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シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

警察の「Nシステム」とは何か――犯罪捜査を支える自動車ナンバー監視網の実態

「Nシステム」とは、警察が全国各地に設置している自動車ナンバー自動読み取り装置である。

正式には「自動車ナンバー自動読取装置」と呼ばれ、高速道路や国道、県道などに設置されたカメラによって、通過する車両のナンバープレートを瞬時に読み取り、時刻・場所とともに記録する。

これにより、盗難車両や指名手配者の移動履歴を追跡するなど、捜査支援に大きな役割を果たしている。

ナンバーの情報は全国の警察で共有され、リアルタイムで照合されることもある。

一方で、監視対象に限定されず、一般車両の情報も記録されることから、プライバシーの観点からは慎重な運用が求められている。

本記事では、この「Nシステム」の実態と仕組み、設置状況、実際の活用例、そして法的な課題について詳しく掘り下げていく。

行動監視

「Nシステム」とは何か。これは全国の高速道路や幹線道路に設置された監視カメラによって、自動車のナンバープレートを自動で読み取り、犯罪捜査やテロ対策に活用されている警察の装置である。

通過する車両の番号・通過時刻・場所などのデータが記録され、盗難車や指名手配車両の追跡に大きな力を発揮している。

情報は全国の警察で共有され、必要に応じてリアルタイム照合も可能だ。しかし一方で、対象は特定車両に限らず、一般車両の情報も収集されるため、プライバシーの観点から慎重な運用が求められている。

Nシステムは、一般道や高速道路に恒久的に設置されているタイプのほか、事件発生時などには可搬式や移動型の機器が現場に投入される場合もある。いずれの装置においても、通過する車両のナンバープレートが自動的に読み取られ、同時に車両の画像が撮影される。これらの情報は即座に都道府県警察の本部に送信され、さらに周辺を走行中のパトカーや覆面車両の車載ナビゲーション装置、いわゆるカーロケナビにも一斉に配信される仕組みが構築されている。これにより、対象とされた車両は複数の警察車両によって迅速に包囲される体制が整えられている。

かつては、ナンバープレートに赤外線を遮断する特殊なカバーを装着し、読取を妨害しようとする手法も確認されていたが、近年の装置は性能が向上しており、こうした妨害行為はほとんど効果を持たないとされる。

一方で、Nシステムの記録情報がファイル共有ソフトを通じて外部に流出した過去の事案も存在し、運用の適正性や情報管理の厳格さが問われたことがある。現在も、監視技術の進展とプライバシー保護との両立が課題となっている。

警察によるNシステムの運用については、「肖像権」や「プライバシー権」を侵害しているとの主張から、市民らが訴訟を提起した事例も存在する。これに対し、2001年2月6日の最高裁判決は「違法な権利侵害とは認められない」との判断を下し、原告側の訴えは棄却された。判決では、Nシステムの運用は公共の安全確保を目的としたものであり、一定のプライバシー侵害については社会的に許容されうる範囲にとどまるとされている。

このように、Nシステムは警察にとって有効な捜査支援手段である一方、市民の行動が常時記録され得る状況に対して、監視社会化への懸念も根強い。技術の進展とともに、その運用が透明かつ適正であることをどう担保していくかは、今後も継続して議論されるべき課題といえる。

参照判決:
http://www.translan.com/jucc/precedent-2001-02-06.html

捜査以外にも使われた過去――警察内部での活用例

Nシステムは本来、犯罪捜査や交通取締りを目的として運用されているが、その使用実態については、警察組織内部における監視手段として活用された例も報じられている。

たとえば、ある県警本部に勤務していた幹部警察官が、部下の女性警察官と私的な関係を持ち、その動向を非番中にNシステムで追跡されていたことが明らかとなり、最終的に進退問題に発展した事案が存在する。

こうした例は例外的であるとされつつも、Nシステムが警察内部の規律維持や職員の行動監視といった用途にも使われている現実が、一部の報道によって浮き彫りとなっている。

システムの本来の目的と使用実態との乖離が指摘される中、その運用範囲と監視体制の透明性をどう確保するかが、今後の課題となっている。

「無断撮影は違法ではないのか」――裁判で争われたプライバシー権

Nシステムによる撮影がプライバシー権や肖像権を侵害するのではないかとの問題提起も過去になされている。代表的な事例として、Nシステムで撮影されたタクシー運転手が「無断撮影は違法」として訴訟を起こし、最高裁まで争ったケースがある。しかし、最高裁は「公共の安全確保のためにやむを得ない」と判断し、警察側の主張を認めている。

2009年にも同様の訴訟が提起されたが、やはり原告側は敗訴した。これにより、警察によるNシステムを用いた無断撮影は、現在の日本において合法とされている。

このように、Nシステムは犯罪捜査において極めて有効なツールである一方、市民生活との境界をめぐって今後も議論が続く可能性のある監視インフラである。システムの運用には厳格な内部規律と透明性が求められるだろう。

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