記事内の引用について 世界びっくりカーチェイス2@mst_hideさんより
先日、セルスター工業株式会社(CELLSTAR)が発売した可搬式オービスMSSS対応探知機『AR-333』に関する実験結果が、SNS上で報告されました。
実験をレポートしたユーザーによると、『AR-333』は北海道内で設置されている可搬型オービスに対して一切反応しなかったとのことです。この結果はTwitter上で共有され、「とにかくAR-333は使えない」との厳しい評価が広がっています。
MSSS(移動式小型オービス)対応をうたう製品でありながら、実地テストで有効に動作しなかった点。
この点において、探知機としての基本機能が十分でないと判断され、少なくないユーザーが実用性に疑問を抱いている状況です。
SNSでは、「対応と書いてあっても、実際に検知できなければ意味がない」といったユーザーの指摘が相次いでおり、特に北海道のように可搬式オービスの設置が頻繁な地域では期待外れに失望する声が多数。
このような声を受けて、今後メーカー側がどのような対応をとるのか、注目が集まっています。
製品情報 https://www.cellstar.co.jp/products/gps/ar/ar-separate/ar-333.html
『Kバンド』を使用する可搬型オービス『MSSS』とは
現在、一部の地域で運用が進められている『MSSS』は、スウェーデンのSensis(センシス)社が開発した最新型の可搬式速度違反自動取締装置です。
小型の筐体には、証拠撮影用カメラ、ストロボ、Kバンドレーダーセンサーが一体化。
MSSSは、いわゆる「可搬型オービス」に分類され、設置から運用、撤収までが容易なため、これまでオービス未設置区間で取り締まりが難しかったエリアで使用されています。
しかも、事前警告表示のない“いきなり設置型”として神出鬼没的に運用されるケースも多く、ドライバーにとっては注意が必要です。
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取り締りは後日、出頭通知を受ける方式
→ 現場で撮影だけ行われ、数日後に「出頭通知書」や「出頭示達書」などが自宅に届き、警察署で手続きする流れです。
→ 一般的には撮影から通知が届くまで約2週間前後と言われています。
証拠能力を確保するため、MSSSで高解像度撮影が行われ、ナンバーや運転手の顔がはっきり記録されます。
MSSSの周波数は?
MSSSの作動原理はドップラー・レーダー方式ですが、それまで使用されていたXバンドと呼ばれる10.525GHzではなく、Kバンドと呼ばれる24.1GHz。
MSSSはこの周波数帯域において複数の周波数を使用します。
MSSSはなぜ敢えてレーザーではなくレーダー方式を?
昨今、速度取締現場ではレーザー式も増えていますが、センシスの役員・フィリップ・ウィジャース氏が2018年にジャーナリストの桐島瞬氏による取材に答えたところに拠れば、同社がレーザー式に手を伸ばさないのは“精度の問題”としています。
MSSSの導入は北海道に多い
2023年現在、警視庁が可搬式オービスの主力として配備しているのは東京航空計器(株)の製造する『LSM-310』。
都内では主に生活道路や通学路での速度取締に活用されており、それ以外の道路でも神出鬼没的に運用されているのが確認されています。
いかにも測定装置然としたスタイルが特徴で、目立ちやすい筐体です。
【唖然】移動式オービス設置作業中、近くの横断歩道で小学生に警笛鳴らし特攻寸前の激ヤバ運転手に複数警察さんが怒号説諭!→小学生に任意で謝罪!
可搬型オービスが本格運用時代へ
これまでセンシスの『MSSS』の導入が確認されていたのは、北海道・埼玉・岐阜の3道県でした。しかし、現在では導入地域がさらに拡大中で、今後全国への普及が加速する可能性があります。
MSSSは、複数車線の一括監視が可能なほか、その高性能さから「現時点で最恐最強のオービス」と呼ばれることも少なくありません。
“都市型迷彩”のようなデザイン
本体は地味なグレーカラーで、街の背景に自然に溶け込むため、走行中のドライバーが気づきにくいという特徴があります。これにより、MSSSは“都市型迷彩”としての優秀性も指摘されています。
北海道では固定オービスからの完全移行が進行中
北海道では、かつて69機あった固定型オービスが、2022年11月時点で高速道路に設置された1機を除き、すべて撤去済みです。これに代わるかたちで、道警は可搬型オービス取り締まり体制へと移行する方針を明らかにしています。
少人数での運用が可能。人員不足対策にも
MSSSの運用に必要なのは、以下の3点です:
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MSSS本体および撮影用ストロボフラッシュ
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「速度取締中」の立て看板
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警察官数名と展開・輸送用の覆面パトカー
これにより、少人数での効率的な運用が可能で、警察官の人員不足対策としても有効とされています。
北海道内でのMSSSによる取り締まりではMSSS本体設置後、警察官は付近の草むらに停めたセダン型覆面パトカーの車内にて、目視でMSSSの保全管理ならびに交通の様子を監視。
あとはすべてMSSSによる”おまかせ自動取締り”となり、その後は違反者に道警本部交通部から出頭が通知されるというわけです。
AR-333の実験結果は
さて今回、実際にAR-333を愛車に取り付けてMSSSに対する探知性能テストを行ったのは、20年以上にわたって北海道内の交通取り締まり情報を現場目線で発信するサイト「世界びっくりカーチェイス2」さん。
当サイトも捜査車両のトレンドや警察全般に関する最新情報収集のために、ソース元としてとても参考にさせていただいている超有名サイトです。
同サイト管理人氏がAR-333の購入を告知し、実戦テストの実施を予告したのは4月10日。
可搬式オービス「北欧くん」に対応するセルスター製レーダー探知機AR-333を購入。実戦テストが楽しみです。 pic.twitter.com/TbHE75FIR7
— 世界びっくりカーチェイス2 (@mst_hide) April 10, 2023
愛車『スバル WRX S4』のダッシュボードに装着されたAR-333をはじめとする各探知機の設置状況がわかる画像。
なお、AR-333は受信センサーとディスプレイ(本体)を分離して設置するセパレート・タイプです。
いざ交通取り締まり現場へ向かった同氏の報告は11日。現場には例のMSSS(同氏はMSSSに“北欧くん”の愛称をつけている)が三脚で路上に鎮座、その傍には違反者を鮮明に撮影記録できるように大型ストロボも設置。
そして一線を退いた200系クラウン覆面パトカーがその背後に潜んでいます。
同車はこれらの機材を運ぶトランスポーター役を務めます。
北海道内の交取現場では今後このスタイルが増えていくのでしょうか。
セルスター製レーダー探知機 AR-333、可搬式オービスMSSS「北欧くん」に一切反応せず。これはどうした事か。
不良品だったのかなぁ。そもそもやっぱり鳴らないのかなぁ。
※探知機を再起動しても変わらず。
※北欧くんは作動中を確認。(他のドライバーが光らせてくれました。) pic.twitter.com/u7YZFcb35R— 世界びっくりカーチェイス2 (@mst_hide) April 11, 2023
ところが、同氏による実験結果は意外なもので『一切反応せず』だったそう。
期待通りに作動しなかった様子です。
同氏によれば『他の車が(ストロボを)光らせてくれた』のを確認済みとのことで、当時実際に“北欧くん”からはレーダーが照射され、取り締まりが実施されていた状況とのこと。
その上で『不良品だったのかな』『再起動しても変わらず』と所感を綴っています。
この結果報告に対し、Twitterの反応も驚きの声が。
①音声系の設定。音量。②DLデータ不足。取り締まり情報、GPS情報等が最新版ではない。③未設定が多い。のいずれか。
— YASU (@yasu_effect) April 11, 2023
一方、ライバルメーカーのユピテルから同じく2023年に発表されたMSSS対応型レーダー探知機を比較に出し『ユピテルじゃないと対応していない』、『ユピテルの公式動画では650メートル手前から照射を受信して警告を出している様子が映っている』という複数の人の指摘も。下記はユピテルの公式動画です。
セルスターのAR-333が現場で『一切反応せず』だった理由として、ユーザー側の設定などの問題を指摘する声もある一方で、同氏はツイキャスの配信『2023/4/11配信 セルスター社製AR-333は北欧くんの前に無力。ブッチギレ愉快配信。』において、再起動を試し、設定も確認していることを述べています。

画像の引用元 https://www.cellstar.co.jp/products/gps/ar/ar-separate/ar-333.html
『ユピテル以外は対応していない』という人の声もあるが、現時点でセルスターの『AR-333』の公式ページには『MSSS対応』との表記があり、“MSSSに対応していない”と判断するのは早計かもしれない……!?
前提として、発射される新レーダー波の周波数に対応していなければ、レーダー探知機としての役割は果たせません。
つまり、考えられるのはMSSS側で『周波数の変更があったのではないか』というもの。
そもそもMSSSはこれまでの『一波固定型』のオービスと異なり、複数の周波数でレーダー波を発射することを想定した”最強のオービス”。
この新レーダー波を検知するセルスターの詳しい技術は不明ですが、セルスターが未調査の“未知の周波数“で、MSSSが波を出していたとしたら、一般論としては対応困難。
とはいえ、警察の運用するオービスも、そこらへんの女子高生のスマホや、おっさんのアマチュア無線と同様、電波法によってガチガチに規制されているシロモノ。
届出が出された帯域以外の全く別の帯域の周波数で電波を出すことは法的にできないはず。
追記
『AR-333』反応せず──現場でも話題。実験の詳細が明らかに
2025年4月13日、ウェブサイト『世界びっくりカーチェイス2』様にて、新着記事が公開されました。内容は、セルスターの新型レーダー探知機『AR-333』に関するもので、北海道内で行われた実地テストの詳細な記録と画像が掲載されています。
記事には、先日のX(旧Twitter)での投稿よりもさらに深く、実験当時の状況や管理人様の無念な想いが記されており、その切実さが強く伝わってきます。
▶ 参照URL:http://www.mst-hide.com/
AR-333の“非反応”は現場当局にも話題に
注目すべきは、今回のテスト結果が北海道警察関係者のあいだでも話題となっているという点です。記事内では、管理人様と取り締まり現場の当局者との会話が紹介されており、新製品『AR-333』の有効性や精度といった性能について現場も注目しているとのこと。
さらに、管理人様が今回の実験結果をそのまま率直に報告したところ、当局者はそれを笑納したとのこと。
まとめ…レーダー探知機業界の“因縁対決”?──ユピテル vs セルスターの背景
このように、セルスターの「AR-333」の実験レポートは衝撃的なものだったようです。一方、ユピテルの製品は好評とのことで、ユーザーが同社製品に流れていくことも考えられます。
少し余談になりますが、『ユピテル』はもともと音楽レーベルとしてスタートした企業で、かつては歌手・福沢もろ氏が在籍していたことでも知られています。
また、かつて同社はすでに撤退済みではありますが、広帯域受信機の分野でもマニアにはよく知られ、このような背景から見ても、ユピテルの電波受信技術は古くから高いレベルで確立されていたと推察されます。
とはいえ、『セルスター』の技術力が低いというわけでは決してありません。セルスターはカーエレクトロニクス製品において長年の信頼と実績を持つメーカーであり、確固たる地位を築いています。両社にはそれぞれ熱心なファンが存在し、支持層がしっかりしているのが特徴です。
燃え上がる“新製品対決”の構図──ユーザーの評価が分かれる展開に
とはいえ、今回の『AR-333』をめぐって、思わぬ形でユピテル vs セルスターという構図が浮き彫りになった感があります。
ただ、SNSや実験報告などを総合すると、現時点で消費者の選択はある程度傾いているという声も見受けられます。
もちろん『AR-333』は発売されたばかりの新製品ですので、その実力は今後の実戦投入を通じて、ユーザーによって多角的に検証されていくものと考えられます。
4月の注目株──アルインコの新型受信機にも注目
ちなみに、4月には『アルインコ』からデジタル無線対応の新型広帯域受信機『DJ-X100』が発売されました。IC-R30やAORのDV10といった他機種と比較して、どこまで性能を発揮するのか、各方面で評価試験が行われる見込みです。
ただし念のため申し添えますが、DJ-X100は“警察無線”には対応していません。アルインコは法令順守を重視する真面目なメーカーですので、あくまで合法的な受信用途に限られています。
とはいえ、こうした新製品が相次いで登場する4月は、ガジェット好きな無線マニアにとって、懐が軽くなる散財の月となるのかもしれません。