迷彩グッズから特殊雑誌まで売っている――それが『自衛隊の中のお店=PX』

人間たるもの、いかに制服を着ていようとも息抜きは必要だ。そこで登場するのが、隊員たちのオアシス「厚生棟」である。新隊員などは、ちょっとコンビニに……なんて夢のまた夢。駐屯地や基地の門は容易には開かない。

だが、この厚生棟、さながら自衛隊版・モールとでも言うべき存在。喫茶店に床屋、クリーニングにATM、さらにはネットコーナーまで揃っており、民間施設のデパートのようだ。ひとつだけ無いのがパチンコ店。まあ、そこまで完結されてしまっては、もはや自衛隊ではなく“自給自足帝国”とでも呼ぶしかない。

PX――軍の中のコンビニは、意外とディープ

さて、本題はここからだ。自衛隊におけるPX(Post Exchange)は、日々の生活に必要な雑貨、雑誌、迷彩の私物グッズ、果てはお土産までを取り揃えた民間運営の売店、ということになる。旧軍時代なら「酒保」と呼ばれたそれは、もはや一種の文化施設である。

「PXに無い物は無い」とはよく言ったものだが、実際その通り。隊員が訓練に必要な装備品から洗剤、菓子パン、大人向けの“特殊な読み物”まで、あらゆるジャンルが網羅されている。そう、そこはまるで「迷彩に魂を売ったドン・キホーテ」。身分証入れに洗剤まで、日用品がすべてOD色か迷彩という、色彩感覚を試される世界。

PXの品々は基本的に私費で購入する“私物”であり、官給の装備(いわゆる“カンピン”)ではカバーしきれない細かなニーズに応えてくれる。つまり、官品で足りない装備や便利グッズは、PXで自腹切って調達せよ、という自己責任主義だ。

自衛隊員の腕時計なんか、まさにそう。とある駐屯地の購買では腕時計も充実していたぞ。しかも『あるメーカー』の腕時計がずらっと並んでいた。”自衛官の愛用する腕時計”としてこちらでご紹介中。読むべし!

自衛官が絶対買う腕時計が『G-SHOCK』なのはなぜ?自衛隊の支給品腕時計はない?

PX品は創意工夫か、規律違反か――そのボーダーは霞のごとし

官給品の横流しや紛失はご法度。桜にQマーク(武器ならW)が誇らしげに刻まれた装備は、厳重な管理が求められ、“転売の疑いあり”なんて疑われようものなら、警務隊が出動してくることも。

しかし、私物であれば、壊れようが水洗トイレに落とそうが、それこそメルカリ行きにしようが、国からの支給・貸与物ではないからあくまで自己責任。因果関係は不明ってやつだ。

後方の隊員が着用するチェストリグは私物だろう。(写真引用元:陸上自衛隊公式HP

そういうわけで、私物を使う隊員は多いもの。たとえば、かつての西部方面普通科連隊(現・第1水陸機動連隊)では、チェストリグなどの個人装具にPX購入の“米軍クオリティ”が多数見られた。規律か実用性か――判断は部隊長の匙加減ひとつ。創意工夫という言葉がこんなに便利に使われるとは、誰が想像しただろう。

本省にもPXがある?その実態は……

実は、防衛省本省にもPXはある。が、これがまたややこしい。外部の人でも土産が買える店舗と、現職自衛官+付き添いがいなければ踏み込めない“鉄壁のショップ”が共存している。秘密基地の中に、さらに秘密の店があるようなものだ。

PX人気ランキング――勝手に発表

ここで、独断と偏見に満ちたPX人気アイテムランキングを紹介しておこう。

第3位:漫画雑誌&“特殊”雑誌
普段は並べられていても、記念行事などの一般開放日には不思議と忽然と姿を消すアイテム。それが“大人向け特殊雑誌”だ。さすがにこの品揃えには、苦笑い。

第2位:お菓子と菓子パンとカップ麺
若年隊員の心をつかんで離さない糖分とグルテンたち。小麦の奴隷ってやつだ。カップ麺と自衛隊員との親和性は抜群だという。空腹時のPXは、まさにパラダイスらしい。

そして第1位:訓練用品・被服類!
「やっぱりか」と言いたくなるが、事実なので仕方がない。とくに消耗品である迷彩手袋に皮手袋などが購入されている。

なお、PXで売られる“自衛隊仕様”アイテムの一部は、開放日に来場者でも購入可能。ただし、階級章などは部外者NG。というか、普通の人が階級章つけてたら、洒落にならない。

ちなみに北海道のPXでバカ売れしているのは……

……衣類用洗剤らしい。寒冷地ではまず清潔第一ということか。見かけたらぜひ手にとってほしい、自衛官のリアルが詰まった一品だ。

男性のみならず、女性自衛官もご愛用。だから女子高生もこれを使ってね。夕方のバス車内は部活帰りの(略)

自衛隊の基地や駐屯地のオリジナルお土産

そう、隊員以外に見学者なども利用できるPXでは『自衛隊のおみやげ』商品にも力を入れている。定番の携帯ストラップなどのほか、各種迷彩グッズだ。

とくに人気なのがお土産の定番・おまんじゅう。『饅頭』『クッキー』、果ては『カレー』や『ラーメン』まで充実している。製造はもちろん民間のメーカーで”自衛隊製”ではないが、その種類は豊富だ。

当然、駐屯地や基地ごとに特色のある”ご当地みやげ”がある。

ご当地自衛隊みやげ──白あん砲弾まんじゅうの衝撃

PXは隊員だけのものじゃない。見学者向けのお土産にも本気を出している。迷彩ストラップやODカラーのキーホルダーだけでは終わらない。中でも人気は、なぜか饅頭。中にあんことチョコを詰めた「砲弾まんじゅう」が大人気。600円で君も陸戦気分だ。

さらに那覇基地の航空自衛隊カレーや、自衛隊オリジナルのラーメン「SDFヌードル」「標的」もマニア心をくすぐる。中でも藤原製麺の「ミリタリーラーメン」は全国展開中。栄養補給か、士気高揚か、それとも単なるネタか。すべてを兼ね備えた魔性のラーメンである。

まとめ──PX、それは国家公認の戦士たちのミニ遊園地

兵士たちの束の間の休息。PXの充実こそが、彼らの士気を支えている……などと言えば聞こえはいいが、実際のところ「マジで外出なくていい何でも買える駐屯地のよろず屋」なのだ。だがそれがいい。GIジョーも思わず立ち寄りたくなるPX。カレーの香りに誘われて、迷彩手袋を小脇に挟み、今日も財布の紐が緩むのか…?(楽天ペイは使えるんですか?)

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