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シグナリーファン編集部では、自衛隊の装備や部隊について防衛省の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、それらの調査結果に基づいて記事を構成しています。

陸上自衛隊の高機動車が「独特の乗り心地」と言われる理由は?体験試乗できる?

陸上自衛隊の高機動車は、演習や災害派遣などで部隊の機動力を支える多用途車両です。

悪路や積載状況に左右されず、陸上自衛隊の多様な任務を遂行できるその強靭な車両の秘密を詳しく見ていきましょう。

高機動車の概要

陸上自衛隊の高機動車は、1993年から運用されている人員・物資輸送用の四輪駆動車両です。

それまで使用されていた73式小型トラック(三菱ジープ)の後継車として配備されました。

悪路での走破性と積載能力が向上しており、部隊の移動や物資輸送に使用されます。

陸上自衛隊の高機動車をベースにした「メガクルーザー」も市販されました。

陸上自衛隊の高機動車と民生用の「メガクルーザー」の違いとは?

しかし、その車内は、民間仕様とはまったく違い、快適性や静粛性はほとんど考慮されていません。

まず、内装は鉄板と樹脂パネルがむき出しで、遮音材や断熱材はほとんど使われていません。そのため、エンジン音や路面の振動がそのまま車内に伝わります。

走行中はディーゼルエンジンの大きな音とタイヤの唸りが常に聞こえ、普通の車のような静けさはまったくありません。

座席も非常に簡素です。布張りの防水シートが付いているだけで、リクライニングやクッション性はほとんどありませんから、長時間乗ると腰に負担がかかると言う声も一部であるようです。

高機動車にエアコンは?

高機動車にエアコンは基本的に装備されておらず、暖房はあるものの、冷房はない車両が多いです。夏場はかなり暑く、冬場は寒い環境になります。

ただし、陸上自衛隊第一普通科連隊の公式SNSアカウントによれば、1部ではエアコンが装備されている車両も存在します。

また、車内には電装品や装飾類もほとんどありません。ラジオやオーディオはもちろん、カーナビなども付いていません。代わりに、無線機や装備品を取り付けるためのスペースや電源端子が設けられています。

全体として、高機動車の室内は「快適に過ごすための空間」ではなく、「任務のために移動するための作業スペース」です。

乗員の安全と車両の耐久性が最優先で、静かさや乗り心地は犠牲になっています。

任務での活用

陸上自衛隊の部隊展開や海外派遣での使用はもちろん、災害派遣でも活用されます。

自衛隊の「災害派遣」と民生支援!対災害用各種装備

配備と仕様

高機動車は車体耐久性が高く、最大積載量が約1トンで、10名の隊員を乗せた状態でも安定して走行できます。

荷台には装備や物資を安全に積載できます。四輪独立サスペンションを採用しており、ぬかるみや砂利道、山間部の斜面でも走行が可能です。

この独立したサスペンションの特徴から、乗員には独特の乗車感を与えることでも知られます。

演習では部隊の移動や補給支援に使用されます。災害派遣では、被災地への物資輸送や避難誘導に利用されます。都市部や高速道路での運用も可能で、各駐屯地で日常的に使用されています。

高機動車の各種バリエーション

陸上自衛隊では高機動車をベースとした様々な車両が展開されています。荷台の構造が柔軟で、多様な資材や装備品を安全に積載できるようになっています。

93式近距離地対空誘導弾

駐屯地や作戦展開時のの防空に使用されるタイプです。

航空電源車

陸上自衛隊の航空隊で使用される「航空電源車」仕様です。


イラク戦争で爆発物攻撃を受けた

自衛隊は、2004年から2008年までイラクのサマワで「人道復興支援」を目的として活動しました。主な活動は陸上自衛隊が中心となって行われ、給水、医療支援、学校や道路の復旧・整備でした。

しかし、2005年(平成17年)6月23日に、陸上自衛隊の車両隊列が道路走行中、IEDによる攻撃が発生。幸いなことに軽微な損害で済みました。

ロシア軍に高機動車?

自衛隊の高機動車がロシア軍に使われています。理由は以下で解説しています。

陸上自衛隊の高機動車がロシア軍に渡った理由

独特な乗り心地の理由は?特徴と機動性

走破性と積載能力の高さ

高機動車の最大の特徴は、悪路での高い走破性です。10名の隊員を乗せた状態でも安定して走行できる設計となっており、森林やぬかるみ、山間部の道など、陸上自衛隊の多様な演習環境で活用されています。

高機動車はエンジン性能が高く、急勾配や長距離移動にも対応できます。荷台の設計により、人員や資材を効率よく運搬でき、部隊の作戦行動や支援活動の効率化に寄与しています。

そして、高機動車特有の独特な乗り心地は、オフロードでの走破性を追求した特殊な構造と装備が主な理由です。

一般車両では味わえない、揺れや振動の大きさ、そして悪路での安定した走破能力は、平均的な価格の乗用車では味わえません。

主な理由は以下の通りです。

独立懸架式サスペンション

高機動車は高い走破性を確保するため、すべてのタイヤが独立して動く独立懸架式サスペンションを採用しています。

これにより、路面の凹凸に合わせて柔軟に対応できますが、一般車両のような乗り心地の快適性は犠牲になっています。

極太のオフロードタイヤ

高機動車は、悪路でもしっかりと路面を捉えるために、非常に太く、扁平率の高いタイヤを装着しています。

このタイヤは、空気圧を調節することで、泥道や砂地など、さまざまな路面状況に対応できる反面、舗装路では路面からの衝撃をダイレクトに拾いやすくなります。

高い最低地上高

 悪路でも車体の底が路面にぶつからないよう、非常に高い最低地上高が確保されています。

車軸が上方に持ち上げられるポータルアクスルと呼ばれる機構も採用されており、高い位置から路面の状況が伝わってきます。

なんか硬い強靭なシャシー

過酷な環境での使用を前提としているため、車体やシャシーは非常に頑丈に作られています。
この剛性の高さが、路面からの衝撃を車体全体に伝え、乗り心地の硬さにつながります。

まとめ

このように、陸上自衛隊の高機動車は、過酷な環境でも安定した運用が可能で、陸自部隊の機動力を支える重要な車両です。

演習や災害派遣での活躍を通じて、迅速かつ効率的な支援活動に貢献しています。

また、高機動車が独特な乗り心地の理由は様々ありますが、一般的な乗用車ではない、軍用車両であること、すべてのタイヤが独立して動く独立懸架式サスペンションが主な理由であると言えます。

なお、各駐屯地の記念祭やイベントで、高機動車に体験搭乗できる機会が設けられていることがあるので、この「独特の乗車感」を一度味わってみたい方は、お近くの駐屯地記念祭などへ足を運んでみてはいかがでしょうか。

「ただのでかいジープみたいなやつやん!」と思ってると、損です。

発売当時価格で1000万円近い「メガクルーザー」の原型が無料で乗れて、その独特の走行感を味わえるチャンスを逃してはなりませんぞ!?

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