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シグナリーファン編集部では、自衛隊の装備や部隊について防衛省の公開情報・公式資料・報道記事・学術文献を継続的に調査・分析しており、それらの調査結果に基づいて記事を構成しています。

自衛官が絶対買う腕時計が『G-SHOCK』なのはなぜ?自衛隊の支給品腕時計はない?

バナー画像の出典 陸上自衛隊米子駐屯地

自衛隊員が勤務中に着用している腕時計は、基本的に隊員個人の私物である。めったなことでは官給品として支給されることはない。とはいえ、規律維持における時間管理を個人のアイテムにおいて強く求められるのは言うまでもない。

なお、世界の軍隊と腕時計事情は別項にてご紹介している。

世界の軍隊と腕時計事情

自衛官のほとんどが『CASIO G-SHOCK』のヘビーユーザーである

冒頭で述べた通り、一般隊員に対しては基本的に腕時計の官給品は存在しない。しかし、実際には一部の特定職種に限り、時計が支給されていた例も確認されている。

この点については、あかぎひろゆき氏の著書『元自衛官しか知らない自衛隊装備の裏話』に具体的な記述がある。同書によれば、航空自衛隊および海上自衛隊に所属するパイロットには、国産のクロノグラフが支給されていたという。使用されていたモデルは明記されていないが、市販品の裏蓋に管理番号およびサクラマーク(桜花章)が刻印されたものが用いられていたとされている。

また、海上自衛隊の潜水員(ダイバー)には、カシオ製の腕時計が支給されていたという情報も記されている。これらの支給が現在も継続しているかどうかは不明であるが、少なくとも一部の専門職に対しては、任務遂行に必要な装備として腕時計が官給品として扱われていた実例があるということになる。

そのうえで、実際に自衛官たちがどのような腕時計を使用しているのかを把握するために、筆者は部隊写真や広報資料、また現場での観察を通じて調査を行った。その結果、極めて高い頻度で使用されていたのが、カシオの「G-SHOCK」シリーズであることがわかった。

G-SHOCKは、耐衝撃構造、防水性能、視認性、電池寿命などに優れ、過酷な環境下で任務を行う隊員にとって理想的なツールとなっている。とくに陸上自衛隊や航空自衛隊のフィールド訓練において、G-SHOCKの着用率は極めて高い。野外活動に適した堅牢性と実用性が、その信頼の根拠と考えられている。

画像の出典 https://www.youtube.com/watch?v=w9yUb8sDuzw&t=188s

迷彩服を着て野外で任務に当たる普通科や施設科の隊員にもG-SHOCKがダントツの人気

特に自衛官の間で人気を集めているG-SHOCKの代表的なモデルが「5600シリーズ」である。このシリーズが広く知られるようになったきっかけは、1994年公開の映画『スピード』において、主演のキアヌ・リーブスが演じるSWAT隊員が着用していたことによる。そのため「スピードモデル」と呼ばれるようになり、現在でも高い人気を誇っている。

なかでも定番として愛されているのが、オールブラック仕様の「DW-5600BB-1」である。そのシンプルかつ無骨なデザインは、ミリタリースタイルとも親和性が高く、現場でもプライベートでも違和感なく使用できる。厚みがさほどないのも使いやすいのだ。

近年では、電波時刻修正機能と太陽光発電機能(タフソーラー)を備えた「電波ソーラー仕様」のモデルも高く評価されている。壊れにくく、時刻がズレず、電池も切れない――この3拍子がそろったG-SHOCKは、過酷な任務に臨む自衛官にとって非常に理想的な時計といえるだろう。

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実際に、報道写真、広報誌『MAMOR』、訓練ドキュメンタリーなどを確認すると、G-SHOCKを着用している自衛官は非常に多い。特に演習のように時間管理が重要となる場面では、電波で時刻を自動修正する機能が重宝されている。1分1秒のズレが作戦全体を台無しにしかねない状況下では、正確性は何よりも重要だからである。

さらに、小銃を射撃した際の激しい反動は手首にも大きな衝撃を与える。このような環境で使用することを考慮すると、耐ショック性能に優れたG-SHOCKが最適な選択肢であることは言うまでもない。

価格面においてもG-SHOCKは優秀であり、手頃な価格ながら高い性能を備えているため、自衛官のみならず、米軍兵士やアメリカの警察官など、世界中の現場で活躍する人々に支持されている。

インターネット上のQ&Aサイトなどでも、「彼氏が自衛官なんだけど、プレゼントにおすすめの腕時計は?」といった質問に対し、G-SHOCKを推す声が多数を占めている。「彼女が自衛官」という立場で贈る側の男性であっても、実用性と信頼性を備えたG-SHOCKを選べば、まず間違いはないだろう。

なお、G-SHOCKに次いで一定の人気を集めているのが、同じくカシオ製の『プロトレック』シリーズである。これは登山家向けに設計された腕時計であり、気圧計・高度計・コンパスといった機能を備えている。山間部での任務や演習において特に有効であり、山屋系の自衛官には特に好まれているようだ。

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G-SHOCKのラインナップには、アメリカ国防省が制定した「MILスペック」に適合したモデルもある。

また、G-SHOCKの一部モデルはアメリカ国防総省が定めたMIL規格(MIL-STD-810)にも適合しており、その耐久性と信頼性は折り紙付きである。ちなみに、1986年の映画『ハートブレイク・リッジ』では、クリント・イーストウッド演じる鬼軍曹がCASIO「DW-300」を着用しており、これはG-SHOCKの原型とされるモデルである。

以上のことから、自衛官の間では高級ブランドの腕時計よりも、現場での使用に耐えうる実用性・耐久性を重視したモデルが主流であるといえる。G-SHOCKはその代表格として、今後も自衛官たちにとって頼れる“相棒”であり続けるだろう。

各種機能別G-SHOCK

実は、G-SHOCKには各種のシチュエーションに対応したモデルがシリーズ化されている。

モデル名 特徴 耐衝撃 防水 電波受信 ソーラー 価格帯 備考
DW-5600BB-1 スピードモデル。クラシックデザイン 20気圧 × × 1万円前後 映画『スピード』人気モデル
GW-M5610-1JF 電波+ソーラー搭載の定番モデル 20気圧 1.5〜2万円 実用性重視の進化版スピード
GW-B5600BC-1BJF Bluetooth接続・タフソーラー 20気圧 2〜2.5万円 樹脂+メタルコンポジットバンド
RANGEMAN GW-9400J-1JF トリプルセンサー搭載・ミリタリーモデル 20気圧 3〜4万円 方位・気圧・温度計測可能
MUDMASTER GG-B100-1A3JF 耐泥・高耐久仕様の陸自向けタフモデル 20気圧 5万円前後 振動・泥・衝撃に強い
GPR-B1000-1JR G-SHOCK初のGPSナビ対応モデル 20気圧 9〜10万円 行動ログ取りに。特殊さん向け

フロッグマン

いわゆる「ダイバーズウオッチ」であり、ISOが定めるダイバーズウォッチの規格に準拠している。潜水任務がある自衛官ならフロッグマンシリーズがオススメである。

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マッドマン

陸海空を問わない、耐衝撃構造、防塵・防泥構造のオールマイティーなタフさを兼ね備えたマッドマン。

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さらに強靭なMUDMASTERもある。

レンジマン

マッドマンより、さらに過酷な環境に対応させたモデルである。トリプルセンサーを搭載した高機能モデル。

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ガウスマン

対磁性能を持った唯一のシリーズである。

「自衛隊公式腕時計」とは

インターネット通販などで「自衛隊採用腕時計」という商品を見かけることがある。「防衛省本部契約商品」といった説明が添えられている場合もあり、「自衛隊で公式に隊員へ支給されている時計」と誤解する人もいるかもしれない。

これらの時計は「官給品」ではなく、「市販品」である。

これらの時計は、防衛省の契約ルートを通じて、基地や駐屯地で隊員から注文を受け付けているものであり、製造は国内メーカーが行っている。陸・海・空それぞれの部隊をモチーフにした意匠が施され、デザイン性の高い製品ではあるが、あくまで個人購入の対象である。

自衛隊と腕時計のまとめ

自衛隊では、原則として腕時計の支給は行われておらず、隊員は各自の判断と資金で適切な時計を選んでいる。耐久性・信頼性・実用性を兼ね備えたG-SHOCKがその代表格として広く支持されていることは間違いない。

自衛隊内の売店(PX)ではG-SHOCKが数多く取り扱われており、よく売れているという。

ただし、「自衛官=G-SHOCK」と単純化するのは正確ではない。たとえば、航空自衛隊のパイロットや海上自衛隊の潜水員といった特殊な職種の一部には、任務に必要な特殊機能を備えた腕時計が支給されるケースも存在していた。

また、元隊員によれば「平時は1本で足りるが、海外派遣任務の際には2本以上の時計を用意するのが当然」という。

今後、もしNavy SEALsのように、自衛隊の特定部隊にG-SHOCKが制式採用されるようなことがあれば、それは興味深い。しかし現状では、自衛官の腕元を支えるのは、彼ら自身が選び抜いた「信頼できる一本」である。

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