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自衛隊とメディア

自衛隊から逃げ出す『脱柵』とは?

自衛隊とメディア
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脱柵(だっさく)は、自衛隊からの脱走を意味するスラングだ。

「脱柵」という言葉や行為は、元自衛官の著書、各種メディアの報道、SNSなどでも広く一般に語られている公の知識(オープンソース)である。

この記事では、「脱柵」という、その言葉の意味や背景を文化・スラングとしての風潮や仕組みの理解のため、客観的に説明していこう。

脱柵の理由は?

駐屯地や基地、演習場なんかは、ガチガチに鉄条網が張り巡らされてる。

それは外部からの侵入を防ぐためってだけではない。中の人の「脱柵防止」にも一役買っている。

「脱柵」は、ただの俗語であり、公式には「所在不明隊員」である。

出勤しなかったら「欠勤」、それとも北朝鮮行きになっちゃったのか、それは誰にもわからない。だから、こう呼ばれるんだ。「所在不明」と。

訓練がキツすぎるとか、職場の人間関係や腰がしんどいとか、いろいろな理由がある。

2006年には陸自の隊員が迷彩服のままで電車に乗って里帰りする珍事が発生。

ある日の珍事:

陸上自衛隊第4師団司令部(福岡県春日市)は16日、第4後方支援連隊に所属する1等陸士(20)が、演習中に無断で所在不明になったとして停職16日の処分を発表。

その理由は「演習がきつくて嫌になった」とのこと。

1等陸士は迷彩服に銃剣や防護マスクを装備したまま無断で演習を離脱して、翌日には実家に戻っていた。

警務隊は銃剣を演習場外に持ち出したとして銃刀法違反の疑いで書類送検。

脱柵後の捜索

脱柵(無断離隊)すると、すぐに所属部隊で捜索開始。私服の隊員が市内を歩き回って探す。

所属部隊の隊員による捜索で見つからなければ、駐屯地内の全隊員が駆り出され、同時に警務隊に通報。

警務隊が官品横流しに目を光らせている
警務隊および警務官は自衛隊における秩序維持と犯罪の捜査、要人警護、道路交通統制等を実施する警務科職種。いわゆる諸外国軍の憲兵および憲兵隊に相当し、防衛大臣直轄部隊として陸海空各部隊ごとに編制されている。司法警察職員と特別司法警察職員とは警務…

自衛隊内の“警察”である警務隊は犯罪があるかどうかを見極め、犯罪性がない場合でも行方不明者の捜索には協力する。必要があれば警察や海上保安庁にも捜査協力を依頼。

なぜなら、何か起きてからでは自衛隊の不祥事になるからだ。

不明隊員の捜索を行う部隊の長に対して、警務隊は専門的見地から適切な助言や援助を行うのである。

参考文献『所在不明隊員の取り扱い』
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1959/az19590508_00045_000.pdf

メルカリで戦闘糧食が流通してるのを監視してるだけではなく、そういった対応もする。

現在の戦闘糧食に「転売禁止」ってでかく書かれてるのを見たとき、笑った。

警務隊が本格的に動き出したら、逃げ切るのはほぼ無理だ。

迷彩服を着た警務隊員が、ブルーバードシルフィのMP仕様覆面パトカーに4人乗って、リアを沈ませて駐屯地周辺をトロトロ走る。その目つきは怖い。

入隊時に書いた実家や友達の家に先回りされ、最寄り駅や警察にも連絡が行く。もう逃げられない。

脱柵を描いた元自衛官たちの書籍…真実と誇張の境界線は?

ここからが面白いところだ。複数のソースから、捜索にかかった交通費や宿泊費は、脱柵した隊員に請求されている。

主なソースが元自の著作だ。ほぼ鉄板のエピソードだ。

元自衛官の藤原さとし氏の『ライジング・サン』にも脱柵が登場する。制限時間内に行方不明になった女性自衛官候補生を探して連れ戻す、他の候補生たちの奮闘が描かれている。

その「脱柵」の説明を、WAC候補生のセリフを引用する。

捜索隊が編成されて実家はもちろん
友人知人の家や関わりのある場所は徹底的に捜索され…
その捜索費用は全額脱柵者に請求されるらしいわ

典拠元:『ライジング・サン(2)』藤原さとし著

ヤバいから、すぐ点呼までに連れ戻し、事なきを得なけりゃいけない。

この話以外では、同じく元自衛官の大宮ひろ志氏の著書『そこが変だよ!自衛隊』で登場している。

この脱柵ネタ、元自衛官の著作には載っても、MAMORにはまず載らんでしょ。

自衛隊広報誌「セキュリタリアン」と現・準広報誌「MAMOR」との違い
自衛隊という組織は、昔から芸能人とコラボレーションすることが多く、役所としては意外と柔軟な一面を持っています。そう思いませんか?その代表的な例が、1993年にリリースされた飯島愛さんの楽曲「ナイショDEアイアイ」です。この曲のミュージックビ…

ただ、これが全部隊で一律かどうかは、ちょっと難しい話だ。実際のところは確証があるわけではない。

筆者は自衛隊と一切関わりがなく、部内情報を知る立場にはない。

さっき言ったように、元自衛官の著書なんかから少しずつ漏れ出ることはある、というだけの事象である。

ただ言えるのは、自衛隊法には「所在不明隊員の捜索にかかった費用をその所在不明隊員に請求する」規定はないってことだ。

連れ戻されると懲罰を受けるのか

公務員が勤務中に勝手に職場を離れ、職務放棄するのは就業規則違反だ。

自衛隊でも他の省庁と同じように、懲戒処分を受ける。

その中で最も多いのは、3日程度の停職処分だ。

一方で、ブログ『I LOVE 陸上自衛隊』では、ある脱柵の例が紹介されていて、脱柵した1士が頭を丸めて謝罪した後、幹部は不問にし、その後その1士は3曹に昇任したという話は興味深い。

私の時の脱走隊員は、頭をお坊さんみたいに丸めて詫びを入れて一からやり直し、現在は心を入れ替えて3曹になったそうですが「脱走隊員のレッテルが貼られる中での訓練や勤務はツラかった。だからこそ二度とこのような過ちを犯してはならないと思った」と、その見つけ出した班長から人伝に聞きました。

引用元 『I LOVE 陸上自衛隊』様
http://ameblo.jp/himeno-osaka/entry-10602032134.html

更生の道どころか、出世のチャンスすら与えられるというのが、自衛隊という組織のもう一つの側面かもしれない。

逃げ切った場合は?

脱柵した隊員が逃げ切るち、どうなるのか。

公表されている訓令の運用方針によれば、当該所在不明が当該隊員の意志によるものであることが、人的・物的証拠により明白であれば、懲戒免職処分が行われ、もし所在不明時の事情から分限免職を相当と認める場合は分限免職となる。

当該所在不明が当該隊員の意志によることが、人的物的証拠により明白である場合(十分推測できる場合を含む。)は、懲戒免職処分(所在不明 時の事情から分限免職を相当と認めるときは分限免職)を行うこと。

出典 http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1973/az19740221_00664_000.pdf

1ヶ月ほどで早々に決まるのである。

諸外国軍における脱走兵は平時でも重罪。軍法会議や懲罰部隊も

アメリカ軍ではどうなのか。同軍では戦時・平時問わず脱走した場合、基本的には脱走兵として逮捕され、軍法会議にかけられる。

平時なら懲役刑、戦時や戦場での脱走なら「敵前逃亡」として扱われ、重罪。

現場指揮官の裁量で即時に銃殺刑が執行される規定もある。ただし、現代においては実際に銃殺が執行されることはないという。

また、国によっては懲罰部隊に送られることもあり、旧日本軍では陸軍教化隊がそれを担った。

戦後も敵前逃亡で処刑された兵士の遺族は、1970年まで遺族年金を受け取ることができなかった。

自衛隊に軍法会議や懲罰部隊は無い

自衛隊には軍法会議も懲罰部隊もない。仮に有事に敵前逃亡した場合、自衛隊法違反になるが、刑罰は懲役か禁固刑のみ。

結びとして

このように、いわゆる「脱柵」は、あくまで平時において発生し得る自衛隊/自衛官の不祥事に過ぎない。平時であれば、無断離隊の上で所在不明を続けたならば、結果として「免職」という形で、“退職できる”。

だが、一転して有事下においてはどうなるか。その場合、逃亡が許されないのはもちろんのこと、正規の手続きを踏んだ「退職の申し出」すら認められない可能性が極めて高い。

自衛隊法第四十条には、防衛出動(戦争や武力攻撃事態など)の際、隊員が「その退職の承認をすることが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼす」と認められる場合、退職の申し出を却下(承認しない)できる規定があるからだ。

(退職の承認)
第四十条 第三十一条第一項の規定により隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。

出典 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000165?occasion_date=20230101

これにより、実際に日本への武力攻撃事態などが発生した場合、この規定に基づき、著しく退職の自由が奪われる状況も発生しうることは知っておく事実である。

日本国憲法第22条が保障する「職業選択の自由」は、その性質上、自らの意思で職を辞する「退職の自由」と表裏一体の関係にある。これは、個人の自己決定権を支える基本的人権の根幹であり、国家といえども安易に侵すことのできない「聖域」である。

しかし、自衛官は公共の福祉と国家の安全保障に直結する職務であるため、法律によって合理的な範囲でその自由を制限しているのが、自衛隊法第四十条といえる。

憲法が保障する「基本的人権」と、国家の存立を維持するための「公共の福祉・公共の利益」が激しく衝突する地点が自衛隊法第40条なのだ。

これを「特別権力関係」と呼び、公務員や在監者など特定の人が、特定の目的のために法律の根拠なしに包括的な支配権(命令権・懲戒権)に服し、人権制限や司法審査の制限を受ける理論である。現代では、法治主義や基本的人権尊重の観点から、この古典的な意味での理論は否定されているが、自衛隊法第40条の文脈においては、今なお有効である。

有事の際に「危ないから今すぐ辞めます」という自由を認めてしまうと、軍事組織としての機能が崩壊し、結果として国民全員の人権(生存権)が守れなくなる、というのが法理論上のロジックといえる。

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