自衛隊という組織は、昔から芸能人とコラボレーションすることが多く、役所としては意外と柔軟な一面を持っています。そう思いませんか?
その代表的な例が、1993年にリリースされた飯島愛さんの楽曲「ナイショDEアイアイ」です。この曲のミュージックビデオは、なんと陸上自衛隊・滝ケ原駐屯地で、陸自の全面協力のもと撮影されたのです。
映像の中では、迷彩服を着た飯島愛さんが装甲戦闘車に乗ったり、駐屯地の食堂で隊員と一緒に食事をしたり、筋骨隆々の隊員たちとポーズを決めたりと、まさに「どうしてこうなった!?」と夜中にツッコミを入れたくなるような内容でした。
たとえるなら、真面目な公的サイトに、突然「怪しい広告」が表示されてしまったような違和感です。
当時、女性自衛官の反応はどうだったのでしょうか。飯島さんと一緒にノリノリで撮影に参加していたのか、それとも複雑な気持ちだったのか……今となっては気になるところです。
また、「ガールズ戦車」などの不思議な写真集も存在しました(こちらは正式なコラボではなく、いわば“勝手コラボ”の例です)。
このように、自衛隊の広報活動や民間とのコラボは今に始まったことではありません。そのため、駐屯地や基地には芸能人やタレント、さらにはちょっと個性的な人たちが訪れることも珍しくありません。
陸上自衛隊では、テレビ局の企画として暴走族の更生プログラムに体験入隊を取り入れたり、お笑いタレントによるレンジャー訓練体験なども行われました。航空自衛隊では、2009年にSMAPの木村拓哉さんが松島基地でブルーインパルスの5番機に同乗したことが話題になりました。
そして、東日本大震災以降、「自衛隊は視聴率になる」と気づいたテレビ局が一斉に自衛隊に接近し、バラエティ番組でも頻繁に登場するようになりました。
2013年にTBSがドラマ『空飛ぶ広報室』を放送すると、フジテレビも「負けていられない」と2022年に陸上自衛隊を題材にしたドラマ『テッパチ!』を放送しました。『海猿』で海上保安庁を取り上げた成功例を追い、自衛隊にもスポットを当てようとしたわけですが、少々タイミングが遅すぎたようです。
結果は……ご存じの通り、大苦戦。視聴率も振るわず、自衛隊関係者の間でも「これは痛い」とささやかれたほどです。
若者の自衛官志望者も減少傾向にあり、防衛省としても頭を抱える状況が続いています。
思えば、25年前に氷河期世代を冷遇した代償が、今になって重くのしかかっているのかもしれません。
自衛隊が本当の苦境を迎えるのは、これからなのかもしれません。
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かつて発行されていた自衛隊広報誌「防衛アンテナ」と「セキュリタリアン」とは
自衛隊は昔から国民向けに広報誌を発行してきました。最初は「防衛アンテナ」という名称で、のちに「セキュリタリアン」という冊子に引き継がれています。
この「セキュリタリアン」になると、以前の硬派な内容から一転して、ぐっとソフトな路線に変わりました。
誌面では自衛隊の食事の紹介や、F-15J戦闘機の体験搭乗レポート、さらには少女漫画家・折原みとさんへのインタビューまで掲載されるようになりました。
また、女性自衛官が増え始めた時期には、「防衛庁OL百人委員会」という企画も誕生し、当時としては珍しくセクシュアルハラスメントなどの問題にも踏み込む姿勢を見せていました。
しかし一方で、なぜか特定分野のビデオ女優へのインタビュー企画が掲載されたこともあり、「そこまでしなくても……」と思わずため息が出るような内容も見受けられました。
その後、「セキュリタリアン」は契約見直しを理由に休刊となりました。
もちろん、件のビデオ女優の件とは関係ない―はずです。おそらく。たぶん。いえ、知らないことにしておきましょう。
こうした女優の起用が、自衛隊をより身近に感じさせ、若い世代を引き込むための“懐柔策”だったのかどうかは分かりません。
ただ、少なくとも広報という仕事が時代とともに試行錯誤を重ねてきたことだけは確かです。
新しい自衛隊広報誌「MAMOR(マモル)」の登場とデマ
親しみやすさを前面に出して自衛隊のお堅いイメージを払しょくしようとする努力は後述の現・広報誌「MAMOR」にも受け継がれています。
2006年11月30日に創刊された自衛隊の広報誌『MAMOR(マモル)』は、防衛省のイメージ戦略を大きく変えた存在です。公式には「情報誌」とされていますが、実質的には自衛隊の広報活動を担う雑誌といえるでしょう。
自衛隊広報誌『MAMOR』──制服美女とイメージ戦略の転換点
MAMOR(マモル)は、防衛省が編集協力をしている唯一の情報誌です。
防衛省の政策や自衛隊の活動を分かりやすく紹介し、国民とともに防衛を考える情報誌を目指しています。引用元 防衛省公式サイト
http://www.mod.go.jp/j/publication/kohoshiryo/mamor/index.html
『MAMOR』は、フジサンケイグループの出版社・扶桑社から毎月発行されています。
キャッチコピーは「国民とともに防衛を考える情報誌」。編集長の高久裕氏によれば、「編集作業は自衛官と一緒に行っている」とのことです。
実際、防衛省が編集協力している唯一の民間発行誌として、自衛隊の活動をわかりやすく紹介し、「防衛を身近に考える」ことを目的としています。
そして、この雑誌の特徴のひとつが「表紙」です。毎号、制服姿の女性が登場しますが、その多くは現職の女性自衛官ではなく、一般のモデルやタレントです。
そのため、「自衛隊にはこんなに美人の自衛官がいるのか」と誤解してしまう人も少なくありません。
この点については、海外でも話題になりました。中国のインターネット上では、『MAMOR』の表紙に登場した女性タレントを「特定ジャンルの女優」と誤認する投稿が複数見られました。
百度(Baidu)の掲示板などでは、「日本の自衛隊は兵士不足で、映像業界の女優を採用している」などの書き込みも見られたと報じられています。
もちろん、これは誤解に基づいたものであり、事実ではありません。
とはいえ、日本の防衛関連雑誌が海外のネット上で話題になること自体、日本への関心の高さを示す現象でもあります。
毎号、美しいタレントを起用して自衛隊のイメージアップを図るという試みは、確かに効果的な一面がありますが、同時に誤解を生むリスクも伴う「諸刃の剣」といえるでしょう。
こうした広報のあり方には、日本と中国のネット文化や価値観の違いも反映されているように感じます。
いずれにしても、『MAMOR』の表紙を飾る制服美女たちは、国防を語る上で思わぬ国際的反響を呼び起こした存在となりました。
中国人が『MAMOR』の表紙に掲載されている美人を、特定ジャンルの女優と勘違いした?
自衛官が編集に加わっている民間発行の自衛隊広報誌『MAMOR(マモル)』は、日本国内だけでなく、日本を強く意識している中国のネットユーザーの間でも話題になります。
エキサイトニュースの配信記事によれば、『MAMOR』の表紙企画「防人たちの女神」に毎号登場する“茶髪の女性タレント”について、中国人がある特定ジャンルの女優であると誤認しているというのです。
「日本の若者は家でゲームばかりしていて自衛隊に入りたがらないから、自衛隊が広報誌に特定分野の女優を起用しているのだ」といった書き込みもあり、服を着ていると人物は判別できず、勘違いに至ったようです。
柳川俊之氏の伝えるところでは、こうした誤認が中国の掲示板で語られているそうです。
ただし、強調しておきたいのは、『MAMOR』が実際に特定ジャンルのビデオ女優を表紙に起用したという事実は確認されていません。
また、こうした誤解を受けやすい要因として、かつて自衛隊広報誌『セキュリタリアン』には特定ビデオ女優の読み物企画が含まれていた例もありますが、それと『MAMOR』の現状とを混同すべきではありません。
ちなみに、最近では自動車メーカーの公式サイトにも“元女優によるコラム”が掲載されることもあり、広報手法の変化は社会全体に及んでいます。
しかし、自衛隊の広報誌にまでそれが入り込んでいるかと言えば、それは別問題です。
とはいえ、陸上自衛隊がかつて飯島愛さんを招いた例や、ミリタリー誌企画で笠木忍さんが駐屯地を訪れた例も存在します。
そういう意味では、自衛隊広報の領域は時に迷走し、「何が許されるか」の線引きが見えにくくなる瞬間もあるのかもしれません。
人材不足でオタク招集? 自衛隊PR誌の女神グラビアが中国で話題
自衛隊の活動を伝える雑誌の巻頭グラビアについて、中国のネット上で「日本の自衛隊は人材不足で、隊員募集広告に『女優』を起用して『オタク』を集めようとしている」と話題になった。環球網など複数の中国国内メディアが伝えた。
話題になったのは扶桑社が発行する月刊誌『MAMOR』。防衛省の編集協力も得ている自衛隊の広報誌的雑誌だ。内容は自衛隊や防衛に関する活動について紹介するものだが、毎号自衛隊のコスチュームを着用した女性タレントによる巻頭グラビア「防人(さきもり)たちの女神」が掲載されている。2009年にはAKB48の前田敦子も登場した。
この「女神」たちが中国ネットユーザーの目にとまったようだ。百度(baidu)などのネット掲示板に14日、「日本は兵士不足、女優を入隊広告に起用」という『MAMOR』のグラビア画像付きのトピックが立った。
概要
典拠元 エキサイトニュース https://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20111215/Searchina_20111215017.html
MAMORの婚活とは?
なかでも人気なのが現職自衛隊員と一般女性の出会いを応援する企画、『マモルの婚活』です。
このコーナーでは、独身の自衛官が写真やメッセージで自分をアピールし、年収や職種、趣味、身長、得意な科目、貯金額などもオープンに紹介しています。
掲載される自衛官は一般隊員から幹部まで幅広く、男性に比べて女性自衛官が登場する割合は低いものの、女性自衛官が掲載された場合の反応率は男性よりも高いとされています。
まとめ
まとめると、『MAMOR』は中国のネットユーザーの間でも話題になることがありますが、巻頭グラビアや表紙のタレントを特定ジャンルの女優と勘違いしている例もあるようです。
とはいえ、実際には表紙のタレントは特定ジャンルの女優ではありません。ここは強調しておきたい点です。
『MAMOR』は『セキュリタリアン』と同様、一般書店でも購入可能です。興味がある方は、ぜひ本屋で手に取って内容を確認してみるのも良いでしょう。