「フリーライセンス無線」カテゴリーアーカイブ

フリーライセンス局が使う秘話コード『27144』の由来とは?

趣味のフリーライセンス局で広く普及しているコード『27144』

この数字は何に由来しているかご存知でしょうか。

それはフリーライセンス無線の元祖とも言えるCB無線の8chの周波数、27.144MHzです。

CB無線は資格免許不要でHFの電波伝搬特性が気軽に楽しめる!違法CBと合法CBの違いとは

 

また、80年代、90年代に流行したパーソナル無線は周波数が任意で選べない代わりに、好きな『群番号』を仲間と事前に取り決め、同じ番号を共有することで互いに交信できました。

この際に入力した群番号が、やはり『27144』でした。

すなわち『27144』はフリーライセンス局にとっては伝統的で親しみのあるナンバー。

この『27144』をデジ簡の秘話コードとして使う呼びかけを行っているのが、ライセンスフリーラジオのミーティングイベントを主宰するFLRM

ただし、FLRMでは交信内容を秘匿する目的ではなく、あくまで業務局への配慮と趣味のフリーライセンス局の合言葉としての使用を推奨。

したがって、27144の使用はアマチュア無線のレピーターのローカルルールのように誰かに強制されるものでもなく、また法で決められたものでもありません。

趣味のフリーライセンス局では秘話コードを普段使っていない局も多くいます。

27144はあくまで趣味のフリーライセンス局が気軽に使用できるものとして広く普及、推奨されています。

デジ簡の無線機やCB無線機といったフリーライセンス無線機の写真。27144、実はCB無線に大いに関係があるのだ!

フリーライセンス局同士で秘話交信を行う場合、15chで呼出し時に秘話の使用も同時に宣言するのがスマート。

デジタル簡易無線でCQを出す方法を解説!

単に『秘話ありで交信お願いします』と言うよりも、やはり『秘話コード”27144″で交信お願いいたします』など、コードナンバーそのものを明示したほうが良いでしょう。

秘話コードは互いに設定されていないと交信不可。気をつけたいところです。

デジ簡では秘話コードを使えば、ホビー局も業務局を気にせずに交信ができるが・・・?

 

中古デジ簡機を第三者が登録申請→東海総合通信局「へ?すでにこの無線機は登録済みやが…」→元登録者へ連絡→消防団から盗まれた無線機と発覚

愛知県内の消防団詰所から防災行政無線機やデジ簡機が盗まれる事件がありました。発覚は第三者の「登録申請」と、総合通信局からの元登録者への確認電話でした。

盗まれたのはデジタル簡易無線機および防災行政無線機

  1. デジタル簡易無線機 携帯局2台、充電器2台
  2. 防災行政無線機 携帯局1台、充電器1台

参照元 愛知県豊田市役所公式サイト 『報道発表資料 消防団の詰所格納庫における無線機の盗難について』

https://www.city.toyota.aichi.jp/pressrelease/1061614/1061700.html

上記報道発表によれば、令和6年10月20日(日曜日)、豊田市消防団第2方面隊第3分団(以下、同団)の団員が、上記の無線機3台及び充電器3台が無くなっていることを発見。10月22日(火曜日)、市が同団分団長から無線機と充電器を紛失した旨の連絡を受けとのことです。

参考画像 盗まれたとみられる無線機『ICOM IC-DPR6』の同型機(中央)

他に紛失したものが無いことや、侵入の形跡がなく室内が荒らされていないことなどから、他の団員が利用している可能性があったため、同団の団員を中心に捜索を継続。

盗難発覚はデジ簡機の登録申請

11月12日(火曜日)午前9時44分、無線機の登録を所管する総務省東海総合通信局から、豊田市の名義登録となっているデジタル簡易無線機1台について、別の第三者から名義登録の申請があった旨の連絡が市に入り、盗難の疑いが高いことが判明。

その他2台の無線機については登録申請などの動きはないとのことですが、市は愛知県警豊田署に無線機3台の盗難被害届を提出済みです。

【デジ簡】包括申請で登録した局が手元に一台も無線機を残さないまま廃止届を出してしまうと、包括登録そのものが失効します

登録申請については当サイトでも解説していますが、当然ながら総通への重複登録は簡単に判明することが今回の事件でも明らかになりました。

デジ簡(登録局)の申請方法は書類申請と電子申請の2種類

CB無線は資格免許不要でHFの電波伝搬特性が気軽に楽しめる!違法CBと合法CBの違いとは

現在、日本国内で『CB無線』や『市民ラジオ』と呼ばれる無線。

これらは従事者免許(資格)や無線局免許が不要で個人の趣味やレジャー、さらに企業の業務連絡に使用でき、26-27MHzの周波数を使い、空中線電力が0.5W以下の『免許を要しない無線局』として定められたうちの『市民ラジオの無線局』を指します。

総務省公式サイト『免許を要しない無線局の分類と主な用途等』(PDFファイル)https://www.soumu.go.jp/main_content/000458674.pdf

上記の総務省公式サイトのページには免許を要しない無線局の概要一覧があり、“電波法4条のただし書”として『免許を要しない無線局』のうち、電波法4条第2号に該当する無線局として『市民ラジオの無線局』が明記されています。

また、同省公式サイトによる、さらに分かりやすい説明として『電波法令に定める市民ラジオの無線局の要件』が、以下のページに掲載されています。

電波法令に定める市民ラジオの無線局の要件は、電波法第4条第2号及び電波法施行規則第6条第3項において、

  • A3E 26.968MHz、26.976MHz、27.04MHz、27.08MHz、27.088MHz、27.112MHz、27.12MHz又は27.144MHz の周波数を使用する
  • 空中線電力が0.5W以下である
  • 適合表示無線設備である

ことが定められています。

出典 総務省公式サイト『不法無線局の特徴と被害例』 https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/summary/chara/

したがって、現在我が国で『CB無線』や『市民ラジオ』と呼ばれる無線は上記に該当する『免許を要しない無線局』のうち『市民ラジオの無線局』に該当します。

もともと、CB無線はアメリカが発祥で『Citizens Radio Service』、すなわち市民ラジオサービスと呼ばれるものです。日本国内ではそれまで『市民ラジオの制度』と正式に呼ばれたこの制度は、資格が要しない一方で開局申請をして局免の交付を受ける必要がありました。

しかし、1983年の法改正により、上記の『免許を要しない無線局(または免許不要局)』へ種別が変更。

現在では『免許を要しない無線局(無線機)』のうち『市民ラジオの無線局』を利用するにあたって、総合通信局への開局申請は不要となり、定められた電力と周波数を使うCB無線機である限り、何らの手続きも要りません。

ここまでのおさらいとして

  1. CB無線はアメリカが発祥
  2. かつては日本国内でも『市民ラジオの制度』として免許された(資格は不要だが開局申請が必要だった)
  3. 1983年『免許を要しない無線局』に改正され、そのうちの『市民ラジオの無線局』となり、開局申請(=局免交付)が不要となり現在に至る

このようにご理解していただければ幸いです。

以下、当サイトでは『CB無線』ならびに『市民ラジオ』という名称で説明させていただきますが、両者は同じものとご理解の上でお読みいただければ幸いでございます。

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かつて業務連絡でもCB無線は一般的だった

当時、SONYが販売するCB無線の広告ではCB無線ユーザーを『CBer』と呼称していました。

総務省の昭和56年版『通信白書』に拠れば、当時の”CBer”は実に29万5269局。主に趣味・レジャーの利用者が27%、登山・ハイキングでの利用が23%等、個人的な連絡用が主なもの。

しかし、昨年度末より約1万6000局減少し、昭和52年度以降、毎年減少に転じたそうです。その後、昭和57年に業務と遊びのどちらにも使える『パーソナル無線』が登場。

【制度終了】パーソナル無線の解説

CB無線の利用者はパーソナル無線へと次第に代替していき、現在ではパーソナル無線も廃止され『遊びにも業務にも使える無線』の代替は『特定小電力無線』や『デジタル簡易無線(登録局)』が、その役目を担っています。

デジタル簡易無線とは?『免許局』と『登録局』の違いなどを解説

 

なお、先述したSONYのCB機の広告では工事現場、工場、農場、駐車場、交通整理、森林パトロールなどの業務で自社製のCB無線機が”大活躍”していると謳っていました。

アマチュア無線は法的に営利業務で使えず、また特定小電力無線などがまだ無い当時、農場など広大な敷地で業務を行う事業者の業務連絡用無線としてニーズを満たしたのが、やはりCB無線でした。

CB無線も日々の業務における連絡手段として、当時は十分に活用されていたと言えるでしょう。

CB無線の遊び方

さて、前述の通り最大送信電力が0.5w(500mw)と極小かつ、外部アンテナの使用も法的に許されていないこのCB無線。どこまで電波が飛ぶのか、不安な皆様の顔が浮かびます。

しかし、地表と電離層を繰り返し反射しながら遠くへ伝搬するHF帯の周波数特性、さらにA3E(AM変調)を利用しているので心配はご無用。

HF帯の26-27MHzでAM変調を使うCB無線の特徴とは

CB無線の電波形式は一般的な業務無線、またはアマチュア無線で一般的なFM変調と違い、航空無線と同じく、搬送波の振幅の強弱によるAM(Amplitude Modulation) 変調のみ。

また、許可された帯域はHF帯の26-27MHzのうち、26.968MHz、26.976MHz、27.040MHz、27.080MHz、27.088MHz、27.112MHz、27.120MHz、27.144MHz以上の8つの周波数(チャンネル)のみです。

なお、念のために書きますと、CB無線機で使えるのはこれら26から27MHzのみで、アマチュア無線で使えるのは28MHz帯ですので両者で交信はできません。

HFの伝搬特性を利用して遠距離交信を楽しめるのが根強い人気の理由

最大0.5Wの微弱な送信出力しか認められないこのCB無線でも、開けた海上であれば、50キロ~100キロほどの遠距離間での交信はそう難しくありませんが、市街地での交信距離は短いものです。

しかし、5月から9月の春から秋にかけてのシーズンに活発となる電離層状態の異常・Eスポや、電波を大気中の疑似的な導管に通すラジオダクトを利用すれば、話は別。

通常、アマチュア無線でも利用されているHF帯でのAMやSSBモードは電離層伝搬や上述のEスポなどさまざまな伝播条件により、通常よりはるかに長距離での通信を可能にします。

短波(HF:High Frequency)と電離層を利用すれば外国との交信も可能!

ただし、刻一刻とコンディションが変化するため、その通信状況は断続的。

さらにFMに比べて聞き取りにくいAMが標準のCB無線では、慣れないと相手のコールサインを聴きとるのも一苦労です。

刻一刻と変わるコンディション下において、短時間で相手の信号を聞き取る力をつける技術の向上には多くの運用回数が必要です。

とくに夏場に発生するEスポを狙えば、とたんに交信距離は1000キロ越えもざらで、北海道と沖縄ほどの長距離でも交信できてしまうのです。

一般的な業務無線の交信では、このような異常伝搬が発生すると”正常”な通信ができないため非常に厄介。

例えば80年代、VHF帯アナログ警察無線では、ある警察本部の無線交信に同じ周波数を使用する別の県警の無線交信が混信し、正常な交信が妨げられました。

しかし、このような異常伝搬はHF帯アマチュア無線や、フリーライセンスホビーであるCB無線では逆で、むしろ歓迎されるもの。

異常伝搬による遠距離交信こそが1番面白く、実は免許資格不要のCB無線の魅力はそこにあると言っても過言ではないのです。

フリーライセンス無線各種。手前はパナソニックが製造販売していた8chCB機RJ-410

したがって、CB無線の根強い人気の理由は、出力が小さくて外部アンテナ不要の(※使うこと自体が法的に認められていません)ハンディ無線機ながらも、異常伝搬次第で超遠距離交信(DX)が楽しめるからなのです。

CB無線で遠距離交信する秘訣は?

さて、季節やコンディションによって、送信出力の微小なCB無線でも長距離交信ができるのが分かりましたが、それ以外にも成功させるために何か秘訣があるのでしょうか。

もちろんあります。海岸の近くや、河川、水田など水辺の近くでの交信です。

とはいえ、相手がいなければ交信は成立しません。でも大丈夫。CB無線の移動運用イベントが行われており、事前に告知がされます。コンディションの良いシーズンでは8つしかないチャンネルが全て埋まってしまうほどです。

ただ、比較的のんびり、ゆったりとラグチューをするアマチュア無線とはやや違い、気象条件によって繋がるチャンスが少ないので、手短にコールサイン、運用場所、メリット交換のみの交信が多くなります。

CB無線のコールサイン

アマチュア無線局を例とした場合、個別の無線局を識別するために割り当てられたコールサイン(呼出符号)は総合通信局へ開局申請時に交付された無線局免許状に記されていますから、コールサインとは本来、局免に付随するものと言えます。

では、開局申請の必要ないフリーライセンスラジオのCB無線で各局が名乗っているコールサインはいったい誰が交付してくれたものでしょうか?

実は交付されたものではなく、各自が自由に好きなコールサインを名乗っています。

主に使われているのは、やはりかつての『市民ラジオの制度』時代に交付された『地域名+アルファベット二文字+数字2または3ケタ』に因んだものです。

CB無線はアメリカから

もともと、CB無線はアメリカで始まった無線で、長距離のトラッカーが連絡を取ったり、非常時の通信手段としており、アメリカでは今も愛好家が多くいます。

犯罪組織に覆面パトカーの警察無線の指令本部に不正アクセスされていた『ダイ・ハード4.0』では、ハイテクを皮肉ってか「俺はセカイノオワリが来ても、CB無線で最後まで誰かと話していたい」というようなセリフが出てきたほどです(ただし、演出で周波数は66.6MHzだった)。

また、CB無線で女性を偽り、トラック運転手に仕返しされる恐怖を描いた映画が『ロードキラー』です。

なんだろう・・CB無線で女性のフリしておじさんを騙すのやめてもらっていいですか?驚愕スリラー映画『ロードキラー』解説

 

現在もCB無線機は製造販売されているの?

かつて日本国内のメーカーでは日本電機(NEC)、ナショナル、SONY、ケンウッドなど名だたる大手家電メーカーがCB機を製造販売していましたが、SONYでは2006年に「ICB-87R」の製造を終了し、各社撤退。

そのため、長らく国内合法仕様のCB無線機を製造販売する国内メーカーはなく、それらのメーカーの当時のビンテージな中古機をオークションなどで買うのが一般的でした。

やはりコンディションの良い個体では数万円の値がつくこともあり、人気の高さが伺えます。

待望の新製品が続々登場!サイエンテックスのCB無線機

画像の出典 株式会社サイエンテックス公式サイト

ところが近年、なんと新製品のCB無線機が続々登場。

静岡の計測機器メーカー・株式会社サイエンテックスは2016年に受注生産の卓上型CB無線機『SR-01』、さらにハンディ型の『JCBT-17A』を発売。

ただし、これらは受注生産品で、現在は販売されていません。

しかし、同社のエンジニアが独立して設立されたメーカー・ポラリスプレシジョンからは「Blackbird」、また兵庫の西無線研究所からはハンディ型「NTS111」が発売されています。NTS111はハンディサイズのCB機としては超小型。

合法CB無線と違法CB無線の違いとは?

こんなに面白いCB無線なのですが、日本国内では違法CB無線の問題があります。

国内メーカーから過去から現在において、日本国内の電波法に準拠する仕様で販売された国内仕様CB無線機の使用はまったくの”合法CB無線”であり、何ら問題がありません。

しかし、社会問題とも言える大きなトラブルをもCB無線は引き起こしたのです。

ただし、それは合法CB無線機自体がもたらしたのではなく、高出力に不正改造されたCB無線機や国外向けのCB無線機、そして一部の利用者が原因でした。

CB無線が社会問題になった理由

先述したとおり、CB無線の制度はアメリカが発祥。当時、日本のメーカーはアメリカ向けに国外仕様CB無線機を製造販売していました。

その国外向けのCB機が下記事情により、日本国内にアメリカ仕様の高出力、多チャンネル仕様のままで逆輸入されたことから、不法無線局、つまりこれが”違法CB無線”として大きな問題となったのです。

当初、CB無線機は、アメリカ輸出用に製造されていました。しかし、昭和52年にアメリカの規格が変更されたため、大量の在庫を抱えた一部のメーカーが逆輸入し、国内市場に流通させました。当時の日本では、合法CB無線機の使用は認められていましたが、ハンディタイプであり、車載においての利便性が悪かったこと等から、合法CB無線機に比べ、大きな電力、多チャンネルの不法CB無線機が大量に販売されることとなり、現在に至っています。

出典 総務省東北総合通信局

これが日本国内において、いわゆる『合法CB無線』と『違法CB無線』という”二つのCB無線”が存在する理由です。

現在もアメリカ向けのCB機を日本国内で使うと違法になりますので注意が必要です。ただし、日本国内の法令に合致するように改修し、技適証明を取得すれば、その限りではありません。

現在、違法CB無線と合法CB無線の違いは以下のようなものです。

出典 総務省東北総合通信局
合法局 不法局
周波数 27MHz帯8波(8ch)の発射が可能 27MHz帯で9波(9ch)以上の発射が可能
送信出力 0.5W(500mW)以下 無線機本体で5W程度
電力増幅器を使用したものは、1000W以上
その他 ハンディータイプのみ。 技術基準適合証明マーク(認証マーク)がある。 車載又は固定型。 技術基準適合証明マーク(認証マーク)がない。 変調を聞くためのイヤホンを付けていることがある。

出典 総務省東北総合通信局

また、無線機自体の合法、非合法含めてCB無線では以下のような諸々の問題が発生しました。

チャンネルの占有行為

まず、合法的なCB無線で発生したのが一部の利用者側のマナー違反たる”チャンネルの占有行為”です。CB無線は昭和50年代に学生を中心に爆発的な人気となりましたが、人気が過熱して利用者が急増。少ない8つのチャンネル数を巡って、利用者の間で奪い合いと占有行為がたびたび発生したのです。

地域によっては、マナーの悪いCB無線クラブが特定のチャンネルを占有していました。

一見、誰も使っていないチャンネルでも常に留守番役が聴取しており、自分らのグループに属さない人が使おうものなら、脅すなどして排除し、実質的にチャンネルを占有したのです。

さらにはそのチャンネル占有に利権を見出したいわゆる反社会勢力が登場。そのような団体を後ろ盾にしたクラブが『会費』名目で上納金を毎月納め、クラブ員メンバーは自家用車や営業車にそれとわかるステッカーを貼って誇示するなどエスカレート。反社会勢力は勢いを増しました。

このようなCB無線でのチャンネル争いは、のちのパーソナル無線でも受け継がれましたが、これらの側面から、CB無線にはある種特有の用語や挨拶のしきたりがあり、とくにトラッカーが好んでこれらを使用していました。一部はアマチュア無線用語とかぶっていたり、正規のハムが使用していたり、派生している用語もあります。食事を「ポンポコチャージ」、乗用車を「レジャッコ」、入浴を「ニューヨーク」など、用語自体は面白くても、その歴史には暗い過去があり、これらを知らずにアマチュア無線などで使用すると1部のアマチュア無線家は眉を顰める原因となっています。

※参考文献  梅原敦著『早わかりパーソナル無線』

違法CB無線による大出力送信で電波障害や火災の誘発が発生

そして、この窮屈なチャンネル数の少なさや、占有行為に嫌気がさした一部の人たちは、より多くのチャンネル数を持つアメリカ仕様のCB無線機や改造機を電波法に反して使うようになったことが『新たな問題』を引き起こしました。

それは不法なCB無線機から発せられる高出力の電波、電波法で認められていないアンテナによる深刻な電波障害です。

とくに主要道路の付近では、民家のテレビや電源も入れていないラジカセのスピーカーから『サブちゃん探してますよ!』とか『ニューヨーク行ってくらあ』など、トラック野郎の雄叫びが聞こえたりなどして、無念にも南方で戦没した日本軍兵士の幽霊ではないかと騒ぎになり住民を恐怖に陥れました。高出力の無線電波が周囲のスピーカーに影響して音声を生じさせる例としては、アニメ映画『パパママバイバイ』でも米軍機墜落の際に発したメーデーの無線が、墜落現場付近の小学校の運動会のスピーカーに混信する様子が描かれています。またすごいの出してきたなあ……。

さらに最も危険なのは、高出力の電波がストーブの電子回路へ影響を与え、火災の原因となることです。

不法CB無線機から発射される電波は、日本国内で使用するテレビやラジオの受信や船舶無線に妨害を与えたり、高出力の電波により、ストーブの電子回路を誤動作させ、火災を引き起こした事例も発生しています。

出典 総務省東北総合通信局

なお、違法CB無線機も合法CB無線機も使うチャンネルは非常に近く、また違法CB無線機は大出力であることから、合法CB無線ユーザーの交信にかぶってる来ることが間々あり、合法ユーザーからは嫌われています。

CB無線のまとめ

確実にストレスなく繋がるVHF帯域のアマチュア無線、それに業務利用ならデジ簡がベストな選択ですが、HF無線による遠距離交信の面白さを免許・資格不要で気軽に体験できるライセンスフリー無線は間違いなく、このCB無線だけと言えます。

アマチュア無線のHF運用はアンテナが重要ですが、むしろ外部アンテナの利用が法的に禁止されているCB無線だからこそ、ドライブや旅行先などで気兼ねなく手軽にHFが楽しめると言えるでしょう。

CB無線はダクト現象といった電波の異常伝搬やEスポなどの特定の気象現象による遠距離交信が醍醐味と言えますが、そのようなコンディションでなくとも、標高の高い山で運用を行えば400キロは飛びます。

現在では、昭和50年代の最盛期と比べるまでもありませんが、気軽に楽しめるフリーライセンス無線として、著名なメンターに触発された若い世代の方たちが興味を持って始める例が増えており、静かなブームとなっています。

デジタル簡易無線とは?『免許局』と『登録局』の違いなどを解説

デジタル簡易無線の利用方法は利用者個々のニーズに応じて異なり、区分が二つありますが、一般的には営利の発生する仕事、遊びの両方で使用できます。

昨今では、アマチュア無線もボランティアや狩猟などの地域貢献活動での使用が認可されましたが、営利を目的とした業務での利用はできないため、それをカバーできるデジタル簡易無線制度は幅広い活動に役立つ、とても便利な無線制度といえます。

デジタル簡易無線とは

デジタル簡易無線は略して『デジ簡』や『DCR(Digital Convenience Radio)』などとも呼ばれますが、それまでのアナログFM方式とは異なり、デジタル変調方式の無線規格です。送信電力は最大5W、ユーザーコードや秘話コードの実装など、高機能でビジネスユースにも対応します。

2017年にアルインコから発売された人気の5W デジタル簡易無線(351MHz) モービル機『DR-DPM60』はそれまで高かったモービル機の敷居をググっと下げてくれた!画像引用元 アルインコ 公式サイト

使用する周波数は各区分で異なり150MHz、351MHz、467MHzの各帯域で、無線局によって陸上、海上、上空で使用できます。

変調方式には各社で一般的に広く採用されている『AMBE方式』と、普及はそれほど多くないと見られるアルインコ社独自の『RALCWI方式』の2種類があります。どちらの方式も、同一方式の無線機としか通話ができません。レジャー目的で使用する場合『RALCWI方式』ではなく『AMBE方式』を選んだ方が無難と言える理由は以下の記事で解説しています。

デジタル簡易無線(登録局)のAMBE方式とRALCWI方式の注意点について

 

『免許局』と『登録局』の違いとは

2008年度のデジタル簡易無線制度発足により、従来の『免許局』のほか『登録局』という新たな区分が設けられました。通常、免許局は企業などの業務用無線局として免許される一方、登録局では企業や公的機関の業務利用者のほか、レジャー目的の両者が使用しています。

大きな違いはキャリアセンス機能の有無や不特定の人との交信の可否

総務省北海道総合通信局によれば、免許局と登録局の大きな違いは『キャリアセンス機能』の有無です。

デジタル簡易無線は、平成20年8月に制度化され、従来の「免許制度」の他に「登録制度」が導入されたことにより利用しやすくなりました。 申請には「免許局」と「登録局」の2種類あり、使用する無線機によって分かれます。 「免許局」と「登録局」の大きな違いは「キャリアセンス(通信が行われている場合は送信ボタンを押しても電波が送信されない)機能」の有無です。

引用元 http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokkaido/E/cr/dwn10.htm

キャリアセンスとは混信を防止するために設けられているデジタル簡易無線機の機能です。

つまり、A局とB局が交信中、その付近にいるC局が同じチャンネルで電波を送信しようと送信ボタンを押してもキャリアセンスの働きにより、無線機が自動的にキャンセルしてしまいます。

したがって、AMやFMの無線交信で一般的な『交信中の割り込み(ブレイク)』ができません。

『了解』のあとに間を空けるブレーキングタイムの理由とは?ブレイク宣言の解説!

このため、災害時での有用性低下が懸念されています。

また、使う周波数やチャンネル数、不特定の者との通信の可否、レンタル使用とレジャー使用の可否による違いがあります。

引用元 北海道総合通信局公式サイト

では『登録局』は従来の『免許局』と、どのように違うのか、もう少し詳しく見てみましょう。

免許局とは?

デジタル簡易無線の『免許局』は「免許人所属の局」のみとの交信を免許された事業者向けの無線局

主に事業者向けに免許される無線局が『免許局』です。一般的な企業の業務無線と考えて差し支えありません。割り当て周波数帯はVHF帯の154MHzおよびUHF帯の467MHzの2つです。免許局の場合は「1」から始まる無線機固有の9桁の識別信号(番号)が付与されています。

周波数帳を読んだ方であれば、簡易無線の同じ周波数を別々のいろいろな会社が使っていることはご存知かと思います。簡易無線局は会社が違っても、同じ周波数を使っていれば、同じ周波数で交信もできます。これを防ぐためにトーンスケルチ機能があります。

免許で指定された「交信の相手方」以外と交信することは異免許人間通信の認可を受けていない限り、違法となりますので注意が必要です。

趣味やレジャーでの使用はできません。

登録局とは?

『登録局』は仕事と遊びの両方に使えて、免許局には許可されない『不特定の者との交信』もできる

一方、同じくデジタル簡易無線の『登録局』はアマチュア無線のような従事者免許、つまり資格と局免が不要になっていることから『ライセンスフリー無線』とも呼ばれます。

アイコム デジタル簡易無線(登録局)5Wタイプ IC-DPR6
評価の高いアイコムのデジタル簡易無線(登録局) IC-DPR6

登録局の場合は「2」から始まる無線機固有の9桁の識別信号(番号)が付与されています。登録局の割り当て周波数帯は351MHzで、警察の外勤員が本署との交信に使う署活系無線(361MHz/347MHzなど)と近似の帯域であり、同じくデジタルですので、似ていなくもありませんが、変調方式は異なります。

登録局は総務省への登録申請と年間400円/局(台)の電波利用料のみで、業務に加えて町内会のイベントや地域防犯活動のほか、不特定多数の人とのレジャー目的の交信にも使える便利な無線局です。例えば、平日は会社などの営利業務に使用して、休日は集まった趣味の仲間とドライブ、アウトドアやキャンプなどのレジャー、町内会などの地域活動などにもそのまま使えます。

これらを可能にして、レジャーユースでの利用者も増えている一つの理由が『不特定の者との交信が合法』という総務省の見解です。

登録局は、レンタルやレジャー使用、不特定の者との通信も合法とした

引用元 総務省  信越総合通信局  公式サイト
http://www.soumu.go.jp/soutsu/shinetsu/sbt/denpa/kani/digitalkani.html

不特定の無線局への呼び出しは一般に『CQ』と呼びますが、アマチュア無線のほか、業務無線でも規定されています。

アマチュア無線でのCQ呼び出しと応答の方法を解説!

デジタル簡易無線でCQを出す方法を解説!

当サイト各記事で『デジタル簡易無線』を取り上げる際は、特別な断り書きがない限り、『登録局』制度になります。ご了承ください。

資格不要かつ、業務およびレジャー使用で不特定の局とも交信が可能、最大5Wの無線といえば、かつて1982年に開始され、2015年に制度が終了した『パーソナル無線』がありますが、同様の利便性があるデジタル簡易無線の登録局制度は、次世代型パーソナル無線と言えるかも知れません。

デジタル簡易無線の詳しい申請方法は以下のページにてまとめています。

デジ簡(登録局)の申請方法は書類申請と電子申請の2種類

2023年、免許局・登録局ともにチャンネル数が大幅に増加

登録局のチャンネル数はそれまで長らく陸上用30ch、上空用5chの合計35波となっており、東京など都市圏ではチャンネル数不足が顕著に見られ、業務局と趣味的な局の混信が見られたようです。

しかし、2023年に登録局は97ch(地上専用52chおよび上空専用10chが追加)、免許局も95ch(地上専用10chと新たに中継20ch追加)に大幅に増波されました。

それまで都市圏ではビジネス利用者の合間を縫って、空きチャンネルを確保し、メインで平日の真昼間っから大胆にCQを出すのは、アマチュア無線のレピーターでCQを出すよりも覚悟が必要だった登録局のフリーライセンス的使用でしたが、この大幅なチャンネル数増加に歓迎の声は多いようです。

固有の識別信号を発するCSMを搭載

デジタル簡易無線機は無線機ごとに固有の識別信号(コード)をキャリアに載せて自動で送信する仕組みですが、これを可能にしているのが「Call Sign Memory(CSM)」、日本語の正式名称「呼出名称記憶装置」と呼ばれるものです。

通常、すべてのデジタル簡易無線機には個体ごとに、免許局用無線機であれば数字の「1」、登録局用無線機であれば「2」から始まる9桁の識別信号(番号)が割り当てられており、無線機本体に表示されています。

「免許局」と「登録局」、いずれも申請時に申請者の個人情報と識別信号(番号)を申請書に記載して総合通信局へ提出しており、同局でこれらの情報が紐つけられて登録されている限り、CSMによって無線機から発せられる識別信号(番号)によって、誰が申請した無線機から送信された電波であるか、同局の電波監視で補足、判別できる仕組みです。

同様の機能はかつてのパーソナル無線や初期の特定小電力無線でも採用されていました。

【制度終了】パーソナル無線の解説

不法な使用を防ぐのが狙いですが、アマチュア無線と同様、法に反する運用をしてしまうと監視対象となり、最終的には警告や摘発などがなされます。しかも、技術的にアマチュア無線よりも個別の特定は容易というわけです。

不法無線局を取り締まる総務省総合通信局(総通)とは?

 

技適許可されたアンテナのみ使用可能

同じライセンスフリー無線のCB無線や特定小電力無線ではアンテナの交換が認められませんが、デジタル簡易無線(登録局)ではアンテナの交換が可能です。ただし、使用できるアンテナはデジタル簡易無線用として技適許可された製品のみです。自作のアンテナやアマチュア無線用アンテナ、その他の業務無線用アンテナなどの流用ができません。技術研究目的でも、アマチュア無線用やその他無線用のアンテナでデジタル簡易無線機から送信をしてSWR測定実験などしないように注意が必要です。

デジタル簡易無線(登録局)用のアンテナには指向性のある八木アンテナまでありますので、数百キロ程度まで容易に通信距離を伸ばすことが可能です。現在販売されている各種アンテナは以下のページにて解説しています。

デジ簡の交信距離はモービルアンテナで大幅アップ!

デジ簡の秘話コードとユーザーコードとは?

業務利用とレジャー利用の両ユーザーが混在するデジ簡の登録局では、混信によるトラブルが問題となる場合があります。

混信を防ぐには充分なチャンネルチェック後に使用することが前提ですが、32,767通りもの秘話コードを使うことで、混信を軽減できます。お互いの無線機であらかじめ設定した同一の秘話コードが一致しなければ無音となり、音声として復調されないため、交信内容を秘匿できます。ただし、混信の軽減には有効といえますが、当然、電波を発射している最中はチャンネルの占有自体はされていますので、近い局の場合は、前述のキャリアセンスが作動する場合があります。

また、以前であれば、秘話コードは交信内容の秘匿化に心強い機能でしたが、2024年現在では一部の広帯域受信機の拡張機能によって、一瞬で解読されて傍受されてしまうので注意が必要です。

秘話コードについて、秘話解読されてしまうケースや、秘話コードが使用できない特定のチャンネル、解読されないための特定の機種選び、敢えて特定の秘話コードをフリーライセンス局で共有する試みなど、以下のページで詳しく解説しています。

デジ簡では秘話コードを使えば、ホビー局も業務局を気にせずに交信ができるが・・・?

また、ユーザーコードとは数字三桁で設定する複数の特定の相手のみと限定して通話をする機能で、グループ別で交信する場合に便利です。

デジ簡のコールサイン

申請手数料と電波利用料がかかる点はデジタル簡易無線もアマチュア無線と同様ですが、デジタル簡易無線の場合、総合通信局からコールサインが付与されません。上述した通り、デジタル簡易無線はそれぞれの無線機に設定された個別の識別信号を電波(キャリア)に載せて自動的に送信しているためです。

そのため、現状ではデジタル簡易無線をレジャー目的で使用する各ユーザーは、各自で決めた好きなコールサインを名乗っています。コールサインの決め方について、とくに総務省から法的な指針や見解は示されていませんが、一般常識として公的機関や企業と紛らわしいコールサインはトラブル防止のため、NGです。

現在、フリーライセンス局で主流のコールサインでは『地名、アルファベット、数字』の3つを組み合わせたものが主流ですが、当時の電波監理局(現在の総合通信局)が当時は免許が必要だったCB無線局にかつて発給していたコールサインの形式にちなんでいます。

CB無線は資格免許不要でHFの電波伝搬特性が気軽に楽しめる!違法CBと合法CBの違いとは

同じくフリーライセンス無線であるCB無線とコールサインを共用している方も多いようです。

アマチュア無線とデジタル簡易無線の音質比較

144MHzおよび433MHz帯のFM変調のアマチュア無線とデジ簡を音声で比較した場合の品質はどうでしょうか。

通常時の音質

ラジオ放送とまではいきませんが、FM変調のアマチュア無線は比較的クリアな音質です。一方、デジ簡も比較的クリアではありますが、人間の声が本来よりも甲高く変調されてしまい、多少聞きずらく感じます。その理由はひとえに、デジタル変調方式にあります。

遠距離交信における通信断続時の音質

デジ簡も144MHzおよび433MHz帯のFM変調のアマチュア無線も、遠距離交信になるほど変調の断続が顕著です。デジ簡で通信断続時特有の音は『ケロケロ』で、俗にカエル化現象と呼ばれています。それに対して、144MHzおよび433MHz帯のFM変調のアマチュア無線の場合は『ザザッ』や『バサバサ』という音になります。断続した場合の了解度は明らかにアマチュア無線のFMが勝ります。

最新のデジタル簡易無線登録局ではケロケロ対策がされ、通信品質が改善されていますが、144MHzおよび433MHz帯のFM変調のアマチュア無線のほうが全体的に、より品質が良いといえます。

デジタル簡易無線のまとめ

このように、デジタル簡易無線のうち、登録局制度は遊びと仕事どちらも1台でこなせて自由度が高いのが魅力です。また、アマチュア無線同様、地震や災害発生時の通信手段としても役立てられます。全国の消防団でも導入令が増えています。現在の数ある無線制度の中でもっとも便利で親しみやすい無線と言えます。

最後に簡単におさらいしますと以下のようになります。

  1. デジタル簡易無線は免許局と登録局の2種
  2. 免許局は業務利用のみ許可される
  3. 登録局は業務とレジャーどちらも利用可能
  4. 登録局は不特定の者との交信が可能
  5. 登録局はフリーライセンス局とも呼ばれる
  6. 登録局のコールサインは各利用者の自由
  7. 登録局を導入する消防団が相次いでいる
  8. 電波利用料は1台ごとに年間400円
  9. 15chは呼び出し専用でアマチュア無線のメインchと同じ使い方をする

以上です。

デジ簡では秘話コードを使えば、ホビー局も業務局を気にせずに交信ができるが・・・?

デジタル簡易無線の基本的な説明でご説明のとおり、デジ簡の登録局は業務のみならず、レジャーやアウトドア使用もできる便利な無線。

つまり、登録局には業務に使用する局とそれ以外のユーザーが混在します。

両者の混在は、ある特定のシーンで混信を招きやすい場合も。

それはなぜ?そのような場合はどうしたら良いのでしょうか?

フリーライセンス局は業務局にチャンネルを譲る義務はある?

アマチュア無線の例を見てみましょう。

HF帯の一部ではアマチュア局と業務局の両者に使用が免許される周波数帯があります。

その際、両者が同じ周波数で混信してしまった場合、アマチュア局がすみやかに業務局に周波数を譲らなければなりません。

これはアマチュア局が二次業務局として規定されているためです。

すなわち、一般的な営利企業の無線局や官庁の無線といった業務局は優先されるべき一次業務局と規定されているわけです。

プロの無線従事者の資格とは?アマチュア業務とプロの業務はどう違う?

一方、デジ簡の登録局制度ではどうでしょうか?

登録局の開局申請時、目的を記載する必要がありますが、業務で使う局か非業務局かというような明確な区別の申告の必要がありません。

したがって、上述のアマチュア局の例のように、一次業務、二次業務といった明確な取り決めは見られません。

ただ、常識的に考えれば、先にチャンネルを使用している局が優先権を主張しても、それは当然の権利と言えるでしょう。

しかし、時として標高の高低差は悪意なきチャンネル占有を引き起こす場合もあるのが実情です。

どちらがより混信妨害を与える可能性があるかと言えば、それは趣味のフリーライセンス局と言えます。

何故なら、高い山の上で高利得のアンテナを用いて同じフリーライセンス局と交信をすることが多いためです。

この悪意なき行為が思いもよらぬ遠方の業務局へ、知らずのうちに混信妨害を与えている可能性は否めません。

業務局はその業務中、趣味の局と交信する必要がなく、ただ混信する無関係の第三者により、業務連絡が中断してしまいます。

しかも、混信している旨を伝えても、高い山頂の相手には電波が届かない可能性も。

もともとフリーライセンス局は平日の昼間にCQを出すことは憚られ、自粛するという暗黙の了解がありました。

もちろん、そのような取り決めもマナー啓発もありません。

いずれにせよ、業務局と趣味のフリーライセンス局はお互いに混信しないよう配慮するのがベスト。

デジ簡の登録局は2023年にチャンネル数が一挙に増波されており、お金に余裕があれば、ぜひとも増波された新ch対応機を購入し、空きチャンネルを有効に使いたいところです。

混信防止に便利な機能

そして、混信防止に役立つのが、デジ簡機に備わっている優れた機能の一つ『秘話コード』や『ユーザーコード(UC)』です。

この記事では主に秘話コードについて解説します。

秘話コードとは?

秘話コードとは設定した5ケタの数字によって、搬送波に最大で32,767通りの暗号キーをかけてしまうデジ簡の標準機能です。

3ケタのユーザーコードよりも高い秘匿性があります。

同じ秘話コードを設定していない無線機が、秘話がかけられた交信(搬送波)を受信すると、受信ランプは点灯しても無線機は復調せず、無音のままです。

近年、全国の消防団ではデジタル簡易無線(登録局)の配備が増加中。

デジ簡の基本的な説明で解説の通り、札幌市消防団の例では各分団でデジタル簡易無線の登録局が数百台以上配備されていますが、同消防団では第三者の傍受を懸念。

運用では秘話コードを設定しています。

https://www.city.sapporo.jp/shobo/saiyo/documents/musen.pdf

また消防団のみならず、常備消防の本署と支所間で秘話コードをかけて登録局で患者情報を送っている例もあります。

とくに秘匿性の高い業務などでは積極的に秘話を使うことが推奨されており、また趣味のホビー局も積極的に使ったほうが良い場合もあります。

追記 ※アルインコの『DJ-X100(受信改造済み)』によって瞬時に解読されてしまうため、業務局については『秘話コードは以前より秘匿性はない』と思った方が賢明です。ただし、アルインコは自社方式の強化秘話コードを解読の対象外としています。

マスコミ無線の秘話コード解読の例を以下の記事にて解説しています。

デジタル・報道連絡波(放送連絡波)の受信方法

秘話コード設定は呼び出し専用チャンネルの15chでは反映されない

なお、デジタル簡易無線(登録局)の秘話機能およびユーザーコードは呼び出し専用チャンネルの15chでは反映されません。

ヤエスさんの公式サイトにも説明が掲載されていますので、以下に引用いたします。

15チャンネルではユーザーコードや秘話コードの設定ができません。故障でしょうか?

デジタル簡易無線登録局の15チャンネルは呼び出し用チャンネルとして定められており、ユーザーコードや秘話コードの使用ができません。お互いの使用チャンネルがわからないときなどの呼び出し通信用として使用し、継続して通信する場合は、速やかに他のチャンネルに移って通信してください。

引用元 https://www.yaesu.com/jp/dt_index/faq01.html#07

デジタル簡易無線でCQを出す方法を解説!

 

秘話コードの使用を明確に相手に宣言しておかないと、相手が同じコードで秘話設定していないと交信は不可。

また、秘話コードの入力間違い、逆に秘話なしで交信をするのが日常的な局は秘話の切り忘れにもご注意を。

なお、秘話コードを設定すると、コードを設定していない第三者の無線機では音声が復調されずに無音となり、無関係の業務局に趣味のフリーライセンス局の交信を聞かせてしまうことは防げますが、同じチャンネルを使っている限り、電波の占有自体はされます。

近距離においては一方が電波を発射している間は、干渉回避のためのキャリアセンスが働き、電波を発射できません。

秘話コードのまとめ

このように混信妨害を軽減させたい場合や交信内容の秘匿性を高めたい場合、お互いの無線機で秘話コードを設定すると良いでしょう。

ただし、前述した通り、秘話コードの解析に対応した受信機も普及しているため、脆弱性に注意が必要です。

なお現在、デジタル簡易無線(登録局)の変調方式は『AMBE』方式が主流ですが、アルインコ社では『AMBE』方式のほか、同社独自のデジタル変調技術『RALCWI方式』方式のデジ簡機も販売しています。

『RALCWI方式』無線機は一般にあまり普及しておらず、企業の業務使用であれば、『RALCWI方式』無線機を敢えて使うことで、他社との混信を防げる可能性があります。※ただし、今後『RALCWI方式』の普及が進めばこの限りではありません。

デジタル簡易無線(登録局)のAMBE方式とRALCWI方式の注意点について

なお、フリーライセンス局の間では以下の秘話コードが使われる場合があります。

フリーライセンス局が使う秘話コード『27144』の由来とは?

コレを買えば間違いなし!デジタル簡易無線機のハンディ機のメリットとは

デジ簡ではハンディ機と車載のモービル機の2種が主流。

デジ簡ではモービル機よりも手軽に買えて、気軽に持ち出せるハンディ機のほうが人気。

ハンディ機とモービル機の具体的な違いと長所や短所、それにオススメの機種を解説します。

デジタル簡易無線とは?『免許局』と『登録局』の違いなどを解説

デジタル簡易無線機のハンディ機のメリットとは

ハンディ機と車載のモービル機との大きな違いは、バッテリーとアンテナの付属の有無です。

バッテリー内蔵で手軽な運用ができる

モービル機は基本的に本体にバッテリーを搭載しておらず、車のバッテリーを電源とするか、自宅や会社などでの固定運用ならば安定化電源が必要となります。一方、ハンディ型のデジタル簡易無線機は本体にバッテリーパックを備えており、外部電源を必要としない身軽な運用ができるのがメリットです。

デジ簡に許された最大送信出力5Wがハンディ機でも出せる!

アマチュア無線と違い、デジ簡では法的に許される送信出力はハンディ機もモービル機も同じく最大5wまで。5wならモービル機ではなくてもハンディ機でも出せてしまいます。すなわち、最大送信電力に関して、モービル機の優位性はありません。

アンテナがはじめから付属する。交換も簡単

ハンディ機の付属アンテナは「短縮へリカル型」と呼ばれる全長20センチほどのタイプですが、別売のアンテナを一緒に購入せずとも付属アンテナで問題なく交信が行えます。これもハンディ機の大きなメリットです。ただ、付属アンテナの送受信性能に関して言えば、社外メーカー製のアンテナに交換したほうが良いでしょう。

デジ簡の交信距離はモービルアンテナで大幅アップ!

お安い

2019年現在、デジタル簡易無線機の市販価格は比較的値下がりを続け、ひところよりも手ごろになりました。なかでもハンディ機はモービル機よりも元から安いのが魅力です。

デジタル簡易無線機のハンディ機のデメリットとは

一方、ハンディ機にはデメリットと呼ぶべき面もあります。

ハンドマイクが別売

IC-DPR3

基本的に本体を手に持って交信するスタイルのハンディ機にはハンドマイクは付属せず、必要に応じて別売のハンドマイクを購入します。ハンドマイクを接続しなくても交信はできますが、無線機本体をメリットの良好な向きや位置に向けて手で保持しながら、ハンドマイクで通話したほうがダンゼン楽です。ハンドマイクはあって嬉しいアイテムなのでおすすめです。

なお、ハンディ機の場合、車両の運転時は必ずマイクを使わなければ、違反となりますのでご注意を。

バッテリーの持続性

メリット編にてハンディ機もモービル機と同じように最大で5w出せると書きましたが、ハンディ機は内蔵バッテリーのみで5W送信を続けると、バッテリーの消費が早いため、長時間運用ではデメリットとなります。しかし、ハンディ機にはシガーライターから電源が取れる専用ケーブルがオプションとして販売されているモデルも多くあります。また、モバイルバッテリーからUSB充電可能のバーテックスタンダードのVXD1もあります。モバイルバッテリーなどを持っていれば、旅先でのバッテリー上がりを気にすることはもうありません。

2021年現在のデジ簡ハンディ機のオススメはDJ-DPS70に決まり!

多くのフリーライセンス局に支持されるハンディ機はアルインコDJ-DPS70です。それはなぜでしょうか。一言で言えば、アルインコの開発設計思想が、当初から私たちDCRのホビーユーザーを意識したものだからです。

アルインコDJ-DPS70シリーズはなぜフリラー局から支持されるのか?

最大5Wで全チャンネルスキャン&Sメーター表示アリ、大容量バッテリーモデルもあるから

複数チャンネルの巡回受信を可能にする全チャンネルスキャン機能は私たちホビー局向けデジ簡機にはぜひとも欲しい機能。しかも大容量3200mAhバッテリー・バージョンもあるアルインコDJ-DPS70シリーズが大人気となっています。当然、筆者も使用中です。

アルインコ 5W デジタルトランシーバー DJ-DPS70KA

前モデルのDJ-DPS50で不満だった音質の悪さが飛躍的に改善されたほか、周波数表示ならびにSメーター表示など、ホビー局にはとっては”かゆいところに手が届く”各種機能もあり。

DJ-DPS70シリーズには通常バッテリー(7.2V/2200mAh)のDJ-DPS70(KA)、それに大容量バッテリー(7.2V/3200mAh)搭載のDJ-DPS70(KB)、そしてKAのイエローバージョンのDJ-DPS70(YA)の3バージョンがあります。

また、アルインコ社による製品保証期間が1年ではなく、2年である点も人気の秘訣です。

あの一部で有名な某メーカーの廉価なデジ簡機を買ってしまって、すぐ壊れてしまった経験はありませんか?とくに事情を知らなければ、第一ロットと第二ロットでまったく違う運用方法を迫られてしまう恐ろし〰いあの機種を買ってしまって泣いた経験は?安いものには理由がある、というわけですね。

2021年現在、筆者は多くのユーザーによる厳しい評価レビューに裏づけされたDJ-DPS70の購入をお勧めいたします。

1w送信や受信メインの運用ならDJ-DPS70(KA)、そして最大5wで移動運用が多いのなら、大容量バッテリーパックが標準付属されたDJ-DPS70(KB)がおすすめです。

なお、やはり大容量バッテリーパックは通常パックよりもサイズが大きいため、携行のしやすさもご考慮されてください。

デジ簡のモービル機については以下で解説しています。

デジタル簡易無線機のモービル機のオススメはこれ!

そしてデジ簡機の交信距離をさらに伸ばしたいなら、ロングアンテナや車用のモービルアンテナで対応可能です。以下の記事にて実際に使用したデジ簡用アンテナのレビューを行っています。

デジ簡の交信距離はモービルアンテナで大幅アップ!

デジ簡の交信距離はモービルアンテナで大幅アップ!

デジタル簡易無線(登録局)の送信電力は最大5W。これは国家資格を必要としない無線局の中では最大の出力かつ、十分に実用的なパワーです。

デジタル簡易無線とは?『免許局』と『登録局』の違いなどを解説

とはいえ、付属のヘリカルアンテナを装着した1W機同士が交信した場合の距離は市街地で2~3km程度。

もっとも、無線の交信距離はアマチュア無線と同様、自分がローパワーのハンディ機であっても相手局の無線設備が固定局か移動局か、標高、アンテナなどによって如何様にも変わります。

逆に相手局からの波は自局に届いても、自局の波は相手に届かない場合もあります。

そこで、デジ簡の交信距離はモービルアンテナで大幅アップさせ、快適な交信を試みましょう。

高い5W機を買う前に、まずは意外とよく飛ぶ1W機+社外アンテナを試す価値は充分にあり!

アンテナ交換により、おおよそこれだけ交信距離を伸ばせます

ではどんなアンテナに付け替えると、デジ簡の送受信環境の効率が上がるでしょうか。

あくまで目安ですが、各種アンテナへの交換により、おおよそこれだけ交信距離を伸ばせます。

ハンディ用ロングアンテナで10~20km

アンテナメーカー製のハンディ用ロングアンテナかつ、平地では10~20kmといったところです。

筆者が『SRH350DH』を試したところ、自分が1wハンディ機で畑の真ん中、相手局が高速道路を移動中の5w局のモービルアンテナで見通しが開けている場合、20キロ程度まで可能でした。なかなかの性能です。

ハンディ用ロングアンテナ+山頂で60km

筆者はその後、250メートル級の山頂から送信したところ、60km先の平地の局と交信ができました。

モービルアンテナで驚きの50km

もし車での運用なら、モービルアンテナがベスト。ハンディ機用のヘリカルアンテナと車用のモービルアンテナを比べると飛びは別物。とくに寒い秋や冬などは車から降りたくないものです。そんなとき、車内でヌクヌク快適に送受信できる車外アンテナ『モービルアンテナ』を使ってみましょう。

1W機でもモービルアンテナを利用すると、驚きの50キロ交信が実現できました。

デジ簡にアマチュア無線用アンテナを使うことは認められていませんが、アマチュア無線用の一般的なM-P接栓の基台、ケーブルなどの流用は可能なので、すでにアマチュア無線用の基台やケーブルがあれば、デジ簡用アンテナのみ買えばOK。

Comet PDM351-055 コメット 351MHz帯 簡易デジタル無線(登録局)用モービルアンテナ
Comet PDM351-055

そして、最初からマグネットベースがセットになったお得なアンテナ・シリーズがこちらの全長20センチ弱のMR350Sと80センチ弱のMR350の二種。

第一電波工業 ダイヤモンド 351MHzデジタル簡易無線用アンテナ 車載用 22cm MR350S

第一電波工業(ダイヤモンド) 351MHzデジタル簡易無線用アンテナ(車載用) MR350S

マグネット基台タイプのアンテナは車以外でも、自宅のベランダの金属サッシ部分などにペタリと置いて貼り付ければ、クルマでデジ簡をモビホで使った時と同様に交信距離をグングン稼ぐことも可能。

第一電波工業 ダイヤモンド 351MHzデジタル簡易無線用アンテナ(車載用・マグネットマウント式)83cm MR350

第一電波工業(ダイヤモンド) 351MHzデジタル簡易無線用アンテナ(車載用) MR350

なお、この2種のアンテナはアンテナと基台のネジ口が専用設計。MP接栓やSMJ接栓のほかのデジ簡用アンテナを取り付けることはできないのでご注意を。

しかし、安くても性能は抜群。短いMR350Sでもモービル同士で50キロ以上離れて交信できます。

なお、デジ簡専用アンテナにてアマチュア無線機で送信はしないでください。専用設計されていませんので、送信した電波が無線機の内部回路を損傷させる可能性があります。

ただ、送信をしない広帯域受信機用のアンテナとして利用することは性能上、全く問題ありません。短いMR350Sでも27、118、120、130、140、150、240、365、466、各帯域にわたって受信感度はたいへん良好でした。

山頂+八木アンテナで300km以上

高い山に登り、八木アンテナを使うと300km以上もの交信も可能。ただし、混信妨害に注意が必要です。

デジ簡では秘話コードを使えば、ホビー局も業務局を気にせずに交信ができるが・・・?

デジタル無線特有のシビアな変調

電波がわずかに受信できていれば、雑音交じりでも音声が音声としてなんとか聞きとれるアナログ変調のアマチュア無線に対して、デジタル無線は電波が弱くなると音声として全く復調できないのが、災害時などではやや不安とも言えます。このデジタル無線特有のシビアな変調はデジタル消防無線でも指摘されています。

デジタル消防無線は聴けない?三つの聴ける「消防関係無線」

デジタル簡易無線で『ケロる』という言葉の意味は?

デジ簡には弱い変調状態で時折現れる断続的な『ケロケロ』という変調音を『ケロる』と呼びます。

正常な変調時でさえ、人の声が甲高く変調されてしまうデジタル簡易無線では、高度なデジタル技術を使っていながらも、その音質はアナログのアマチュア無線のFMに比べると低品質。慣れないうちは聞き取るのに一苦労。

また、アマチュア無線等のアナログFMでは遠距離でもデジ簡のように変調が断続して”ケロる”ことなく、スムーズに変調され、聴き取りが容易です。

ところがデジタル変調方式では音声が途切れはじめると、復調された音声はケロケロしてしまいます。ケロ解決策はロケのよい場所に移動する、相手との距離を縮める、利得の良いアンテナに交換、また次回のいずれかになるかと思います。

デジ簡の送信でこれはNG!電波が飛ばず、受信感度も最悪!法律違反の可能性も

このようにデジタル簡易無線はそのシビアなデジタル変調方式の性質から、アナログ変調の無線に比べると、市街地では交信距離の低下が顕著です。

また、その使い方次第でも電波の到達距離を縮めてしまいがちです。

ハンディ機を付属アンテナのままで車内から送受信する行為

車は電波を吸収してしまう鉄の箱。車内から電波を出しても、ほとんど車外へ飛ばず、相手の電波もよく受信できないと思ったほうがよいでしょう。それ自体はアマチュア無線のハンディ機の場合と同様ですが、デジタル簡易無線ではもっと厳しくなるのは前述の通りです。

電波が弱くてもなんとか雑音交じりに聞こえるアマチュア無線のようなFMアナログ無線と違って、デジ簡は電界強度が弱いと正常にデジタル復調されず、良くて断続しながら受信ができる先述のケロヨン状態、最悪の場合はスパッ!と一切聞こえないのですから。

クルマの中で頑張ってCQを発しても、半径1キロしか飛んでいなかった……なんてこともあり得るのでモービル運用では注意したいポイントです。

付属の短縮ヘリカルアンテナしかないのなら、車から降りて見晴らしの良い場所に立ち、ハンディ機を手に持って、思いっきり相手の方角に向かって送信するのがベスト。

また、どうせなら1w機よりも、ちょっと高いけど5w機を……と安易に考えがちですが、アンテナ交換の改善策を試してください。

アマチュア無線用アンテナでの送信はNG

デジタル簡易無線(登録局)では技適許可されたアンテナのみが使用できます。

アマチュア無線のように自分で研究して作ったアンテナや、市販のアマチュア無線用アンテナを使うことも許されていません。

デジ簡のアンテナを目立たせたくない場合のアンテナは?

さまざまな理由から、無線用アンテナを秘匿したい考えの人もいるでしょう。

アマチュア無線局がアンテナを隠すのは悪いこと?

アンテナ職質による煩わしさも。

【逮捕!?】アマチュア無線の運用中に警察官が声をかけてきた場合の対応は?

351Mhzではアンテナを比較的短くできるので、車載用アンテナもあまり目立たせないで運用できます。また、偽装させて目立たないようにしたい、という方向けにはシャークフィンアンテナや、ユーロアンテナも発売されています。

コメットのシャークフィン型アンテナは各色があります。

Comet ASF-351W(ホワイト・白) フィンアンテナ 351MHz簡易デジタル用
ASF-351W

Z350Sはダイヤモンドのユーロアンテナ・タイプです。両面テープでルーフに貼り付けるタイプで、全長は50センチ弱。面白いことに航空無線もばっちり受信感度が良いようで、ラジオライフ誌上で詳しく解説されています。

VHF帯エアーバンドにデジ簡登録局用アンテナ

ただ、覆面パトカー用のユーロ偽装タイプに比べると、日本車で主流の純正ユーロアンテナとはかけ離れた外観で、欧州車本来のユーロアンテナに近いものと言え、目立つといえば目立ちます。シャークフィンアンテナも軽自動車では大きくて不釣合いかもしれません。

このように現在市販されているデジ簡用のアンテナは複数ありますが、アマチュア無線用のアンテナに比べると大変数が少ないでしょう。今後、アンテナメーカー各社からさらに多くのアンテナが発売されることを期待したいところです。

車外アンテナ、モービルアンテナのまとめ

モービルアンテナを使うことで、アマチュア無線のハンディ機でもそうであったように、1W機のデジ簡機でも十分に実用の範囲で使えることが体験できるはずなので、皆様も、高い5W機を買う前にぜひ一度、モービルアンテナを使ってみてください。

コレを買えば間違いなし!デジタル簡易無線機のハンディ機のメリットとは

デジタル簡易無線でCQを出す方法を解説!

デジタル簡易無線の登録局について、以下の記事で解説していますが、ここではCQを出す方法を解説いたします。

デジタル簡易無線とは?『免許局』と『登録局』の違いなどを解説

 

と言っても、現在主流の呼び出し方はアマチュア無線のCQ呼び出しと同様です。すでにアマチュア無線を経験されていれば、難しくありません。

一般的な不特定多数局への呼び出し方

デジ簡機はどの機種も呼出チャンネル(15ch)を選択できます。ここがアマチュア無線と同様のメインチャンネルですので、ここで相手局を呼出して、サブチャンネルに移ることを宣言して相手局とともに移動し、サブチャンネルで交信を開始します。

必ずチャンネルチェックを行いましょう

まずはサブチャンネルのうち、空いている中から使いたいチャンネルを探しておきましょう。これをチャンネルチェックと呼びます。

基本的にほかの局が使っていない空きチャンネルがあれば、呼び出し専用である15ch以外ならどこを使って交信してもOK。それでは、さっそく他の局が使っていないか調べましょう。

例えば14chを使いたい場合、まずは14chを先に使っている人がいないか、数分ほど静かに聴取しましょう。しかし、これだけでは他の人が使っているか否かわかりません。そこで以下のように14chにてほかの局に呼びかけてみましょう。

チャンネルチェック、チャンネルチェック。14チャンネル、どなたかお使いでしょうか。こちらは(コールサインと市町村名など)です。混信妨害等を与えていませんか。お使いの方がいましたらお知らせください。

使っている人がいれば『はい、使ってます』と応答があるでしょうけれど、誰も使ってない場合は応答がないでしょう。念のため、また数分聴取してから2回ほどチャネルチェックをして確認してみましょう。

ここでやってしまいがちなのが、数分間聴取せず、いきなり『どなたかお使いでしょうか?』と確認してしまう行為。これはNG。

チャンネルチェックの結果、ほかに使用者がおらず、混信妨害を与えていないことを確認できれば、いよいよ呼出チャンネルである15chでCQ呼び出しにチャレンジしてみましょう。

CQデジタル、CQデジタル、こちらは(自局のコールサイン)、(現在地)です。どちらか入感ございますか。入感ございましたら14チャンネルにて交信をお願いいたします。14チャンネルにQSYします。

※QSY=周波数変更

単に『CQ CQ』でもよいのですが『CQデジタル』、または『CQ DCR(ディーシーアール)』といった呼びかけをよく聞きます。『CQ』を発する前に『呼び出し専用周波数15chをお借りします』と呼び出し専用周波数であることをあえてアピールする局もいます。

このようにして15chで呼出しを行ったのなら、さきほど決めておいた14chにすぐさま移動して、今度は以下のようにCQを出します。

CQデジタル、CQデジタル、こちらは(自局のコールサイン)、(現在地)です。どちらか入感ございますか。入感ございましたら交信お願いいたします。受信します、どうぞ……

これでCQ呼び出しはOKです。念のため、14chでCQを出す前に、さらにもう一度チャンネルチェックをすると良いでしょう。

この呼び出し方は一例ですので、細部は自分なりに変えてもOK。YouTubeにはフリーライセンス局同士の交信がたくさんあるので見ておくと良いと思います。

一方、友だちなど個別の局を呼び出したい場合も呼出チャンネルを使って以下のように呼び出しを行いましょう。

○○(相手局のコールサイン)、入感ございますか?こちらは○○(自局のコールサインおよび現在地)。

15chの占有に注意しましょう

アマチュア無線と同様、デジ簡の呼び出し周波数(15ch)も自分だけでなく、ほかの多くの業務局やフリーライセンス局も使うため、1回の呼び出しはできるだけ簡潔に行い、相手からの応答がないからといって、立て続けの呼び出しなどで長時間占有はNG。一度呼び出したら5分から10分は開けるなど注意が必要と言えるでしょう。

ところが困ったもので、フリーライセンス局が呼び出しチャンネルの占有に気を使っていても、呼出チャンネルを理解していない業務局もおり、15chで延々と業務連絡をする局もいます。

また、データ送信などの連続キャリア送出で15chを占有する無線局が希にいます。自動で送信している農業関係のテレメータのキャリアと思われますが、ずっと呼出チャンネルでデータを送出されていると、ほかのユーザーが使えません。

晴れの日曜日、高い山に上って、さあ張り切ってCQを出すぞと思ったら15chがこの有様だったことがありました。

総務省とテレメータ業界団体には呼び出しチャンネル(351.2875MHz)を選択できない製品を販売、指導するようにお願い申し上げたいところです。

また、業務局との混信が気になる都市部ではフリーライセンス局でおなじみの秘話コードを使った交信もアリ。

デジ簡では秘話コードを使えば、ホビー局も業務局を気にせずに交信ができるが・・・?

まとめ

CQや個別呼び出しはメインチャンネルで行い、通常交信はサブチャンネルにて行うのはアマチュア無線と同様の流れです。デジ簡の呼出方法もアマチュア無線のCQと同様、難しくありませんので、ぜひチャレンジしてみてください。

デジタル簡易無線機のモービル機のオススメはこれ!

デジタル簡易無線機のモービル機とはアマチュア無線のモービル機と同様に車載型無線機のことです。最大送信出力が最大5W、ハンドマイク付属、液晶パネル部と本体のセパレート設置など、車での使用に特化された仕様となっています。

ただし、アマチュア無線のモービル機同様バッテリーを内蔵せず、外部電源が必須であることや、ハンディ型のデジ簡機と違ってアンテナは別売となっていますので、予算が多少かかります。

デジ簡の交信距離はモービルアンテナで大幅アップ!

デジ簡(登録局)のモービル機はこれまで非常に高価だった

デジ簡(登録局)のモービル機はこれまで非常に高価でした。アイコムIC-DPR100は定価75,384円、アルインコDR-DPM50は定価73,224円で、実勢価格は5万円前後。アルインコのDR-DP50M(紛らわしいですがDR-DPM50とは別のモデルです)は独自規格RALCWI方式(※注意が必要です)を採用しており、リーズナブルになっています。

IC-DPR100

 

DR-DPM50

 

変調方式も普及率も違うため、アマチュア無線のモービル機と一概に比べることはできませんが、それでもやや高価。

元々、レジャー使用での需要は当然あるものと見ていたにせよ、メーカーとしては業務局使用をメインに開発したのでしょうし、逆に言えば、YOUTUBEと融合したフリーライセンス局が、デジ簡のホビー使用をここまで牽引するとは想定外だったのかもしれません。

ライセンスフリー無線完全ガイド vol.7 (三才ムック)
ライセンスフリー無線完全ガイド

アルインコ社のDR-DPM60がデジ簡モービル機の普及を牽引!

いずれにせよ、当初はその価格ゆえ、レジャー目的の方には敬遠されることが多かったデジ簡のモービル機。ところが、2017年6月にアルインコ社がDR-DPM50の後継機DR-DPM60を発売すると、それまでのモービル機よりもリーズナブルな価格(前モデルの定価73,224円に対して定価53,784円)なのに、機能に劣った点もなくスタイリッシュなデザインから、モービル運用で楽しみたいフリーライセンスや業務各局の間でまたたくまにヒットしました。

アルインコ 351MHz帯デジタル簡易無線(登録局) モービルトランシーバー DR-DPM60
DR-DPM60

本体の筐体とハンドマイクは同社のアマチュア無線機『DR-620』とほぼ同じですが、DR-DPM60のフロントパネルは完全新規で、4つのボタンとボリュームダイヤルのみと、APRのごとく至ってシンプル。なお、免許局向けとして同一筐体を使用したDR-BU60Dも発売されています。

ホビー局にはSメーターや周波数表示の実装がありがたい一方、業務局用として心強いのは従来の32,767通りにもおよぶ他社製デジ簡との互換秘話コードに加えて、アルインコ独自の491,505通りにもおよぶ秘話コード機能(同社のM60とS70系同士での通話時のみ機能)が搭載されており、どちらのユーザーにも大変便利。

まさにフリーライセンス局にとっては待望の機種として歓迎されています。

現在は後継機『DR-DPM61』が登場しています。

 

 

もちろん、デジ簡のモービル機もアマチュア無線のモービル機と同様に、自宅などに設置して固定で運用することもできます。ただし、同様に安定化電源が別途必要です。

デジ簡でのCQの出し方については以下の記事にて解説しています。

デジタル簡易無線でCQを出す方法を解説!

【制度終了】パーソナル無線の解説

残念ながら、パーソナル無線制度は利用者の減少と総務省の電波資源有効活用目的の周波数再編プランによって、平成27年11月で終了しており、割り当てられていた900MHz帯域のいわゆるプラチナバンドは携帯電話会社に再配分となりました。

昭和57年から始まり、80年代から90年代にかけて一世を風靡したパーソナル無線は資格のいらないフリーライセンス無線でした。1992年ごろには利用者数が170万局を突破しています。

無線機を購入後、付属の申請書に必要事項を記入して提出し、許可を得るだけで使えること、しかも、見知らぬ人と交信をして楽しむレジャー目的使用、さらに業務にも使える利便性がありました。自動車でも利用でき、最大5Wまで許可された送信出力を活かし、家や会社の屋根の上にアンテナを上げて「固定無線局」としての利用も可能でした。

一見、制約なしで多用途に使える無線制度に思えますが、警察や消防といった人命に関する一部の公務や、船舶・航空・鉄道・バスなどの交通事業には使えません。総務省の無線局検索でパーソナル無線の登録局を調べると、登録者は個人のほか企業や、役場などの行政、教育委員会も含まれていました。さらに無線機の改造、許可されないアンテナは禁止されています。

また、アマチュア無線と違ってコールサインも付与されません。

903~905MHzのパーソナル無線

パーソナル無線が使っていた900MHzという高い周波数は性質が光と似ており、直進性が抜群である一方、ほとんど反射せず、障害物に弱いのがデメリットでした。そのため、144MHzや430MHzといったアマチュア無線のバンドに比べ他場合は交信距離は短いと言えます。しかし、電波ですから全く反射しないことはなく、ビル街などでも数キロ程度であれば問題なく使うことができました。

もちろん見晴らしの良い高い山の上に登れば、200キロもの長距離でもメリット5で交信が可能でした。

パーソナル無線機のROMとは?

パーソナル無線機を購入すると、開局申請書とともに小さなROM(ロム)カードも付属していました。

開局申請を提出する際、申請書とともにROM(ロム)カードを管轄の電気通信振興会に送付すると、ROM(ロム)カードには固有のコードが書き込まれ、免許状とともに返送されました。ROM(ロム)カードを無線機に取り付けることで、ようやくパーソナル無線の運用が開始できました。

本来、パーソナル無線はコールサインが付与されませんが、無線機それぞれがこのROMに固有のコールサインを記載することで、キャリア(搬送波)送信時に固有の信号(ATIS)もともに送出されるという仕組みを取っていました。ATISによって、どの無線機から送出された電波か、当局で把握できたのです。

現在の携帯電話の『SIMカード』と似たシステムと言えますが、このROMは携帯電話のSIMカードと違って、一度セットすると通常の方法では二度と取り外せません。買ってすぐに誤って無線機にそのままROMをセットしてしまうと困りもの。抜こうとして無線機を分解することは違法行為ですので、その際はメーカー経由で有償で外してもらわねばなりません。

特徴的な群番号というシステムを採用

また、パーソナル無線では「群番号」という特有のシステムも特徴です。アマチュア無線と違い、パーソナル無線では無線機が自動的に決めたチャンネルの「群番号」にて交信を行います。このようなシステム上、とくにCB無線で顕著だったチャンネル占有が起きないメリットがありました。

CB無線は資格免許不要でHFの電波伝搬特性が気軽に楽しめる!違法CBと合法CBの違いとは

開始当初は80チャンネルでしたが、昭和61年になると利用者増大に伴って152チャンネルに大幅増加されています。このため、80チャンネル対応の旧機種と後発の152チャンネル対応の新機種ではつながらないというデメリットもありました。

しかし、一部では不正改造された違法なパーソナル無線機でチャンネルを占有する事態が起き、問題となりました

走り屋、トラックドライバーの愛好家が多かった

パーソナル無線は資格が不要であったため、だれでも気軽に使えたのが爆発的に流行した理由と言えますが、とくに自動車を趣味とする人や、職業ドライバーの愛好者が多かったそうです。

トラックのドライバーでは、それまでCB無線を使う場合が多かったようですが、パーソナル無線に乗り換えた人も多くいました。

また、いわゆる峠を走るドリフト族たちもパーソナル無線を多用して、峠の上と下で道路情報などを共有していたようです。

映画にも登場

アマチュア無線の出る映画や漫画、アニメはありますが、実はパーソナル無線が出る映画だってあります。それが、1984年公開のメイン・テーマ(薬師丸ひろ子主演)です。海岸で出会ったワケアリ男女が4WDで旅をするという話なのですが、当時普及が図られたパーソナル無線が劇中に登場します。

ただ、主人公がおにぎりマイクで「ハローCQ、ハローCQ」と、CQを出すものの、パーソナル無線の実際の交信場面は省略されており、誰かが応答するシーンは描かれていません。ただ、解釈としては呼び出しの後に、主人公とほかの若者らが楽しく遊んでいるシーンが描かれているので、旅先でのパーソナル仲間とのアイボールを描いているのかもしれません。

終盤でのオレンジトップアンテナを付けたパーソナル無線仲間の車たちが集まってのお祭り騒ぎは見ものですが、やはり全体を通して実際の交信シーンがないのは少し物足りません。

なお、クラリオンのパーソナル無線機「シティーコール」のテレビCMで本作の一場面が使われています。なんだか電話機のような呼出音が、当時まだ保証金や月額料金などが高価で若者が気軽に手を出せなかった自動車電話をイメージさせ、それが当時の若者を魅了させたのかもしれません。

参考書籍【早わかりパーソナル無線】梅原敦 著

パーソナル無線のまとめ

このように80年代とくに普及が進んだパーソナル無線ですが、利用者は次第に減少していき、現在の900MHzという周波数は携帯電会社に再配分となったわけです。現在、パーソナル無線の後継とも言えるのが、デジタル簡易無線の登録局制度です。

デジタル簡易無線とは?『免許局』と『登録局』の違いなどを解説

デジタル簡易無線の登録局制度もパーソナル無線同様に資格と免許がいらず、届け出のみで業務、趣味の交信どちらにも使えることが法的に認められている便利な無線で、2023年にはチャンネル数の大幅な増加も行われ、利用者のさらなる増加が見込まれています。