【コラム】アマチュア無線技士の国家試験体験記

第4級アマチュア無線技士(4アマ)の国家試験は工学と法規(計24問/総合スコア120点)の両パートから成り立っていますが、実技試験がなく、国家試験としては難易度が低めです。

筆者が受験した当時はマークシート方式の試験で、2024年現在行われている『CBT試験』とは受験方法が異なりますが、基本的に出題内容のレベル、多肢選択式試験であることに変わりはありません。CBT方式の試験については以下の記事でご説明しています。

アマチュア無線の資格はこう取ります

 

4アマ、3アマの受験勉強は暗記のみでよい

実は第4級アマチュア無線技士(4アマ)の国家試験問題は99%が過去問の使い回し。市販の問題集で充分に対応でき、過去問の丸暗記で大丈夫。

試験のパートは『工学』と『法規』の二つで出題数はいずれも12問の計24問。

すべて多肢選択形式ですので「問題を理解して回答を選ぶ」よりも「回答を見て選ぶ」攻略法が効率的です。

ただし、「正しいものはどれか」、「誤っているものはどれか」の区別に注意が必要です。

その1、『工学』の内容

無線機の構造と仕組み(電気回路、電子回路、電源)、空中線(アンテナ)、さらには電波伝搬の特性といった設問が出題。

電気工学は工業高校電子科などの現役生徒なら容易かもしれませんが、専門課程出身でない限りは難問。

ただし、計算問題も過去問の使い回しのため、基本的に暗記が有効です。

出題例

  • 無線機と回路(送信機の構成、変調の方法、各種モードの特性など)
  • アンテナの名称と形式、周波数の特性、垂直偏波・水平偏波といった電波の指向性など

その2、『法規』の内容

法規とは無線従事者としての基本知識となる『電波法』です。『従事者免許証』、『無線局免許状』、さらに”本日は晴天なり”や擬似空中線を使う理由など、実際の運用についての知識が試されます。

出題例

  • 電波法の目的と定義(電波の公平かつ能率的な利用…と基本を覚えよう)
  • 免許関連(総務大臣への申請方法、免許に記載される内容、運用中に免許証はどうすべきか、免許を無くした場合の対応、電波法違反時の行政処分)
  • 運用規則(電波の質に関する規定、電波形式の記号、無線局に備え付けるもの、禁止された行為、擬似空中線を利用する理由など)

4アマ受験におすすめの参考書籍

こちらは実際に筆者が使用した書籍です。アマチュア無線の国家資格受験を目指す人なら、この本を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。CQ出版発行の「コミック版最新ハム問題集」です。

本書はその名の通り、漫画形式となっており、構成はゲームセンターあらしの「すがやみつる」さん、作画はくまの歩さんです。「”マンガでわかる”系参考書」は初心者にもなじみやすいのですが、主人公の少年が「アマチュア無線を始めようと思い立ったきっかけ」自体は今となっては遠く過去のお話のように思えます。

内容はざっと書くとこのようになっています。

  • 第1章 ハムとの出会い
  • 第2章 ハムになるには?
  • 第3章 無線工学なんてこわくない
  • 第4章 送信機と受信機
  • 第5章 電波の伝わり方と空中線
  • 第6章 基礎知識と測定
  • 第7章 電波法規

1および2章は主人公の少年がハムと出会うストーリー導入部となっており、やや強引な展開ながら、かいつまむと以下のような感じです。

まだ携帯電話がなかった古き良き時代。主人公の少年と両親の乗った自家用車が山中でエンジン故障して立ち往生。困った彼らに偶然通りかかった車の見知らぬ好青年は『故障ですか?』と声をかけます。主人公のお父さんは人の良さそうなこのアニキに「町へ着いたら修理業者さんを呼んでいただけないでしょうか」と救援を求めます。

すると、アニキは「いいですよ。でもこっちのほうが早い」と言い、「チャッ」とおにぎりマイクを握りしめ、颯爽と車載のモービル機で町のハムと連絡をとり、近所の修理業者と連絡を取ってレッカーを手配してもらうのです。

なんと、このアニキこそが、これから僕らが目指すべき良きアマチュア無線家だったわけ。ジャールが提唱する『アマチュアコード』の『アマチュアは良き社会人であること、親切であること』を地で行く人なのです。

アマチュアコード 

アマチュアは、良き社会人であること

アマチュアは、健全であること

アマチュアは、親切であること

アマチュアは、進歩的であること

アマチュアは、国際的であること

典拠元 JARL公式サイト https://www.jarl.org/amateur-code.htm

親切なお兄さんお姉さんでなければ、ハムを名乗れません。Xで毒を吐いたり人様に絡んだり人のサイトにケチをつけたり、不健全な通信を傍受したり、知恵袋で揚げ足をとって初心者にマウントしたりもってのほか。すべてコード違反です。お、おう。

そして、このカッコいいモービルハムのお兄さんが、実はすがやみつる先生その人であり、すがやのアニキに惚れ込んだ主人公の少年がアマチュア無線技士国家試験受験までのお勉強の手ほどきを受ける……という内容です。

いやあ、何もかもが懐かしい。今でこそ筆者は3アマ、2陸特、2海特、航空特を持っており、この本もある程度余裕を持ってクスクス笑って読めますが、当時はこの本ですらチンプンカンプン(死語)で、血を吐き泣きながら読んでました。

「コミック版最新ハム問題集」は1985年に初版が発行され、1987年に改訂版が刊行。その後、2000年の改訂版を経て、2012年当時で第11刷発行、そして2024年現在、なんと20版目。きちんと最近の出題傾向に合わせてリニューアルされ、刊行が続いています。

しかし、改訂が加えられているのは試験問題部分のみで、おそらくストーリー自体は1985年当時から一切手が加えられていないと思われます。ですから、スマホ世代には逆に新鮮すぎるほど新鮮な展開と言えるかもしれません。

しかし、お兄さんの通信は親切な行為とはいえ「アマチュア業務」なんだろうか?現実だったら、どこかの局にブレイクされて「あなたの通信はアマチュア業務ではない!告発します!」なんてお空でわざわざマウンティングされたりして。

ともかく、3から6章までが工学で最後の7章が法規となっており、工学の解説は詳細ですが、法規は解説なしという割り切った内容のため、ひたすら暗記ですが、実際「とにかく暗記してしまえ!」「じゃ、これ解いて」と、アニキ(すがや先生)は強引です。

ただし、漫画といっても昨今流行の『漫画でわかる○×△』のようなストーリー仕立てではなく、最初の導入部を除けば、あとは「漫画の挿絵」が出るにとどまりますので、物語性やマンガならではの親しみやすさをあまり期待しないほうがよいと思います。

しかし、これ一冊で受かりました(笑)

ちなみにこの本、2011年8月にも増刷されており、需要と人気はいつの時代も衰えていません。さらに同じ原作者と作画者のコンビで合格後のアマチュア無線の楽しみ方の入門漫画「コミック版 ハム入門 (CQ comics)」も92年に出版されていたようですが、2001年に絶版となっています。※Amazonで中古で購入できます。

ほかにもCQ comicsシリーズでは以下のわかりやすいマンガ書籍がありますのでご興味があれば一読を。

こちらは新星出版社のコミックスです。

3アマなら『ガルスカ本』

楽しく覚える3アマ攻略。通称「ガルスカ本」です。ガルスカの名の通り、ガールスカウトの女性リーダーの二人が解説している初心者向けの3アマ教本で、こちらもCQ出版から出ている書籍です。現在は絶版になっています。

ガルスカ本は絵が萌え萌え系じゃないところが、何より好感が持てるし、背景の絵がいい。おまえやっぱり絵とか表紙から入るのかよ。はい。

内容は詳しい工学の説明は省かれており、いわゆるこじつけて覚える語呂合わせに主眼が置かれた”3アマ攻略本”です。

3級になると法規問題のなかにモールスに関する問題が出題されますので、モールスの勉強も必要ですが、それもバッチリ。すべてのモールス記号を覚える必要はありません。数字と特定のローマ字のみで充分。

『たの3』一冊で受かりました(笑)ほかに買ってません。

1,2級は甘くないぞ!

ここまではいわゆる初級アマチュアまでの勉強方法。しかし、上級アマチュアの2アマ、1アマになると、これまでの暗記に頼った勉強だけでの合格は非常に困難(よくてギリギリ)です。その理由は工学の計算問題。問題のいくつかは数値を変えられています。

でも、「たの1」もありますが(笑)

アマチュア無線の雑誌や入門書を探すなら図書館へ行こう!

さて、アマチュア無線の参考書などが無料で見たいなら、近所の図書館へ足を運んでみましょう。たいていの図書館にはアマチュア無線の関連書籍が置いてあるはず。

カテゴリーとしては工学、情報通信のエリアに置かれていることが多いのですが、筆者の近所の公立図書館には子供向けの図鑑などが置いてあるコーナーにも子供向けの漫画本としてアマチュア無線の本がありましたので、児童書コーナーも要チェック。皆さんも図書館へ出かけてぜひアマチュア無線の本を探してみてください。見当たらなければ職員へ探してもらうと書庫にあるかもしれません。

なお、現在、発売されている月刊のアマチュア無線関連雑誌としてはCQ出版社が出している「CQ ham radio」というアマチュア無線の専門誌があります。技術に関する記事が豊富で唯一無二のハム専門誌と言えるでしょう。CQ ham radioは50年近く表紙のタイトルデザインが変わっておらず、興味深いものです。

さらにうれしいことに、2015年10月、新たに「HAM world(ハムワールド)」という雑誌が刊行されました。「HAM world(ハムワールド)」はラジコン技術などを発行する会社・電波実験社が出しており、月刊ではなく定期的に発行されるムック本となっているようです。

なお、90年代は「レッツハミング」などもありましたが、アマチュア無線人気も衰え、部数減少によりすでに廃刊になっています。

また、アマチュア無線の専門誌ではありませんが「ラジオライフ」誌では毎回、アマチュア無線機やデジタル簡易無線、広帯域受信機の非常に詳しいレポートを掲載しています。

実際の4アマと3アマの受験体験記

筆者は4アマおよび、3アマの国家試験を合計4回受験し、それぞれ二度目で合格できました。その受験時の体験を綴っていきたいと思います。

第4級アマチュア無線技士の試験会場の様子

筆者は8エリア(中東の砂漠ではない)なので、試験会場は札幌市中央区にある『道特会館』の五階。今回の受験者は15人(女性は1名)ほど。年齢層は小学6年生か、中1くらいの年代が約1名、高校生か大学生が約5名、そのほかが筆者を含めた大人。なお、試験官は3人。

筆者が受験したのは札幌市内にある『道特会館』

国家試験ともなれば、人生を決める公務員採用試験みたいなものかと勝手に想像していた筆者。もちろん趣味の資格。スーツで来る人なんて一人もいないわけで、筆者含めてみなさんが、リラックスしたラフな格好で来場。会場はザワザワと騒がしい様子もなく、静まり返って暖房のボイラーの音がよく響く。

さあ、今回は二度目の受験である。今回は試験官に一度も注意を受けなかった。席も一列に座ったし、算用数字での誕生日の記入もきちんと行ったからだ。もちろん、ゼロの部分のマークシートを塗りつぶすのも忘れていない。しかし、他の人が写真の下に撮影日を記入し忘れて注意を受けていた。

そして10時20分に試験官が試験を受けるにあたっての説明を始め、予定より3分遅れて10時33分に試験開始。肝心の試験の出来具合だが、やはりネット上の試験問題サイトの問題を解くのと実際の紙の解答用紙にマークシート方式で記入するのは感覚が違うし、見たこともない問題があった。

しかし、前回の試験結果が5,6割だったのを思い出すと、今回は8割以上、自信を持って回答できた。もう試験開始から15分くらいで合格確信。法規、工学ともに12問中、8問以上の正解で合格だ。

11時3分。試験開始から30分が経つ。ここで途中退席が可能となることが試験官より告げられ、筆者を含めほとんどの人が途中退席し、会場を後に。あとは試験結果の通知を待つだけだ。

そして受験から11日後、日本無線協会からハガキの通知書が届く。おそるおそるめくるとそこには……「合 格」の文字が!「おめでとう」の文字まで!なお合格日はクリスマスですな。二度目で4アマの合格を手にできた。だがしかし、ここで終わりではない。筆者は4アマ取得後、少なくとも3アマまでは取りたいと思っていたので、実際の無線運用を行いつつ、3アマの勉強も行っていた。

そして3アマにもチャレンジしてみた。その結果は……?

第3級アマチュア無線技士合格の体験記

さて、4アマに合格した筆者は3アマ合格を目指し、例の参考書で勉強を続けていた。そして、同じく受験地は札幌市中央区の道特会館。3月最後の日曜日に受験を敢行した。

札幌時計台前はひっきりなしに観光客が訪れ、白い時計台の建物をバックに思い出をデジカメのメモリーに焼いてゆく。のどかなものだ。しかし、こうしてはいられない。これから国家試験である第三級アマチュア無線技士を受験するのである。どどーん!長い前フリだなあ。

さて受験会場である『道特会館ビル』へ。相変わらずわかりにくい立地だ。5階の試験場へ上がると4級と3級は同時間で同時開催であった。前回の4アマ受験時に注意を受けた試験官がまた……。な、なんと今回もまた筆者だけ試験監督に注意を受けたぞ!前回は座る位置を間違えて怒られたうえに、答案用紙に自分の生年月日の記入で0にマークし忘れて怒られた。今回は自分の受験番号を数字で記入するのを忘れたのだ!すごい。もう完全に試験監督に名前と顔覚えられたよ。

さて試験だ。出来は……5割!一週間後、届いたはがきをめくるとそこには……不合格の文字が。悲しい。もうおわりだねこのおじさん。そしてリベンジ!

第2回目の『3アマ』受験の体験記

あれから一年後。あのときと同じ3月の日曜。道得会館の前には、いつもご丁寧に「アマチュア無線国家試験会場」と案内ボードが立っている。試験会場は今回、3,4級あわせて35名程度だった。女性は4級の中にただ一人だった。10時20分ごろに試験の説明が行われる。

今回、筆者は特に問題なく注意も受けず。これでは書くネタがない……と思ってたら数名、受験票を持ってこない不思議な受験者がいた。彼らは受験不可どころか、その場で試験官に受験票を再発行してもらって、受験OKだった。無線協会も大判振る舞いである。

10時30分になり試験開始。今回の試験の出題は比較的簡単だった。ミスはおそらく工学と法規を合わせて2問。30分経って途中退出の許可が出たので、ほとんどの受験者が退出。筆者も足早に会場を後にする。

一週間後、無線協会からはがきが来ました。めくるとそこには……合格の文字が。国家試験を勝ち抜いた証だね。そんな大げさな。小学生でも受かるというのに。しかも一回落ちてますからねこのおじさん……。

そして3アマの従事者免許証申請。

4級と同様の手順で総務省のサイトから申請書をダウンロードし、コピーして必要事項を記入し、写真を添付して送付するのだが、すでに4級の従事者免許証を所持しているので、その免許番号を記入すれば、氏名などを証明する書類は不要だ。ただし、前回同様1750円の手数料と80円切手2枚分の代金はかかる。封筒代も。

3級従事者免許到着!今回もまた電波りようこちゃんのパンフレットが同封されていた。さすが総務省。また会えたね電波りようこちゃん。

4級と3級の従免を並べると、とても感慨深い。

合格したあと、はじめて筆者はガルスカのさっちゃんたちに感謝したいと思った。楽しく覚える3アマで、頭に詰め込んだ甲斐があった。

3級の試験もゴロアワセで覚えると楽だ。「たのしく覚える3アマ」のとおりの方式で覚えたが、私はさらに自分で考えて覚えている。

もちろん4アマを飛ばして、いきなり3アマ受験でもいいわけです。多くの3アマ所持者が2アマを飛ばして1アマを受験するようにに。

みなさんもぜひ挑戦してみてください。

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