デジタル簡易無線(デジ簡)には、大きく分けて携帯して使うハンディ機と、車両に搭載して使うモービル機があります。どちらも同じ登録局として運用されますが、想定される使用環境と設計思想が異なります。

それぞれの特徴を見ていきましょう。
デジタル簡易無線機のモービル機の特徴

車載運用で本格運用するなら
モービル機は、車載運用を前提に設計されたデジタル簡易無線機です。一般的には送信出力は最大5ワットで、ハンドマイクを接続して使用します。
本体と操作部(表示・操作パネル)を分離できるセパレート構造を採用している機種も多く、ダッシュボード周りやセンターコンソールなど、車内に固定して運用することを想定した作りになっています。
電源については車両の12ボルト電源を利用する前提のため、バッテリーは内蔵されていないのが一般的です。そのため、車外で単体運用することはできません。
またアンテナについては、ハンディ機と異なり本体に付属せず、実運用では車載用アンテナを別途設置する必要があります。

マグネット基台やルーフ基台などを用いて設置するケースが一般的で、この点もシステム全体としてのコストや設置手間に影響します。
デジタル簡易無線機のハンディ機の特徴
オールインワンで圧倒的にコスパが良い
一方でハンディ機は、バッテリー・アンテナ・スピーカー・マイクが一体化した携帯型で、電源や設置環境を選ばず使用できるのが大きな特徴です。特にデジタル簡易無線では、現場移動や屋外運用を想定した利用が多く、取り回しの良さからハンディ機が主流となっています。
両者の違いを整理すると、モービル機は「車両に常設して安定した通信品質を得るための構成」、ハンディ機は「持ち運びと即応性を重視した構成」と言えます。そのため、単純な優劣ではなく、用途によって適した選択が変わります。
例えば、長時間の車両移動や固定局的な運用を行う場合はモービル機が有利ですが、現場での機動的な通信や複数拠点での運用が想定される場合はハンディ機の利便性が勝ります。
このようにデジタル簡易無線は、同じ制度区分の中でも運用スタイルによって最適な機材構成が変わるため、ハンディとモービルを単純比較するのではなく、「運用環境との適合性」で選ぶことが重要です。
バッテリー内蔵で手軽な運用ができる
モービル機は基本的に本体にバッテリーを搭載しておらず、車のバッテリーを電源とするか、自宅や会社などでの固定運用ならば安定化電源が必要となります。
一方、ハンディ型のデジタル簡易無線機は本体にバッテリーパックを備えており、外部電源を必要としない身軽な運用ができるのがメリットです。
デジ簡に許された最大送信出力5Wがハンディ機でも出せる!
デジタル簡易無線(登録局・351MHz帯)のハンディ機とモービル機はいずれも、制度上の送信出力は最大5ワット(機種によっては出力切替あり)であり、「送信機単体の出力上限」という意味では同等です。この点だけを見ると、「モービル機だから強い」「ハンディ機だから弱い」という差はありません。
ただし、ここから先が重要で、実際の通信性能は送信出力だけで決まりません。
モービル機の優位性は「出力」ではなく、主にアンテナ設置環境と運用条件にあります。車載アンテナは一般的にハンディ機付属アンテナよりも長く、効率が高く、さらに車両上部という高さを確保できるため、結果として電波の到達性(実効放射電力、いわゆるERP的な実力)が有利になる傾向があります。
また、電源面でもモービル機は車両電源を前提としているため、長時間送信でも電圧低下やバッテリー残量による出力低下の影響を受けにくく、運用の安定性という意味で優位性があります。
一方でハンディ機は、持ち運びやすさと即応性が最大の利点であり、アンテナが短くなりがち・地上高が低くなりがちという物理的制約はあるものの、それを補って余りある機動性があります。
したがって、「最大送信出力が同じだからモービル機に優位性はない」という結論は正確ではなく、正しくは次のようになります。
送信機の出力は同等だが、アンテナ環境・設置高さ・電源安定性の違いによって、実際の通信性能には差が出るため、モービル機とハンディ機は“同じ5Wでも別物の通信システム”として考える必要がある。
アンテナがはじめから付属する。交換も簡単
ハンディ機の付属アンテナは「短縮へリカル型」と呼ばれる全長20センチほどのタイプですが、別売のアンテナを一緒に購入せずとも付属アンテナで問題なく交信が行えます。
これもハンディ機の大きなメリットです。
ただ、付属アンテナの送受信性能に関して言えば、社外メーカー製のアンテナに交換したほうが良いでしょう。
お安い
デジタル簡易無線機の市販価格は比較的値下がりを続け、ひところよりも手ごろになりました。
なかでもハンディ機はモービル機よりも元から安いのが魅力です。
デジタル簡易無線機のハンディ機のデメリットとは
一方、ハンディ機にはデメリットと呼ぶべき面もあります。
ハンドマイクについて
ハンディ機は機動性に優れる一方で、運用スタイルによっては不便さもあります。
例えば、スピーカーマイクを使用しない場合は本体を手に持って交信する必要があり、視認性や操作性の面で制約が生じることがあります。
そのため実際の運用では、胸元に本体を装着し、スピーカーマイクを併用するスタイルが一般的です。
またスピーカーマイクは必須ではありませんが、通話のしやすさや安全性の観点から、多くのユーザーが導入しています。
運転中の使用については、道路交通法上「携帯電話等の保持・注視」に該当する操作が問題となるため、ハンディ機を手に持ったまま通話する運用は避けるべきです。スピーカーマイクを用いることで、より安全な運用が可能になります。
バッテリーの持続性
メリット編にてハンディ機もモービル機と同じように最大で5w出せると書きましたが、ハンディ機は内蔵バッテリーのみで5W送信を続けると、バッテリーの消費が早いため、長時間運用ではデメリットとなります。
しかし、ハンディ機にはシガーライターから電源が取れる専用ケーブルがオプションとして販売されているモデルも多くあります。
また、モバイルバッテリーからUSB充電可能のバーテックスタンダードのVXD1もあります。
モバイルバッテリーなどを持っていれば、旅先でのバッテリー上がりを気にすることはもうありません。
DJ-DPS70
多くのフリーライセンス局に支持されるハンディ機はアルインコDJ-DPS70です。
それはなぜでしょうか。
一言で言えば、アルインコの開発設計思想が、当初から私たちDCRのホビーユーザーを意識したものだからです。
アルインコDJ-DPS70シリーズはなぜフリラー局から支持されるのか?
最大5Wで全チャンネルスキャン&Sメーター表示アリ、大容量バッテリーモデルもあるから
複数チャンネルの巡回受信を可能にする全チャンネルスキャン機能は私たちホビー局向けデジ簡機にはぜひとも欲しい機能。
しかも大容量3200mAhバッテリー・バージョンもあるアルインコDJ-DPS70シリーズが大人気となっています。当然、筆者も使用中です。

前モデルのDJ-DPS50で不満だった音質の悪さが飛躍的に改善されたほか、周波数表示ならびにSメーター表示など、ホビー局にはとっては”かゆいところに手が届く”各種機能もあり。
DJ-DPS70シリーズには通常バッテリー(7.2V/2200mAh)のDJ-DPS70(KA)、それに大容量バッテリー(7.2V/3200mAh)搭載のDJ-DPS70(KB)、そしてKAのイエローバージョンのDJ-DPS70(YA)の3バージョンがあります。

また、アルインコ社による製品保証期間が1年ではなく、2年である点も人気の秘訣です。
筆者は多くのユーザーによる厳しい評価レビューに裏づけされたDJ-DPS70の購入をお勧めいたします。
1w送信や受信メインの運用ならDJ-DPS70(KA)、そして最大5wで移動運用が多いのなら、大容量バッテリーパックが標準付属されたDJ-DPS70(KB)がおすすめです。
なお、やはり大容量バッテリーパックは通常パックよりもサイズが大きいため、携行のしやすさもご考慮されてください。
デジ簡モービル機の価格と普及
デジ簡(登録局)のモービル機は、これまで比較的高額でした。

たとえば、アイコムのIC-DPR100は定価75,384円、アルインコのDR-DPM50は定価73,224円で、実勢価格でも5万円前後です。

ただし、アルインコのDR-DP50Mは、独自規格RALCWI方式を採用しており、注意が必要ですが、比較的リーズナブル。
まあ、アマチュア無線のモービル機と変調方式も普及率も違うため、単純に比べられませんが、それでもデジ簡モービル機は高価な部類。
アルインコのDR-DPM60が普及を牽引
そんな中、2017年6月にアルインコが発売したDR-DPM60が状況をガラッと変えます。

前モデルのDR-DPM50(定価73,224円)よりもリーズナブルな定価53,784円で登場しながら、機能的には劣るどころか、スタイリッシュなデザインも相まって、モービル運用を楽しみたいフリーライセンス局や業務局の間で爆発的にヒット。

見た目は、同社のアマチュア無線機DR-620と似てるけど、フロントパネルは完全新規設計。
4つのボタンとボリュームダイヤルだけというシンプルな構成です。
免許局向けにはDR-BU60Dという同じ筐体の機種も販売されています。
ホビー向けにはSメーターや周波数表示が便利、業務向けには従来の32,767通りの秘話コードに加えて、アルインコ独自の491,505通りの秘話コード(M60やS70系同士の通話時のみ機能)が搭載されてるのが強みです。
このおかげで、フリーライセンス局にとっては待望の機種となりました。
後継機 DR-DPM61の登場
今では後継機DR-DPM61が登場。
この機種はもともと業務向けに開発されたものと思われますが、実際にはフリーライセンス局のユーザーたちがYouTubeやSNSを通じてホビー用途での活用を広めたことで、メーカーの想定を超える盛り上がりを見せたのかもしれません。
もちろん、デジタル簡易無線のモービル機も、アマチュア無線のモービル機と同様に自宅に設置して固定局として運用することが可能です。
ただし、その場合も安定化電源を別途用意する必要があります。

デジ簡でのCQの出し方については、また別の記事で詳しく解説しています。

デジタル簡易無線(登録局)の送信電力は最大5W。これは国家資格を必要としない無線局の中では最大の出力かつ、十分に実用的なパワーです。

とはいえ、付属のヘリカルアンテナを装着した1W機同士が交信した場合の距離は市街地で2~3km程度。
もっとも、無線の交信距離はアマチュア無線と同様、自分がローパワーのハンディ機であっても相手局の無線設備が固定局か移動局か、標高、アンテナなどによって如何様にも変わります。
逆に相手局からの波は自局に届いても、自局の波は相手に届かない場合もあります。
そこで、デジ簡の交信距離はモービルアンテナで大幅アップさせ、快適な交信を試みましょう。

高い5W機を買う前に、まずは意外とよく飛ぶ1W機+社外アンテナを試す価値は充分にあり!
デジタル無線特有のシビアな変調
電波がわずかに受信できていれば、雑音交じりでも音声が音声としてなんとか聞きとれるアナログ変調のアマチュア無線に対して、デジタル無線は電波が弱くなると音声として全く復調できないのが、災害時などではやや不安とも言えます。
このデジタル無線特有のシビアな変調はデジタル消防無線でも指摘されています。

デジタル簡易無線で『ケロる』という言葉の意味は?
デジ簡には弱い変調状態で時折現れる断続的な『ケロケロ』という変調音を『ケロる』と呼びます。
正常な変調時でさえ、人の声が甲高く変調されてしまうデジタル簡易無線では、高度なデジタル技術を使っていながらも、その音質はアナログのアマチュア無線のFMに比べると低品質。慣れないうちは聞き取るのに一苦労。
また、アマチュア無線等のアナログFMでは遠距離でもデジ簡のように変調が断続して”ケロる”ことなく、スムーズに変調され、聴き取りが容易です。
ところがデジタル変調方式では音声が途切れはじめると、復調された音声はケロケロしてしまいます。
ケロ解決策はロケのよい場所に移動する、相手との距離を縮める、利得の良いアンテナに交換、また次回のいずれかになるかと思います。
まとめ
モービルアンテナを使うことで、アマチュア無線のハンディ機でもそうであったように、1W機のデジ簡機でも十分に実用の範囲で使えることが体験できるはずなので、皆様も、高い5W機を買う前にぜひ一度、モービルアンテナを使ってみてください。































































































