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【本物白バイ隊員に敬礼され…】ゴールドウイングの偽白バイで高速道路走った「ニセ交機男」の哀しき逃走劇!?書類送検された実例を解説

や、やりすぎだろ〜!と思わずツッコミを入れずにはいられないモドキ白バイの完成度と逃走劇。1996年、中央自動車道八王子インター付近で起きた、珍事件を振り返る。

世の中には、「やっていいこと」と「笑って済ませてはいけないこと」がある。
でもその境界って、意外とユルい場合もあるようで。

なんと、ニセの白バイに乗った男が、本物の白バイに敬礼されて、慌てて逃走するというコントのような一幕があったのです。

当時の「サンケイスポーツ」の報道記事を振り返りましょう。

白バイが白バイを追跡捕獲──。警視庁八王子署は31日、白バイ隊員そっくりのオートバイと制服で高速道路などを走っていた東京・小平市の飲食店経営の男(34)を軽犯罪法違反容疑で書類送検した。調べによると、男は14日午後、中央自動車道八王子インター付近で、パトロール中の本物の交通機動隊に見つかった。

警視庁高速隊と同じ1500CCのオートバイを白く塗り替え、白バイ警官の着る乗車、高速隊のマーク入りの白ヘルメットをかぶり、巡査長の階級章も手作りしていた。

オートバイの改造は巧妙で、交通機動隊員が、ようやく偽物とわかるほどだったという。

しかし、本物の白バイ隊員が“同僚”に「ご苦労様」と敬礼したところ、あわてて逃げたため、ニセ警官とわかった。

引用元 1996年2月1日付 サンケイスポーツ

とのことです。

当時34歳の男。職業は飲食店経営。ところが彼のもうひとつの顔は、白バイ隊員モドキであった。
趣味が高じたのか、それとも自己顕示欲の暴走か──
彼は警視庁高速隊と同型のバイク「ホンダ・ゴールドウイング」を白く塗装し、なんと交通機動隊の制服も自作。巡査長の階級章までハンドメイドという職人芸。
……まさかの手作り階級章。器用だね!

しかも彼は、あろうことか本物の白バイ隊員に「ご苦労様」と敬礼されるという奇跡の一瞬を迎える。
しかしこの「公式な挨拶」に動揺したのか、急にバイクで逃走し、逆に怪しまれる結果に。

え、逃げるの?
そこは堂々と「どうも!」って返して、そのままやり過ごすんじゃないの?
そうツッコミたくなるほど、惜しい。詰めが甘い。

ちなみに罪状は軽犯罪法違反(第1条第15号の標章等無資格使用)

軽犯罪法1条15号は、官公職、位階勲等、学位などの法令で定められた称号や、外国におけるこれらに準ずるものを詐称する行為、または資格がないのに、法令で定められた制服や勲章、記章などの標章やこれらに似せて作られたものを使用する行為を処罰する規定です。

単に制服や記章を着用するだけでなく、それによって他人に誤解を与え、何らかの利益を得ようとしたり、義務を免れようとしたりする行為が処罰対象となります。

つまり、資格がないのに公務員や特定の職業の制服や記章などを身につけて、あたかもその資格があるかのように装う行為が該当します。

今回のモドキ乗りの犯した罪、それは偽造制服で他人に誤解を与えた罪です。本物の白バイ隊員に誤解を与え、敬礼させた…ということなんでしょうか?(笑)

しかし軽犯罪法、名前のとおり処分も軽めで、罰金か警告レベルで済んでしまうことも多いのです。

  • 軽犯罪法は比較的軽微な犯罪を対象としており、逮捕されるケースは少ないですが、状況によっては逮捕される可能性もあります。

実際、今回の場合は書類送検です。偽装がここまで本格的だったのに、法律的には意外とサラリと片づけられてしまった。

とはいえ、やってることはなかなか本気だった。
だって、あの頃の白バイはナナハンが主流。

そこへ、1500のホンダのゴールドウィングなんて持ってきて、「白く塗って」「マークもつけて」「ヘルメットにまで細工して」って、もうどこまでやるんだというレベル。

なお、かけた金額は合計で400万円。しかし、凄すぎますね。

一体、お帰りの際は隠し場所にどうやってバイク持ってったんでしょうね。自宅にそのまま帰宅ってわけにはいかないのでは……。

本人としては、ちょっとカッコつけたかっただけかもしれない。
でもそれがまさか、「ご苦労様で人生最大のミス」になるとは思っていなかっただろう。

なお、この事件を取り上げたのが『ラジオライフ1996年5月号』です。さらに詳しく今回の記事を解説しており必見です。それによれば。男は「本来右に取り付けるはずの巡査長の階級章を左につけていた」ことや、バイクのケースに表記された文字が警視庁ではなくPOLICEだったこと、赤色灯類は未配線だったそうです。


個人的には、この事件、「やりすぎた男」と「本物に敬礼された瞬間に慌ててバレる」という、シュールな悲喜劇に思う。
なんなら、そのまま一緒に取り締まりしてたかもしれない。

もちろん、これは笑い話で済ませてはいけないことである。
偽装による市民の誤認や、威圧的なふるまいをすれば、それは実質的な「なりすまし詐欺」にもなるし、場合によってはもっと重い罪にも発展しうる。

いくら憧れても、モドキは本物にはなれない…って、この前の福岡のとんでもないモドキ乗りの事件で言及しましたっけ。


というわけで今回は、90年代の“ちょっと残念な男”の事件を軽く振り返ってみました。
この世には「バレなきゃいい」では済まない世界がある。
そして、本物は、案外ちゃんと見ているのだ。

次は「偽交番」とか出てこないといいけれど──(インドにはあったそうです)。

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