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シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

アメリカのカウンティ・シェリフ(郡保安官)制度とは

カウンティ・シェリフは、西部劇でおなじみの保安官だが、現代でも郡内の治安維持を担当する法執行官として存在してる制度である。全米には3500以上の保安官事務所があり、中には1万人もの保安官を擁するロサンゼルス郡保安局のような大規模組織もある。

カウンティ・シェリフ(郡保安官)制度の起源は中世イギリス

アメリカのカウンティ・シェリフ(郡保安官)制度は、その起源をイギリスの中世にまでさかのぼる歴史的な制度であり、現在も米国の地方自治と法執行において重要な役割を果たしている。シェリフという職務は、もともと「shire reeve」(郡の保護者)という意味で、中世イングランドの王権を代表して郡の治安維持と徴税を担当した役職であった。この伝統がアメリカに引き継がれ、植民地時代以降、各地域の行政単位である郡(カウンティ)における治安維持の要として発展した。

多くのシェリフは選挙によって選ばれるのが特徴

アメリカ合衆国のシェリフは、多くの州で郡の選挙によって選出される公選職であり、通常は任期が2年から4年と定められている。選挙で選ばれるため、地域住民に対する説明責任が強く、地元の政治や住民のニーズに密着した活動が求められる一方で、政治的影響を受けやすい面もある。シェリフの役割や権限は州や郡によって大きく異なり、多様な形態が存在するのが特徴である。

小規模な自治体では警察ではなく保安官事務所が主要な法執行機関

一般的に、シェリフは郡刑務所の管理裁判所の警備・保安裁判所命令(召喚状、差し押さえなど)の執行を主な職務としている。また、多くの郡で警察業務も担当しており、パトロール活動や犯罪捜査、緊急対応も行う。特に人口の少ない郡では、郡警察署が存在しないか規模が小さいため、シェリフ事務所が実質的に主要な法執行機関として機能することが多い。これにより、シェリフは地域住民の安全を守るだけでなく、裁判所の秩序維持や司法手続きの円滑な運営にも欠かせない役割を担う。

警察との違い

歴史的背景から、シェリフは警察とは異なる独立した立場にあり、州政府や地方自治体の行政機関とも一定の距離を保っていることが多い。例えば、シェリフは州警察や市警察と協力しながらも、自らの管轄権内で独自に活動する権限を持つ。また、郡保安官はしばしば地元政治と密接に結びつき、予算の獲得や人事などで政治的な交渉を行う必要がある。このため、シェリフ制度は地方政治の一端を担う重要な存在でもある。

しかし、現代においてはシェリフ制度にも課題が存在する。地域によってはシェリフの権限が強大すぎることや、政治的な影響による捜査の偏りが指摘される場合がある。また、警察組織との役割分担の不明瞭さや、装備・訓練のばらつきによる対応力の差も問題視されている。さらに、多文化化・都市化の進展に伴い、地域住民の多様なニーズに対応するための制度改革や、透明性向上の要求も高まっている。

総じて、アメリカのカウンティ・シェリフ制度は長い歴史と地域密着の特色を持ち、司法行政と治安維持を結びつける独特の法執行機関として機能している。今後も地方自治や治安政策の変化に応じて、制度の見直しや運用の改善が求められている。

フィクション作品

フィクション作品の中で、郡保安官と警察官の対立を描いた代表作に、シルベスター・スタローン主演の『コップランド』がある。この映画では、警察官たちが本来守るべき自分たちの街を離れ、隣接する郡の静かな町に集団で暮らしている様子が描かれている。

その町の治安は郡保安官事務所(カウンティ・シェリフ)が担っており、住民たちは皮肉を込めてその安全な町を「コップランド」と呼んでいる。

スタローン演じる郡保安官は、かつて警察官になることを夢見ていたが、身体的な障害のため試験に合格できず、現在は郡保安官として交通違反の取り締まりに従事しながら、酒とピンボールに慰めを求める日々を送っている。そんな平穏なはずの「コップランド」で、やがて事件が巻き起こる。

なお、ブルース・ウィリス主演の『スリーリバーズ』と『コップランド』には、脚本に共通点があると指摘されることがあるが、その背景には何らかの関連があったのかもしれない。

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