デジ簡の基本的な説明でご説明のとおり、デジタル簡易無線の登録局は業務のみならず、レジャーやアウトドア使用も可能。
つまり、登録局には業務局とそれ以外の局の二つのユーザーが混在します。
状況によっては両者で混信しやすい場合も。
それはなぜ?そのような場合はどうしたら良いのでしょうか?
フリーライセンス局は業務局にチャンネルを譲る義務はある?
アマチュア無線の例を見てみましょう。
HF帯の一部ではアマチュア局と業務局の両者に使用が免許される周波数帯があります。
その際、両者が同じ周波数で混信してしまった場合、アマチュア局がすみやかに業務局に周波数を譲らなければなりません。
これはアマチュア局が二次業務局として規定されているためです。
すなわち、一般的な営利企業の無線局や官庁の無線といった業務局は優先されるべき一次業務局と規定されているわけです。
一方、デジ簡の登録局制度ではどうでしょうか?
登録局の開局申請時、目的を記載する必要がありますが、業務で使う局か非業務局かというような明確な区別の申告の必要がありません。
したがって、上述のアマチュア局の例のように、一次業務、二次業務といった明確な取り決めは見られません。
ただ、常識的に考えれば、先にチャンネルを使用している局が優先権を主張しても、それは当然の権利と言えるでしょう。
しかし、時として標高の高低差は悪意なきチャンネル占有を引き起こす場合もあるのが実情です。
どちらがより混信妨害を与える可能性があるかと言えば、それは趣味のフリーライセンス局と言えます。
何故なら、高い山の上で高利得のアンテナを用いて同じフリーライセンス局と交信をすることが多いためです。
この悪意なき行為が思いもよらぬ遠方の業務局へ混信妨害を与えている可能性は否めません。
業務局はその業務中、趣味の局と交信する必要がなく、ただ混信する無関係の第三者です。
しかも、混信している旨を伝えても、高い山頂の相手には電波が届かない可能性も。
もともとフリーライセンス局は、平日の昼間にCQを出すことは憚られ、自粛するという暗黙の雰囲気がありました。
いずれにせよ、業務局と趣味のフリーライセンス局はお互いに混信しないよう配慮するのがベスト。
デジ簡の登録局は2023年にチャンネル数が一挙に増波されているので、空きチャンネルを有効に使いたいところです。
混信防止に便利な機能
そして、混信防止に役立つのが、デジ簡機に備わっている優れた機能の一つ『秘話コード』や『ユーザーコード(UC)』です。
この記事では主に秘話コードについて解説します。
秘話コードとは?
秘話コードとは設定した5ケタの数字によって搬送波に最大で32,767通りの暗号キーをかけてしまうデジ簡機の標準搭載機能です。
3ケタのユーザーコードよりも高い秘匿性があります。
秘話がかけられた交信(搬送波)を同じ秘話コードを設定していない無線機が受信すると、受信ランプは点灯しても無線機からは音声が一切出ません。
近年、全国の消防団ではデジタル簡易無線(登録局)の配備が増加中。
デジ簡の基本的な説明で解説の通り、札幌市消防団の例では各分団でデジタル簡易無線の登録局が数百台以上配備されていますが、運用では秘話コードを設定して第三者の傍受を防いでいます。
https://www.city.sapporo.jp/shobo/saiyo/documents/musen.pdf
また消防団のみならず、常備消防の本署と支所間で秘話コードをかけて登録局で患者情報を送っている例もあります。
とくに秘匿性の高い業務などでは積極的に秘話を使うことが推奨されており、また趣味のホビー局も積極的に使ったほうが良い場合もあります。
追記 ※アルインコの『DJ-X100(受信改造済み)』によって瞬時に解読されてしまうため、業務局については『秘話コードは以前より秘匿性はない』と思った方が良いでしょう。ただし、アルインコは自社方式の強化秘話コードを解読の対象外としています。
マスコミ無線の秘話コード解読の例を以下の記事にて解説しています。
秘話コード設定は呼び出し専用チャンネルの15chでは反映されない
なお、デジタル簡易無線(登録局)の秘話機能およびユーザーコードは呼び出し専用チャンネルの15chでは反映されません。
ヤエスさんの公式サイトにも説明が掲載されていますので、以下に引用いたします。
15チャンネルではユーザーコードや秘話コードの設定ができません。故障でしょうか?
デジタル簡易無線登録局の15チャンネルは呼び出し用チャンネルとして定められており、ユーザーコードや秘話コードの使用ができません。お互いの使用チャンネルがわからないときなどの呼び出し通信用として使用し、継続して通信する場合は、速やかに他のチャンネルに移って通信してください。
秘話コードの使用を明確に相手に宣言しておかないと、相手が秘話設定していない場合、まったく交信ができないので注意しましょう。
また、秘話コードの入力間違い、逆に秘話なしで交信をするのが日常的な局は秘話の切り忘れにも注意が必要です。
なお、秘話コードを設定すると、コードを設定していない第三者の無線機では音声が復調されずに無音となり、無関係の業務局に趣味のフリーライセンス局の交信を聞かせてしまうことは防げますが、同じチャンネルを使っている限り、電波の占有自体はされます。
近距離においては一方が電波を発射している間は、干渉回避のためのキャリアセンスが働き、電波を発射できません。
秘話コードのまとめ
このように混信妨害をできるだけ防止したい場合や秘匿性を高めたい場合、お互いの無線機で秘話コードを設定すると良いでしょう。
ただし、前述した通り、秘話コードの解析に対応した受信機も普及しているため、脆弱性に注意が必要です。
なお現在、デジタル簡易無線(登録局)の変調方式の主流は『AMBE』方式ですが、アルインコ社では『AMBE』方式のほか、同社独自のデジタル変調技術『RALCWI方式』を採用したデジ簡機も販売しています。
『RALCWI方式』無線機は一般にあまり普及しておらず、企業の業務使用であれば、『RALCWI方式』無線機を敢えて使うことで、他社との混信を防ぐことができる可能性があります。※ただし、今後『RALCWI方式』の普及が進めばこの限りではありません。
なお、フリーライセンス局の間では以下の秘話コードが使われる場合があります。