【自衛隊需品事情考察】演習の裏側で自衛隊員が頼る最新車両&装備とは?

いきなり、自衛隊快適車両伝説

自衛隊の演習を事故なく円滑に行うためには、隊員の士気を良好に保つことが非常に重要です。そのための“縁の下の力持ち”として活躍しているのが、以下にご紹介する「快適車両」の数々です。

野外洗濯セット2型

こちらは、陸上自衛隊の需品科に配備されている装備品です。その名のとおり、野外演習中でも洗濯を可能にする牽引式のコンパクトな車両です。名称も実にストレートで、用途がすぐにわかりますね。

通常は73式大型トラックに牽引されて移動し、使用時には側面のパネルを跳ね上げて展開します。搭載されている発電機でポンプを動かし、水を吸い上げて全自動洗濯機を稼働させ、さらに乾燥機で一気に衣類を乾かすという本格仕様です。

実は、演習中であっても隊員たちはしっかり洗濯していたのですね。これなら、汗や泥で臭くなりがちな野外生活も快適になります。特に、ニオイに敏感な女性自衛官にとっては、ありがたい装備ではないでしょうか。

自衛隊のトイレ車『野外支援車』

続いては、非常にユニークな車両――その名も『野外支援車』です。見た目はまさにトイレカーですが、正式な名称には少し含みを持たせた「支援」という言葉が使われています。

こちらも陸上自衛隊の需品科に配備されており、演習だけでなく、記念行事や災害派遣などでも活用されています。最大の特徴は、し尿処理を車両内で完結させる点にあります。処理方式は電磁波による加熱処理で、し尿を灰にしてしまうという非常にエコで衛生的なシステムです。

演習場では排泄物の処理が悩みの種であり、土を掘り返した際に過去の「遺物」が出てくることもあるそうです。このような問題を未然に防ぐために、この移動式トイレ車が登場したのです。

ちなみに、警察の機動隊にもトイレカーは存在しますが、処理能力においてはこの野外支援車が一歩リードしています。

航空自衛隊限定「自活車」――まるでキャンピングカー!

こちらは航空自衛隊に配備されている「自活車」という車両で、見た目はOD(オリーブドラブ)色の普通のトラックですが、その中身は完全にキャンピングカーです。

全長約8.5メートルの大型ボディに300リットルの燃料タンクを備え、ベッドが6台、シャワー、トイレ、簡易キッチン、冷蔵庫まで完備しています。まさに「自衛隊最強の快適車両」といっても過言ではありません。

広報誌『MAMOR』によれば、航空自衛隊は野外展開時にテントを使わないことが多いそうで、こうした快適性が求められているのも納得です。陸上自衛隊員から見れば、まさに“夢の車両”かもしれませんが、実際に使用できるのは主に幹部クラスに限られているとのことです。

空自のもうひとつの快適装備「炊事車」

陸自の野外炊具はよく知られていますが、空自には「炊事車」と呼ばれるより高機能な調理車両があります。これはトラックの荷台をそのまま調理スペースに改装したもので、移動屋台のような作りです。

中央に設置された万能調理器具により、一度に約200人分のご飯や汁物を用意することができます。ただし、焼き魚のような調理はできないとのことです。

空自の装備は何かと快適で、陸自と比べて充実している印象を受けますが……!?

臭い、かゆい、ベタつく……野外訓練の三重苦に救いの手!野外入浴セット2型の快適すぎる実力

演習で疲れた身体を癒すために、自衛隊には「野外入浴セット」という装備もあります。こちらも需品科が誇る装備のひとつです。

夏場の野外訓練では、迷彩服や肌に土や草のにおいが染みつき、さらに汗と硝煙の匂いが混じって、とにかく不快。髪の毛は汗でぺたんこになり、半長靴に包まれた足はムレてかゆみが悪化。長期間の訓練では、自衛官にとっての“職業病”とも言われる水虫が猛威を振るいます。

さらに追い打ちをかけるのが、毎日携行糧食のような保存食ばかりを食べていると、体調変化で体の内側から漂う独特のにおい

こうした不快要素が積み重なれば、当然士気は低下。一般企業であれば「においで士気が落ちました」などという理由で評価が下がることはあまりないでしょうが、過酷な環境下で任務にあたる自衛官にとっては衛生環境の維持=戦力の維持なのです。

そこで登場するのが、陸上自衛隊需品科が装備し、各師団補給隊によって運用されている「野外入浴セット2型」。

野外でも本格的な入浴環境を提供できるこの装備こそ、士気回復と健康管理を担う“縁の下の力持ち”なのです。

この「野外入浴セット2型」は、テントシートと鉄パイプを組み合わせて作る簡易ながら本格的な浴場です。枠組みに張ったシートの内部にお湯をためて入浴できる仕組みで、脱衣所と浴槽エリアはきちんと区分けされ、プライバシーにも配慮されています。

しかも、

  • すのこ

  • 脱衣かご

  • 屋根付き構造
    と、まるで露天風呂付きキャンプ場のような至れり尽くせりぶり。女性自衛官からの人気が高いのも納得です。

仕様の実態とは?

この野外入浴セットを展開・運用するには、以下のような一式が必要です。

装備項目 内容
ボイラー 給湯用
揚水ポンプ 水の吸い上げと供給
発電機 必要機器の稼働に使用
大型テント 浴室と脱衣所に使用
貯水タンク 10,000リットルの水を確保
1日対応可能人数 約1,200人分の入浴が可能

これらをトレーラーに積載して運搬・展開し、わずかな時間で移動式の大浴場が完成します。戦場で汗と疲れを流し、新たな任務に向けてリフレッシュする…自衛官たちにとって、まさに極上のひとときとなるでしょう。


災害派遣でも大活躍

東日本大震災の際には、この野外入浴セット2型が被災地に多数配備され、多くの方々に入浴サービスを提供しました。被災生活では衛生環境が悪化しやすく、特に入浴の機会が失われがちです。その中でこの装備は、被災者の心と体を癒す貴重な存在となりました。

海自のお風呂も支援に参加!

ちなみに、災害派遣では海上自衛隊の艦艇の浴場も被災者に開放された例がありました。カンボジアPKO派遣中の陸自隊員も、シアヌークヒル港に停泊していた海自艦艇のお風呂で疲れを癒したことが記録されています。

野外でも、海外でも、お風呂の力は偉大です。


出典:第一師団公式サイト
http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/1d/html/2-7.html

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