電離層を利用すれば遠距離交信(DX)が可能!アマチュア無線と電離層

Contents

短波 HF (High Frequency)と電離層

誰でもきっと聞いたことがある『短波放送』という言葉。この短波という電波は低い周波数を使う電波のことで、季節や時間帯によって変動する電離層の特殊な状態を、周波数を使い分けて利用するのが特徴です。

昼と夜で電離層のコンディションが変わるので、夜は聞こえていた短波の周波数も昼間になれば聞こえなくなる場合もあります。電波は送信電力の大きさや、周波数が低ければ低いほど遠くへ飛びます。

最も敷居が低く、4アマが手軽に運用できる144MHzや430MHz帯の超短波はアンテナを短くできる利点があるものの、Eスポが発生でもしない限り、山の上で20W送信だと最大でも300キロが良い範囲でしょう。

外国との遠距離交信をDXと呼び、DXこそがアマチュア無線の真骨頂だと考えるハムは自宅に大きなタワーアンテナを立てて、7MHzや14MHz帯などの低い周波数とEスポを使って外国局との交信を楽しんでいます。

さて、電離層とは大気中の酸素分子が赤外線や波長の短い紫外線により、原子へと分解され、その原子が自由電子とイオンに分解され小さな粒状となって浮遊している層です。地上から約10キロから数100キロぐらいのところにあるこの電離層に電波が当たると、反射現象が起こります。

電離層は低いほうからD、E、Fと各層で成り立ちます。試験でも出ましたけれど、電子密度によって反射や吸収が違い、一般的に密度が高くなるのは太陽活動が活発な夏場で、とくに前述した短波帯の電波が影響されます。

外国と交信するには電離層と低い周波数が不可欠

144MHzでも電波の異常伝播経路(ラジオダクト)が生成されることによって、外国と交信できるチャンスがあります。しかし、ラジオダクトは希な現象ですので、日常的にというわけにはいきません。

Welcome Back to Joe’s Place: Happiness is a Warm Rig (English Edition)

Welcome Back to Joe’s Place: Happiness is a Warm Rig (English Edition)

 

理論的には周波数とは低ければ低いほど電波が電離層で反射されるため、見通し距離の交信に比べて数倍から数百倍も遠くへ飛んでいきます。

またさらに、モールス通信など、SSBと呼ばれる電波の形式ならば地球の裏側までも飛んでいきます。ですから、まずHF機と呼ばれる少し高価な無線機が必要ですが、電離層を利用することで、外国と交信も容易になります。

しかし、とても大きなアンテナも必要で、資金と自宅環境に余裕のある人でなければなかなか難しいところです。

ただし、HFであってもモービル運用は可能です。その際は海岸にでも出かければ2メートル程度のHF用アンテナでもアメリカとも交信が可能です。

低い周波数帯、いわゆるHF帯を使用したい場合はアンテナの設備が大掛かりになり、またHF無線機も比較的高価でありますから、初心者にとっては知識や金銭的な問題もあり、なかなか難しいのが現状です。

スパイに対する暗号の送信にも使用される短波無線

また、この低い周波数を使う短波帯の無線通信は各国の軍隊や諜報機関もスパイに対する暗号の送信用に使用しているとされ、北朝鮮の乱数放送や、とくにロシアのモスクワ近郊の村からSSBの4625kHzまたは6998kHzで発信されるUVB-76″ザ・ブザー”などはとても不気味で、世界中の短波無線愛好家からはで根強い人気があります。

UVB-76はソ連時代から現在まで続く目的のわからない『謎の無線局』で、周波数4625kHzのSSBで短いブザー音を一定周期で送信しています。ごくまれに人間の音声で英数字を読み上げることもあるようで、これらのことから謎に満ちた怪電波発信源と言えます。

その目的についてさまざまな憶測があり、電離層の研究やモスクワが他国から核攻撃を受けず正常に存在していることを他の地域の軍部隊へ知らせる目的であるなど、いろいろな推測がされています。

これらの軍用にも使用される短波帯ではモールス通信が使われることもあります。

HFで運用されるモールス通信ってどんな通信?

「モールス」とは電信の事で、打鍵器を使って、モールス符号を送信して通信を行います。

日本では1854年、ペリー(マシュー・カルブレイス・ペリー)が2度目に来日したときに、江戸と横浜の間を持参した「エンボッシング・モールス電信機」での電信に成功させ、これが日本初の電信通信となりました。

民間ではとっくに使わなくなったモールス電信ですが、自衛隊ではいまだに運用されていますし、日本政府が電波法施行規則第12条第13項で「無線電信により非常通信を行う無線局は、なるべくA1A電波4,630kHzを送り、及び受けることができるものでなければならない。」と規定し、自衛隊のほか警察も常に傍受している非常通信用の周波数4630kHzもモールス通信(A1A)が基本です。

通常の音声での通信に比べた場合、消費電力は10分の1程度と非常に省電力で通信が行えることが利点です。またモールス通信は弱い出力でも周波数が低ければ低いほど、地球上のあらゆる場所にまで電波が到達するので、驚きと面白さがあります。

アマチュア無線技士においては3級からモールス通信が許可されます。

多様な電離層の種類

D層

地上約50キロから80キロと比較的低い位置に発生する層です。昼がもっとも電子密度が高くなりますが、夜は消えてしまいます。短波は反射しませんが、長波はこの層によって比較的広範囲に伝わります。

E層

地上約100キロ上空に発生する層です。朝から発生し昼の時間帯がもっとも電子密度が高くなります。

F層

150から300キロ上空に現れる層です。短波で交信する場合はこのF層が非常に重要となります。外国の短波放送が深夜によく聞こえてくるのはこの層があるからです。

電離層により引き起こされるさまざまな現象

フェージング

夜間のHFで見られる現象で、受信している電波が強くなったり弱くなったりすることがあります。このような電波のゆがみがフェージング現象です。地表波と電離層波が互いに干渉しあうために起きます。

Eスポ

春から夏にかけて、主に昼間、地上から上空約100km付近に局地的かつ突発的に発生する電離層のこと。これに電波が反射することで普段では届かない地域に電波が届き、通信が可能。つまりこれが発生すると遠距離通信が狙えるのだ。ただし、発生は突発的であり安定しない。

デリンジャー現象

太陽フレアによる一種の短波障害です。電子密度が増大したD層で短波が吸収されることにより短波が遠距離へ到達しなくなります。

磁気あらし

こちらも太陽フレアの発生で起きる現象です。

なお、電離層について1984年のテレビアニメが詳しく教えてくれます。

1984年放映のテレビアニメで登場したアマチュア無線の驚きの描写とは?