東北総合通信局が公開した『電波のルール啓発動画』の「誤解を受けかねない部分の修正版」が公開されSNSなどで話題

2月22日に東北総合通信局が公開した動画が、多くのアマチュア無線家からSNS上で批判を受けている。この批判を受け、3月9日に同局は”誤解を受けかねない部分”を修正した修正版動画を公開した。いったい、当該動画のナニが批判されるに至ったのか。詳しく見ていこう。

上の動画は”新たに公開された修正済みの動画”である。ズバリ言うと、修正前の動画では『アマチュア無線そのものが違法かのように受け取られかねない表現』となっていたのだという。

具体的には動画内に登場するFRS(とされるもの)、アマチュア無線機、パーソナル無線機、CB無線機(海外向けのもの)の画像を一つの場面に”ひとまとめ”で映した上で『不法無線局』および『無線局の不適切な運用・管理』との注釈がついていたのである。

どうやらこの表現方法が多くのアマチュア無線家の怒りを買ってしまったようだ。

批判を受け、東北総通は動画を修正し再公開。具体的に修正された部分は『不法無線局』の直下に『※写真はイメージです』、そして『アマチュア無線』と『CB無線』のそれぞれに『不法』の文字の追記。『パーソナル無線』および各イメージ画像に変更はない。

今回、同局はこれらの部分に関する注釈を部分的に修正して再公開したわけだが、批判された経緯に詳しく迫りたい。

ももすけさんも思わず怒る!?

『正規に国内で販売されている合法なアマチュア無線機』を他の海外向け無線機や、既に制度が終了したパーソナル無線機と一括りにした上で『不法無線局』と注釈をつけた表現には、思わず困惑の念や反感を抱く人が多かったようだ。以下は同動画に対するSNS上での人々の反応である。

https://twitter.com/STcoms/status/1631802358203310080

このように多くの方が疑念を抱いている中で、3月3日に怒り心頭気味で同動画に同じく動画でレスポンスしていたのは、フリーライセンス無線の楽しさを広める啓発をしているYOUTUBEのチャンネル『ももチャンネル』でおなじみの『ももすけ』さんだ。

最近では整備士の小春さんと共に愛車のランクルのカスタム動画や、覆面パトカーと同種のタクシー向けユーロアンテナを何処からか入手し、433MHzでの送受信テストを行うなど、興味深い動画を全力で公開し、攻めのスタイルを崩さない同氏。

覆面アンテナ風『MG-450-TP』による430MHz帯送受信実験が公開され話題。驚きの結果は

そんな普段は至って温厚(!?)なももすけさんだが『聞け、東北総合通信局 アマチュア無線=違法行為ってことか?』との強い煽り文句を前面に動画を公開するのは異例中の異例で、筆者も思わず震え上がった。きゅん。

上の動画に映る5人のうち、女性を除く男性4人はアマチュア無線の従事者資格を持っている方。

ももすけさんは、この東北総通の啓発動画を見た感想を女性に求めているのだが、女性は『(この啓発動画は)“誰向け”なのかわからない。知らない自分が見ると、これ全部ダメなんだって思っちゃう』と率直な感想を述べている。ももすけさんは『まさに、それ!そういうふうに受け取られますよ、総合通信局さん!』とばっさり。

今回の東北総通による誤解を招く表現は、アマチュア無線のさらなるイメージ悪化を招きかねない問題であるとして、ももすけさんをはじめとする無線家の方々は指摘していたわけだ。

そのような数多くの『ご意見』が実際に東北総合通信局に届いたがために、同局は修正の上で再公開したのではないかと見られている。

ただ、修正後の動画でもアラは目立つようで、東北総通の動画のTweetでは以下のようなコメントがされている。

『FRSの場面で登場する無線機はFRSではないのでは?』

たしかに、無線機のディスプレイに表示されているのはFRSで使用される周波数と異なる周波数のようだ。ただ、『※画像はイメージです』のマジックワードが追記されているので、セーフなのかもしれない。うちもやろうか。※個人の感想です。個人のサイトなので。みたいな。

また、以下のような指摘もあった。

『不法アマチュア無線ってのが気になる』

総合通信局では以前から『不法無線局』という呼称が主であり、『不法アマチュア無線』という呼称では、またもやアマチュア無線自体が不法と取られかねないのでは……?と危惧している方の意見なのかもしれない。

ただ、ももすけさんは東北総通の今回の修正動画に以下のようにレスポンスし、快く納めた様子だ。

総合通信局の啓発活動に困惑する人々

アマチュア無線の正しい使用を啓発する・・。これ自体は不法電波取り締まりと共に総務省総合通信局の本来業務であり、筆者も無線従事者として頭が下がる思いだ。間違っても電波Gメンと緊急走行の不法無線局探査車(DEURAS-M)に捕捉されるような電波法違反はするまいと誓って運用している日々である。であるが、この前、平日の昼間、白昼堂々、デジ簡でCQ出した直後に『電波りようこなんですけど、今日、局の方に無線設備持参の上で出頭できますか?こないならこちらから電波Gメンが緊走で行く』って電話きたのにはワクチン一発も打ってないのに心臓がドキドキしたわ。因果関係は不明だぞ。何がだよ(笑)お前は知床遊覧船かよ(笑)嘘だろ(笑)嘘つき個人サイト(笑)平日の昼間から反ワクがPCR、じゃなかった、DCRで遊ぶんじゃない(笑)

とはいえ、最近は総通への風当たりが強い。

そう、2019年に北海道内で発生したKUNIHARU仕草の如く、2023年2月に全国のアマチュア無線局へ見境なく全国の総通がばらまいた例の”仕事でアマチュア無線を使うと電波法違反です”の”警告文”騒動である。この件もSNSでは困惑の声が多い。

https://twitter.com/DEROCK57590337/status/1618943777049296898

 

当然、当局にもこのタレントを使った手紙が届いた。どうやら『従免取得者』ではなく『開局者』に一斉送付されたようであるが、書面にはさらに火に油を注ぐような文言も。

『免許を持っていても電波法違反です!』

そう書かれていた。アマチュア無線の資格を持つ人には当然の『仕事でアマチュア無線は使えない』という公然の事実をわざわざ開局者にお知らせしてくれるお役所仕草。

これには筆者も思わず苦笑。誰でも知っていることをわざわざあえて個別の人に指摘する行為。余計な物言い。『〇〇はXXですよ』→『それについては当方も存じ上げております』→『知ってるならいいです』うるせえっての(笑)

いずれにせよ、仕事に使えないから以下の無線を使ってくださいとの趣旨で、デジ簡(登録局)、IP無線、スマホアプリの三つの代替手段を提示していることを抜きにしても、手紙の一律送付に意味があったのか疑問を拭いきれないのは筆者のみならず、やはり他の方もそうであった。

ただ、これは2022年4月に北海道知床沖で発生した『知床遊覧船沈没事故』において、当該観光船関係者がアマチュア局の局免を受けながら業務でアマチュア無線を使用していた事実に起因するのではないかという見方もある。ふーん。

知床遊覧船事故に見るアマチュア無線の不正な業務利用について

総通の意図がどこにあるのか不明だが、この無差別送りつけ行為についても、前述のももすけさんが下記動画『合法的にアマチュア無線を楽しんでるユーザーに「仕事で使うと電波法違反です」っていうお手紙を総務省が送っている件』にて、以下のように強い違和感を表明したうえで問題提起をされているようだ。

 

今回の『合法的にアマチュア無線を楽しんでるユーザーに「仕事で使うと電波法違反です」っていうお手紙を総務省が送っている件』についてももすけさんの主張を要約するとこうだ。

『啓発として意味があるのか疑問。だって、これ(手紙)を開いて見ている人はこれ(仕事でアマチュア無線を使ってはいけないこと)について知っているし、していない人が大半では?(今回の総通の啓発手紙送付が)全く意味がないとは言わないけど、そういう人(仕事でアマチュア無線を使う人)はわかってやってるから』

出典 『合法的にアマチュア無線を楽しんでるユーザーに「仕事で使うと電波法違反です」っていうお手紙を総務省が送っている件』-ももチャンネル

なお、3月9日現在、同動画は22,980回再生され、コメントは133件。かなり反響が大きかったようだ。ルールを守って運用しているにも関わらず、突然総通からこんな手紙が送られてきたのでは、多くの無線局も戸惑いを隠せなかったのではないか。

一方、『私も教えていただくまで知りませんでしたが、今どきはだいたい免許を持って違法運用しているようですから、かなり効くと思いますよ。運輸系の求人広告をご覧になるとよいと思います。』というコメントがある。前述の知床事故のとおり、『免許を持って違法運用する局』の存在もまた無視できない問題だ。

特定の業種への”ヘイト”ではないが、昨今は出入り業者の中の違法局をゼネコンが排除する動きが広がりつつあるようだが、まだ不法局排除は前段階であり、総通にはさらなる啓発を望むところだ。でも、もう二度と微妙な啓発手紙は送らないでくださいねっ!(電波りようこのイラストキボンヌ)