警察さん、『警官』と呼ばれて不快感。『警官は蔑称』なのか?報道で『警官』呼称、なぜ使えないのか?

“警察官”と”警官”の表記の違いに、大きな意味はあるのでしょうか。

実は「ある」と、当事者は思っていたようです。

広辞苑では『警官』は警察官の『通称』

少なくとも、広辞苑では『警官』は警察官の『通称』となっています。このため、警官という言葉は単に警察官の略であると考える人が多いのでは。

しかし、正確な表現が求められる報道においては別の問題のようです。

単に便利な略称として、警察官の『通称』である『警官』を簡単には使えない背景がありました。

報道で『警官』呼称、なぜ使えないのか?

日本国内の事件事故の報道においては、できるだけ警察官を警官と呼ばないことがメディアの通例。新聞を読んでも、『警官』の表記はなかなか見かけないもの。

これについてはytvアナウンサー道浦俊彦氏が『道浦TIME』 で、報道の立場から詳しくご指摘されていました。

それによれば、『警官か、警察官か』のことの発端は、ある事件において福岡県警察本部が『警官は蔑称なので使わないでほしい』と報道に要請をしたこと。

道浦俊彦氏によれば、報道機関各社ではそれぞれの主張があるようです。

まず、共同通信は決まりはないとしながらも、国内のニュースでは「警察官」表記、海外の事件は「警官」と表記するのが通例としています。実際、自社の過去記事を調べたところ「警官」は「外信記事」が多いとのこと。

一方、テレビ東京では福岡県警同様「警官」は「蔑称」という意識を持っているとしています。

メディアのひとつであるテレビ局も、報道と娯楽番組に分かれますが、報道では警察官、ドラマなどでは警官表記というのは割りと普通のようです。

逆に洋画の中の吹き替えでメッタに聞かないのが『警察官』。こちらの場合は完全に『警官』呼称が多いですよね。

報道でも日本の警察官が『警官』表記になる場合も。その理由は意外なものだった

ほとんどの報道機関が警官表記をできるだけ避けている一方、報道記事であっても警官表記の場合があります。

実際、グーグルのニュース検索で最近のニュースから『警官』を検索すると、香港暴動、米国の騎馬警官、豪警官ウォンバットを石で殺す、麻薬密輸船の追跡中に海に落ちた警官3人、容疑者らに救出される……など海外の事件が。

一方で、国内の事件記事における『警官』表記の記事も多くありました。

「詐欺グループを捕まえた」 福岡市早良区で警官かたる不審電話 … 西日本新聞-2019/10/03

熊本東署管内で警官名乗る不審電話が多発 警察が注意を喚起 西日本新聞-2019/09/30

警官が盗撮の疑いで送検され懲戒処分「2年半前から50回くらい … livedoor-2019/10/04

京都の情報漏えい警官再逮捕へ 収賄容疑、100万円超授受か 毎日新聞-2019/10/04

警官を現行犯逮捕 かばん置引容疑 沖縄の豊見城署員 沖縄タイムス-2019/10/02

警官同行の10代女性転落死 フェリーから飛び降り 産経ニュース-2019/09/11

ひき逃げの翌日、現場付近走行 警官の職質で判明 47NEWS-12 時間前

兵庫県警の女性警官が駅のトイレに拳銃忘れる 使われた形跡はなし livedoor-2019/09/29

通りすがりの警官、当たり屋見抜いた 詐欺容疑で男逮捕 朝日新聞-2019/09/19

便器詰まらせる被害相次ぐ女子トイレ、警官侵入読売新聞-2019/09/29

警官ら逮捕術競う 三重県警が大会、警棒対警棒の3本勝負も 47NEWS-2019/10/04

またフジテレビでは入局時の教育で警察官が正式名称であることを教えられ、基本的には正式名称ではない「警官」は使わないとしています。

一方、不祥事を起こした警察官の場合は、敢えて警官と呼んでいるとのこと。ということは上に挙げたニュースのいくつかは警察官の不祥事なので、その理由も肯けます。

『警察官』と『警官』の呼称のまとめ

結局まとめると、広辞苑では『警官』は『警察官』の略称、そして一部の県警本部によれば『警官は蔑称』ということに。

しかし、なぜ略称である『警官』が蔑称にも当たってしまうのでしょうか。

これについては元警視庁捜査一課長・久保正行氏の意見が参考となりました。

「警察官」は「警官」と略して呼ばれることがありますが、当の警察官たちはこの略称を嫌います。というのも、警察の「警」には「いましめる」という意味が、「察」には「人の心を察する」という意味が込められています。「察」が抜けてしまえば、高圧的にいましめるだけの存在ということになってしまうからです。

出典 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55881

人の心を察するという『察』の言葉が抜けた『警官』ではただの警めるだけの官吏、ということになるという久保氏の見解に納得。

当事者としてはどちらで呼んでほしいのか、わかる気も。

もちろん、どんな呼び方をしようがメディア側の自由のはずですが、当局者としては『警官』呼称は、気分がすこぶるよくない事実があるようです。

というわけで、報道各社によってその運用はまちまちだが、日本では日本の警察官を警官と呼んではいけないというわけではなく、できるだけ呼ばないのが実情。

そして、警官と表記する場合は海外ニュースの場合、文字数制限回避、それに悪いことをした警察官との区別をつけているため、とのことです。