

Kaunosta M型変換コネクタ SMA変換コネクタ m型メス⇔SMAオス プラグラジオアンテナ用コネクタ 2個入り

Kaunosta M型変換コネクタ SMA変換コネクタ m型メス⇔SMAオス プラグラジオアンテナ用コネクタ 2個入り

『D-808』の販売ショップは?

筆者はアマゾンの上記ページからプライム配送で購入しました。日本語説明書、ワイヤーアンテナ、リチウムイオン充電池(18650)が付属したセット品で即日使用可能でした。なお、星が一つのレビュアー方は『スピーカー部が凹んでいた』というものがありました。これは中国製品の品質管理なのか、返品された商品をそのまま再販してるのか不明ですが、筆者の個体は外装の気になる傷はほぼありませんでした。

『D-808』総評

いかがでしょうか。機能が限定的とはいえ、この低価格で29.999MHzまでのHF帯がAM、SSB(USB/LSB両対応)で受信でき(30MHz帯を使う漁業無線は受信不可)、AM、FMラジオ放送、さらに118-137MHzのVHF帯エアバンドまで受信できるSSB対応BCLラジオ『D-808』。何でもかんでも低価格の一台に求めるのはヨクナイ!とわかってはいるけれど、いやあ、あとほんの少しだけ広い周波数帯域とメモリースキャン搭載など融通がきいてくれればなあ……と惜しさを感じざるを得ませんが、買って損はありません。

118-137MHzのエアバンド帯受信機能に関しては、筆者はすでに優秀なIC-R6(受信改造済)を所有しており、D-808では140MHz帯の陸上自衛隊管制やUHF帯の航空自衛隊GCI波を受信できない理由からメイン機ではありませんが、一波固定の航空交通管制の傍受、さらに近隣で事故災害発生の際、防災ヘリや報道ヘリの飛来など航空交通の様子を窺い知る場合のワッチで使用します。さらに、夕方以降は5MHzおよび10MHz帯の洋上管制、3.5MHzおよび7MHz帯アマチュア無線、6MHz帯の自衛隊『厚木オーシャニック』など、SSB(USB/LSB)専用の優秀な受信機になります。あとは暇があれば、AMの漁業無線などのワッチにも活用したいと考えています。

『予算は少ないけどHFのSSBを聴いてみたい』というビギナーの方はもちろん、ベテランHFリスナーの普段使いや枕もとのお供としてもコストパフォーマンスは抜群です。

なお、上述したとおりエアバンドは標準のロッドアンテナを最大に伸ばす、同様にHF帯受信に関しては付属のワイヤーアンテナを外部アンテナ端子(3.5ミリ径)に差し込むだけで充分な感度でしたが、必要に応じてHF用アンテナを用意するとさらに耳が良くなるでしょう。

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