自衛隊の中で唯一、レンジャー課程教育や集合訓練を実施して、それを修了した隊員にレンジャー資格を与えとるんが、陸上自衛隊や。
陸自で『レンジャー』っちゅうたら、このレンジャー訓練と、それを修了した隊員に与えられるMOS(付加特技)、つまりレンジャー有資格隊員のことを指すんやで。
レンジャー訓練っちゅうのは、主に野外でのサバイバル(生存自活)技術を学ぶもんで、ロープ技術、徒手格闘、地図判読、潜伏からの襲撃、爆破、それにボートを使った水路潜入なんかの特殊作戦を遂行できるようにするための教育が行われるんや。
ほんでな、このレンジャー訓練で一番大事なんは、体力と協調性、そして絶対にくじけへん精神力を鍛えることやねん!

陸自ではな、部隊ごとにちゃうレンジャー養成教育が行われとって、各地の普通科連隊が持ち回りでやる部隊集合教育のほかにも、富士学校(静岡県御殿場市)で実施される幹部レンジャー課程やら、アルペンレンジャー課程、冬季レンジャー課程っちゅう感じで、いろんなコースがあるんや。
で、駐屯地ごとに持ち回りでやる部隊レンジャー訓練より、特定の課程教育レンジャーのほうがだいぶ過酷やとされとる。
その中でも特にエグいんが、第1空挺団の空挺教育隊が実施する 『空挺レンジャー課程(幹部/陸曹)』 や。陸自のレンジャー教育の中でも 最高峰 やで。
ほな、駐屯地ごとの集合教育、つまり部隊レンジャーの訓練は生半可なんかっちゅうたら…… んなワケあるかい!
部隊レンジャーでも、課程教育レンジャーでも、そもそもレンジャー教育を受ける前に 素養試験(予備試験) っちゅう足切りの体力検査があってな、そこで落ちる隊員もゴロゴロおるし、途中で 「アカン!ワイには無理や!」 ってなって原隊復帰する学生もぎょうさんおるんや。
そんな鬼みたいな訓練を最後まで生き抜いた奴だけが、ダイヤモンドをモチーフにした 『レンジャーき章』 を授与されて、 堂々と「レンジャー!」 って名乗れるんやで。
ほんで、このレンジャーき章を胸につけた隊員はな、陸海空の全自衛隊員はもちろんのこと、 「オゥ、ヤベェな!」 って感じで、同盟軍のアメリカ兵からも ガチで一目置かれる存在 になるんや!
陸上自衛隊に大規模な常設の”レンジャー部隊”はない
それぞれの項目に飛べます
水陸機動団とか、特殊作戦群みたいな特殊部隊には 「レンジャー小隊」 っちゅう小規模なレンジャー部隊があるんやけど、陸自で 「レンジャー」 っちゅうたら、そら部隊のことやなくて、あの地獄訓練を生き延びた勇者たちのことやねん。
つまり、「レンジャー部隊」っちゅう大規模な編制は陸自には基本的に存在せえへんのや。
ただ、レンジャー訓練を完走した者だけが 『レンジャーき章(バッジ)』 を授けられて、「レンジャーや!」って名乗れるんやで。
せやから、 「レンジャー」=資格者のこと であって、普通は部隊のことを指すわけやないんやな。
これは 海自や空自も含めた3自衛隊共通の話 で、 大規模な”レンジャー部隊”ってのはどこにも存在せえへん っちゅうことや。
――とは言うてもな?
例えば 第1空挺団 なんかは、後方支援要員を除いたら、ほぼ全員がレンジャー資格者っちゅうヤバい部隊やねん。
せやから、編制上は「レンジャー部隊」やないけど、 実質的には完全にレンジャー部隊やんけ! って言われてもしゃあない状態や。
要するに、「レンジャー部隊」は正式には存在せんけど、「実質的にレンジャー部隊」は確かにおる っちゅう話やな!
また、前述の特戦群ではレンジャーに加えて空挺資格が必要なんや。
受験者はレンジャーと空挺資格を有していないとダメなのですが、両方の資格を持っている、自信満々の陸曹でも選考検査からどんどん落ちます。
出典 特殊作戦群初代群長・荒谷卓氏インタビュー https://musubinosato.jp/wp-content/uploads/2019/09/SAT.pdf
そして前述のように、2002年に西部方面普通科連隊として発足し、2018年に日本初の水陸両用部隊として再編制された水陸機動団の第1水陸機動連隊ではレンジャー小隊が常設なんや!

今や 「日本版海兵隊」 っちゅう異名を持つ陸上自衛隊水陸機動団やけど、ここの隊員はみんな鍛え抜かれとる。
特に 「レンジャー小隊」 は、自衛隊で常設のレンジャー部隊として編成されとるんや。
けどな、別にレンジャー小隊の隊員だけがヤバいんやなくて、一般隊員にも猛者がゴロゴロおるっちゅう話や。
このレンジャー養成教育っちゅうのは 陸自の普通科隊員がメインで受けるんやけど、実は 海自の特別警備隊(SBU) や 空自の航空救難団メディックみたいな各自衛隊の精鋭も受けることがある。
せやから、課程を修了したら 海自や空自の隊員でも陸自の「レンジャーき章」 を授けられるんやで。
ほんでな、レンジャーちゅうのは、いざ有事になったとき、メイン部隊とは別行動をして、敵陣の奥深くに潜入、重要拠点を攻略するっちゅう 「死ぬかもしれん任務」 を任されるわけや。
補給もロクに受けられへんような状況でも「絶対に諦めへん」っちゅう鋼のメンタルと普通とはちゃう死生観(特別な死生観)が求められる。
けどな、戦場だけやのうて災害派遣でもレンジャーは大活躍しとるで。
実際、各師団にはレンジャー資格者を集めた臨時の偵察小隊が作られて、被災地にいち早く突っ込んで情報収集するのが鉄則なんや。
戦場やなくても、ヤバい状況で頼れるんはレンジャーっちゅうこっちゃな。
レンジャー訓練の門は狭い!まずは「素養試験」突破せなアカン
「レンジャーなりたい!」言うても、全員が訓練受けられるわけやない。
まずは「素養試験」っちゅう鬼のような選抜試験に通らなアカンのや。
この素養試験、ざっくり言うと 体力検定、身体能力検査、水泳検査 に分かれとって、全部で15項目の試験がある。
主なもんを挙げると…
- かがみ跳躍、懸垂、腹筋 → まぁ筋トレやな。
- フル装備で小銃を持ち、2,000mを9分30秒以内で走る → こんなんしんどいに決まっとる!
- 手榴弾を30m投げる → 30mやぞ!下手なピッチャーより飛ばさなアカン!
こんな感じで、すべての試験をクリアせな「レンジャー課程」に進めへん っちゅう、マジで地獄の登竜門や……。
例えばやな、北部方面隊(北海道防衛担当)では、毎年80人くらいの新レンジャー資格者が誕生しとるけど、実際に合格率はなかなか厳しいもんや。
2008年に滝川駐屯地でやった素養試験では 志願者48名のうち、合格者は32名。
つまり 3割以上が脱落しとるわけやな。
レンジャーになるには、「行きたい!」やなくて「行けるやつだけ来いや!」 っちゅう世界やねん!
女性自衛官はレンジャー訓練を受けられる?
これまで防衛省が掲げてきた『母性保護政策』がちょっとずつ変わってきとるんは確かや。
ほれ見ぃ、海自の特別警備隊にも女性隊員が入れるようになったし、空自ではすでに女性戦闘機パイロットが大空を駆けとる。
でもな、令和6年現在、陸自ではレンジャー訓練に女性隊員が参加することは、まだ認められてへんねん。
防衛省の公式資料「平成25年版 まんがで読む防衛白書(HTML版)」にも、はっきり「レンジャーに女性隊員はいない」って書かれとる。
せやけど、これから先の話はわからんで?2020年には、第1空挺団で「基本降下課程」を修了した女性空挺隊員が誕生しとるんや。
ほな、レンジャーにも女性が入る日が来るかもしれへん。
部隊ごとに多様なレンジャー教育とその内容
獄の始まり——レンジャー教育、体力調整の段階で既に詰む奴続出!
レンジャー養成教育は毎年5月下旬から約3カ月間。普通の人間の感覚で「3カ月か、そんな長ないな」と思ったら大間違いやぞ!
そもそも訓練が始まる前の『体力調整』の時点で、もう地獄の門、開いてるねん。
「体力調整?それは準備運動みたいなもん?」 ちゃうちゃう、そんな甘いもんやないで!
腕立て、懸垂、スクワット、そんなんをアホ回数やらされる。
で、当然ながら逃げ場はない。すでにこの時点で「あれ?なんで俺、レンジャー志願したんやろ?」って悟り始める奴もおるらしいで。
そこから本格的な訓練が始まるんや。
かがみ跳躍、ロープ渡り、ロープ登り、そして『徒手格闘』。
これはな、素手での白兵戦の技術や。
せやけど、実際のところ「素手で敵と戦う場面なんかあるんか?」とか考える余裕はない。
ただもう、「痛い!しんどい!あかん!」の繰り返しや。
「10マイル武装走」——あんたの足はまだ生きとるか!?
レンジャー教育の中でも「これは無理やろ!」と叫びたくなる訓練のひとつが「10マイル武装走」やっちゅうはなしや。
3.5kgの89式小銃を胸の前で抱えて、荒れたオフロードを16km駆け抜けるっちゅう鬼畜ルール。
「イチ、イチ、イチニ!(ソーレ!)」
「イチ、イチ、イチニ!(ソーレ!)」
全員で声をそろえて走るんやが、教官と助教が後ろからギラ目で見とる。
助教「おい、レンジャー学生○○。駄目じゃないか。腕が下がっているよ。上げたまえ(ニコッ」
この「ニコッ」が一番怖いんやてよ〜。優しい顔してるけど、その後に待っとるのはさらなる地獄やからな!
殉職の可能性?せやから遺書を書くんや!
レンジャー訓練がどれだけ過酷かって話やけど、実際に過去には訓練中の事故で殉職した隊員もおるんや。
せやから、レンジャー訓練に参加する前には、みんな家族や親に向けて遺書を書くんやで。
「そんな大げさな!」って思うかもしれへんけど、レンジャーにとっては生きるか死ぬかの訓練なんや。
せやから、遺書は単なる儀式やなくて、ほんまに「もしもの時のため」のリアルな準備なんやな。
【地獄の開幕】バディの存在
「バディ」——それはレンジャー教育で生き抜くための最初の大きなハードルや。教育期間中、学生はみな二人一組になり、互いをバディ(相棒)と呼び合う。
「もう無理や…」
「あかんって、レンジャーはこんなところで諦めるもんちゃうで」
疲労やつらさに迷う時、怒鳴く助教にギャオられる時、手を伸ばしてくれるのがバディや。
せやけど、ほんまに過酷な訓練やから、心折れるヤツもおる。2015年には京都の福知山駐屯地で、レンジャー訓練中の陸曹が脱柵(要は逃げ出した)して、実家に帰ってもうたことがある。
そんで、停職3日の懲戒処分や。これ、正規雇いの陸曹ですら音を上げるほどの訓練やっちゅうことやで。
そんなガチでハードな教育を乗り越えた者だけが、特別な死生観を持つレンジャー資格者となるんや。
レンジャーの象徴でもある、ロープ技術の教育
レンジャー教育には「水夫渡り」というロープ講習がある。
ロープの上に、右足の甲をかけ、左足は下に垂らして、両腕の力だけで前進する。
「手が抜けそうや」
言いたいけど言えへん。自分の体重が全部腕にかかるし、しかも背中には武装をびっしり押し付けとる。
後半:実戦シミュレーション

出典 : 陸上自衛隊北部方面隊公式サイト「平成29年度レンジャー養成教育」https://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/kunnrenn/rireki/29ranger/29ranger.html
ここからが本番や。
演習場の山にこもり、実際の戦闘をシミュレート。爆薬を使った戦闘訓練や、水路潜入訓練でボートの扱いを学ぶ。
レンジャー教育のクライマックスが「敵指揮所の襲撃」や「敵指揮官車両への伏撃」や。これはレンジャーのメイン任務でもあるんやな。
忍び寄り、好機をじっくり待ち、一気に敵を叩き潰す。走る敵車両縦隊を待ち伏せ、襲撃で無力化。
敵指揮官を武装解除し、捕虜にする。まさに特殊部隊の仕事や。
レンジャー教育中のメシ
レンジャー訓練は山での襲撃だけやない。一旦山へ入れば、飲まず食わず、寝ずが当たり前や。
食事は戦闘糧食(レーション)やけど、訓練が進むにつれてそれも減る。
そこで行われるんが生存自活訓練。
- 山に自生する山菜を採って茹で、塩もみして食う
- 自分でニワトリを絞めて捌き、調理、食う
- 助教が捕まえたor業者が山に放したヘビを食う
さらに、訓練の一環で、カエルを見せられて「これも食べられるぞ」と助教がニヤリ。
「ウゲェ……」と嫌がるヒマもなく、自分らでカエルをさばき、サバイバル飯の材料となるんや。
まぁ、これもすべて”戦場で生き延びる術”や。
最終想定を乗り越え、帰還式へ。そして待っているのは——
最終想定任務をクリアし、すべての訓練を乗り越えたレンジャー学生たち。
彼らはボロボロになりながらも、誇り高く駐屯地のゲートをくぐる。
そこには——
同期の仲間たち、上官、幹部隊員、そして家族や恋人が待ち構えている。
彼らが帰還するその瞬間、拍手と歓声が沸き起こるんや。
「おかえり!」
みんなの目には、誇りと尊敬の念が宿る。
レンジャーき章の中央にはどんな困難でも乗り切り、任務を達成する絶対不屈の堅固な意志の象徴として金剛石=ダイヤモンドが配置され、勝利を象徴する月桂樹がそれを誇らしげに囲む。
「レンジャーき章」——不屈の証
駐屯地の中央、整列するレンジャー学生たちの前へ、連隊長が進み出る。疲れ切った彼らに向けて、ねぎらいの言葉が贈られる。
そして、一人ひとりの首に、栄光の「レンジャーき章」がかけられる。
き章の中央には、絶対不屈の意思を象徴する金剛石——ダイヤモンド。
それを勝利の象徴である月桂樹が誇らしげに囲んでいる。
これは、己の限界を超え、困難を乗り越えた者にのみ授けられる勲章。
「レンジャー」を名乗る資格を得た者だけが、その誇りを胸に刻むことができるんや。
これこそが、自衛隊のレンジャー資格を持つ者の証、不屈の精神を持った隊員のみに与えられる栄光のバッジや。
こうして帰還したレンジャーたちには、つかの間の休暇が与えられるんやて。
自衛隊のレンジャー訓練に参加して密着取材までした杉山隆男の兵士seriesは1996年に新潮学芸賞を受賞した作品で、それまで日陰者でマスコミには事あるごとに叩かれる存在であった自衛隊および自衛官の実際の活動や訓練に密着取材して書き下ろされたノンフィクションなにゃ。
一部隊、一隊員それぞれをクローズアップして取材した本書はレンジャー訓練にも密着取材しており、本書を読めば厳しい訓練を垣間見ることが出来るで。
レンジャー資格取得後の現実
命を賭け、極限を乗り越えて得たレンジャー資格。
せやけど、「レンジャー資格者は昇進に有利」とは公式には言われてへん。
例えば、任期制の陸士がレンジャー資格を取っても、それが直接的に陸曹昇任に影響するかは明言されてへんのや。
また、西部方面普通科連隊にある常設のレンジャー班や、特殊作戦群(SFGp)の隊員には「特殊作戦隊員手当」が支給されるけど、一般のレンジャー資格者には「レンジャー資格手当」は存在せえへん。
ボーナス査定がちょっと上がるくらいのもんで、実質的には給料は変わらんのが現実や。
せやから、「金のためにレンジャーを目指す」隊員なんかおらん。
彼らは、己の限界を超え、弱さを克服し、誇りのために戦ったんや。
陸自におけるレンジャー訓練のまとめ
✅レンジャー訓練は、潜行・伏撃・襲撃といった特殊作戦を遂行するための要員を育成する
✅部隊レンジャー・幹部レンジャー・空挺レンジャーなど複数の種類がある
✅第1空挺団の「空挺レンジャー」は名実ともに最恐
✅陸自に「常設のレンジャー部隊」はないが、災害時には資格者を招集し、偵察小隊を編成する
✅希望しても素養試験に通らなければレンジャー訓練は受けられない
✅レンジャー訓練ではヘビを食べる(ガチ)
✅現在、女性自衛官はレンジャー教育を受けられない(防衛省の方針)
✅海自の特殊部隊・空自のパラメディックも、陸自のレンジャー訓練を受けて資格を持っている
✅特殊作戦群(SFGp)に入るにはレンジャー資格が必須
✅レンジャー資格者手当は存在しない
最後にひとこと——
「あまりレンジャーを怒らせんほうがええ……」
このようにまとまりました。
参考文献
『学校で教えない自衛隊』並木書房 荒木肇 様
北海道自衛隊機関紙ひがし北海道だより 様
『大変貌するニッポン自衛隊』2012年 04月号 (徳間書店/週刊アサヒ芸能増刊) 様
チャンネルNippon 様
http://www.jpsn.org/essay/chat/3006/
自衛隊公式サイト 栄光のダイヤモンドを掴む~レンジャー帰還式~ 様
http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/katudou/butaikunren/ranger/04.html