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アマチュア無線の運用に必要な装置といえば、言うまでもなくまずアマチュア無線機です。なかにはアマチュア無線機を使って、交信はせずに受信だけを楽しみたい、という人もいます。
しかし、電波法ではアマチュア無線技士の資格やアマチュア局の免許のない人はアマチュア無線機を使ってはいけないことになっています。※ゲストオペレーター制度は従事者資格のみで使用可能です。
場合によってはアマチュア無線の従事者免許証を持たない方が、たとえアマチュア無線機を受信専用に使っていても、電波の発射できる状態で運用していること自体が電波法の『不法無線局の開設』容疑に問われ、警察と総合通信局合同の電波検問で車内拝見をされて見つかると、摘発されることがあります。

不法無線局の開設者を告発(平成27年5月26日実施)≪茨城県常総警察署と共同で不法無線局の取締りを実施≫ 画像の引用元 総務省公式サイトhttp://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/press/27/0527k1.html

不法無線局の開設者を告発(平成27年5月26日実施)≪茨城県常総警察署と共同で不法無線局の取締りを実施≫ 画像の引用元 総務省公式サイトhttp://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/press/27/0527k1.html
ポイントはアマチュア無線機を『電波の発射できる状態』で設置=無線局開設しているか否か
まず確認したいのが、原則として電波法では『アマチュア無線の資格がなく、また無線局免許を受けていないのにもかかわらず、アマチュア無線機を電波を出せる状態で設置した』ならば、電波を実際に発射したか否かにかかわらず、電波法第4条違反になり、不法無線局の開設罪にあたると規定しています。
これは以下に引用する総務省総合通信局の公式サイト内の公式文書でも同局が言いきっています。
原則として、無線局免許を受けていない場合、電波発射の有無にかかわらず電波を出せる状態となっていれば、電波法第4条違反になり不法無線局の開設罪にあたります。
引用元 総務省北海道総合通信局http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/K/FAQ.htm
ポイントは『電波発射の有無にかかわらず』という部分。
したがって、たとえ「車内のアクセサリー」目的等を目的に、車にアマチュア無線機を積んでいたとしても、電源やアンテナにつなぎ、実際に電波の発射が出来うる状態であれば、違法になり得ると解釈できます。これについては以下の記事で実際の摘発例をご紹介しています。
受信目的でアマチュア無線機を使う(設置する)のは合法?
電波法第2条第1項第5号で規定している無線局とは「無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう。ただし、受信のみを目的とするものを含まない」としています。
「無線局」とは、無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう。但し、受信のみを目的とするものを含まない。
出典 電波法 | e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000131
この但し書き『ただし、受信のみを目的とするものを含まない』とはどういう意味でしょうか。
もちろんそのままの意味で、受信のみを目的とするものであれば、無線局に該当せず、違反しないということです。
となれば、アマチュア無線機をあくまで受信のみで使うのなら設置してもOKとも受け取れます。
しかし、注意が必要です。総合通信局では『受信目的でアマチュア無線機を使う(設置する)』行為について、以下のように回答しています。
Q6 : 受信する目的で無線機を設置していても不法無線局になるのですか?
A6 : 電波を発射できる状態にして無線機を設置していれば受信しているだけでも開設罪に問われる場合があります。
引用元 総務省北海道総合通信局 http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/K/FAQ.htm
このように総務省では受信のみの場合でも『電波を発射できる状態にして設置』した場合には開設罪に問われるとしています。電波の発射の有無の次は、その無線機が実際に電波を発射できるか否か、がポイントになります。
『マイクを外しておけば……』と『直ちに取り付けられる場合』の境界線はいつも議論の的
また、総務省総合通信局では、いわゆる『マイクを外しておけば大丈夫』といった一部認識についても、以下のように言及しています。
電源を切っていたり、マイクを無線機から外していても、直ちに取り付けられる場合は不法局となります。
引用元 東北総合通信局 http://www.soumu.go.jp/soutsu/tohoku/kanshi/amateurradio.html
『直ちに取り付けられる場合』とは、車内にマイクを積まなければよいのか、それともマイクの接続口を物理的に潰してしまえば『直ちに取り付けられない』と判断されるのか、裁判官でもない限り、まったくわからないと言えるでしょう。
追記 その後、総合通信局の公式サイト内に以下のような文書を見つけました。
免許のない方が受信のみを目的としてアマチュア無線機を使用する場合は、無線機から容易に電波が発射できないように処置してください。
引用元 http://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/re/syuchi/musenkishiyouminasama.pdf
総務省では『免許のない方が受信のみを目的としてアマチュア無線機を使用する場合』と前置きしたうえで、その場合は容易に電波を発射できないようにしてくださいという見解を示しています。『容易に電波を発射できないように』されてあれば、無免許でもアマチュア無線機を受信で使用しても全く問題がないことがわかります。
これ自体は電波法第2条第1項第5号「無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体をいう。ただし、受信のみを目的とするものを含まない」として規定されていますが、しかしやはり『どのような措置』を講ずれば、容易に電波を発射できない状態となるのか、総務省は具体的に示してはくれていませんから、注意が必要です。
不法無線局の開設の罰則は?
気になる不法無線局の開設の罰則ですが、1年以下の懲役または100万円以下の罰金のほか、無線設備(無線機と空中線など)は証拠品として押収が行われます。
Q5 :不法無線局を開設した場合どのような罰則が適用されるのですか?
A5 : 電波法第110条により1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
引用元 総務省北海道総合通信局http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/K/FAQ.htm
局免失効状態で車に無線機を設置して起訴された実話でも書きましたが、検察に送検されると、検察官からは『不起訴との交換条件を匂わせるような』物言いで、無線設備の所有権放棄を被疑者に迫るようです。
無線の免許を持っていないが、たまたま運転しようとしている車に無線機が設置されていた場合は?
こちらもさらに注意が必要かもしれません。アマチュア無線家の家族などで無線の免許を持たない人が、無線機設置済みの家族共用の車を運転しようとする場合です。これについても、総務省総合通信局では以下のように回答しています。
Q8 : 無線の免許を持っていませんが、たまたま運転しようとしている車に無線機が設置されていた場合はどうすればいいのですか?
A8 : 無線機やアンテナを撤去するなどの対策が必要です。
引用元 総務省北海道総合通信局 http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/K/FAQ.htm
総務省総合通信局ではこのようなケースについて、直ちに違法であるとは言い切っていませんが『対策は必要』とのことです。
例えば、ご主人が有効な資格と局免を持っており、家族共用の車に無線機を積んでいたならば、それを他の家族が運転する場合、家族も同様に資格、局免を持たなければなりません。そうでなければ、その都度、無線機とアンテナを撤去する『対策が必要』になると考えるべきでしょう。
まとめ
以上、電波法および総務省総合通信局の公式文書をソースとして引用する形でご紹介させていただきました。
いずれにせよ、総務省が具体例を示して『容易に電波が発射できない状態』を説明していない現状では、筆者はどのような状態か、わかりかねます。したがって、トラブル防止のためにも引き続き『無資格・無免許の方がアマチュア無線などを受信したい場合は資格免許不要の広帯域受信機(ワイドバンドレシーバー)を!』という従来通りの立場を表明いたします。
広帯域受信機があれば、アマチュア無線はもちろん、航空無線なども受信可能です。
取り締まる行政当局の見解も違えば、対応も個別の事例で異なると思いますので、できれば無線従事者の資格と局免がない場合は、受信のみであってもアマチュア無線機の使用は控えるほうがよいのではと考えております。
総務省総合通信局では同局単独のほか、警察との合同電波検問、そして警察単独での違法局の取締りを不定期に行っており、無線用アンテナをつけた車に目星をつけ、かたっぱしから強制停車させ、従事者免許および局免に代えることのできる証票(2018年に証票は廃止されました)と無線機拝見を行います。
筆者の経験上でも、無線のアンテナを設置した車は警察に停車を命じられることが非常に多くなります。そのたびに警察官からは『(アンテナをつけている限り)これからも不快な思いをすることがあると思うが、申し訳ない』というような慰めの言葉(!?)をかけられますが、複雑な想いです。
総合通信局の取り締まり対象とする違法行為や取り締まりの方法は以下で解説しています。