電波法108条にて無線設備による「わいせつな通信」は禁止されている!?わいせつの定義とは?

アマチュア無線に限らず、「無線局が行ってはならない行為」は電波法で様々取り決められており、以下のページで詳しく紹介しています。

アマチュア無線における法令違反の行為とは?

その中にはアマチュア無線家にとっては誰もが気になる(!?)条項がありました。電波法の108条にある「無線設備又は第百条第一項第一号の通信設備によつてわいせつな通信を発した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」という一文です。

気になるのは「通信におけるわいせつの定義」です。この世界に海原雄山がいたら、きっとこう言うでしょう。

『電波法でわいせつな通信を禁じると明記したからには答えてもらおう。まず第一にわいせつな通信とは何か?』

『わいせつな通信の定義も出来ないくせに、わいせつな通信をするなというのはおかしいじゃないか』

海原雄山はともかく、このような皮肉り方、重箱の隅のつつき方をする人、この趣味の一部の界隈でよく見かけるのは気のせいでしょうか。

さて、総合通信局の公式サイトではこの「わいせつな通信」について明確に説明した文書を見つけることはできませんでしたが、さらに調べると「第7回国会 参議院 電気通信委員会 第11号 昭和25年3月2日」における政府答弁を発見。ズバリ、電波法の108条で規定された「わいせつな通信」そのものへの政府見解であり、これが現時点で参考になると思います。

○小林勝馬君 百七條及び百八條におきまして「政府を暴力で破壊することを主張する通信を発した者」乃至は「わいせつな通信を発した者」というふうになつておりますが、これは発信人であるのか、これはオペレイトしたオペレイターであるのか、どこを指しておられるのか、両方を指しておられるのか、尚又「わいせつな通信」というのはどの範囲で決定されるのか承わりたい。

出典URL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714847X01119500302/99

○政府委員(野村義男君) 百七條及び百七條の、どういうものがこういう罪を犯すことになるかということも、先程申上げました犯意があるかどうかということと密接な関係があるのでありまして、電報を出す人、或いはオペレイター、施設者でも、それを知つて、こういうことをしようとしてした場合には、これに当るわけであります。
第二点の「わいせつ」ということについては、これは社会通念でわうせつの観点はあるわけでありまして、従来は無線電信法では風俗壊乱というようなことで言つておりましたが、風俗壊乱というと非常に広い範囲になるので、これは狭めまして、わいせつ、こう相成るのでありますが、これは普通学問上の幾らもわいせつの定義はあるのでありますが、社会通念で御了承になつて頂きたいというふうに考えます。

出典URL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/100714847X01119500302/100

当時の参議院議員・小林勝馬氏による「わいせつな通信はどの範囲で決定されるのか」という伺いに対して、当時の政府委員・野村義男氏はこう答えています。「学問上では幾らもわいせつの定義はあるけれども、社会通念で了承せよ」と。

とはいえ「公然わいせつ」という言葉はあるものの、「アマチュア無線の公然の通信」にそれを当てはめると少々難しい解釈になりそうです。

ウェブ上で「わいせつな発言」あるいは「卑猥な発言」と検索すると、事例が散見されます。現代では日常会話の中に性的な発言を行うことを「セクハラ」と呼ぶ社会通念がありますが、それに準じた範囲と考えるべきでしょうか。

ただ、過去においては関東地方の広域レピーターへの妨害等で何者かが複数で卑猥な発言を大声で繰り返し叫ぶ愉快犯的ないたずらの例があったようです。しかし、当時この108条違反で摘発された例があったのかは不明です。

いずれにせよ、無線の交信のみならず、実生活でもそのような発言は、くれぐれもしないように慎みたいところです。