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航空無線には航空路管制や各航空事業者・各公的機関が業務に使うカンパニーラジオなどがありますが、その中でも航空自衛隊はもちろん、各国の空軍が最前線の訓練や作戦に使用する特殊な周波数をご存知ですか?我が国の航空自衛隊では、これらの周波数をGCI (Ground-controlled intercept・・地上要撃管制)と呼んでいます。
つまり、通常の管制塔ではなく、航空自衛隊において要撃セクションを担う部隊(レーダーサイト等)と戦闘機(要撃機)が実際の戦闘およびその訓練に用いる特別な周波数ということになります。そう、我が国の国防の最前線の無線を代表するミリタリーエアーバンドの真髄かつエアバンダーを熱狂させるのが、このGCIなのです。
そして、この一般の航空管制とは異なる”航空自衛隊専用カンパニー波”とも言えるGCIの各チャンネル周波数は非公開になっているのです。
自衛隊でのGCI運用
航空自衛隊の要撃任務、すなわちスクランブル。国籍不明機(アンノウン)が日本の領空を侵犯しそうな場合、または実際に侵犯した場合、基地からスクランブル発進した要撃戦闘機はGCIで目標までのコースを地上のレーダーサイト、さらにはAWACSといった管制機から指示されるのです。レーダーサイトの役割と仕組みは以下のページで詳しく解説されています。
戦闘機も当然、自機に索敵レーダーを備えていますが、スクランブルで緊急発進した戦闘機がアンノウンまで自機のレーダーを頼りに飛行することはまずないことで、地上からの邀撃管制GCIやAWACSからのコース誘導に委ねているのが現状です。
※GCIには音声を伴わないデータリンクのみの場合もあります。

そして、GCIによる地上からの誘導で国籍不明機(アンノウン)を補足した航空自衛隊要撃機は、僚機とともに当該機を上下左右から挟み込み、機体に描かれた国籍マークなどを確認し写真撮影などを行い、基地へ無線で報告。そして国際緊急周波数で、英語や当該機の国の言語等を使って警告を発します。
「アテンション!ロシアンエアクラフト!ロシアンエアクラフト!ディスイズジャパニーズエアロスペース!(ロシアの航空機に警告する!この空域は日本の領空だ!)」
さらには「キミは日本の領空を侵犯しようとしている。ただちにコースを変更セヨ、従わぬ場合は貴機に実力を行使する」など、恐ろしい警告も。

明らかな軍用機の場合、コース変更や領空外への退去に従わなければ、相手の前方に向かって後ろから搭載機関砲による信号射撃が行われるほか、強制着陸、そして最終手段となる機体への攻撃なども待っています。

夜中に突然『アーッテンション!アテンション!』とか、さらにはGCIで『警告を実施したが当該機は我に従わない!引き続き警告を実施スルーッ!』などと物騒な声がいきなりキミの受信機に飛び込んで来たら……。
したがって、これらの周波数が騒がしくなる事態は、すなわち一触即発の外交問題寸前の事態。まさに貴方もその最前線で起きている事態を受信機を通して、自衛官や鈴木宗男ちゃんといった人々と共有することになります。これが興奮せずにいられるでしょうか。
普段の訓練でも使用されるGCI
とはいえ、これらGCIの各チャンネルは、実戦以外でも普段から訓練に使用されています。教官パイロットが訓練生を教育するに当たり、厳しい口調で叱りつけるような言い方を聴くと、自衛隊も軍隊であることを再認識させられます。
GCI周波数を聞ける受信機と聞けない受信機
残念ながら、市販の受信機ではGCIが受信できるものとできないものがあります。広帯域受信機のページで詳しく解説しているとおり「歯抜け受信機」ではミリタリーエアバンドでもあるUHF帯が大きく削られており、ノーマル状態では受信はほぼ不可能なのです。
間違っても歯抜け受信機は買わないでください。航空自衛隊のGCI周波数を受信する場合、どの受信機を買えば聞けるかは広帯域受信機のページで詳しく書いています。
GCIは通常の航空管制とは違って周波数が非公開

この航空自衛隊専用のGCI周波数もまた、司法警察機関の無線と同様、公共の安全に深くかかわる周波数であることから、周波数が非公開となっています。
あまりにも機密が高く、アクションバンダー業界でもそのような重大な非公開扱いの周波数を不用意に晒して承認欲求を満たす人はいませんし(!?)、関連雑誌や周波数バイブルなどでもGCI周波数までは親切に教えてはくれません。

晒しても自己にメリットがないばかりか、公開されたことが発覚すると、周波数がすぐさま変更されて聞けなくなってしまいます。ただし、公にならない限りは変更されることはないでしょう。それもそのはず、航空自衛隊全体でこれらのチャンネルは100chはあるとされており、容易に変更はできないと見られています。
したがって、これらGCIの直接的な周波数、すなわちチャンネルをネット上で公にすることは愚行。万が一にもネット上などに記載しないよう注意が必要です。
GCI受信を80年代から指南している月刊ラジオライフ誌上でも『具体的な周波数はあえて掲載しないスタンスでやってきました』としています(同誌2019年9月号「ミリタリーエアバンド教導群」175P参照)が、この一文が全てを物語っています。
なお、航空無線関連冊子で掲載されている周波数で225~390MHzで空自用となっているものは、GCI以外の管制用周波数です。
GCI周波数をサーチする方法
もちろん、個人でアナログのAM無線を受信するのは自由。非公開周波数GCIの全貌と発見のテクニックが以下の書籍に記載されていますのでチェック。

さて、そのGCIを探す手法ですが、非常に簡単です。
- 受信機をAMモードにして225MHz~390MHzの間を100kHzステップでサーチ
これだけです。そう言うとやや語弊もありますが、24時間ぶっ通しで、というのが前提です。当然、複数の受信機で同時にサーチすれば効率も良いでしょう。
もちろん、225MHz~390MHzの間には各種の事業者、警察、消防などの公的機関、それに家庭用の電話機などに割り当てられた周波数が存在します。例を挙げれば、旧規格コードレスホンの子機側は253.8625 – 254.9625MHzです。次はデジタル消防無線の265MHzから275MHz。さらに351MHzではデジ簡の各チャンネル、360MHzには各所轄警察署の署活系無線、警備会社、水道関係、また380MHzから上は旧規格のコードレスホンの親機側の帯域があり、自衛隊では使用できませんからこれらは除外できると考えられます。
ですから実質的にGCI周波数が使われているのは225~250MHz、それに270~380MHzあたりと考えられます。
間違いやすいのですが、GCIも航空無線ですのでFMモードではなく、必ずAMモードでサーチしてください。
とくに、何の前触れもなく深夜に戦闘機の爆音がかすかに漆黒の夜空から聞こえたときなどは受信のチャンス。すぐさまローカル掲示板「まちBBS」で空自基地のある街のスレッドをチェック。
「今の爆音なに?」
「夜中なのに戦闘機うっせえわ(´・ω・`)」
など異変をうかがわせる書き込みがあった場合、ほぼ100%領空侵犯機に対する要撃任務で基地から戦闘機が離陸しています。
そこで、225~250MHz、それに270~380MHzの間を受信機で戦闘機がRTB(帰投)するまで、くまなくチェックしてみましょう。

日本海上空でロシア空軍や中国空軍に立ち向かっていく航空自衛隊機の緊迫感を窺い知るには、受信機の秒速サーチが活躍します。
おっと、しつこくて恐縮ですが、自主規制された『歯抜け受信機』ではGCIの帯域そのものが選択できず、受信不可。また、歯抜けが無くてもサーチ速度が遅い受信機(VR-160など)ではGCI波の検証作業は困難です。
だからこそGCI波を探すには、サーチおよびスキャン速度&感度が優秀でUHF帯に強く、周波数をフルカバー受信できるように改造された受信機が大活躍。
IC-R6【受信改造済み】アイコム 広帯域受信機(レシーバー)(ICR6)ノーマル or 航空無線(エアーバンド)タイプ防災用に!
航空自衛隊のGCI受信を狙いたいなら、絶対にこちらの受信機を購入してください。100chのメモリーを約1秒で周回するベストセラー受信機です。
GCIのまとめ・・GCI受信は数ある周波数ワッチの中でもワクワク感は異常
さて、いかがでしたか。ミリタリーエアバンドの真髄であるCGIがマニアを魅了する理由がお分かりいただけましたか?これらGCIで使われる周波数はそれぞれチャンネルになっており、その数は実に100以上。苦労して自分で見つけたGCIがたっぷりとバンクにメモリーされた受信機は自分だけの宝物。そう、GCI周波数探しはまさに宝探し。
なお2021年、アイコムが公式にウチの嫁(キミの姉)を擬人化したようです。