【お知らせ】
シグナリーファン編集部では、警察装備や運用に関する国内外の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、本記事もそれらの調査結果に基づいて構成しています。

暴対版SPこと身辺警戒員(Protection・Officer=PO)とSPの違いとは?

※記事のバナー画像は佐賀新聞社の報道『民間人守る「身辺警戒員」を指定 佐賀県警【佐賀新聞】』から引用したもの。

2012年2月、警視庁を含む全国の警察本部に新たな任務として導入された「身辺警戒員(Protection Officer=PO)」という存在は、警察官の職務の中でも比較的新しいカテゴリーである。

その性質から、しばしば「SP(セキュリティポリス)」と混同されがちだが、POとSPでは任務の範囲も対象も大きく異なっている。

ストライクアンドタクティカルマガジン 2021年 11 月号 [雑誌]

ストライクアンドタクティカルマガジン 2021年 11 月号

今回は警察官の新しい任務『PO』について考察する。

SPとPOの違いは明確

SPの警護対象はごく稀な例外を除いて、国賓、政治家のうち大臣クラス、政党代表、都知事など公職に就く上級国民のみだが、POの警護対象は上級以外の民間人、すなわち一般市民となっている。

【悲報】警視庁SPさん、警護対象者の「動く壁」だった

しかし、ただの民間人ではなく、主に暴力団から襲撃される恐れのある市民である。

暴力団から襲撃される恐れのある市民とは?

暴力団から襲撃される恐れのある市民とは、すなわち暴力団の不当な要求や脅しに屈しない市民たちのことだ。

暴力団排除活動に積極的で、警察と密接に協力する地域住民のリーダーや、暴力団からみかじめ料など、義務のない要求を拒否して突っぱねる事業者たちは、これまで幾度となく暴力団側から報復を受けてきた。

さらには一般市民だけでなく、暴力団捜査に関わっていた退職警察官、さらに裁判で暴力団に不利な証言をする元暴力団員なども命を狙われる可能性がある。

暴力団から報復の危険性が及ぶ可能性のある、これら対象者を護るため、その身辺警戒に当たる警察官がPOというわけだ。

POの所属は(警視庁の)SPと同じ警備部ではない?

SPと違い、POは部署ではなく各警察官ごとの指定制度であり、部署によらずPOとして能力のある警察官が個別に指定される運用だ。

一例として、青森県警の公表している刑事部の通達、訓令・通達『青森県警察身辺警戒員運用要領』に拠れば、身辺警戒員の指定等に関する事務は組織犯罪対策課において行うとしているが、POに指定される警察官自体は刑事部内の捜査一課、二課、機動捜査隊、さらに所轄署員など、幅広いことがわかる。

また、千葉日報の報道によれば、千葉県警では200人の警察官がPOに指定されているが、その人員の所属部署は県警本部刑事部のほか、警備部(機動隊員含む)、さらに各所轄署員が指定されており、暴力団対策に専従するいわゆる『組対』の捜査員に限ってはいないようである。

都道府県によっては、刑事部門以外に所属する警察官がPOに指定されることも稀ではないようだ。

[amazonjs asin=”4396345593″ locale=”JP” title=”PO 守護神の槍 警視庁身辺警戒員・片桐美波 (祥伝社文庫)”]

POの実力は?最高峰とも言われるSPの警護とのレベル差はどうか?

共同通信の報道により、彼らの任務の一部が判明しているが、同社ではまさに「暴対版SP」と呼んでいる。

POはSPのように専用のバッジを襟に着用するとしている。

上記の動画は東京都内の施設で行われた「身辺警戒員」に指定された警視庁警察官らによる公開訓練の様子。

警護対象者役に襲い掛かる襲撃者役をねじ伏せるPOの男性警察官ら。

また別のPOはそのまま警察車両の後部座席へ警護対象者役を乗せて現場から離脱する様子がわかる。

その警護の手法はSPのそれを踏襲しているようだが、あくまで普段の訓練を公開したものであり、自ら手の内を明かすことなど当然しないだろう。

別の場面では女性POの存在も確認できるほか、警視庁POの警察官が手にするけん銃は回転式のほか、自動式大型けん銃も確認できる。

お伝えしているとおり、警視庁のSPにはベレッタ社の大型軍用けん銃シリーズ『92FS』系統のモデルが配備されていると見られる。

こちらは佐賀新聞社の報道した佐賀県警POの公開訓練の動画だが、こちらのPOは回転式けん銃を手に、セダン型警察車両から身を乗り出して周辺を警戒している様子がわかる。

SPと同様、防弾アタッシュケースを手にするPOも確認できる。

この警護車両は反転式赤色灯を備え、SPや警護員用に配備されるエスコートカー(警護車)のようだ。

警護車は一部防弾施工が行われており、けん銃程度の銃撃には充分耐えうる防護性を持つ。

1994年、福岡県警が歴史上初めて暴対SP隊を結成

なお、このPOの先行導入事例は1994年の福岡県警の「暴力団事件における被害者等保護対策専従員」が初とみられる。

【POの元祖だった?】1994年、福岡県警に「暴対SP隊」発足─当時の「民事介入暴力」と“証人警護”の背景

実働部隊として、県警本部や各警察署から柔道2段以上かつ30歳未満の、いわゆる士気旺盛な若手警察官を精選し、隊員として登録。総勢は300人以上にのぼる見通し…と当時の朝日新聞で報じられている。

“暴対版SP”ことPO発足は警察の新たな暴力団対策の一環

そもそもPOの発足が全国で進んだのは暴力団への利益供与などを禁じた暴排条例が全国で施行された2011年10月とほぼ同時期。

つまり、警察が社会全体の暴力団排除を支えるために打ち出した新たな実践的対策である。

したがって、SPに比べると歴史は浅く、専従のSPとは異なる性格を持ちながらも、目的は同じく「警護対象者の命を守る」ことにあり、その対象を要人から地域の市民へと広げたという点において、現代の治安政策の一断面を象徴する制度と言えるのかもしれない。

【動画】安倍元首相の国葬にて首相SPが現場警備責任者の不手際を見かねて指示出し→責任者が『うるさい!黙れ!口出すな!』と市民の前でSPを罵倒→大炎上!

Visited 89 times, 1 visit(s) today

\ 最新情報をチェック /