【洋上管制解説…No.2】受信改造済みのIC-R6でも洋上管制が聞けない2つの理由

航空ファンなら一度は気になる「洋上管制」。

ところが、当サイトおすすめの受信機『アイコム IC-R6(受信改造済み)』では、残念ながら洋上管制は受信できません。

航空無線の洋上管制について以下で詳しく解説しています。

HFの航空無線『洋上管制』の受信方法を解説

ともかく、当サイトでは、初めての方にも扱いやすい受信機としてアイコム IC-R6(受信改造済み)をおすすめしていますが……実はこのIC-R6、洋上管制は受信できないのです。

「えっ?IC-R6ってHF帯(短波)も聴けるんじゃないの?」

そう思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

確かに、地上から約100kmから130km付近に発生するE層という電離層に反射するHF帯(短波)の受信でも優秀なIC-R6。

実は、受信できないのには明確な理由が。ここではその理由を2つに分けて、わかりやすくご説明いたします。

受信改造済みIC-R6でも洋上管制は聞けない理由①:SSBモードに非対応

IC-R6はFM、AM、WFMの3モードにしか対応しておらず、SSB(単側波帯)モードには非対応です。

しかし、しかし、太平洋上空を飛ぶ航空機が使う2~30MHzの洋上管制は、『抑圧搬送波単側波帯(SSB…Single Side Band amplitude modulation)』のうち、USBによって交信されています。

SSBには搬送波と搬送波より上の側波帯の周波数成分を使うUSB (Upper Side Band)、同じく下側を使うLSB (Lower Side Band) の2種があります。

これは、長距離でも安定した通信が可能なためです。

たとえば――

  • アマチュア無線:7MHz帯ではLSB

  • 洋上管制や海上自衛隊の「厚木オーシャニック」:USB

といったように、用途によってSSBのモードが使い分けられています。

IC-R6ではSSB信号を正しく復調できないため、たとえ受信周波数が合っていたとしても、実際に聞こえるのは「ピーピー」といったセルコール音のみ

パイロットと通信官の会話を聞き取ることはできません。

受信改造済みIC-R6でも洋上管制は聞けない理由②:ステップ幅が5.0kHz固定で精密受信ができない

もうひとつの理由は、IC-R6の最小チューニングステップ幅が5.0kHzである点です。

洋上管制では「5.628MHz」など小数点以下3桁の精密な周波数が使用されます。

IC-R6ではこうしたシビアなチューニングがNG。正確な受信が不可能なのです。

HF帯のSSB通信では、少しの周波数ズレが内容の聞き取りに致命的な影響を与えます。

そのため、細かいステップ幅(例えば0.1kHz)で調整可能な受信機が必要になります。

洋上管制を受信するために

つまり、洋上管制が受信できるのは『SSBに対応し、ステップ幅が1kHzからチューニングできる受信機や無線機』です。

フライトレーダー24で見た太平洋上の航空機(画像典拠元 Flightradar24.com)

実はIC-R6のほぼ半額で、SSBの洋上管制やHFアマチュア無線の賑やかで楽しい7MHz、さらにVHFの航空無線まで手軽に聴ける機材があります。以下の記事にて解説しています。

【安価でも侮れない!中国製SSB対応BCLラジオ】XHDATA D-808でHF帯SSBの洋上管制や7MHzアマチュアバンド受信可能

 

昨今では衛星通信にとって代わられはじめている洋上管制ですが、2025年現在も毎晩、何100機もの航空機が地上の管制と交信しています。

このロマンチックな深夜の無線通信傍受はどうやら当分の間、楽しめそうです。

なお、『フライトレーダー24』と組み合わせれば、自室がまるで航空局の管制センターになります。

【航空無線受信テク】Flightradar24をエアバンド受信と並行して使おう!

このように、IC-R6では受信できない洋上管制ですが、意外と安価な代替機材があり、手軽に受信可能です。ぜひ楽しんでください。