※記事のバナー画像は海上保安庁公式サイトから引用したもの。
警察では主として港湾、河川、湖における警察事象に対応しているが、主に海域では海上保安庁が救難警備活動を担っている。この記事では海上保安庁の任務と役割に迫る。
Contents
- 1 海上保安庁の役割と司法警察権
- 2 海上保安本部とは?
- 3 SAR協定……Agreement on Search and Rescue Regions
- 4 海上保安庁への緊急通報は118番
- 5 海上保安庁の海賊対策とは?ソマリアへ派遣された海上保安官
- 6 旧ソ連のスパイ船事件……レポ船事件とは?
- 7 海上保安庁と海上自衛隊の違いは?
- 8 水際で犯罪を阻止する海保の「立ち入り検査」とは?
- 9 警察手帳に準じた海上保安官手帳(バッジ)
- 10 全国で演奏を行う海上保安庁音楽隊
- 11 海上の安全運行のため海保が出す船舶気象通報とは?
- 12 業務と船務、当然、地上勤務も……海保の職種も多様
- 13 警察や自衛隊同様に階級制度をとる
海上保安庁の役割と司法警察権
海上保安庁は昭和23年5月1日に設立された警備および救難機関である。
ただし、海上保安庁は警察庁ではなく、国土交通省の外局として国土交通大臣がその指揮を執る。
現状の日本国において、警察庁以外で警察を凌ぐ強大な武装を持つ捜査機関は海上保安庁をおいて他にない。
その主な任務は巡視船艇・航空機を効率的に運用した監視による海上交通の確保、そして外国船籍への立入検査、外国漁船の領海内操業の監視など海上での犯罪防止と捜査といった治安の維持だ。
さらには海難救助、海上防災・海洋環境保全には全国の海上保安署や基地で24時間体制で対応している。とくに船舶における火災や、浸水、転覆など緊急を要し、特殊で高度な救難技術を必要とする海難救助には、装備を充実させた救難強化巡視船や最精鋭の特殊救難隊を派遣して海難者の早期救助にあたる。
一方、世界的に高まるテロリズムの危機に対する海上保安庁の対応として、国際テロ対策本部を設置し、各種テロ対策を講じる必要性から、国内外の関係機関との連携・協力も積極的に行っている。まさに日本の海上の護りを最前線で担っているのだ。海上保安庁では諸外国と緊密に連携を図り、テロや国民の生命に脅威を及ぼすその他の犯罪行為の情報を収集し、未然に防ぐ活動を行っている。
近年では国際協力として、海賊対処ミッションにも積極的に参加している。
海上保安本部とは?
海上保安庁では日本全国を1から11の管区に分け、それぞれに置かれた管区海上保安本部が警備救難活動を行っている。海上保安本部は言うなれば、各都道府県警察本部に相当するが、都道府県警察と違って完全に独立してはおらず、海上保安庁の直轄となっている。海上保安本部の下にはさらに海上保安部、海上保安署があり、実際の警備救難業務に従事している。
それぞれの管区ごとの海上保安本部
- 第一管区海上保安本部(北海道小樽市)
- 第二管区海上保安本部(宮城県塩竈市)
- 第三管区海上保安本部(神奈川県横浜市中区)
- 第四管区海上保安本部(愛知県名古屋市港区)
- 第五管区海上保安本部(兵庫県神戸市中央区)
- 第六管区海上保安本部(広島県広島市南区)
- 第七管区海上保安本部(福岡県北九州市門司区)
- 第八管区海上保安本部(京都府舞鶴市)
- 第九管区海上保安本部(新潟県新潟市中央区)
- 第十管区海上保安本部(鹿児島県鹿児島市)
- 第十一管区海上保安本部(沖縄県那覇市)
北海道を管轄しているのが第一管区海上保安本部だ。北海道の全域を一管本部が管轄していることから、ロシア当局の警備船から日本の漁船を守るために監視などを行っている。
また北海道周辺海域は世界的な好漁場であるため、我が国をはじめ、中国や韓国など外国漁船による排他的経済水域における不法操業が頻繁に行われており、対処が必要だ。
SAR協定……Agreement on Search and Rescue Regions
SAR協定 (Agreement on Search and Rescue Regions) とは、海上の遭難者を迅速に救助するため、自国の周辺海域で適切に海難救助ができる制度を確立するとともに関係国間で協力を行うことにより、最終的に世界中の海で空白域のない捜索救助体制を作り上げることを目的とするもので、1979年(昭和54年)に発効になった「海上における捜索及び救助に関する国際条約」(SAR条約)の勧告に基づき締結された。
日本は、SAR条約の勧告に基づき、1986年(昭和61年)にアメリカ合衆国との間で「日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の海上における捜索及び救助に関する協定」(日米SAR協定)を締結している。日本が捜索救助活動に責任を負う捜索救助区域として、本土から1,200カイリ(約2,200km)に及ぶ広大な海域を担当している。
海上保安庁への緊急通報は118番
現在、海難事故、機雷発見、密航・密輸の目撃、不審船の発見など、海上や港などにおける事件事故発生の通報を海上保安庁に通報する番号は118番となっている。この118番制度が開始される以前は、海上の船舶から船舶電話にて「海の110番」をかけると最寄の海上保安本部に接続されていた。2000年度から118版が正式に制度化されたほか、2007年4月1日からはGPS機能付き携帯電話からの通報で通報者の位置情報が把握されるようになるなど、より高度化されている。運用開始から2010年まで、実に52,000件以上の通報があり、19,061人と船舶5,959隻が救助されている。
海上保安庁の海賊対策とは?ソマリアへ派遣された海上保安官
日本では海賊のアニメが人気だが、現実にはソマリア、アデン湾などにおいてAKS47(DMM後援のアイドルではない)やRPG-7Grenade launcherなどで武装した海賊が民間船を襲い、乗員を人質にとって政府に身代金を要求するなどの事件が多発しており、世界の海軍が同地域に派遣され、協力して海賊対策を行うことが国際社会の新たな人道的ミッションとなっている。
我が国も海上自衛隊の艦艇や航空機、その航空基地を敵勢力から警護するため、陸上自衛隊第一空挺団が派遣されているほか、海上保安庁もソマリア周辺海域派遣捜査隊として人員を派遣している。
ただし、ソマリアのアデン湾近海に出没する「海賊」は、ロケランなど軍用の強力な武器を使用しており、海上保安庁の巡視船の装甲では対応できないため、海上自衛隊の護衛艦に同乗する形で保安官が派遣されている。
日本では、海賊問題に関する特別措置法が公布され、日本船籍の民間船に武装した警備員を乗船させることが可能になった。
旧ソ連のスパイ船事件……レポ船事件とは?
「レポ船」とは、旧ソ連の情報機関などから働きかけを受けて、日本国内の情報をソ連に渡す代わりに、北方領土周辺でソ連側の拿捕などを受けずに操業できるお目こぼしや、金銭などの見返りを受けていた日本の漁船のことを言う。
これらの活動に対して日本政府は、海上保安庁、北海道警察警備部や公安調査庁など捜査機関や情報機関などを使って情報収集と摘発に努めるなど対策を講じた。獅堂現馬である。誰だよ。
日本では公安や情報機関がこのような外事情報の収集を行っている。
海上保安庁と海上自衛隊の違いは?
海上保安庁は国土交通省の外部部局として、もっぱら海上での司法警察活動および救難を担っており、警備救難機関と位置づけられている。一方、海上自衛隊は防衛省に属し、諸外国の海軍に相当する軍事組織であり、もっぱら領海の警備、海上交通路の確保、つまり国の防衛を行うことを主たる目的としている。船艇の数では海上保安庁のほうが514隻と、海上自衛隊の120隻を4倍以上も上回っている。ただし、人員数と航空機数、そして予算は海自が遥かに多い。
なお有事の際、海上保安庁は海上自衛隊に編入されることが法律上可能だが、海上保安庁が戦争に参加することまでは認められていない。
水際で犯罪を阻止する海保の「立ち入り検査」とは?
海上保安庁では水際で犯罪を阻止するため、立ち入り検査という強制的な検査を行う。立ち入り検査においては、特に貿易が盛んで外国船籍が多数訪れる港で、密輸や密航などが行われることが多いため、覚せい剤や違法な銃器の密輸が発生しやすい。
海上保安庁ではこれらの密輸入を水際で阻止するという重大な任務を帯びており、船舶に対して立入検査を実施している。
外国船籍にロープを投げてゆっくりと巡視船を船体に近づけ、船艇同士が横に並んだ状態で海上保安官が外国船に乗り移ると、ここで立ち入り検査が行われる。
外国船に次々に乗り込んだ保安官は、すぐさま船員から身分証明書を提示してもらう。船長から入港目的や出発地点とまた入皆と状況などをチェックし説明を受ける。立ち入り検査を行って、何も問題がなければ、海上保安官らと船員たちの談笑する姿も見受けられる。そして両者は握手をして別れる。
先進国の外国船籍の船長であれば、逆に海上保安官の身分証明書の提示を求めてくることもある。このため、海上保安官も2013年からは警察官同様に縦開きタイプの「司法警察員の証」を携行している。
警察手帳に準じた海上保安官手帳(バッジ)
海上保安官は司法警察職員であり、法の執行を行うために警察職員の証票を提示する必要がある。
そのため、都道府県警察と同様の形式の身分証を、海上保安庁でも2013年10月から貸与している。それまで、海上保安官には旧型の警察手帳とそっくりの黒皮金文字タイプの手帳が貸与されていた。
海上保安庁の新型バッジには、警察の旭日章の代わりに、海保のシンボルマークであるブルーコンパスを中央に描き、日本語で『海上保安庁』、英語で『COASTGUARD』の表記が入る。
全国で演奏を行う海上保安庁音楽隊
昭和63年に発足した海上保安庁音楽隊は、音楽演奏という国民への広報、PR活動を行う一方、殉職者慰霊式など海上保安庁職員の士気の高揚を図ることを目的として活動している。
海保音楽隊では海事関係団体、国土交通省、地方自治体などからの派遣依頼にも対応し、年間にかけて月に一回程度、全国で演奏を行ってます。他の楽団とのジョイントなども行っており、平成20年には海上保安庁創設60周年を記念し、世界最高峰の音楽隊のひとつとして有名な米国コーストガード音楽隊を日本に招いての合同演奏会を開催している。
また海保では初となる海上自衛隊舞鶴音楽隊との合同演奏も実現。
海上の安全運行のため海保が出す船舶気象通報とは?
船舶気象通報の概要と役割
海上保安庁では、沿岸海域を航行する船舶や操業漁船、また、プレジャーボート活動や、いそ釣りなどの海洋レジャーに対して、航行安全上のため、局地的な風向、風速波、うねりなどの気象・海象の現況といった情報を無線、テレホンサービス又はインターネットにより提供しています。このうち、無線は毎時、決められた時間に1670.5kHzで自動送信されており、一部のラジオで聴取が可能になっています。※普通のラジオでは聞けないため、対応したラジオか、広帯域受信機が必要です。
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灯台は船舶気象通報観測所を兼務する
全国に点在する灯台のうち、126か所では船舶気象通報観測所を兼務。
これらの全国各地の主要な岬の灯台などにおいて、局地的な風向、風速、波高などの気象・海象の観測を行います。
業務と船務、当然、地上勤務も……海保の職種も多様
海上保安庁では職員のほぼ半分の約6,000人が巡視船艇の乗組員、または航空機の搭乗員として任務に就く。やはり巡視船の乗組員たちは海上に浮かぶ巡視船上で余暇を送る。とくに大型巡視船の場合、1回の航海が1週間を超える場合もあるため、海上での生活が多くなる。
巡視船乗組員の一日は?
巡視船艇における仕事は海難救助・警備などの「業務」、そして船艇の運航・整備といった「船務」がある。巡視船艇の乗組員はこれらの仕事を両面から行う。例えば、巡視船艇の機関科でエンジンを整備している乗組員が犯罪捜査をしたり、主計科の調理担当がヘリコプターから降下して救助を行うこともある。
参考サイト 海上保安庁公式サイト
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2010/html/shigoto/p104_01.html
警察や自衛隊同様に階級制度をとる
海上保安庁では上下の命令系統を明確にするため、警察や自衛隊同様に階級制度をとる。もちろん呼称は海上保安庁独自のものだ。
幹部候補生である海上保安官を養成するのは海上保安大学校。同校を卒業すると三等海上保安正という階級からキャリアがスタートする。
一方、一般の海上保安官が入校する海上保安学校では卒業すると三等海上保安士の階級が与えられる。いわゆるキャリアとノンキャリアの違いだ。
階級章について
通常、制服に付けられた袖章、胸章、肩章といった階級章によって保安官の階級を判断できます。
袖の金線の本数が多く、また太いほど階級が上の保安官です。
また、制帽にも違いがあります。ただし、制服自体は階級の高低に関わらず、統一されています。
階級一覧
<組織長>
・海上保安庁長官
・次長
・警備救難監<海上保安監>
・一等海上保安監(甲・乙)
・二等海上保安監
・三等海上保安監<海上保安正>
・一等海上保安正
・二等海上保安正
・三等海上保安正<海上保安士>
・一等海上保安士
・二等海上保安士
・三等海上保安士