「アマチュア無線は聞いたことがあるけど、“プロ無線”って存在するの?」
一般には、趣味や自己訓練を目的とする「アマチュア無線」に対し、企業・官公庁・船舶・航空機・放送局などで使用される業務用無線や、それに必要な国家資格群を俗称で“プロ資格”と呼ぶことがあります。
ただし、これは俗称ではあり、電波法上の正式名称ではありません。
この記事では、プロ・アマチュア無線従事者資格の二つの資格区分と役割について整理していきます。
アマチュア無線とは?
電波法では、アマチュア無線の目的である「アマチュア業務」は次のように定義されています。
「金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な無線技術への興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」
つまり、アマチュア無線は「仕事」ではなく、無線技術そのものを楽しみ、研究し、通信技術を習得するための制度と言えます。
「アマチュア無線技士」資格としては、以下の4種類が存在します。
- 第四級アマチュア無線技士
- 第三級アマチュア無線技士
- 第二級アマチュア無線技士
- 第一級アマチュア無線技士
一般的に「ハム」「アマチュア無線家」と呼ばれる人々は、これらの資格を取得し、無線局を開局して運用しています。

また無線には「一次業務」「二次業務」の区分けがあり、同一周波数を複数の業務で共有する際の優先順位が決まっています。
多くの場合、アマチュア無線は「二次業務」として位置づけられ、一次業務を妨害してはいけないとされています。
“プロ”の無線資格とは?
一方、アマチュア無線技士以外の資格は、主に業務用途で使用される国家資格です。
例えば、
など、社会インフラや業務通信を支える分野で使用されています。
これらは俗に「プロ資格」と呼ばれることがありますが、あくまで通称であり、法律上の正式区分ではありません。
日本の無線従事者資格は、総務省制度上、全部で23種類に分類されています。
大きく分けると、以下の5系統です。
- 総合無線通信士
- 海上無線通信士・海上特殊無線技士
- 航空無線通信士・航空特殊無線技士
- 陸上無線技術士・陸上特殊無線技士
- アマチュア無線技士
このうち、アマチュア無線技士が4種類、それ以外の19種類が主に業務用資格として用いられています。
なぜ多くの資格に分かれているのか?
無線は、用途によって必要な知識や責任範囲が大きく異なります。
例えば、
- 船舶では遭難通信(SOS)
- 航空では航空管制通信
- 放送局では高出力送信設備の管理
- 業務無線では公共通信インフラの維持
など、それぞれ異なる専門知識が求められます。そのため、「無線資格」と一括りにはできず、用途別に細かく国家資格が分かれているのです。
“趣味”と“業務”を分ける制度
アマチュア無線は、あくまで個人の技術的興味や自己訓練を目的とした制度です。
一方で、業務無線は社会インフラや安全通信に関わるため、より厳格な制度設計となっています。
その違いから、無線の世界では昔から、
- アマチュア無線
- 業務無線(俗称:プロ無線)
という呼び分けが自然に定着してきたとも言えるでしょう。
参考:日本無線協会
陸上無線従事者
陸上無線は以下の4種類があります。
| 資格名 | 主な使用者 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第一級陸上特殊無線技士 | 無線テレビ中継局、放送関係など | やや難関 |
| 第二級陸上特殊無線技士 | 警察・消防の無線運用、タクシー無線など | 超絶簡単 |
| 第三級陸上特殊無線技士 | 工事現場、警備業、店舗内通信など | 超絶簡単 |
| 国内電信級陸上特殊無線技士 | 自衛隊 | 実技あり!(難) |
| 陸上無線技術士 | 電波設備の技術管理者など | 難関(理工系) |
陸上特殊無線技士
第一級から第三級ならびに国内電信の4つある『陸上特殊無線技士』は一般的な事業者、警察や消防といった官庁で活躍できます。
警察学校や消防学校では、この資格の取得が養成課程に含まれており、公的業務を支える重要なライセンスです。

この中で「第二級陸上特殊無線技士(二陸特)」や「第三級陸上特殊無線技士(三陸特)」は、もっとも取得しやすい資格として知られており、小学生でも合格可能です。
二陸特および三陸特は CBT(Computer Based Testing) 形式で、いつでも気軽に全国の指定センターで受験が可能。
マークシートの多肢選択式で、専門的な実技試験などは一切ありません。
CBT試験の解説はこちらで行っています。

国内電信級陸上特殊無線技士のみ、モールス通信の実技試験が行われます。
第一級陸上特殊無線技士、通称「一陸特」が陸海空すべての特殊無線技士の中では最高峰。
一陸特を求めるのは大手通信会社および、その基地局を保守管理する会社など。
これらの業界への転職に有利な無線従事者資格とされ、その分難易度は高く、計算問題の出題頻度が高く、ひねくれた問題も多くなります。
ただし、国家試験より多少容易に取得できる方法もありますので、下の方でこっそり教えます。
陸上無線技術士
第一級陸上特殊無線技士を取得した方が次に目指すとされるのが、第一および第二級陸上無線技術士(陸技)。高度な知識と技術を要求される放送局や官庁の無線設備の保守管理を行う資格です。
教育機関が就職先の一例にこぞって警察庁情報通信局技官を出していますが、実際に警察庁は一陸技の取得者をプロフェッショナル採用と銘打って別枠募集しており、情報通信基盤の構築や保守管理、サイバー犯罪における情報技術解析支援要員に充てています。

海上無線従事者
海上特殊無線技士
第一級から第三級ならびにレーダー級まで4つある『海上特殊無線技士』の資格は主にレジャー船や漁船など内航船における無線通信に必要です。
第二級および第三級は小学生でも易々と合格できるほど難易度が低く、実際に小学生レベルの筆者も二海特を一発合格しています。
船舶の運行が前提のため、レーダーや国際VHFの使い方、遭難通信(メーデー)に関する問題など、人命に直接関わる問題が多数出題されます。


第一級海上特殊無線技士では筆記のほか実技試験として英語の送話と受話、さらにポートラジオ、海上保安庁などとの英語による無線交信に関する問題が出題され、比較的難易度の高い試験です。
第三級および第二級はCBT試験が行われており、いつでも気軽にお近くのCBTテストセンターで受験可能。
海上無線通信士
第一級から第四級まである海上無線通信士はもっぱら船舶の無線設備の操作を行う資格です。
一海通・二海通・四海通は、第四級アマチュア無線技士の操作の範囲に属する操作が認められています。
また、四海通は科目合格制度あり、一海特の工学試験免除特典あり、一陸特の養成課程選抜試験免除特典あり、海上無線設備登録点検員の任用資格ありと、「踏み台」にされることも多い、実はおいしい資格です。
気になる難易度ですが、「通信士」の名称を冠する通り、上述の一陸特を除く各特殊無線技士よりもやや高め。
最も下位である四海通でも、一海特より遥かに工学の難易度が高くなっています。
つまり、四海通取得者の一海特工学試験免除はこれが理由。
ただし、四海通では英語や電気通信術の実技がないため、一海特と比べて総合的にどちらが難しいか一概には言えません。
航空無線従事者
航空特殊無線技士

航空特殊無線技士(航空特)は主に日本国内で自家用機や一部の航空機事業の操縦士が取得する資格です。
級はなく、学科試験は3アマより簡単です。これは「理論・構造・機能」にまで及ぶアマチュア局と違い、航空特の操作範囲が「無線設備の取扱方法」に過ぎないため。
実際の航空機の操縦に伴って、無線装置の使用が前提となる資格ですから、レーダー、GPS、ATCトランスポンダの使用方法に関する問題が出題されるのが特徴です。
一方、実技試験の通信術として英語の送話と受話があります。
普段からアマチュア無線で(正しい)フォネティックコードを運用しているアマチュア局ならとくに難しい試験ではないと言えます。

航空無線通信士
航空特の上位資格です。大手航空会社の旅客機など一般的な事業用航空機を操縦するプロのパイロットで必要になります。試験内容には英会話があります。
総合無線従事者
総合無線通信士
海上、航空及び陸上の無線局の無線設備の操作を総合的に行えるのが、第一級、第二級、第三級まである「総合無線通信士」です。無線従事者国家試験で最難関です。
プロ無線の資格取得者には特典も
無線従事者の資格取得者には実は特典があります。
消防設備士(甲種)の受験資格ができる
指定試験機関である財団法人・消防試験研究センターによると「消防設備士乙種は誰でも受験できます」が、甲種になると受験資格が設けられ「国家資格等による受験資格」に設けられた「無線従事者 電波法第41条の規定により無線従事者資格(アマチュア無線技士を除く。)の免許を受けている者」という規定によって受験資格が得られます。
詳細は財団法人・消防試験研究センター https://www.shoubo-shiken.or.jp/shoubou/annai/qualified01.html
社会保険労務士の受験資格ができる ※一部資格
厚生労働大臣が認める『社会保険労務士の受験資格』には学歴または一部の国家資格取得者、自衛官、皇宮護衛官など国家公務員採用試験合格者などがありますが、無線従事者の国家資格では『一総通』および『一陸技』の取得者が受験資格に該当します。
点検の業務を行える(個人・法人)※一部資格
第一級、第二級及び第三級総合無線通信士、第一級、第二級及び第四級海上無線通信士、航空無線通信士、第一級及び第二級陸上無線技術士、陸上特殊無線技士、第一級アマチュア無線技士の資格を有し、一定の要件を満たす者は、総務大臣の登録をうけ、それぞれに定められた種別の多様な無線局(固定局、放送局、海岸局、航空局、船舶局、衛星局、地球局、アマチュア局ほか多数)の点検の業務を行うことができます。個人事業主も可能です。

まとめ
いかがでしたか。
アマチュア無線は利益を目的としない、もっぱら個人的な興味に基づく技術的、実験的な交信が基本です。
それに対して、19個のプロ無線従事者は利益追求のための商業活動における各種企業の業務無線や、警察無線などに代表される犯罪の予防など治安の維持に関する無線、消防無線などに代表される人命の救助のために活動する非営利の公的機関が使う無線の運用に従事しています。
したがって、非営利目的の技術実験的通信のみと限定されているアマチュア無線に対して、間違いが許されない一般の商用利用や公務で使用される無線という点からも、やはり「プロ無線」と呼んで差支えないでしょう。


























































































