この事故は製造メーカーが運用するテスト飛行中の出来事であり、操縦していたのは空自ではなくメーカーのテストパイロットです。
5月9日午後1時半すぎ、静岡県浜松市沖約43kmの太平洋上空で、テスト飛行中の川崎重工のT-4中等練習機から、操縦士が緊急脱出した。
同機は2人乗りで、1人は座席ごとパラシュートで脱出。救命胴衣で海上に浮いているとこ ろを空自の救難ヘリで救出されたが両腕などに軽いけが。同乗していた操縦士は、約30分後、航空自衛隊浜松基地に着陸した。 川崎重工が緊急脱出の原因を調べている。
川崎重工によると、両操縦士は同社の社員で、空自の岐阜基地から飛び立った。先に脱出した操縦士は、T-4機の前席から突然、脱出。T-4機は前、後席ともに操縦ができるため、脱出後も、後席の操縦士の操縦に支障はなかったという。脱出時にどちらが操縦していたかは不明。
同機は川崎重工岐阜工場で製造され、6月、航空自衛隊に納入される予定だった。
引用元 1994年5月10日付け 朝日新聞
川崎重工のような航空機メーカーは、自衛隊に納入する前や整備後の試験飛行、あるいは改修後の動作確認などを目的として、自社パイロットが機体を操縦することがあります。
脱出という最終手段が実行された以上、なんらかの「操縦不能」あるいは「機体制御上の異常」が一時的に発生した可能性があると見られます。
報道によれば、事故当時、乗員は2名。脱出を行ったのは前席の操縦者です。記事によれば「座席ごと」とあるので、射出座席ごと射出されたと見られます。
T-4は前後独立操縦が可能なため、残された後席の操縦士がそのまま機体を制御し、浜松基地へ着陸したようです。ただし、「どちらがその時点で操縦していたか不明」との点は不可解です。
このような脱出は自衛隊所属機では極めて稀で、意図的な脱出操作の可能性(誤作動含む)、あるいは座席の異常動作などが疑われています。特に座席射出は、レバー操作で即座に実行される仕組みのため、「誤って引いた」「座席の電気系統が異常だった」といった仮説が成り立ちますが、この事故について、インターネット上では情報を見つけることはできませんでした。