現在、日本では海上自衛隊にUS-2救難飛行艇が配備されています。US-2は海上自衛隊の本来の任務だけでなく、船舶の海難救助や、離島から本土への急患搬送といった民生支援にも活躍しています。一体どのような飛行機なのでしょうか。
まず、救難飛行艇であるUS-2の最大の特徴は、救難を目的としているため一切の固定武装を持たない点です。
このため、実質的に「武器」に該当せず、武器輸出規制の制約を受けないことから、国外販売が可能とされています。近年では、東南アジア諸国への売り込みも進められています。
実は、アメリカ軍もこのUS-2救難飛行艇に大きな関心を寄せています。
第二次世界大戦中から戦後にかけて、アメリカ軍には哨戒や救難のための飛行艇が多数配備されていましたが、現在は飛行艇を運用していません。
しかし、アメリカ国内で発生する広大な森林火災への対応には、飛行艇が非常に有効であり、消防機関には消防飛行艇が配備されています。同様に、ロシアでも飛行艇は今なお現役で活躍しています。
それでは、自衛隊が運用する飛行艇について、さらに詳しく見ていきましょう。
対潜飛行艇PS-1と救難飛行艇US-1
それぞれの項目に飛べます
海上自衛隊では、潜水艦を探知するための対潜飛行艇としてPS-1を採用していました。しかし、同時期に配備が進んでいたP-3C対潜哨戒機に比べると、PS-1は技術的に大幅に時代遅れとなり、やがて配備が廃止されることとなりました。
その後、PS-1の機体をベースに救難型へ改修されたUS-1が登場し、救難任務専用機として配備が続けられました。
US-1は、その高い性能を活かして、離島からの救急患者搬送にも大きな活躍を見せました。
PS-1には意外な秘密も
PS-1を見ると、格納式の車輪が取り付けられていることに気付かれた方もいるかもしれません。しかし、これらは「ビーチングギア」と呼ばれるものであり、通常の離着陸用ランディングギアとは異なります。
ビーチングギアは、水上で離着水したあと、基地に隣接するスロープを自力で走行したり、トーイングされるために使用されていました。
つまり、車輪が付いていても、現在のUS-1AやUS-2のように地上滑走路へ自由に離着陸できる「完全な水陸両用機」ではなかったのです。
【ビーチングギア】(びーちんぐぎあ) beaching gear
飛行艇に装備される車輪。 飛行艇を陸地へ引き揚げたり、陸地から水面へ戻したり、トーイングをしたりするために用いる。 ランディングギアとは異なり、離着陸の衝撃に耐えることはできないものを指す。
飛行艇の中にはランディングギアを備えた水陸両用のものも存在する。
情報典拠元http://www.weblio.jp/content/%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%AE%E3%82%A2
新型機!救難飛行艇US-2登場

大幅に進化した最新救難飛行艇「US-2」
US-1を大幅に発展させた最新の救難飛行艇「US-2」は、2003年から配備が進められています。
このUS-2では、従来の救難機に見られたオレンジ色の塗装は採用されず、航空自衛隊の救難ヘリコプターUH-60Jのように、戦闘下でのコンバットレスキュー(戦闘救難)を意識した、美しいブルーの海洋迷彩が施されています。
外観はUS-1Aと大きく変わっていないように見えますが、内部は大幅にアップグレード。
操縦系統はグラスコクピット化、フライ・バイ・ワイヤ化、自動操縦システムの搭載など、ハイテク化が進められています。
また、要救助者の捜索任務において発見率を大幅に高めるため、赤外線レーダーも搭載されています。
さらに、キャビンには与圧装置が備えられており、患者搬送時に患者への負担を軽減する工夫もなされています。
そして、US-2には驚くべき秘密が隠されています。それは、機体内部の主翼付け根付近に秘匿装備された「五発目のエンジン」です。
外から見るとエンジンは4基しか見えませんが、隠された5番目のエンジンは高揚力発生装置として機能しています。この装置からエアーを主翼と尾翼に吹きかけることで整流を行い、揚力を通常の飛行機の約2倍まで高めることが可能になっています。これにより、US-2は非常に厳しい海況でも離着水ができる性能を備えています。
辛坊治郎氏救助事案
平成25年6月21日、ニュースキャスターの辛坊治郎氏がヨットで太平洋横断中に遭難し、救助要請を行いました。この要請を受けて、海上自衛隊の救難飛行艇US-2が2機、緊急発進しました。救助活動は宮城県金華山沖約1200キロの地点で行われ、当時の現場海域では波の高さが3メートルから4メートルに達していたそうです。
この厳しい海況下でもUS-2は無事に救助を成功させ、その性能の高さを証明しました。
救難飛行艇「US-1A」と「US-2」のまとめ
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US-1Aは対潜飛行艇PS-1から救難用に転用されました。
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PS-1には車輪(ビーチングギア)が備えられていますが、滑走路への離着陸はできませんでした。
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US-2は固定武装を持たないため、武器には該当しません。
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現在、後継機種として「US-3」の開発が進められています。