CB無線で”ネカマ”したバカ兄弟に迫り来る絶体絶命のピンチ!無線家なら目が離せない驚愕スリラー映画『ロードキラー』解説

ネットでは男性が女性のフリをして、好奇心の強い男性を釣る遊びが一時期、ある種のネット文化として流行った。いわゆるネカマ。現在でもSNSなどで、騙される(騙す)例があるようだ。

そして、顔が見えない匿名性をいいことに、ネットの”ネカマ”のノリをCB無線でやろうと考えたバカな兄弟・フラーとルイスが、騙した相手から粘着的に仕返しされる恐怖を描いた作品が2001年に公開されたスリラー映画『ロードキラー (原題・Joy Ride)』である。

彼らのほんの悪ふざけが、相手を激高させ、取り返しのつかない凶悪事件へと発展していく・・・という驚愕の展開だ。

もっとも『ネカマ』とはその名のとおり、ネット上で男性が女性として性別を偽る行為を指すネット用語であるから、彼らのCB無線上での同様の行為をネカマと呼ぶのは不適切だが、適切な言葉が見つからない。『CBカマ』でいいのかな・・・?

当然、無線趣味を嗜む我々も見ておいて損はないだろう。アメリカのCB無線の概要を含め、映画『ロードキラー』のストーリーを解説していこう。

米国のCB無線の概要・・・米国の自動車旅行ではCB無線機は必須?

CB無線、いわゆる市民無線。アメリカでは1958年からCitizens Band Radio Serviceとして制定され、道路情報の交換や、事件事故、災害時における緊急通報のために使われており、とくに70年から80年代にかけて爆発的に利用者が増加し、大衆に親しまれてきた。

送信機がFCC(連邦通信委員会)から保証認定を受け、またFCCの提示するルールに合致した運用ならば、アマチュア無線のように免許や資格は不要であることが、多くのアメリカ市民からCB無線が親しまれている理由のひとつと言えるだろう。

ドライブツーリストが道路状況、(警察による)スピードトラップ、その他の旅行情報、基本的な社交や友好的なラグチュー(おしゃべり)まで、スマホ全盛の現代でも頻繁に使用している。

とくに州間高速道路を東西南北に横断するようなトラックドライバーなどはその道中、人っ子一人いない砂漠や森林地帯のルートを走ることも日常茶飯事だ。当然、スマホは圏外となれば事故発生時に危うい。

そのため、彼らトラッカーの無線家が多く、お互いの身の安全(つまり、速度取り締まりや武装強盗出没の情報、事故や急病時のSOSなど)のため、常に相互に情報交換や中継をしている。

彼らトラック野郎たちがCB無線を駆使して団結し、権力に抗う様を描いたのが1978年公開の映画『コンボイ』だ。

州によっては保安官事務所や警察機関も常にCB無線を傍受している。非常時に使う緊急通報用チャンネルはもっぱら9chだ。それほどまでにアメリカ社会でCB無線は緊急通報手段として確立されているのだ。

劇中では兄のフラーがCB無線の交信可能距離は8キロ程度と答えているが、一般的に遮蔽物が全くない見通し距離なら数十kmでも余裕で交信が可能だ。さらに夏場に突発的に発生するEスポの利用によっては、2000キロもの距離を越えるDXも可能だ。

日本国内であれば、北海道から沖縄まで交信できてしまうほどの距離だ。これは27MHzという短波無線の特性と利点である。

なお、米国で販売される米国仕様のCB無線は、日本国内では電波法上、使用できない。周波数が違うためだ。ただし、周波数は近似であり、その特性はそっくりだ。

米国のCB無線で使用が許されているのは26.965〜27.405MHzの周波数にそれぞれ10kHz間隔で割り当てられた番号付きチャネルで、合計40ch。短波帯でAM/SSB変調を使用する。

このCB無線機を、馬鹿な兄貴と思慮の足りない弟が軽い冗談で悪用したがために、震え上がる大事件に発展させることになるとは誰が予期しえたであろうか。

それでは映画の内容に迫ろう。

CB無線機を使ってトラック運転手相手に悪ふざけ・・・彼らが払った代償とは?

酔っ払って騒ぎを起こして収監された兄のフラー(スティーブ・ザーン)を引き取りに行くよう、母親から頼まれた弟のルイス(故・ポール・ウォーカー)。彼女であるヴェナとドライブするためにビンテージカーを購入したルイスは乗り気ではないが、兄の身元を引き取りに行くため、コロラドへ向かった。

しばらくぶりの再開に兄弟は感激に浸り、オンボロのビンテージカーで走り出した彼ら。旅の途中、立ち寄った給油所のメカニックに、フラーは車内のコンソールにCB無線機を取り付けてもらう。40ドルだ。彼の目的は自動車ツーリストがそうであるように、道路情報を入手するためなのか、果たしてそれ以外の目的があるのか・・・。

一方、弟のルイスはCB無線にあまり興味はないどころか、自分の車の後部にホイップアンテナを取り付けるための”穴”を開けられて苦笑。

さっそくフラーはCB無線のおにぎりマイクを握り締め、州内を走る不特定の運転手らにステートトルーパーによる交通取締り情報の提供を願い出た。

『交信求む。西に向かう車はいないか?こちらはブラックシープとマザコン坊や(ルイス)。高速80号を東向きだ!パトがいたら教えてくれ!』

“ブラックシープ(厄介者、鼻つまみ者を意味する)”を名乗るフラーに誰かが応答する。

『ジェームズタウンに一台いるぜ』

2人のオンボロ・ビンテージカーに取り付けられたCB無線機Cherokee Nightrider 150。なお、チャンネル表示は19ch。これは非公式の「高速道路情報」チャンネルとして米国で一般的。州間高速道路を走るトラックの運転手や旅行者が主に使用するのだ。Copyright © 2001 21st Century Fox Inc. All Rights Reserved.

CB無線と親切な運転手の道路情報アドバイザリーにより、しばらくは快適な車の旅になる予定だったフラーとルイスの兄弟2人。

しかし、今となってはバカ兄貴フラーが整備工場でCB無線を車につけた本当の目的は道路情報の交換なのか、それとも別のところにあったのか不明だ。

直後、雨を気取って語る”レインマン”の交信を耳にしたフラーは、彼の気取ったしゃべり方が気に食わないのか、弟のルイスに女のフリをさせ、レインマンをCB無線でからかうことを思いつく。

そのレインマン、いや、トラック運転手のラスティ・ネイル。

兄の恫喝に嫌々ながらも裏声で女を装うルイス。ところが、乗り気ではなかったこの悪戯に最初は戸惑いながらも、だんだんと快感を感じていくルイス。ルイスも子供のころ、女の声音で男子をからかっていた経験があり、まんざらではないのだ。

立派な”共犯”となったルイスが名乗るコールサインはcandy cane(キャンディ・ケイン)。アメリカで親しまれている硬い杖(ステッキ)の形のキャンディである。身長は175センチ、碧眼で肩までのブロンド。麗しき白人美女という設定だ。

女の声音を駆使し、ラスティを騙すキャンディこと、ルイス。ラスティが下ネタに乗っかって来たころを見計らって『バーカ!俺は男だ青葉俊介、ザ・根性!』と、ネタばらしをして早々に終わりにする他愛のないジョークのつもりだった。そう考えていた馬鹿な兄弟。

だが、運命の神はそれを許さなかったようだ。無線機の不調か、はたまた何らかの混信妨害により、ラスティとの交信が途絶したキャンディ・ケインことルイス。結果としてラスティはルイスをホンモノの女と思い込んだまま、ストーカーに変化。CB無線で『誰か、キャンディ・ケインを知らないか?』と探し始めた。悪夢の始まりである。

そもそも、20代の男性が無線で女性を偽ることが可能なのだろうか。これが声変わり期の男子中学生なら、同年代の女子を偽ることもできるであろう。実際にアマチュア無線のレピーター妨害が華やかなりし80年代、声変わり期の思春期男子中学生が、その手の愛好家のおじさんにYLに勝手に思い込まれてハアハアしていたらしい。

CB無線の変調方式は、AM変調(振幅変調)だが、これはFM変調に比べると、音声がこもる感じになる。もしかしたら、男が女を偽れる余地はあるのかもしれない。

さて、フラー主導のこの冗談半分の悪ふざけが、本気で悪意を持った『罠』に変わるのは、彼らが泊まるために訪れたモーテルの受付で、先客の初老の男がフラーを小突いたときだ。そして運悪く、このときラスティがキャンディケインを呼ぶ声が無線機から聞こえ、車内のルイスは戦慄する。

フラーはこのチャンスを逃すまいと、先ほどの初老の男への仕返しのため、彼の泊まる部屋へ、ラスティを押しかけさせようと画策する。兄に言われるまま、キャンディケインことルイスは、昼間の女の声音でラスティに応答し、モーテルの(初老の男が泊まる)17号室へと誘うのだ。ラスティを罠にかけて憂さ晴らしをしたつもりのフラーだが、完全にラスティの怒りを買ったことに気がついていない。

その結果、初老の男はラスティに何処かへ連れ去られた挙句『顎を持ち去られる』という大変な悲劇を招いてしまう。

翌朝、当然警察沙汰になり、後悔する彼ら。CB無線での悪ふざけの顛末を正直に保安官に告げたことで直接的な容疑者とはならなかった2人だが、厳重注意され、早々に州外へ出て行くように命じられる。

二人もラスティがガチのサイコパスであることを確信し、足早にこの地を立ち去ろうと決意。

しかし、この驚愕の事態を皮切りに、彼らはさらなる恐怖体験へと向かう。

あんなことがあったというのに、兄のフラーはまたもCB無線で交通情報を求めている。どうやら懲りていない様子である。

その時キャンディケーンを探し回るラスティの声がふいに聞こえてきた。思わず応答するフラー。すべては冗談だったとうち明かすキャンディケインことルイス。

怒りを押し殺したような声で謝罪を要求するラスティ。

ところがフラーは謝るどころか、ラスティをなおも挑発。やはり懲りていないのである。

州外へ向かう兄弟の車をすでにラスティは補足していたのだ。

ラスティの運転する暴走トラックは彼らを見つけ、粘着的な追跡が始まった。

『助けてくれ!ただの悪ふざけだったんだ!』

無線越しにフラーの口から初めて謝罪らしき言葉が出る。するとトラックはゆっくりと後退してゆく。

『これも悪ふざけさ』

そうラスティはCB無線で言い残し、暴走トラックは闇に消えていった。

フラーとルイスの兄弟はホンの出来心でCB無線でネカマめいた行為をして、他人をからかったことで、殺される恐怖を味わった。傷心の中、40ドルでつけたCB無線機を走る車の窓から放り捨てるフラー。

便利で頼れるCB無線機というアイテムも、悪意のある使い方をすれば、途端に『インスタントカルマ』の代償が待つ。

しかし、果たして彼ら兄弟へのラスティの”報復”はこれで終わりなのか?
彼らは変態的粘着トラック運転手・ラスティに本当に許されたのか?

結末は自身で確かめていただきたい。

2021年5月現在、この映画『ロードキラー』はアマゾンプライムメンバーなら、無料で視聴できる。

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