アマチュア無線でのルール違反の事例とは?

電波法上で定められたアマチュア無線における『アマチュア業務』とは『金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的に無線技術に興味を持ち、正当に許可された者が行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務』であり、営利目的での利用は認められていません。ただし、2021年からはボランティア活動や公の地域活動など社会貢献活動におけるアマチュア無線の使用が認められる運びとなりました。これらアマチュア業務および社会貢献活動で行われる交信においてはルールを必ず守る必要があります。

アマチュア無線が華やかだったのも今は昔ですが、当時の各バンドは毎晩多くの人で賑わっていたそうです。

そんな中で、やはりいたずらも多発したそうです。お父さんの無線機を勝手に使ってしまうアラレちゃんや、中には木魚をわざわざ買ってスポーッと叩きながら延々とお経を唱える破戒僧(!?)、人の交信をそっくり真似するヲウム返しのいたずらをする人など、アマチュア無線界での一発芸人が当時は多くいたと聞きます。

ほかにも、無変調といって搬送波に変調をかけずにそのまま発射して、他人の交信を妨害する行為も頻発。とくに各地に設置されたレピーター局が、このようないたずらの被害に遭っていたようです。

言うまでもなく、アマチュア無線の運用にはマナーとモラルが絶対必要です。他者の交信を妨害するこれらの行為は当然ながらルール違反。また、法に反した使い方をしてしまうと不法無線局となり、電波法違反で検挙され、罰金を課せられます。

アマチュア無線でしてはいけないこと

アマチュア無線は資格を取得したうえで、与えられた免許内容と法の範囲内で運用することが決められています。簡略ですが、アマチュア無線では下記のような行為が禁止されています。

1、無資格、無免許での運用

アマチュア無線は従事者免許証と無線局免許状の二つがなければ運用することができません。そして、無資格および無免許で使うと罰則のある大変厳しい無線制度です。ただし、ゲストオペレーター制度を使用する場合は従事者免許のみで無線を運用できます。

局免失効状態でアマチュア無線機を車内設置し書類送検→略式起訴決定

2、アマチュア業務以外の通信(追記あり)

アマチュア無線はあくまで趣味教養の資格のうちの一つであり、許可される通信は非営利かつアマチュア業務のみとなります。したがって、アマチュア業務以外の一般的な企業の営利に絡む通信はできません。また、町内会活動や消防団の業務で使用することもできません。

令和3年度、総務省により定義が明確化され、町内会での防災目的での利用や、消防団等、社会貢献活動等でのアマチュア無線の活用が認められました。

非常災害時等のボランティア活動や、国や地方公共団体等の施策で共助を背景とする地域における活動等について、アマチュア無線を身近なくらしの中で活用できるよう、アマチュア無線の定義を明確化しました。これにより、アマチュア無線を社会貢献活動等で活用できることが明確化されました。アマチュア無線局免許人の皆様のアマチュア無線の積極的な活用が、その地位向上につながり、地域社会に貢献することが期待されております。(令和3年3月10日公布・施行)

総務省公式サイト アマチュア無線の社会貢献活動での活用に係る基本的な考え方

https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/ama_social_contribution/

具体的な利用例は、上記の総務省サイトにてご確認ください。このように今後は上記活動がアマチュア業務の正当な範囲内とみなされます。ただし、引き続き営利目的での利用は認められません。一方、人命の救助や現行犯人の逮捕などに関する非常通信に限っては、アマチュア無線を例外的に使用できます。ただし、非常通信を目的としてアマチュア無線局の開設はできません。

非常通信については、総務省が2014年10月24日に「アマチュア局による非常通信の考え方」を公表しており、その中で”非常通信はアマチュア局の柔軟な判断とボランティア精神によって行っても良い”と明確に見解を表明しています。

非常通信とアマチュア無線

3、虚偽の通信

アマチュア無線のみならず、無線通信で『自己若しくは他人に利益を与え、又は他人に損害を加える目的で』虚偽の通信を行った者は処罰されます。

第百六条  自己若しくは他人に利益を与え、又は他人に損害を加える目的で、無線設備又は第百条第一項第一号の通信設備によつて虚偽の通信を発した者は、三年以下の懲役又は百五十万円以下の罰金に処する。

平成10年1月、三重県桑名郡多度町の多度山で、何者かがアマチュア無線を使い「にせ非常通信」を出して、警察や消防などのヘリコプター3機、数百人の捜索隊を出動させるという悪質な事件が発生しました。

アマチュア無線を悪用し、偽りの非常通信などを行えば、言うまでもなく警察や消防に対する偽計業務妨害にもなりかねません。

情報引用元
http://www014.upp.so-net.ne.jp/ja2ol/4630khz-sub005.html

また、虚偽の遭難通信も許されません。

第百六条 2 船舶遭難又は航空機遭難の事実がないのに、無線設備によつて遭難通信を発した者は、三月以上十年以下の懲役に処する。

4、わいせつな通信

アマチュア無線によるわいせつな通信は電波法の108条にて禁止されており「無線設備又は第百条第一項第一号の通信設備によつてわいせつな通信を発した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」と明記されています。意外と罰則が重いのです。

5、犯罪に関する話

犯罪に関する通信はできません。実際に、あの有名なグリコ森永事件の犯人グループと見られる者たちがアマチュア無線を使って犯罪計画の交信を行っていたことが過去ありました。

余談ですが、80年代のテレビアニメで、アマチュア無線のモービル機を使って433MHzで悪人が車からヘリに連絡しているシーンがありました。

6、暗号での通信

消防無線では暗号を使って交信しますし、警察無線ではセンターポール露出などという暗号を使って指令を出しています。暗号というより通話コードと言うようです。しかし、アマチュア無線で暗号を使った通信はできません。

警察無線用通話コードや略語の一例

7、他人に依頼された通信

アマチュア無線では他人に頼まれた通信はできません。

アマチュア無線でやってはいけないことのまとめ

このように、アマチュア無線などでは電波法によって各種の禁止行為が定められています。違反した場合は、1年以下の懲役、100万円以下の罰金となります。

これら不法無線局を取り締まっているのが、総務省総合通信局です。総合通信局による取り締まりについては以下の記事で解説しています。

アマチュア無線の不法無線局の取締りとは!