クレジットカードには、特定の職種や団体とカード会社が提携し、限定的に発行されるものが存在することは、広く知られています。
例えば、早稲田大学校友会と三井住友VISAカードが提携し、早稲田大学の現役学生や卒業生のみに発行されている「早稲田カード」は、「第二の学生証」とも称されるほどの認知度を誇ります。
三井住友カードにおいても、「早稲田大学の名誉を担う卒業生向けのカード」と位置づけられており、同大学のブランドと格式が反映されたカードであることが窺えます。
また、全国弁護士協同組合連合会と提携したクレジットカードである『ロウヤーズ・カード』は、その組合員、すなわち弁護士でなければ所持することができないため、カードホルダーの地位と高い信用度を示すものとして機能し、全国の弁護士に広く利用されています。
このほかにも、医師を対象とした「医師協カード」、公認会計士を対象とした「公認会計士協同組合カード」など、特定の職業に従事する者のみが申し込むことのできるクレジットカードは多数存在しています。
すなわち、このような職種限定のクレジットカードは、特定の状況下において、カードホルダーの身分や経歴を証明する、いわば「身分証明書」としての役割を果たすこともあり得るのです。
では、警察庁ホールディングスおよび全国の各支部、各営業所に勤務する全国約二十五万人の警察官を対象とする提携クレジットカードは存在するのでしょうか。
実は、警察関係者を対象とした提携クレジットカードも発行されています。
それが、元警視庁刑事であり、漫画原作者としても知られる北芝健氏が原作を手掛けた『まるごし刑事』においてもたびたび登場する「JPカード」です。
このJPカードは、三井住友カードと警察共済組合が提携し、現職の警察官およびその家族、さらには元警察官とその家族のために発行されているVISAクレジットカードであり、株式会社ジェイ・ピー・カードサービスがその発行および運営を担っています。
三十年前の発行当初、カードの表面には「警察」の文字が記載されておりましたが、非番時に警察官がクレジットカードを使用する際に「目立ってしまう」「使いにくい」といった声があがったことを受け、現在では「JP」の文字のみが記載される仕様へと変更されています。
また、当初はカードに旭日章がデザインされていたものの、現在ではこれも削除されており、デザイン面では一見して警察関連のカードであることが分かりにくい仕様となっています。
なお、JPという名称から郵便局のクレジットカードと誤認されることもあるようですが、日本郵便のJPとは一切関係ありません。
当然ながら、このJPカードは、警察職員およびその家族を対象とした福利厚生サービスの一環として発行されているものであり、株式会社ジェイ・ピー・カードサービスの公式ウェブサイトにおいても、「警察関係者以外は作成できない」と明確に記載されています。
なお、ここでいう警察関係者には、現職警察官だけでなく、その家族も含まれています。
JPカードの公式ウェブサイトの説明によれば、三井住友カードと連携したVISAクレジットカードとしての決済機能を有するだけでなく、JPカード独自の特典も付帯しています。
提携企業は多岐にわたり、不動産、レンタカー、アミューズメント施設、ホテル、鉄道、保険、さらには家具・インテリア業界の大手であるニトリなど、多方面にわたる優待サービスが提供されているとのことです。
さらに、これは株式会社ジェイ・ピー・カードサービスが公式に想定したり保証したりしている利用方法ではございませんが、本会員が現職の警察官である場合、職種限定カードとしてのJPカードを所持することで、もう一つの大きな利点があると推測されます。これについては明言を避けますが、容易に想像がつくことでしょう。
なお、警視庁を除く多くの警察本部においては、非番時や休暇時には「ある物」を警察本部に預けることが義務付けられているケースが多いとされています。
そうした状況において、仮に旅行先などで不運にも同業者である警察官から職務質問を受けた際に、JPカードを提示することで、警察関係者であることを簡易的に証明することができるのではないか、という推測が成り立ちます。
実際、次のような場面を想像することができます。
例えば、旅行中に偶然にも同業者に職務質問を受けたとしても、JPカードをさりげなく提示することで、「おや、JPカード……。いやあ、ご同業でしたか。これは失礼いたしました。もちろん私も持っております。ちなみに、あそこのラーメンが非常に美味しいので、ぜひ……(笑)」といったやり取りが交わされる可能性もあるでしょう。
とはいえ、これが実際に通用するかどうかは、個々の状況次第であることは言うまでもありません。ともかく、株式会社ジェイ・ピー・カードサービスの公式ウェブサイトにおいて、「警察関係者以外は作成できない」と明記されている点は、非常に興味深いものです。
さらに、同サイトでは、JPカードが決済機能を持つクレジットカードであることに加え、一部の施設において「身分証明書代わり」として機能することが明記されています。
これは、何を意味するのでしょうか。筆者には、その真意を推し量ることはできません。
いずれにせよ、このJPカードは、現職の警察官にとって単なるクレジットカードとしての役割を超え、「クレジットカード以外の用途」、すなわち「何かの代わり」としても機能し得る可能性を秘めた、非常に興味深いカードであると言えるのではないでしょうか。