地域警察デジタル無線システムとは、地域警察官による迅速かつ的確な初動警察活動を支援するため、平成23年3月頃から全国の道府県警察で順次整備が進められた通信システムです。
このシステムでは、署活系携帯型無線機(PSW)に加え、警察用携帯端末(PSD)を活用することで、従来よりも効率的な情報共有と通信運用が可能となりました。
従来の地域警察活動では、署活系無線機による音声通信が中心でしたが、PSDの導入により、文字情報や画像データの送受信にも対応し、通信手段の多様化が図られています。
これらの端末にはGPS機能やカメラ機能が搭載され、位置情報や現場画像を迅速に共有できることから、初動対応や現場指揮の効率化に活用されています。

| 区分 | 名称 | 主な機能・役割 |
|---|---|---|
| PSW (Police Station Walkie talkie) | 携帯型無線機(署活系無線) | ・警察署と外勤員との即時通話 ・同一エリア内の外勤員同士の通話 ・警察署ごとの通信 |
| PSD(Police Station Data Terminal) | 公用携帯電話(スマートフォン型端末) | ・画像・動画・テキストなど多様な情報の送受信 ・GPSによる位置情報の即時共有 ・被疑者情報や車両情報などの照会・検索機能 ・メールやメッセージアプリによる連絡手段 ・PSWでは難しいビジュアル情報の伝達が可能 |
PSWが「即時性と緊急性」を重視した音声通信を担う一方で、PSDは「多機能性と情報量」に優れた補完的手段として活用され、両者を併用することで効率化が図られています。
■ 参考文献
警察庁公式サイト(平成26年版警察白書)
「PSDとは、Police Station Data-terminal の略」:警視庁及び岡山県警察においては、独自のデータ端末を整備・使用。
出典:警察庁『平成26年版 警察白書』第2章
PDFリンク:https://www.npa.go.jp/hakusyo/h26/honbun/pdf/07_dai2sho.pdf
高度警察情報通信基盤システム(PⅢ:ポリストリプルアイ)
ポリストリプルアイ(PⅢ):警察の通信を革新する先進システム
警察庁ではさらに、令和元年(2019年)、新たな情報通信システム「高度警察情報通信基盤システム(PⅢ/ポリストリプルアイ、通称:Pスリー)」を導入。このシステムは、従来の警察の自営無線網に加えて、民間の公衆携帯電話通信網を活用することが最大の特長です。
高度警察情報通信基盤システム(PⅢ:ポリストリプルアイ)
スマートフォン型モバイル端末又はタブレット型モバイル端末により、電気通信事業者が提供する閉域通信網及び警察基幹通信網を利用して、利用者の管理、 一斉指令情報の送信、掲示板の登録、映像の配信等の機能を有するサーバとして、 警視庁及び警察本部に設置するサーバ(以下「本部サーバ」という。)との間で 位置情報、110番事案情報・一斉指令情報、動画情報等の送受信等のほか、多 言語翻訳機能等を活用して情報の共有化を図るための情報通信システムをいう。
引用元 https://www.pref.yamanashi.jp/documents/27196/5tuta154.pdf
地域警察官には無線機とは別に、スマートフォンやタブレット端末(PSD)が配備されており、これらを通じて現場からの映像や写真の送信、音声通話による報告が可能になりました。
これにより、事故や事件の現場状況を、より詳しく正確に伝えることができます。
またPⅢは、パトカーや白バイの車載通信システム(IPR)とも連携しており、移動中の警察官も端末を通じて通信が行えます。民間通信網のカバーエリア内であれば、警察車両と現場の警察官が常時連絡を取り合えるため、対応の迅速化が図られています。
さらに、PⅢによって警察署内の指令室から現場の警察官の位置情報や行動状況をリアルタイムで把握できるようになり、指示や支援も的確に行えるようになりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 高度警察情報通信基盤システム(PⅢ) |
| 通称 | ポリストリプルアイ/Pスリー |
| 導入年 | 2019年(令和元年度) |
| 通信網 | 民間の携帯電話通信網(4G/5G) |
| 端末 | 公用スマホ・タブレットを警察官に配備 |
| 連携機能 | 車載通信(パトカー・白バイ)と連動 |
| 主な利点 | ・現場の映像/画像/音声の即時送信 ・警察署で位置情報の把握が可能 ・迅速な指令伝達と対応 ・警察無線と併用可能 |
このようにPⅢは、現場対応のスピードと正確性を高めることで、事件・事故の早期解決に大きく寄与しています。
署活系無線(SWおよびPSW)の歴史
警察無線は、用途や運用範囲に応じて複数の通信系統に分かれています。その中でも代表的なのが、通信指令室とパトカー・白バイ・警察ヘリなどを結ぶ広域運用向けの車載通信系(基幹系)と、外勤警察官が携帯型無線機で使用する所轄警察署単位の「署活系(署外活動系)」です。
地域警察官は日常的に携帯型の署活系無線機「PSW(Police Station Walkie-Talkie)」を使用し、所属警察署の通信室から指示や連絡を受けています。
PSWは、従来使用されていた署活系無線機「SW」の後継として整備されたデジタル無線機であり、基本的な運用形態は従来のSWと共通しています。
主な用途は、所轄警察署と地域課員との間における相互連絡や、職務質問、事案対応、指令伝達などの音声通信です。加えて、簡易的なデータ通信機能も備えています。
この通信では、警察官が携行する携帯型無線機と、警察署側の通信担当者との間で交信が行われます。署内通信室の担当者は、警視庁では「リモコン指揮者」と呼ばれています。
署活系では主にUHF帯で運用されていますが、実際の周波数運用や通信方式は都道府県警ごとに異なっており、複数署によるチャンネル共用や中継局を利用した運用が行われる場合もあります。
SW時代の署活系無線の運用
1970年代当時、第一線で署外活動に従事する地域警察官が使用していた通信手段は、送信機能を持たない受信専用の「受令機」が主流でした。
これにより警察官は、本署からの指令を一方的に受け取るだけで、自らの状況を即応的に送信する手段を持ちませんでした。

また、緊急時の連絡には公衆電話を利用することも多く、外勤警察官が本署や他の外勤員と密接な連携を取ることは極めて困難でした。
そのため、外で活動する警察官と本署との間で、双方向の通話が可能な通信手段の導入が急務とされていました。
この状況を受けて、1974年度からは東京・大阪などの大都市圏において、警察官の個人装備として相互通話が可能な携帯式無線機の配備が始まりました。
この新装備により、警察署や他の外勤員と常時連絡を取りながら警ら活動を行えるようになり、事件や事故への対応中でも、新たな通報に迅速に対応できるなど、大きな利便性向上が実現。
特に、逃走する犯人の包囲、職務質問中の人物照会などにおいては、携帯無線機が重要な役割を果たしました。第一線からのリアルタイムな一報により、指名手配中の被疑者であるかどうかの迅速な判断が可能となったのです。
1981年度末には、全国873の警察署に無線基地局が整備され、携帯無線機の配備も完了。翌年度からは、デジタル携帯無線機の整備が始まりました。
1982年度からはパトロール中の警察官が署活系無線を利用して照会ができる署活系照会システムの整備に着手されましたが、全国整備はされず、警視庁と大阪府警のみで完了。
ただし、このデジタル化の進展は、車載無線機の更新に比べて遅れが目立ち、1990年代後半まで多くの地域でアナログ方式が使用されていました。このため、部外者による無線の傍受は頻繁に発生し、悪用されるケースも少なくありませんでした。

参照 澤喜司郎『警察通信網と情報システム』および昭和59年警察白書
「所轄系」!?正解は「署活系」──無線マニアなら知ってて当然の基礎知識
たまに見かける誤記。それが「所轄系」という謎ワード。警察無線の通信系統を語るうえで、「署活系」のことをこう呼んでしまう人が稀にいました。正式には「署外活動系」の略称、「署活系」です。
たしかに「所轄署単位で使う通信」って言われれば、なんとなく「所轄系」って呼びたくなる気持ちも。
この話、昔からあって、たとえばラジオライフ 1984年 12月号では、警察庁広域重要指定115号事件の報道記事の中で、『フォーカス』編集部のライターが「所轄系」なんて書いちゃったもんだから、編集部がツッコミを入れるという場面も。
「もしウチの読者だったなら、所轄系と署活系の区別がつかないようなことはないだろう」
という、ちょっと辛口なコメント。
これはつまり、あの伝説の「送信改造」と「受信改造」の違いもわからずに、無知なライターがラジオライフ誌を“警察無線の妨害を指南している雑誌”として叩いた某週刊誌への、愛ある仕返しだったのかもしれません。

SW-1型携帯用無線電話機
いまやスマートフォンとほぼ同じ大きさの警察用無線機が主流となっていますが、1980年代の警察活動を支えていた名機といえば、松下通信(現・パナソニック)と三菱電機が手がけた『SW-1型携帯用無線電話機』です。
しなやかに曲がるホイップアンテナや外部マイクロホンといったスタイルは現行配備のモデル同様ですが、本体のサイズはおよそ2倍。ごついフォルムに、当時の無線好きの少年たちは胸をときめかせたものでした。
しかし、外見の無骨さとは裏腹に、このSW-1は非常に実用的な無線機でした。ニカド(ニッケル・カドミウム)電池を内蔵し、連続送信でもおよそ1時間の運用が可能。さらに、重量は約500グラムと軽量で、警察官が日常的に携行する装備品の中でも比較的負担の少ない機材でした。
注目すべきは、署活系通信機ならではの機能です。ハンドマイク下部には非常発信用の専用ボタンが備えられており、これを押すことでプレストークボタンを押し続けることなく送信状態を維持できます。つまり、両手がふさがっていても緊急連絡が可能となり、現場対応の実情に即した設計となっていたのです。
署活系無線の特徴
署活系無線は、原則としてUHF帯を使用しています。具体的には、移動局(外勤警察官)側が340MHz帯、基地局(本署の通信室)側が360MHz帯に割り当てられています。
この無線システムは、各警察署の管轄区域内──おおむね数十キロ圏内──での基地局と移動局間、あるいは移動局同士の相互通信を目的として運用されています。そのため、移動局側(外勤警察官の携帯機)の最大出力は1W程度と非常に小出力で設計されているのが特徴です。
また、隣接する所轄署との連絡を可能とするため、各都道府県警察ごとに「共通波」と呼ばれる共用周波数も設定されています。このため、たとえばアナログ時代の携帯無線機SW-1では、1chに自署の周波数、2chには共通波または隣接署の周波数が設定されているのが一般的でした。
署活系無線は、日常の地域警察活動に密着した通信が主ですが、これに加えて交通取締りや巡回連絡などの業務にも幅広く使用されます。そのため、複数のチャンネルが用意されており、状況に応じた切り替え運用が可能です。
こうした構成により、署活系無線は地域警察官が地域に密着して機動的な対応を行うための、極めて重要な通信インフラとなっているのは80年代同様です。
初代デジタル署活系無線機 SW-101およびSW-201
署活系無線のデジタル化は、1987年ごろから警視庁をはじめとする一部の警察本部で始まりました。このとき登場したのが、アナログ機に代わる初代デジタル携帯無線機「SW-101」です。
SW-101は、同時期に発売されていた一般向け携帯無線機「MT-775」と筐体デザインがほぼ共通しており、見た目の面でも大きな変化はありませんでした。ただし、中身は完全に警察用として設計され、署活系に特化した仕様が盛り込まれていました。
そして1995年ごろには、後継機となる「SW-201」が各地で配備され始めます。SW-201は、横幅約6センチ、縦12センチ(アンテナ除く)、厚さわずか2センチ余りというコンパクトなサイズで、警察官の携行性を大きく向上させました。
この機種には、小型の液晶ディスプレイのほかに、以下のような操作系が搭載されています:
電源ボタン
送信ボタン(プレストーク)
イヤホンジャック
チャンネル設定スイッチ
識別用コードスイッチ
非常発報ボタン(ハンドマイクにも搭載)
これらの機能により、現場の警察官がより迅速かつ確実に本署や他の外勤員と連絡を取ることが可能になりました。
そして、1998年ごろまでには、全国の警察で署活系無線におけるデジタル化と音声暗号化(デジタル・コーデック)の導入が完了。これにより、従来問題となっていた外部からの傍受リスクが大幅に軽減され、通信の秘匿性と安全性が格段に向上しました。
現行配備のPSW形携帯用無線機
警察庁は平成23年(2011年)より、約20年ぶりとなる地域警察無線システムの見直しを行い、『地域警察デジタル無線システム』として刷新しました。その中核を成すのが、『新・署活系無線PSW(Police Station Walkie-talkie)システム』です。
この新システムにより、外勤中の警察官は、腰に装着する小型携帯無線機「PSW形端末」を使用するようになりました。PSW端末は、単なる音声通信機能にとどまらず、GPS機能やカメラ機能を備えており、位置情報や画像データの送受信も可能となっています。
『地域警察デジタル無線システム』は、以下の2つのシステムで構成されています:
新・署活系無線PSWシステム(音声・位置情報通信)
PSDシステム(Police Station Data terminal)
(データ通信端末を用いた各種情報の送受信)
これらの導入により、従来のSWシリーズと比べて、署活系無線の性能は大幅に向上しました。
SWとPSWの違いとは?
まず大きな変化の一つが、分散型基地局の増設によるサービスエリアの拡大です。これにより、地下街や鉄筋コンクリート建造物内など、従来通信が困難だったエリアでも安定した無線通信が可能となりました。
また、GPS(全地球測位システム)機能の搭載によって、警察官の現在地をリアルタイムで本署の端末に表示・共有できるようになり、現場への最適な人員配置や勤怠・動態管理がより迅速かつ的確に行えるようになりました。
そのほか、PSW形端末には以下のような改善も見られます。
小型・軽量化により携帯性が向上
バッテリー性能の向上による連続使用時間の延長
高い防水性能による全天候対応
このようにPSW形無線機は、まさに現代の街頭活動に適応したスマートな“相棒”として、全国の警察官にとって欠かせない存在となっています。
署活系無線は本署のリモコン室およびリモコン指揮者が担当
警察本部には、リモコン室と呼ばれる専用の通信室が設けられており、ここでは警察署の無線機をリモートで操作しています。
いくつかの警察本部では、リモコン室という名称は、無線機が別室に配置されており、その操作が通信室内の操作盤を通じてリモートで行われていることに由来しています。
警視庁の場合、このリモコン室を担当するのは、リモコン指揮者と呼ばれる無線担当の署員です。通常、リモコン指揮者は係長クラスの署員が任命され、24時間体制で警察本部通信指令室からの指令を受理し、現場での指揮を行います。
リモコン指揮者は、警察本部から送信される基幹系無線や有線通信で110番通報などの出動指令を受け取り、その指示を基に、署活系無線を使って交番勤務員や自動車警ら係などの地域警察官に指示を出します。また、現場からの情報を本署に送信し、その情報を基幹系無線や専用回線を通じて本部通信指令室に逐一報告します。
このような情報のやり取りを通じて、警察本部は各所轄署管内で発生した事件や事故の状況を常に把握し、迅速な対応を行っています。

署活系無線で事件事故の発生を知る方法
デジタル化および暗号化された警察無線は、当然ながら復調できないため、通話の内容をうかがい知ることはできません。
しかし、ラジオライフの「通話が聞けない警察無線で事件の発生を知る方法」によれば、警察無線の交信の特定の音を利用して事件の発生を知ることができるとしています。
署活系無線は、基地局である本署と移動局である外勤員、または外勤員同士の通信系統です。通信は、基地局が360MHz帯のダウンリンク、外勤員が347~348MHz帯のアップリンクを使って行われます。これらの通信は、レピーター通信を用いて行われており、交信が行われていない場合でも、通常約3秒ごとに搬送波(キャリア)が送信されています。
この搬送波は、広帯域受信機で受信すると「ズザッ」という音が一瞬聞こえるのが特徴です。そのため、もし交信頻度が高くなると、搬送波が連続して送信され、ズザー、ズザーという音がしばらく鳴り続けることになり、このような音の連続により、近隣で事件や事故が発生していることを観測できるとしています。
昭和の警察無線傍受
昭和の時代、交番近くのラーメン屋のオヤジが、片手にラジオライフ(しかも投稿していた)を持ちながら、もう片手には受信改造アマチュア無線機、さらにもう一方の手にフライパンを持って警察無線を傍受していたというエピソードもあり、腕が何本あるのかというような状況でした。
また、警察無線を傍受することで生まれた都市伝説も数多くありました。例えば、「葬儀会社は警察無線を貸してもらっている」とか、「葬儀会社の車は赤色灯をつける許可を警察からもらっている」などの噂が流れることもありました。
ただ、80年代に警察無線を傍受して利益を上げていたのは、葬儀会社ではなく、実際にはレッカー会社でした。それも、反社会的勢力のフロント企業とされるような会社だったという事実があります。
警察無線を傍受して、事故や故障車両の情報をいち早く得て、レッカーサービスを提供していたことが、無線を傍受して利益を得る手段となっていたのです。
署活系無線機をミニパトのアンテナに接続して送受信状況を改善
原則として移動局(外勤警察官)が340MHz帯、基地局(本署)が360MHz帯を使用しています。これらは飛びの悪いUHF帯を使用しており、所轄署の管轄内数十キロ範囲を想定した通信エリアとなっているため、出力も1ワットと非常に微弱です。
そのため、ビルもほとんどない農村や地方都市であれば問題ありませんが、山間地の谷間やビルの谷間などでは不感地帯の問題が顕著でした。
しかし、現在ではこの不感地帯問題も改善されています。交番の屋根に垂直ダイポールアンテナを立てて中継するレピータ方式が普及し、これによりUHF帯での通信範囲が拡大しました。また、以下のような対策も採られています。
無線警ら車ではないミニパトには、車載通信系無線機が搭載されていない場合が多く、外勤員は受令機によって車載通信系の内容を聴取しています。
一方で、一部のミニパトでは、ルーフ上に無線通信用アンテナが装備され、署活系無線の通信環境改善が図られている例も見られます。
これは、アンテナの同軸ケーブルを携帯型の署活系無線機へ接続することで、付属アンテナのみでは不安定になりやすい通信状況を改善するための運用例とみられます。
一般的に、出力の小さい携帯型無線機は、特に都市部において建物や地形の影響を受けやすく、通信状態が悪化することがあります。そのため、車載アンテナを活用することで、送受信状況の改善が期待できます。

一方、1983年度からは一部県警で、特に広範囲な地域を管轄する警察署において、広域署活系としてVHF帯域のアナログ基幹系通信を転用することがありました。
この対策により、VHF帯域の強い電波を活用し、UHF帯域での通信が難しい地域でも通信環境が向上しました。
PSD(Police Station Data Terminal)
一方、PSD(Police Station Data Terminal)は、地域警察デジタル無線システムの一環として運用されている警察用携帯端末です。

PSWが警察無線網を利用するのに対し、PSDは公衆携帯電話網を利用して通信を行う点が特徴で、文字情報や画像データの共有などに活用されています。
端末には、市販の携帯電話やスマートフォンをベースに、警察業務向けの機能やセキュリティ対策を施した専用端末が用いられており、各警察本部で運用されています。
警視庁では、こうしたPSDを俗に「Pフォン」と呼ぶことがあり、テレビドラマなどを通じて知られるようになりました。
PSDは、位置情報の共有、各種照会、画像伝送、連絡業務などに活用されており、地域警察官による迅速な初動対応や情報共有を支える装備の一つとなっています。
警視庁のPフォン。背面には警視庁のロゴとエンブレムが貼付されているほか、カメラが備わっていることがわかります。


警視庁ではビジネス用電話としても高機能で定評のあるシャープ製E05SHおよびE06SHが採用されていました。
他にもスマートフォンタイプも配備されています。

出典 https://travel.watch.impress.co.jp/img/trw/docs/1057/984/html/414.jpg.html
警視庁では全国に先駆け、万世橋警察署と立川警察署において、KDDI向けの端末E05SHを使用した地域警察官専用のGPS付きPSD形データ端末100台をPフォンとして2010年から正式配備。
2011年11月、東大和市で女性を騙そうとした振り込め詐欺の容疑者を撮影した写真が地域警察官らの「Pフォン」に一斉に送信され、容疑者が逮捕されたことが報じられ、今や認知度ナンバーワンとも言えるPSDです。
2011年当時で5000台近くのPフォンが警視庁の地域警察官に配備されています。

Pフォンに表示される画面には事件事故現場の地図のほか、110番整理番号のほか、臨場、現着、手書といった各機能表示が備わっていることがわかります。
一方、専務警察官である刑事に貸与されるPSD形データ端末はエヌ・ティ・ティDoCoMo提案の『ポリスモード』です。
地域警察官向けのPフォンと同じ運用ですが、刑事も同種のPSD形データ端末を持つことで地域警察官と専務の連携が取りやすくなっています。
制服の地域警察官と違い、現場で無線を使いにくい刑事にとって、携帯電話を装った実質的な『警察無線』であるPSD形データ端末は現場で重宝されるポリス・ガジェットと言えそうです。
このように、現在では地域警察官の受令方式には受令機、無線機、そして警察官用携帯電話PSDの3つもの方法があります。

地域警察官が手にしているのがPSD形データ端末。 画像の出典 【公式】神奈川県警察 初動捜査の要 通信指令課(110番センター)より
PSDシステムおよびPSD形データ端末では110番通報の内容を文字情報にして各所轄署ごと、あるいは県下全域の地域警察官に一斉送信できるほか、犯行現場の画像情報やGPSによる警察官の位置情報の活用によって、初動対応が大きく向上。

PSD形データ端末のカメラ機能を使い、目撃者がスマホで撮影した被疑者の写真を直接撮影し、その後すぐに通信指令室へ送信することで迅速な情報共有が可能。 画像の出典 【公式】神奈川県警察 初動捜査の要 通信指令課(110番センター)より
警視庁の公式サイト上の説明に拠れば、110番通報の内容は地域警察官や刑事の持つPSD形データ端末にも同時に表示されるほか、パトカーに配備されているカーロケナビでも文字、画像情報の共有が可能。

また、典拠の一例として、鳥取県警察本部では以下のように解説。
地域警察官等が110番通報等により現場臨場した際、所携の無線システムに付加された内蔵カメラを使用して撮影した映像等を通信事業者回線を利用して通信指令課に送信し、通信指令課において情報ハイウェイ等を活用して、映像等を関係所属に設置されたテレビモニタ並びに現場活動中のカーロケ搭載車両及び警察職員に配信することにより、映像等の共有を図るシステム
典拠元 鳥取県警察本部公式サイト https://www.pref.tottori.lg.jp/202551.htm
とくに一刻を争う事態においてはいかに迅速に臨場し、捜査員同士で捜査情報を共有するかで、その後の捜査の行方が左右されます。
PSD形データ端末はGPS機能により、所轄署では地域課に置いたノートパソコンの地図画面上で、端末を持つ地域外務員の動態、位置情報をリモコン担当者が1メートル単位で手に取るように把握可能です。
岡山県警察独自配備の『PITシステム』はTorque G03とカシオ製プロトレックを採用

画像の出典元 https://www.casio.co.jp/release/2018/0420_wsd-f20ab/
一方、岡山県警察でも2009年から独自のPSDシステム、その名も『Police Integrated information Tool(警察統合情報端末)』通称PITシステムを地域警察官向けに運用。
2018年、配備から9年が経ち、端末が老朽化したことから、データ端末を京セラ製Torque G03ベースのスマートフォンに変更。高強度ガラス「Dragontrail X」を採用したTorque G03は画面割れに強いほか、四隅に衝撃吸収バンパーも搭載されており、地域警察活動にも耐えうるヘビーデューティ仕様。
さらに『PITキー』と呼ばれるセキュリティのためのBluetooth®発信機をスマートウオッチに更新。

岡山県警察採用のデータ端末とPITキー。画像の出典元 岡山県議会議員 鳥井良輔/岡山県政(とりいりょうすけ)公式WEBサイト
そして『PITキー』に採用されたのが、カシオ計算機が一般向けに販売するアウトドア向けリストデバイスである『PRO TREK Smart WSD-F20』をBtoB戦略で法人向け仕様とした、WSD-F20ABです。
通常、PIT端末は『PITキー』であるWSD-F20ABとBluetooth®でペアリングされ、警察官のPIT端末と『PITキー』が20メートル以上離れて通信が切断された場合は即座にPIT端末の中の捜査情報が消去される仕組み。
新型PITシステムは2018年4月から運用が始まり、全国の警察でもスマホとスマートウオッチの組み合わせで地域警察デジタル無線システムを構成するのは岡山県警本部が初の試みです。

法人向けリストデバイス・WSD-F20AB。画像の出典元 https://www.asahi.com/articles/ASL675VCZL67PPZB00J.html
通常、通信指令室からの指令や連絡は画面表示のほか、バイブレーションでも通知され、チャリやバイクで警ら中の地域警察官も新着通知に気づきやすいとのことです。
また朝日新聞の報道によれば「警察統合情報端末(PIT)」には英語や中国語など9言語に対応した翻訳機能も搭載されており、急増する外国人観光客へも対応可能。さらに山陽新聞社の報道では『翻訳アプリ』はインターネットで外部に接続せず、ローカルで機能することで情報管理を徹底しているとのことです。
設計開発費として1億6千万円が計上され、カシオ計算機の公式サイトではWSD-F20ABの納入台数を1800台としています。
アメリカの警察でもPSD端末はある?
PSDのようなデータ端末を活用している例は国外の警察でもポピュラーです。2015年からアメリカのニューヨーク市警(NYPD)でも、日本と同じく警察専用携帯電話を効率的な街頭警ら活動に投入。
NYPDでは当初、Nokia製のWindwos PhoneであるLumia 640 XLとLumia 830を3万6000台導入し、パトロール警官用の¨ピーフォン¨として運用。そしてWindwos Phoneのサポート終了により、2017年からはアップル製のiPhone7と7plusの二機種に機種変更されました。

PSDのように携帯端末のGPSを利用して警官の位置をより効率よく一元的に管理できるほか、捜査情報の共有といった警察無線の同報性を活かした911アプリの運用で、管轄区域の全警官のiPhone7に即座にプッシュ通知が送られます。
iPhone7 NYPDエディションは現場の警官からも「パトロール警官の究極のデバイスだと思う」という声が挙がり、評価は上々です。

警察官の「無線機とスマホの並行装備」は必要なのか
地域警察デジタル無線システムでは、このようにPSW(警察用無線機)とPSD(警察用スマホ)で、並行運用されています。
「携帯電話網を使うPSDがあるなら、PSWのような無線機は不要ではないか?」という疑問も出てきます。
しかし実際には、PSWとPSDは役割が大きく異なります。
PSWは、警察専用の無線網を利用した即時性の高い音声通信を目的としており、通信指令や緊急連絡を複数の警察官へ同時に伝達できる点が特徴です。
PSWのような警察無線は、
- ボタンを押した瞬間に
- 同じチャンネルを聞いている全員へ
- 一斉に指示・要請が飛ぶ
というのが本質です。
例えば、
- 「刃物所持!応援要請!」
- 「逃走!北方向!」
- 「現着!」
- 「確保!」
このような超短時間の情報共有は、無線の方が圧倒的に速いです。
一方、PSDは公衆携帯電話網を利用したデータ通信端末であり、文字情報、位置情報、画像共有などに優れています。
また、公衆網を利用するPSDは、災害時や通信集中時に影響を受ける可能性もあるため、警察専用無線網であるPSWは現在でも重要な通信手段として維持されています。
つまり、PSWとPSDは競合関係ではなく、
- 即時音声通信
- データ共有
- 通信冗長性
を分担する補完関係にあると言えるでしょう。
まとめ
このように、現在ではPSW無線機に加えてPSD(警察用携帯電話)も使用され、これらを多角的に統合したシステムが『地域警察デジタル無線システム』となっています。
このシステムにより、従来の無線だけではなく、無線以外のデータ通信も活用できるようになり、警察無線の通信手段は進化しています。
2000年には、俳優の豊川悦司さんが逃走者役を演じ、柳憂怜さん演じる警察官に追跡されるという、KDDIのテレビコマーシャルが放映されました。
このCMでは、追跡する警察官の装備として署活系無線機が帯革に装着されており、ラストシーンではホルダーに収められた携帯電話がKDDIのロゴとともに映し出されます。
当時としては、携帯電話を警察活動や業務通信の延長線上で描いた比較的珍しい演出であり、警察通信の変化を感じさせる内容でもありました。
その後、警察においても携帯電話網を利用した通信端末の活用が進み、地域警察デジタル無線システムにおけるPSDのような警察用携帯端末が整備されていきます。
そして現在では、警察の通信手段は単なる音声通話だけでなく、カーロケなど、文字情報、位置情報、画像データなどを共有する方向へと発展しています。

このように、現場で活動する警察官には、音声だけでなく文字情報を含めた迅速かつ正確な情報共有が求められるようになっており、警察通信も時代に合わせて変化を続けていると言えるでしょう。


参考文献
警察庁:警察の情報通信 移動通信システム
https://www.npa.go.jp/joutuu/003.htm山梨県:通信指令システム
https://www.pref.yamanashi.jp/documents/27196/5tuta154.pdfImpress Watchシリーズ:警視庁の警察博物館がリニューアルオープン、一足先に見てきた(73/156)
https://travel.watch.impress.co.jp/img/trw/docs/1057/984/html/414.jpg.htmlNHK for School:通信指令の仕組み
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/bangumi.cgi?das_id=D0005120083_00000YouTube:【公式】神奈川県警察 初動捜査の要 通信指令課(110番センター)
https://www.youtube.com/watch?v=dW7a5768vO0鳥取県警察:通信指令の概要
https://www.pref.tottori.lg.jp/202551.htmカシオ:ニュースリリース「岡山県警がWSD-F20AB導入」
https://www.casio.co.jp/release/2018/0420_wsd-f20ab/岡山県議会議員 鳥井良輔/岡山県政(とりいりょうすけ)公式WEBサイト:「PITシステム」
http://torii-ryosuke.com/archives/3822朝日新聞:「法人向けリストデバイス・WSD-F20ABを岡山県系が導入」
https://www.asahi.com/articles/ASL675VCZL67PPZB00J.htmlNew York Daily News: NYPD arms Manhattan cops with the newest tool in fighting crime — the iPhone(NYPDのスマートフォン導入事例)
http://www.nydailynews.com/new-york/manhattan/nypd-cops-switch-iphones-new-tool-fighting-crime-article-1.3799060
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