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シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

米国ロサンゼルス市警察(LAPD)SWAT隊員によるKimber製1911カスタム横流しは警察官の持つ名誉性の商品化、警察装備品が「権威の象徴」として市場価値を持ってしまう負の側面である

画像の引用元 latimes.com

「最精鋭の警察部隊が手にした拳銃が、いつの間にか民間市場に流れていた──。」

ロサンゼルス市警察(LAPD)のSWATといえば、全米屈指の戦術部隊として知られ、数々の武装犯罪に立ち向かってきた。その象徴ともいえる制式拳銃が、正規の手続きを経ずに警察官自身の手で民間に転売されていた事実が、近年明らかになっている。

高級銃器メーカーKimber製の1911カスタムモデル。LAPD SWATの名を刻んだこの銃は、いつしか収集家の間で「伝説のモデル」として高値で取引される存在となっていた。その裏で、警察内部では何が起きていたのか。

ここでは、アメリカ・ロサンゼルス市警察(LAPD)におけるSWAT隊員による拳銃横流し事件を中心に、事実関係を掘り下げる。これは、LAPDという全米有数の警察組織の信頼性を揺るがす不祥事であり、SWATの象徴性・武器管理・倫理観の問題を含んでいる。制度の隙を突いた「警察装備品横流し」の実態に迫る。

■ 事件の概要:LAPD SWAT隊員による拳銃の不正売却

LAPD(ロサンゼルス市警察)所属のSWAT隊員や特別捜査班(SIS)の一部が、部隊向けに購入されたKimber社製の拳銃を、割引価格で私的に取得し、民間市場で高額転売していた疑いで、FBIや内部監査による調査対象となった

  • 発覚時期:2018年~2021年にかけての調査・報道

  • 関与者:元LAPDのSWAT隊員であり、銃器担当の職員も含む複数名

  • 疑惑内容:LAPD SWATに納入された特殊拳銃を、法的手続きを経ず民間人向けに不正転売していたというもの

  • 該当銃器:主にKimber製のM1911系拳銃(※LAPD SWAT向けの限定カスタムモデル)

  • 販売数:数十丁~100丁近くが流通したと報道されている

  • 2010年:SWAT装備の在庫確認中、部隊約60人に対して約51〜324丁のKimber拳銃購入記録が発見された

  • 日常価格:約600ドル(LAPD割引)。転売価格は約1,600〜3,500ドル

  • 当初の内部調査は不十分とされ、その後、FBIと警察監察官(Inspector General)が改めて捜査開始


■ 事件の構図

LAPDの一部SWAT隊員らは、LAPD SWAT公式拳銃として納入されたKimber製M1911を「余剰品」あるいは「記念品」名目で取得し、それを転売目的で民間ディーラーや個人コレクターに販売していた。

銃器取引の情報が初めて表面化したのは2010年、銃器の在庫調査で銃が紛失していることが判明した時だった。ロサンゼルス市警の内部報告書によると、SWAT隊員らはキンバー社製の拳銃を51丁から324丁購入し、利益を得るために転売していた疑いがある。

引用元 https://abc7.com/archive/8790241/

手口の特徴:

  • 公的装備品の「記念品」「払い下げ」としての名目で個人が取得

  • それを合法市場(=許可を受けた銃器ディーラー経由)で高値で売却

  • 特に、LAPD SWAT刻印入り拳銃は収集家に人気があり、1丁あたり数千ドルのプレミア価格で取引された


■ 法的問題点

  • アメリカでは法執行機関に支給された武器を私的に転売することは禁止されている(特に連邦資金または警察予算で購入された場合)

  • 銃器売買はATF(アルコール・タバコ・火器取締局)の厳格な監督下にあり、記録・登録・販売ルートが法的に定められている

  • これに違反した場合、違法銃器流通、横領、公的資産の私的流用、詐欺、背任罪などが問われる


■ 社会的波紋

この事件は、単なる個人の不正では済まされない。

  1. LAPD SWATという全米の精鋭部隊での不祥事

    • SWATは「市民を守るプロフェッショナルの象徴」であり、武器の信頼性・管理責任が非常に重い

    • そのSWAT隊員が「記念品名目で個人利益を得ていた」という構図は、職業倫理の根幹を揺るがす

  2. 「英雄性」の商品化

    • LAPD SWAT刻印拳銃は、「使われた(とされる)武器」という付加価値」で高値を生みやすい

    • これは、法執行機関の装備が市場で投機的な価値を持ちうるリスクを象徴している

  3. 制度上の管理不備

    • LAPD内での装備品管理・廃棄・記録体制の緩さも問題となった

    • 一部では「指導的立場の幹部が容認していた」との報道もあり、組織ぐるみの黙認体質も指摘されている


■ LAPDの対応と再発防止策

  • 内部調査と懲戒処分を実施

  • 関与が明らかになった職員には懲戒免職・刑事訴追が検討され、複数人が辞職

  • 拳銃の保管・廃棄・記録に関する内部手続きの厳格化

  • Kimber社との間で、「LAPD SWATモデル」の商業販売制限措置の協議が報じられた

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■ まとめ

この事件は、SWATという武装精鋭部隊の象徴的な武器が、制度の隙を突いて私的利益に流用された事例である。

背景には、警察官の持つ名誉性の商品化、さらに警察装備品が「権威の象徴」として市場価値を持ってしまう文化的側面と、警察内部のガバナンス不足がある。

事件はLAPDにとって大きな汚点であり、同時に警察装備の管理・倫理・法制度の運用がいかに脆弱かを露呈するものでもあった。今後、こうした事例は公的装備の売買・記念品化の是非そのものに対する議論にもつながっていくだろう。

🔗 主な報道・公的ソース一覧(時系列・内容別)

▶ 1. 事件の初報・調査の開始報道


▶ 2. 専門誌・業界メディアによる検証

  • Police Magazine
     https://www.policemag.com/special-units/news/15338394/lapd-swat-members-investigated-for-reselling-guns
    (警察業界誌による事件構図とSWATとの関係の分析)

  • The Truth About Guns
     https://www.thetruthaboutguns.com/lapd-swat-pistol-sales-scandal/
    (LAPD SWATモデルのKimber拳銃が収集家向けに転売されたと指摘)


▶ 3. 銃器メーカーKimberの言及(間接)


▶ 4. 装備管理・部隊の背景参考資料

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