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シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

【1999年】交機が私服!?愛知県警第一交通機動隊に私服バイク隊「はやぶさ部隊」誕生!交通警察と刑事警察の機能的融合か

ここ数年、ネット上で話題にのぼる“覆面バイク”トカゲ。黒や紺など地味なカラーリングかつ、警察の表記のない非公然“警察バイク”であり、刑事部捜査一課の機動捜査チームである。

このようなバイクを使った刑事事件の捜査、歴史的に見れば決して新しい存在ではない。

例えば、80年代から一部の県警で始まった刑事部の「黒バイ」だ。

黒バイの原点は刑事部? 80年〜90年代にかけて福岡・三重・富山の各県警で先行導入された事実が明らかに

そして、1999年、今度は刑事部ではなく交通部の中で“覆面バイク”をやろうとした警察本部があった。

―愛知県警本部第一交通機動隊が立ち上げた私服のバイク部隊「はやぶさ部隊(ファルコン)」である。

名前の通り、すばやく獲物に近づく“隼”にちなみ、交通違反者やひったくり犯を見つけたら、後ろから静かに近づいて捕まえることをコンセプトにしていたというから、ひったくりやアンテナ泥棒もびっくりだ。

当時の新聞報道を引用し、振り返ろう。

制服を脱いだ白バイ隊員──交通機動隊の私服バイク部隊は何を警戒している?

「えっ、警察官なの?てっきり普通の人かと…」

そんな驚きの声が、交差点の片隅で聞こえてきそうだ。見た目は地味なバイク、乗っているのは私服姿のライダー。

けれどその正体は、立派な“お巡りさん”だったりする。

多発する50ccバイクの交通事故とひったくり事件の防止を目的に、愛知県警は第一交通機動隊(愛知県名古屋市北区)に、私服のオートバイ隊を全国で初めて発足させた。普段は「ナナハン」の白バイに乗るお巡りさんが制服を脱いで、小回りの利く250ccのオフロード・オートバイ8台に乗り換える。

獲物に気づかれずに後ろから近づき、素早く捕らえる習性にちなんで「はやぶさ部隊(通称、ファルコン)」と名付けられ、8月10日に出陣式も行われた。

20年ぶりに年間の交通死者を300人台に減らす目標をたてた愛知県警。愛知県内の死者は8月5日現在218人で、98年の同時期より41人少ない。しかし、車種別でみるとオートバイの死者だけが前年を19人も上回り、33人を数える。

違反で目立つのは、未成年がヘルメットをかぶらず2人乗りをするケースや、無免許運転。

これらは白バイを見ただけで条件反射的に逃げ、言号や一時停止規制を無視して路地をスピードで走り抜けようとするため、取締まり自体が難しいとされてきた。深追いすると死亡事故になりかねないからだ。

そのため、はやぶさ部隊は違反者を見つけても、すぐには制止を求めない。黙って尾行して行き、オートバイがどこかに立ち寄って運転手が降りたところで、取締まる。

また、愛知県内では、ひったくり事件が増え続けている。99年は7月末までに約1,500件発生し、過去最悪だった’98年同時期を2割上回っている。

そのうちオートバイやスクーターが使われたケースは約6割。2人乗りした後ろの人が、自転車や歩行者からバッグなどをひったくるのが、典型的なパターンダ。

愛知県警では「怪しいオートバイを尾行して行くうちに、ひったくりを現行犯逮捕できるかもしれない」と考えている。

交通機動隊が私服で取締まることは、これまで考えられなかった。制服を見せることで運転者に注意を促す効果があったからだ。しかし、刑事だろうが、交通だろうが、警察官であることに変わりはない。交通警察官が交通取り締まりだけをやっていてればいい時代は終わった」と、ある幹部は話す。

はやぶさ部隊のオフロード・オートバイは、台風などの災害出動用に配備された8台を使用する。なお、赤灯もサイレンもないため、白バイのような緊急自動車の扱いは受けていない。

(引用元 1999年8月7日/朝日新聞)

刑事の黒バイと交機の覆面バイク、両者に共通するのは、制服と外観に頼らない対処と、4輪にはない機動性だ。

現場の交通違反者や犯罪者は、視認した瞬間に逃走を図る。

例えば、白バイの存在に気づいた瞬間に逃げようとする違反者に対し、「あえて見せない」ことで対応する戦術といえる。

黒バイやトカゲと似てる?違う?

現在では愛知県警察に同名の部隊は存在しないことから、すでに運用は終えたとみられるが、愛知県警のファルコンは、当時としては画期的な存在だった。

交通事故を減らすために発足したこの部隊の特徴は、白バイのようで白バイでなく、刑事のようで刑事でないところ。

記事でも幹部警察官のコメントとして「刑事だろうが、交通だろうが、警察官であることに変わりはない」とある通り、交通部が刑事部門に敢えて首を突っ込むスタイルが興味深い。

しかし、記事にある通り、ファルコンのバイクには覆面パトカーのように赤色灯もサイレンもなし。つまり、緊急走行ができない。

そのかわり、静かに尾行し、違反者がバイクを降りたその瞬間を狙って取締りに入る。

「制服を見せれば逃げる」なら、「制服を着ないことで油断させる」――そんな割り切りから生まれた部隊といえる。

最近話題のSITの「トカゲ」も、見た目の“地味さ”は似ている。これみよがしな白バイとは違い、黒やグレー、ネイビー系の車体で、警察官は私服系が多い。

バイクにはサイレンも赤色灯もないから緊急走行で停止を求めるという覆面車両のような運用はできない。

一方、はやぶさ部隊は、もっと「潜伏・尾行型」だ。違反者や不審者に気づかれないように後をつけ、相手が停車して降車したタイミングで声をかけ、取り締まる。

交通部の交機でありながら、ある意味では刑事の張り込みに近い。

つまり、はやぶさ部隊は“ずっと気づかれない”ことを目的とした存在。似ているようで、運用思想は少し異なっていたようだ。

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