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シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

在日米軍の「覆面パト」その実態――赤青灯・USサイレン搭載の「USポリス仕様」

バナー画像の引用元 B4S4_110 (@B4_110)

米軍では、米陸軍犯罪捜査司令部(CID)や海軍犯罪捜査局(NCIS)空軍特別捜査局(OSI)といったそれぞれ独自の法執行機関を設置しています。

これらの捜査官は米国内のFBI連邦保安官に相当する「連邦法執行官」の権限を持ち、憲兵隊とは違う立場から軍属や軍人が関係する事件の捜査・取り締まりを行っています。

在日米軍基地でも、これらの機関が捜査権限を有しており、必要に応じて基地の外でも活動を行っています。

 見た目は日本車、中身はアメリカ警察。日本の市街地を走る“米軍版覆面パトカー”の正体

これらの活動で使用されるのはもちろん「捜査車両」です。車両には主に日本警察の制服用パトカーに相当する通常のパトカーや、警光灯を外部に装着せず、車内に秘匿設置してボディに『POLICE』マーキングのみを施した、いわゆる“スリックトップ”、そして、ほぼ完全な覆面仕様があります。

こちらはキャンプ座間の米陸軍憲兵(MP)で使用される、いわゆるスリックトップのポリスカーです。

米軍では憲兵は制服や迷彩服を着用することが多いですが、内部犯罪捜査や防諜(カウンターインテリジェンス)などを担う空軍OSIや海軍NCISでは非軍人の文民の捜査官も多く、任務上、カジュアルな私服が活動スタイルです

捜査官の使用する車両も一見するとごく一般的な日本車の乗用車が多く見られます。これらは日本のいわゆる「覆面パトカー」に類似した性質を持ち、外見から軍関係車両とは分かりにくいことが特徴です。

車内装備と識別

米軍捜査車両は通常、日本警察のように外見から赤色灯や警告灯が確認できることはありません。ただし、車内には携帯用無線機、デジタル記録装置、車載コンピューター(MDT)などが設置されている場合があり、任務中はこれらを使って通信や証拠記録を行っています。

また、緊急走行用の装備として車両には青色や赤色のLED警光灯(日本警察で使用するフラットビームに似た型)が搭載されており、任務中や緊急時に使用されることがあります。ただし、これは日本の警察車両とは異なり、あくまで米軍基地内または地位協定の適用下における使用に限定されています。

東京都内、特に米軍横田基地周辺では、ごく普通の国産セダンに見える車両が、突如としてアメリカ警察仕様の赤青灯とサイレンを鳴らして現れることがあります。

東京都福生市に所在する在日アメリカ空軍横田基地では、空軍特別捜査局(OSI: Office of Special Investigations)の第621分遣隊が、独自の捜査用車両を運用しています。

日本の警察における「私服用セダン型無線車」に相当する覆面仕様の車両で、実際の運用例としてはトヨタ・アリオン(グレードA15)が確認されています。

この車両には、在日米軍の車両であることを示す「Yナンバー」が付与されており、外見は日本国内で一般的に見られるセダン車そのものですが、警光灯は車内ダッシュボードに加えて、フロントグリル内にも赤と青のLEDライトが組み込まれており、装備は明らかに「USポリス仕様」です。

注目すべきはそのサイレン音。上記の動画によると、車両のサイレンはアメリカ国内の法執行機関で使用されているものと同じ音色で、日本人にとっては聞き慣れない音が響き渡ります。トヨタ・アリオンのような国産車から、突如として米国式の警告音が鳴り響く様子には強い違和感を覚える人も多いようです。

無線用アンテナについても特徴的です。車両後部のトランクには、根元の太いスプリングベースを備えた無線アンテナが装着されています。

マニアには既に広く知られているように、在日米軍の基地管理等では主に米国の公共保安無線規格「P25(Project 25)」という無線規格を使用しています。このアンテナはそれに対応するものと見られます。このようなアンテナ形状は、日本国内の警察車両ではまず見られない仕様です。

任務と行動範囲

こうした車両はあくまで米軍基地内や地位協定の適用下において運用されるものであり、日本の警察車両とは異なる法的立場にあります。

在日米軍捜査官は、以下のような任務に従事します。

  • 米軍人・軍属による犯罪の捜査(窃盗、暴力事件、薬物事案など)

  • 軍施設への不審侵入者の調査

  • 情報保全と反スパイ活動といった防諜(ただし陸軍警察を除く)

  • 交通事故や死亡事案の内部調査

こうした任務の一部は、日本の警察当局と連携して行われることもあります。とくに、基地外で発生した米軍人による事件では、日米地位協定に基づき、犯罪現場に日米両当局が関与する場合、米軍は容疑者を拘留できる一方で、日本の警察は限定的な捜査権しか行使できません。

これが不平等であるとして、たびたび議論になっているのは広く知られたところです。

まとめーモドキとの混同に注意

これらの捜査車両が日本国内で緊急走行を行う場面は決して多くはありませんが、万一、赤と青の警光灯を点灯させ、アメリカ製サイレンを鳴らして迫ってくるような場面に遭遇すれば、そのインパクトは相当です。とくに米軍基地が身近ではない北海道民などは、「さすが生き馬の目を抜く東京だべ…」と戸惑う者も少なくないはずです。

一般の人々が誤って米軍の捜査車両を「偽覆面パトカー」と誤認するケースもあります。ナンバープレートや行動パターン、車体に貼られた小さなシール類などから判別できる場合もありますが、事前情報として知らない限りは一般的に見分けるのは容易ではないでしょう。


参考情報:

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