先日、フランスのマニアが『日本警察のパトカーのレプリカをフランス国内で走らせて逮捕された記事』をお伝えした。
その遠い異国の地を走った日本パトカーのレプリカであるが、筆者はそのレプリカに付けられた『旭日章』がステッカーだったことを残念な点のひとつとして挙げた。
だが、北海道警察本部交通機動隊では、この3月に新規配備された日産・スカイラインV37の交通用パトカーで、そのステッカー式『旭日章』を採用してしまったようだ。
道警の交通取締りを重点的に取材しているサイト『世界びっくりカーチェイス2』さんでは、道警本部琴似庁舎の敷地外から”納車式”の模様とともに撮影された今回のV37配備スクープ記事を配信しており、当サイトでは今回のV37配備に絡み『旭日章ステッカー』の批評と考察を行うため、一部の写真を引用させていただいた。
さて、日本警察におけるV37スカイラインといえば、すでに交通覆面やEC(警護車)で配備実績も。
が、制服用のそれもレーパトでは道警が初。
今回、北海道が道費で購入するいわゆる県費車両で『車載式速度測定装置搭載車』と呼ばれる警察車なのだ。
リンク先 政府公共調達データベース 北海道交通パトカー(車載式速度測定装置搭載車)9台
ところで、今回の道警V37レーパト配備に絡み、昨年末、マニアの間でちょっとした騒動が起きた。
例年は札幌トヨタが落札するのがセオリーであるはずなのに、同社が参加しなかったのだ。
実は今回、札幌トヨタは道に指名停止処分を受け『参加させてもらえなかった』のである。

すでに全国でおなじみのトヨタ210系クラウンのレーザーパトカー。画像は北海道警察の配備車両。
指名停止処分の理由は『札幌トヨタの不正または不誠実な行為』というもの。
不正の内容について詳細は判然としないが、札幌トヨタは今回の道警の車載式速度測定装置搭載車の入札期間内に指名停止の処分明けが間に合わず、参加を逃した形となった。
出典 『世界びっくりカーチェイス2』Back Number 2020/Text No.107
そのような理由から、今回は札幌日産が応札し、同社が落札するというちょっとイレギュラーな事態になったわけ。
今回の日産による落札により、同社が投入する新型車両にも注目が集まった。警察がパトカーを調達する際、応札メーカーには性能や仕様など複数の条件が課されるが、とりわけ重要視されるのが排気量だ。
たとえば、所轄署や自動車警ら隊が使用する無線警ら車には2.5リッター以上、交通機動隊や高速隊向けの交通取締用四輪車には3リッター以上の排気量が要求される。
道警では長らくJ31ティアナをレーダーパトカー(通称レーパト)として運用していたが、2019年末の生産終了により更新が課題となっていた。後継としてシルフィは性能要件を満たさず、GTRやフェアレディZ(警視庁で配備実績あり)のようなクーペ系でのレーパトは用途的に非現実的。4ドアセダンで適合する車種は、V37スカイライン、フーガ、シーマに絞られる。
コスト面や汎用性を考慮すると、最有力候補はV37スカイラインであり、実際に今回配備されたのも同車であった。道警でのV37白黒パトカー採用は全国初とみられる。一部ではフーガやシーマ配備の可能性も囁かれていたが、価格面から実現性は低かったと考えられる。
また、札幌トヨタの指名停止処分と日産の落札という一連の経緯は、典拠元サイトによれば今後セットで語られることになるという。今回確認された車両にはルーフサイン「札」が確認されており、当面は札幌市を管轄する交通機動隊に配備される見込みである。
ただし、過去にも札幌本部から地方方面(旭川、釧路、北見、函館)への転属例があることから、今後の移動についても注視されている。
新年度を迎えれば、V37レーパトは札幌市内や近郊、国道・道道沿い、あるいはセイコーマート周辺などで順次目撃されることになるだろう。
なお、このV37には従来の金属製エンブレムではなくステッカー式の旭日章が採用されており、その“顔つき”に従来のパトカーとは異なる印象を覚えるとの声もある。次節では、その外観の変化について詳しく検証する。

感慨深くV37パトカーのフロントを覗き込む関係者の男性。グリルにあるはずのシロモノが、ないのだ。なお、グリル内に見えるのは障害物検知用ソナーのセンサーと思われる。画像の出典 http://www2.famille.ne.jp/~mst-hide/
V37のボンネットに注目されたい。なんと、フロントグリルに配されるはずの旭日章がステッカーに代えられてボンネットに移動しているではないか。写真では立体的に見えなくもないこのステッカータイプの旭日章だが、平面ステッカーのようだ。

パトカーのグリルに輝くこの旭日章の立体感と造形美、威厳を見よ。
それまでの制服用白黒パトカーと言えば、グリルにデンと据え付けられた立体的な造形美をかもし出す旭日章だった。
冒頭の写真でも、退役してゆくレガシィのフロントからナンバーとともに旭日章が撤去されているのがわかるが、警察当局の威厳を顕すのが、まさにこの旭日章なのだ。

210系クラウン
そのパトカー、いや、公権力の証したる旭日章がステッカーに代えられた今回の事態にマニアの一部からも戸惑いの声が挙がっているようだ。
山梨県警の県費車は旭日章シールでしたがどこぞのV37も旭日章ついてないってことは… pic.twitter.com/SqF0W7R4gI
— PMH-04 (@ha1100_9952) March 26, 2021
警察車両で旭日章をステッカーで済ませてる車両って見たことなかったかもしれない…??
— けけ丸@がんばらない。 (@HachiojiEVSF) January 3, 2020
ただ、このステッカータイプの旭日章は警視庁や福岡県警機動隊のランクル指揮官車でも以前から採用されており、道警が全国で初の試みというわけではなさそうである。
昨日の指揮官車。フロントグリルがトヨタマークになって、あー旭日章無くなったんだと思ってはや幾年月、昨日ふと気付いたらボンネットにステッカーみたいなやっすいの貼ってあった。 pic.twitter.com/Jt4434QTqV
— 特別警戒実施中 (@PD_idou102) February 12, 2020
コレについても県費、国費で違いがあるようで興味は尽きない。
つい先日まで、フランスのマニアによるレプリカパトカーに貼られたステッカー旭日章について「いかにも“なんちゃって感”がある」などと記していた筆者だったが、今回の件には少々驚かされた。というのも、本物のパトカーにもステッカー式旭日章が採用されたからである。
実際、典拠元である「世界びっくりカーチェイス2」氏もこの点に言及しており、歩行者保護の観点から金属製を避けた可能性に触れている。確かに、フロント中央に突き出た金属製エンブレムが万一歩行者と接触した場合のリスクは無視できない。
また、今回のV37スカイラインには、メーカー標準で障害物検知用ソナーが搭載されており、警察仕様でもその機能は残されていると考えられる。もしセンサーと旭日章の設置位置が干渉する懸念があったとすれば、あえて「後付けパーツ」である金属製旭日章を避けたという解釈も成り立つ。
とはいえ、現時点でステッカー式採用の正式な理由は明らかになっておらず、推測の域を出ない。ただ一つ言えるのは、今回の事例が今後他の都道府県にも波及する可能性があるということだ。旭日章の“仕様”が、いよいよ過渡期に入ったのかもしれない。
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