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2020年に発足した『沖縄県警察国境離島警備隊』に自動小銃を配備 海上民兵対策で従来のMP5は威力不足?小銃のモデルは?

バナー画像の引用元 毎日新聞「沖縄県警に国境離島警備隊を新設 不法上陸事案などに対処」

2020年、沖縄県警に設置された「国境離島警備隊」に対し、自動小銃が配備されたことが報道され、注目を集めた。

これまで日本の警備警察は、基本的に特殊拳銃(近年ではSFP9など9mmが主流)と短機関銃(MP5など)を主要な火器として運用してきた。

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沖縄県警「国境離島警備隊」とは

沖縄県警「国境離島警備隊」は、2022年度から本格運用が開始された警備部直轄の特別部隊で、主に尖閣諸島や宮古・八重山など先島諸島周辺の離島警備を任務としている。

この部隊は、領有権を主張する中国公船や海上民兵による領海侵犯、北朝鮮有事で多数の避難民が離島に流れ着いて不法上陸したケースなどを想定しており、“正規軍ではない外国勢力”による不法上陸といった、領土の実効支配を揺るがす行為(グレーゾーン事態)への警察の対応強化を目的に編成された。事実上の国境警備隊である。

  • 尖閣諸島では、中国海警局の船舶が頻繁に接近・領海侵入を行っており、
    2020年代に入り、上陸を想定した実戦的訓練の必要性が高まった背景がある。

  • 国の予算措置により、装備・人員を強化
    各方面から選抜された県警警察官が海上保安庁や自衛隊との連携を前提に編成された。


■ 編成と装備の実態(判明範囲)

  • 部隊規模は公知されていないが、沖縄県警察本部警備部に直属する特別部隊(SATのような“特殊部隊”ではない)として、
     銃器・逮捕術・スキューバ・レンジャーに精通した精強な警察官で構成。

  • 一部報道では、SATに類似した装備や戦術訓練も導入されている可能性が指摘されており、
     ボート・夜間暗視装備・個人携行火器など、通常の地域警察とは一線を画す装備を有するとされます。

  • 出動服として陸上自衛隊の迷彩服を着用していたとする指摘もある。


■ 福岡県警の支援──ヘリコプターによる離島展開力の補完

2017年の日本経済新聞の報道によると、警察庁は国境近くの離島の警戒・警備を強化するため、福岡、沖縄両県警に輸送用の大型ヘリコプターを導入することを決めたとしてる。

離島警備に大型ヘリ導入 福岡・沖縄両県警に、警察庁 2017年8月29日 19:14 警察庁は29日、国境近くの離島の警戒・警備

警察庁は29日、国境近くの離島の警戒・警備を強化するため、福岡、沖縄両県警に輸送用の大型ヘリコプターを導入することを決めた。北朝鮮情勢や沖縄県・尖閣諸島を巡る問題を受け、警戒部隊などをスムーズに派遣できるようにして危機管理体制を増強する。

引用元 日本経済新聞 2017年8月29日 19:14
出典元URL:https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29H3F_Z20C17A8CR8000/

北朝鮮情勢や沖縄県・尖閣諸島を巡る問題を受け、警戒部隊などをスムーズに派遣できるようにして危機管理体制を増強する狙いがあるとみられる。

国境離島警備隊の展開には福岡県警航空隊が支援に入っている。実際、那覇空港を拠点にした出動訓練において、福岡県警のヘリが輸送・空中指揮などの支援任務を担ったことが報道されている。また、全国で航空隊が地域部から警備部へと移管されるなか、福岡県警は「航空隊」を地域部地域総務課から警備部警備課へと移管したという情報も興味深い(出典:日刊警察ニュース)。

人員と装備を離島まで迅速に展開させるために、他県警の航空資源を共有する仕組みが機能していることを示している。

沖縄県警「国境離島警備隊」への自動小銃配備――事実と背景を整理する

2020年、沖縄県警に新設された「国境離島警備隊」に対し、自動小銃の配備が行われたことが、複数の報道機関により報じられた(※出典:琉球新報ほか)。

報道によれば、国境離島警備隊の人員は150人規模。この少ない体制で武器を持った民兵の上陸を防ぐには、強い火力を必要とするしかない。自動小銃の配備も理に適うものである。

これは日本国内の警察部隊としては例外的な装備措置であり、従来の拳銃や短機関銃(SMG)中心の警察装備体系とは一線を画す。

また報道では、同警備隊が、有事や武装集団による不法上陸などの事態に即応するため、自民党議員から陸上自衛隊の施設で自動小銃の射撃訓練を実施できるよう提案が出たことが明らかにされている(琉球新報 2020年8月20日付)。

事実確認

  • 発足: 2020年4月、沖縄県警察本部に「国境離島警備隊」が新設された。

  • 目的: 有事や不法上陸、武装集団侵入などへの初動対処。防衛出動前段階での治安維持任務。

  • 装備: 警察庁が整備を支援。報道と行政資料によれば、自動小銃が配備されたことが明示されている。

  • 訓練: 陸上自衛隊第15旅団との合同訓練を継続的に実施。

軍用弾薬の導入とその意味

2025年時点で、配備された自動小銃の口径やモデルは不明である。ただし、世界的に見れば、準軍事組織である国境警備隊では5.56×45mm NATO弾を使用する例が多い。

これは世界各国の軍隊で標準的に採用されている軍用規格の弾薬である。

これまで日本の警察で使用されてきた火器(拳銃・MP5など)は、主に9mm弾などのハンドガン系弾薬であり、軍用弾の本格導入は極めて珍しい

警察組織による5.56mm弾の運用は、日本では自衛隊を除き前例がほとんどなく、この配備措置は従来の法執行機関の火器運用方針からの逸脱と見ることもできる。

背景と制度的位置づけ

この装備強化の背景には、次のような要因があると見られる:

  • 中国公船や不審船による領海接近事案の多発

  • 自衛隊が対応する前段階の、「治安維持任務」としての初動対処力強化

  • 離島部での緊急展開を可能にする武装警察力の必要性。

沖縄県による行政評価文書(※「令和元年度行政事業レビューシート」)においても、「離島地域における突発的事案対応の即応性」を理由に、銃器対策装備の整備が記録されている。

批判の可能性と法的位置づけ

現時点で、この装備配備が法令上の問題に抵触するとの指摘は見当たらない。警察法上も、装備品の規格そのものを制限する条文はなく、必要性と比例性の原則に基づいて判断されていると解される。

ただし、警察による軍用弾の採用は、国内外で「警察の軍事化(Police Militarization)」と受け取られる可能性がある。したがって、国境離島警備隊の自動小銃配備は、事実上初の公的承認案件と見なされる可能性がある


日本警察でも自動小銃の標準装備は例外的

しかし、自動小銃(突撃銃)の導入は例外的であり、特に5.56mmの「軍用弾」を採用する火器については、歴史的に慎重な姿勢が続いてきた。

SATでさえも、89式自動小銃の配備自体は明らかになっているが、訓練に登場したことはない。

これは、火器の性能や用途そのものの問題ではなく、「警察の軍事化」を懸念する世論への配慮という政治的・社会的要因による部分が大きい。

自衛隊と異なり、あくまで文民統制下にある法執行機関としての警察が、小銃を装備することは、「軍事任務との境界が曖昧になるのではないか」との批判を呼びやすい。

しかしながら、南西諸島や尖閣周辺を含む「国境離島」における緊張の高まりや、領域警備上の課題の深刻化を背景として、従来の拳銃・SMG(短機関銃)では対処困難とされる場面への備えが急務とされてきたことも事実である。

そのため、警察庁は沖縄県警に対して、平素からの島嶼防衛を想定した部隊として国境離島警備隊を整備し、その能力向上の一環として、小銃の配備にまで踏み切ったのだ。

この配備は、あくまで警察任務としての国境警備を遂行するための例外的措置と位置付けられており、組織全体としての標準装備の変更を意味してはいないと言える。

それでもなお、「警察が自衛隊と同じ弾薬を使用する」という事実は、外形上「軍事化」と受け取られやすく、装備運用の透明性や政治的説明責任が今後一層求められることになるだろう。

日本の警察制度は、戦後の再出発において「非軍事的な治安機関」として設計されてきたという経緯がある。

そうした中での武装強化は、どのような背景があったとしても、慎重な議論と十分な情報公開が不可欠であり、離島警備隊の例は、今後の治安政策や警察装備の在り方を考える上で、象徴的な事例となりつつある。

配備された自動小銃の種類は

2025年時点で、警察庁が公的に「自動小銃○○型を調達した」とする文書や契約情報は確認されていないことに留意が必要である。

これらは推察である。

1. 警察庁の装備調達と過去の事例から見た候補

まず、いくつかの候補が浮かび上がる。

候補①:豊和工業 89式小銃(5.56mm)または64式小銃(7.62mm)

  • 特徴:自衛隊や海保で広く配備。陸自では後継の20式小銃導入により、いずれも退役が進むと見られている。このため、一部が警察に移管される可能性がある。

  • 根拠:89式は「SAT装備品」として、2004年に警察庁が資料公開。64式はSAP時代に配備されていたという元隊員の証言がある。警察装備として運用実績があるとみられる。

候補②:豊和工業 20式小銃

  • 特徴:自衛隊の新型制式小銃。海水への耐久性が高い。ベレッタ製グレネードランチャーも装着可能

  • 根拠:海上での任務も想定される警備隊では適切な選択と言えるが、自衛隊への配備が優先される状況で警察へ回す数量があるのか疑問点もある。

候補③:Colt M4A1またはHK416

  • 特徴:米軍の制式小銃。各国法執行機関にも供給実績がある。

  • 根拠:5.56mm弾の世界標準自動小銃(カービン)。アジア諸国の警察機関でも導入例は多く、韓国の大統領警護処CAT要員ではHK416が配備されている。


これらはあくまで推測であるが、警察は近年SFP9など、自衛隊装備と共通性の高い火器を選定している

この点から見て、日本国内で整備・調達実績があり、自衛隊における訓練指導が受けられやすい89式、64式が優先される可能性はある。

なお、2026年にはうるま市に国境離島警備隊などの訓練施設が完成する。県警では同所にて災害救助や銃器の訓練を予定しているという。来年、報道でその様子が公開されたとき、我々は意外な小銃の姿に驚くことになるかもしれない。

今後、警察庁の装備調達情報の公開、あるいは訓練映像・写真の精査によって、より具体的な銃種が特定される可能性もある。

結論

沖縄県警の「国境離島警備隊」への自動小銃配備は、地政学的・戦略的背景に基づく治安強化策である一方、警察組織における装備水準の「非軍事性」維持という点から、制度的・政治的に重要な前例を形成しつつある。今後の類似装備配備の動向や、説明責任のあり方が注視される局面といえる。

参考文献一覧

  1. 「沖縄県警に国境離島警備隊 尖閣対応、4月発足」
     2020年3月27日 18:37
     日本経済新聞
     https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57335340X20C20A3CR8000/

  2. 「自衛隊施設で射撃訓練を検討 県警離島警備隊 自民議連が提案」
     琉球新報(公開日時 2020年08月20日
     https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1176884.html

  3. 「沖縄県の治安対策装備に関する公的文書」
     「ただですね、やはり全国初の国境離島警備隊ですし、また自動小銃も備える、構えるっていう部隊ですので」
     令和2年
     https://www2.pref.okinawa.jp/oki/soumukikaku.nsf/89f525501484cc6249257c8c003c717a/dc366c21f05b6b18492585b20027d7c9?OpenDocument

  4. 「中国ヘリが領空侵犯! 「尖閣上陸」秒読みか? 日本の打つべき手は?」
     「2020年に発足した警備隊で、151人の隊員がボディアーマーと自動小銃で武装しており、大型ヘリでの機動展開も可能だ。」
     (取材・構成/小峯隆生)
     https://news.yahoo.co.jp/articles/8c380f5da5405b4edea3be6e704f40518d6dd84b?page=4

  5. 「長崎での陸自訓練に沖縄県警と11管が参加 五島列島、尖閣対処を想定」
     琉球新報(公開日時 2022年11月13日)
     https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1615280.html

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