ご存じのように緊急車両といえば、警察や検察のような法執行機関以外にも消防や各地方公共団体、国の機関、電力、ガス、水道、電話会社などライフライン各企業にそれぞれ多数配備されている意外とポピュラーな車両。
これらの緊急車両はほとんどが、白黒パトカーのパトライトと同じような視認性が良いブーメランタイプの大型赤色灯をルーフに装備しているほか、車体には事業者名が入ります。
しかし、一部の緊急車両については 車体に所属組織名がなかったり、”警察の覆面パトカー”のような着脱式赤色灯をその都度必要に応じて装着する場合も。
本項ではそのような公安委員会に緊急車両指定され着脱式赤色灯を搭載し、緊急走行可能の”覆面パトカーそっくり”な車両をご紹介します。
Contents
覆面パトカーそっくりの車両たちをご紹介!
ロビー団体の影響力に比例しているのか、医療機関の車が多いようです。人命を救うため、赤色灯とサイレンを適切に使用した緊急走行で患者の元へ迅速に駆けつけるようです。
臓器移植用緊急輸送車
臓器移植用緊急輸送車の名の通り、人間の臓器を緊急輸送するための緊急車両です。レガシィ・ツーリングワゴンAWD2・5Lに着脱式赤色灯および、秘匿式の前面赤色灯を搭載。医療系だから車体カラーはホワイト?
典拠元「倉敷西ライオンズクラブ35周年記念臓器移植用輸送車贈呈」
https://www.kuranishi.jp/37/35dai/35dai-zokiyusosha.htm
余談ですが、「ラジオライフ」誌の1995年1月号に掲載された読者投稿のネタとして、「目の前の88ナンバーのセドリックが突然、赤色灯を窓からつけてサイレン鳴らして緊急走行していったので覆面パトカーだと思い、あとをつけて行ったら、行先は病院で、実は臓器移植コーディネーターの車だった」なんてのがありました。なお、TLアンテナもついていたそうです。
緊急往診車(ホスピスカー)
医師が駆けつけるための新たな車両
近年、病院や個人クリニックに所属する医師が、車両に着脱式の赤色灯を装着して緊急走行を行う「緊急往診車(ホスピスカー)」の運用が可能となってきています。

埼玉医大グループの在宅療養支援診療所「ハピネス館クリニック」(毛呂山町)で配備される緊急往診車と担当医師の斎木氏。車種はトヨタ・ヴィッツ。ルーフに着脱式警光灯、車内サンバイザーにフラットビーム、フロントグリル内に秘匿式のLED式前面赤色灯(マエアカ)が備わっている。また、緊急往診車を示す表記も。出典 読売新聞社の報道
この車両は、ホスピス医や開業医などが所有する車に対し、各都道府県の公安委員会が正式に認可したものです。一般的な病院で使用される「ドクターカー」とは異なり、主に在宅療養中の患者が容態急変などにより、緊急に医師の往診が必要になった際、医師が駆けつけるために用いられます。
緊急往診車には、サイレンのほか、着脱式の赤色回転灯やフラットビームなどが装備されており、その外見は非常に覆面パトカーに似ています。ただし、緊急往診車であることを明示するステッカーを車体に掲示するよう、公安委員会から各医療機関に指導がなされているようです。
実際にホスピスの医師らが病院の公式サイトや個人ブログで紹介している車両を見ると、トヨタ・プリウス、アクア、ホンダ・インサイトといったハイブリッドカーが確認されています。車体色も白に限らずグレーのものも見られ、特定の色に関する規定は設けられていないようです。
しかしながら、こうした緊急往診車を導入している医療機関は、全国的にはまだ限られているのが現状です。たとえば大都市圏に含まれる埼玉県でも、2019年5月にようやく県内初の緊急往診車が導入されました。これは、埼玉医科大学グループの在宅療養支援診療所「ハピネス館クリニック」(毛呂山町)によるもので、現在も先進的な取り組みとして注目されています。
読売新聞社の報道によりますと、埼玉県毛呂山町にある「ハピネス館クリニック」の担当医師・斎木実さん(当時48歳)が、県警に対し緊急往診車の認可を打診したことがきっかけとなり、2019年4月、埼玉県公安委員会が県内第1号として正式に認可を行ったとのことです。
認可の背景には、県西部における道路交通の不便さや、同クリニックが行ってきた往診による看取りの実績などがあったとされ、これらを総合的に勘案した結果として判断されたと報じられています。実際、これまで渋滞時には到着に約30分かかっていたケースも、サイレンと赤色灯を用いた緊急走行により、10分程度で現場に到着できたという効果が確認されているそうです。
また、朝日新聞でも同クリニックの緊急往診車を紹介しており、警察庁が公表した資料として、2011年10月時点では全国で5県5台だった緊急往診車が、2016年6月末には14府県15台にまで増えていたことを伝えています。これにより、制度の運用が徐々に広がりつつあることがうかがえます。
一方で、公安委員会の対応には慎重さが見られ、認可に至るまでに一定のハードルが存在する印象も否めません。しかしながら、医療機関や担当医師による在宅医療の重要性を強く訴える姿勢が、最終的には認可の後押しとなったとみられます。
緊急医療の現場において、こうした車両が新たな役割を担うことになるのか、今後の動向が注目されます。
日本赤十字の献血運搬車(民間)
同じ医療機関の関係車両としては昔から日本赤十字社の血液運搬車も着脱式赤色回転灯を搭載し、緊急時に使用して緊急走行を行っています。
現在の「献血運搬車」は多くがエアロブーメラン型の赤色灯を搭載した緊急車両ですが、一部ではこれがない献血運搬車もあります。こちらについては着脱式が用いられているわけではなく、元から「緊急走行できない一般車両仕様」のようです。
http://jwv.yuki.lomo.jp/?eid=333
なお、車体側面には赤十字と団体の名称が入っています。
総合通信局の不法無線局探索車(官庁)
電波Gメンこと、総務省総合通信局が不法無線局の調査と摘発に使用しているのが、不法無線取締りのために緊急車両指定された特殊車両。
許可を受けていない不法無線局によって、警察無線や消防無線、ドクターヘリなどの無線が混信妨害を受ける場合があり、それを随時調査して指導、摘発しているのが総合通信局です。アマチュア無線のメインチャンネルでずっと無変調やってた人の自宅にも駆けつけて厳重指導するおっかない車です。
同局の電波監視では不法無線局を探索して確認し、その場で110番して警察官を呼び、悪質なケースは口頭告発して不法無線局を警察に引き渡すまでが主な仕事。
同局が使う不法無線探索車の車体には役所を示す表記は一切なく(必要に応じてステッカーで示すようです)、着脱式警光灯を装着する姿はこちらも捜査覆面そっくり。
車種はエルグラやレガシィ・ツーリングワゴンなど。中身はさすがに不法電波局を調査するだけあって、高度な電波探査機器がズラリ。
北海道総合通信局の公式サイトでは緊急出動の様子を詳しく解説しており「赤色灯忘れずに」とのことで、着脱式の赤色灯をルーフに載せて勇ましく出動する姿と不法無線局を追いつめる姿が紹介されていました。
まとめ
知識がなければ、これらの車両が「悪質なマニアのモドキ」に見えてしまう可能性も。こんな事件もありますし。
【衝撃】覆面パトが緊急走行!?→交差点で一般車と事故→運転手ら車内篭城→周囲『警察官の前に人としておかしいやろ!』→本物警察さん『あれは偽ものです…』