航空自衛隊のGCIと深く関わる国際緊急周波数とは?

自衛隊や海上保安庁では国際的に取り決められたAMモードの通信である国際緊急周波数(VHFは121.500MHz、UHFは243.000MHz)を使用しており、日本では「国V121.5」「Uガード」「ガードチャンネル」とも呼ばれます。

主に航空機や船舶の遭難時、救難要請で使用されるほか、世界各国においても平時から偶発的な軍事衝突を避けるため、軍用機、民間機が使用します。

例えば、2018年に日本海で発生した韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案では国際VHFの16ch(156.6MHz)と共に、海上自衛隊のP-1 (哨戒機)がレーダー照射の意図を韓国艦艇側へ確認した際に使われました。

防衛省が公開した『韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について』という動画からは、韓国海軍艦艇から突如として火器管制レーダー(※攻撃目標へ武器の照準を合わせるために用いるレーダー)の照射を受けた海上自衛隊のP-1がその意図を問うため、韓国側に以下の三つの周波数を使って呼びかけているのがわかります。

P-1は最初に「国V121.5」と呼ばれるAMモードの121.5MHzで、韓国海軍駆逐艦『クァンゲト・デワン』に呼びかけました。

続いて、船舶の安全航行のために国際標準化された無線システムである『国際VHF』の16ch(156.8MHz)で呼びかけます。16chは遭難や緊急時の安全呼出などで使用されています。

国際VHFについては船舶無線の項目で解説しています。

船舶無線は『国際VHF』と『漁業無線』が主流の傍受対象

そして、最後に『Uガード』と呼ばれるUHF帯域のAM通信である243MHzによる呼びかけを行っています。

韓国艦艇側はこれらの周波数を使った自衛隊機側のいずれの呼びかけにも一切応答しませんでした。のちに韓国政府が発表した声明では『自衛隊機側の通信は雑音まみれで明瞭ではなかった』としています。

しかし、動画のような近距離で、AMモードの国際緊急周波数および、FMモードの国際VHFが雑音まみれで受信できないことはありえません。今回の通信を240キロ先の別の自衛隊機が傍受しています。

この近距離で雑音にまみれて正常に無線通信が傍受できないとあれば、韓国海軍艦艇の無線設備は極めて低品質で僚艦とも満足に交信できず、作戦遂行が著しく困難でしょう。日本側がP-1哨戒機のレーダー照射時の詳細なデータを隠したいのと同様、韓国政府に艦艇の性能を隠したい意図があるにせよ、有効な反論とは言えません。

いずれにせよ、日本と韓国は安全保障上の密接な友好関係が必要であるにもかかわらず、意図不明のまま、火器管制レーダーを外国の軍用機に向ける行為そのものが軍事上、大変危険な挑発行為であり、また国際標準の無線通信による問いかけに対して、その意図を含めて一切の応答をしなかった韓国海軍は国際ルールを破ったことに他なりません。

さて、もうおわかりでしょう。本来これらの『国際緊急周波数』はこのように各国軍でも平時から人道的な救難、そして軍事衝突を未然に防ぐために使われるものですから(韓国のように使おうとしない国もあるのですが)、同じく国の防衛の最前線で使用されている航空自衛隊のGCI周波数とも密接に関係しているのです。

【航空無線受信テク】自衛隊の非公開GCI周波数とは?

領空侵犯対処に係る自衛隊機の行動は上記のGCIの解説記事内で示したとおりですが、スクランブル発進した戦闘機はGCIで地上のレーダーサイトから誘導を受け、目標(領空侵犯機)に接近すると、この国際緊急周波数の一つである『Uガード』で呼びかけます。

当然、訓練でも実戦と同様、警告→ワレに従わない事態を想定し、対処のための20mmバルカン砲使用許可の確認、許可からの射撃・・・・・・という手順になります。

しかし、訓練で実際の国際緊急周波数(VHFは121.500MHz、UHFは243.000MHz)を使って、模擬の警告を出すことはできないため、数あるGCI波の1波でそれを代用します。

ですから『万が一の事態』に備え、国際緊急周波数も傍受対象としましょう。

ところで、この国際緊急周波数に関して面白い逸話があります。

NTT東日本とNTT西日本が1991年ごろに販売したコードレス電話機「ハウディ・コードレスホンパッセS200」とその後継機「同S220」が、ある特定の条件下において、不正な周波数の電波を発射するとして、2006年に回収されました。

その不正な周波数とは、なんとUHF帯の国際緊急周波数である243MHz。救難信号だったのです。

NTTが同製品の回収告知を出している。出典 NTT公式サイト https://www.ntt-east.co.jp/release/0609/060926.html

特定の条件下とは経年劣化により、内蔵の2次電池の電圧が2V以下になった場合。その際、制御回路が誤動作し、意図せず243MHzの電波が発射されてしまうとのこと。NTTによると”設計ミス”とのことです。

コードレス電話機の子機は253.8625 – 254.9625MHzを使用しますから、誤作動でこんなことが起きてしまうのも頷けます。

しかし、単なる笑い話では済みません。

2006年6月18日~7月20日にかけて起きたこの騒ぎでは、千葉県銚子市の民家にあった同型電話機から、243MHzの”遭難信号”が279回発信されました。

そのたびに海上保安庁が確認のため、船艇や航空機で出動したそうです。不具合とはいえ、まったくもって大迷惑なコードレス電話機でした。

出典 https://xtech.nikkei.com/dm/article/NEWS/20060926/121536/