【お知らせ】
シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

警察が空港警備に活かすセグウェイの役割と利点とは?

2015年、警視庁は全国の警察本部に先駆けて、一人乗りの電動車両「セグウェイ」を導入した。導入の背景には、2016年度に開催された先進国首脳会議(サミット)や、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えた情勢があり、テロ対策として「見せる警備」を意識したものとされている。

配備先は、平成26年に警視庁機動隊の空港警備中隊から改称された「東京国際空港テロ対処部隊」である。配備数は公表されていないが、関係者の間では数台規模と見られている。

セグウェイは、歩行に比べて4倍以上の巡回範囲をカバーできるとされ、その機動性を活かし、広大な空港構内を隈なく警備できることが期待されている。また、電動式で排気ガスを出さない構造のため、空港などの屋内施設でも運用可能である。

巡回中の警察官にとっては、肉体的な負担の軽減が見込まれるほか、搭乗時には高い位置から周囲を見渡すことができるという視認性の利点もある。

セグウェイの活用は警察だけでなく、民間の警備業界にも広がっており、ある地方の国際空港ではセグウェイを導入した結果、それまで配置されていた5人の警備員のうち3人が削減された例もある。こうした動きは、警備分野における省力化や効率化の一環として注目されている。

警視庁で新規配備されたセグウェイ 画像引用元 産経新聞社 http://www.sankei.com/life/photos/150831/lif1508310043-p1.html

警視庁に納入されたセグウェイは警察機関向けPT i2SE Patroller

セグウェイジャパンによると、警視庁に納入されたセグウェイは『PT i2SE Patroller』と呼ばれる欧米の警察でも広く普及している警察およびセキュリティ向けのモデル。

日本警察のセグウェイの装備品は?

すでにアメリカの警察で採用されている『PT i2SE Patroller』と同型で、車体前面にレッドとブルーの点滅灯を備えているほか、英語で『POLICE』と表記された大型の反射板も備えている。日本独自仕様と見られるような装備品はとくにないようだ。

セグウェイの特徴

  1. 自分の運動(重心移動など)による方向転換が可能でアクセルもブレーキも非搭載。
  2. 搭載AIが自律制御してくれるので、特別な訓練が必要なく誰でも乗車が可能。
  3. 充電は一回10円から20円と経済的で、一回の充電で40キロメートルの走行が可能。

警備にセグウェイを導入する利点

今回、空港警備に警視庁が導入したセグウェイには各種の利点がある。

まず、産経新聞ではセグウェイを警察官が使用することを「見せる」警戒 優しさと強さ兼ね備えた警備へ」と評している。

セグウェイで「見せる」警戒 優しさと強さ兼ね備えた警備へ 羽田空港に導入

2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、警視庁は31日、羽田空港の警備に1日から導入する立ち乗り電動二輪車「セグウェイ」の訓練を報道陣に公開した。警察での導入は全国初。「姿を見せる」ユニークな手法で、警備の強化を目指す考えだ。

セグウェイは最高時速約20キロ。「POLICE」のロゴに、赤と青のライトを点灯させ、国際線出発ロビーを巡回する。高さ約20センチのステップに乗れば周囲を見渡せ、注目も集めることから、テロや犯罪の抑止に加え、利用客との信頼を深める交流にも期待している。

昨年4月に発足した東京国際空港テロ対処部隊に予備も含め2台を配備。警備1課の早川剛史課長は「日本を取り巻く情勢は厳しい。警備に新しいハイテクの力を生かしつつ、利用者の安心感につなげることができれば」と話した。

典拠元 産経新聞社WEbサイト
http://www.sankei.com/life/news/150831/lif1508310043-n1.html

産経新聞では、警察官の「あえて姿を見せる」警備の有用性を説いているが、さらに「(警察官と)利用客との信頼を深める交流」という副次効果をも狙っていると同社は指摘する。

テレビ朝日のニュース報道でもほぼ同様の指摘がなされている。

東京・羽田空港の警備に、1日から全国の警察で初めて「セグウェイ」が導入されます。

警視庁は、来年に開かれるサミットや2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて羽田空港の警備を強化するため、電動立ち乗り2輪車のセグウェイを導入しました。セグウェイに乗ると警察官の視界が広がるほか、警察官が目立つため、「見せる警備」による犯罪を抑止する効果も期待されています。

典拠元 テレビ朝日webサイト
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000057841.html

このように、セグウェイによる警備の利点をまとめると以下のようになった。

  1. 少ない人員で広い区域をカバーできる。
  2. 警察官の姿を目立たせることで犯罪を抑止させる”見せる警備”が可能。
  3. 人間の平均的身長から20センチ高い位置から周囲を見渡せることで人ごみの中でも”警察官の視界が広がる”。
  4. 空港利用者との信頼関係の構築

警察は一般道でもセグウェイを導入するのか

アメリカでは、セグウェイが当初、警察機関に対して無償で貸し出され、その運用効果が評価されるとともに採用が広がっていった。現在では、世界の1,500以上の法執行機関がセグウェイを導入しており、公道上でセグウェイに乗って法の執行にあたる警察官の姿は、海外では広く見られる光景となっている。

一方、日本におけるセグウェイの運用については、これまで公道走行が法的に認められていなかったが、2015年7月より、一定の条件の下で公道走行が可能となった。ただしその条件には、事前の警察への届け出や、誘導員の同行などが含まれており、日常的に自由に走行できる状況ではない。

こうした制約のため、現在のところ日本の警察においても、セグウェイの運用は主に空港などの広大な公共施設内に限られている。警視庁を除き、他の都道府県警察での導入事例は確認されておらず、公道を巡回する警察官がセグウェイに乗る姿が一般化するには、まだ時間を要すると見られる。

地域の交番で見られるいわゆる「チャリマツ」(自転車巡回)が「セグマツ」へと置き換わる日は、当面のところ訪れそうにない。

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